願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

中学時代のいじめ被害で訴訟

 

 ☆中学の同級生からいじめ

     28歳、中学時代のいじめで提訴
     「働けない」と卒業生の男性
       共同通信 2018/3/26

  兵庫県福崎町の町立中に在籍した3年間にわたり、
 同級生から暴行などのいじめを受けたのに、学校が
 十分に対応せず、心的外傷後ストレス障害PTSD)

 を発症し働けないとして、卒業生の男性(28)と母
 親が26日、同級生だった男性と両親、町に計約2億
 円の損害賠償を求め、神戸地裁姫路支部に提訴した。

  訴状によると、原告男性は2002年に入学。3年間
 を通じて元同級生から殴ったり蹴ったりされる暴行
 などの被害を受け、別々の高校に進学した後も嫌が

 らせが続いて高校の長期間休学や大学の中退を強い
 られたと主張。14年にPTSDと診断され、仕事に就く
 ことができないとしている。


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 ☆いじめ被害で働けない   中学時代のいじめが後々にも続き、PTSDを発症して  働けなくなったという訴えですが、中学卒業から10年  以上経過している。   学校は全力で対応した、提訴に驚いていると説明し  ている。  他方、原告側は「学校は加害者を擁護した。原告を隔  離して、組織ぐるみの迫害があった」と主張し、診断  を受け弁護士に相談して提訴に踏み切った、という。   不法行為を受けた被害者は、3年間という消滅時効の  期間内に損害賠償の請求をしなければならない。  今回の賠償請求は認められるのか、特に消滅時効の起  算時点をいつと判断されるか。   PTSDと診断されて弁護士に相談し、提訴したという  ことが消滅時効の進行においてどう解釈されるか。  被害者が損害の発生を現実に認識した時がいつになる  かで結論が分かれる。  ☆賠償請求権の消滅時効   不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はそ  の法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間  行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為  の時から二十年を経過したときも、同様とする。  (民法724条)   「損害及び加害者を知った時から三年間行使しない  ときは、時効によって消滅する」という規定について、  具体的に次のように説明されている。 *損害を知った時    最高裁 平成14年1月29日 判決   民法724条にいう「被害者が損害を知った時」とは、   被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解   すべきである。   不法行為の被害者は、損害の発生を現実に認識して   いない場合がある。損害の発生をその発生時におい   て現実に認識していないことはしばしば起こり得る   ことである。   民法724条の短期消滅時効の趣旨は、被害者が不法   行為による損害の発生及び加害者を現実に認識しな   がら3年間も放置していた場合に加害者の法的地位   の安定を図ろうとしているものにすぎず、それ以上   に加害者を保護しようという趣旨ではない。 *加害者を知った時    最高裁 昭和48年11月16日 判決   民法七二四条にいう「加害者ヲ知リタル時」とは、   同条で時効の起算点に関する特則を設けた趣旨に鑑   みれば、加害者に対する賠償請求が事実上可能な   状況のもとに、その可能な程度にこれを知った時を   意味するものと解するのが相当である。  ☆後遺症の場合の原則は   「加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能  な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を  知った」のはいつなのか。   (後遺障害の症状固定診断の時       から消滅時効が進行するという判決)    最高裁 平成16年12月24日 判決   被上告人は、本件後遺障害につき平成9年5月22日   に症状固定という診断を受け、これに基づき後遺   障害等級の事前認定を申請したというのであるから、   被上告人は遅くとも上記症状固定の診断を受けた   時には、本件後遺障害の存在を現実に認識し、加害   者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況   の下に、それが可能な程度に損害の発生を知った   ものというべきである。   症状固定の診断の後、申請した自動車保険料率算定   会による等級認定は、保険金額を算定することを   目的とする損害の査定にすぎない。   被害者の加害者に対する損害賠償請求権の行使を何   ら制約するものではないから、消滅時効の進行に   影響しない。  *この判決によると、「損害を知った時」とは損害の   程度や金額まで知る必要はない。後遺障害の等級   認定手続をしても消滅時効の進行を遅らすことに   ならない。  ☆特別の事情があるとき   しかし、特別の事情があるときは時効による消滅の  効果に影響する。  予想できなかった後遺症が発症した場合は、示談成立  後にも賠償請求ができるとする判決がある。  (示談成立後でも、当時予想できなかった   後遺障害が発症した場合、損害賠償を請求できる)    昭和43年3月15日 最高裁 判決   交通事故による全損害を正確に把握し難い状況の   もとにおいて、早急に小額の賠償金をもって示談   がされた場合において、示談によって被害者が   放棄した損害賠償請求は、示談当時予想していた   損害についてのみと解すべきであって、その当時   予想できなかった後遺症等については、被害者は   後日その損害の賠償を請求することができる。  ☆違法の可能性があると認識できた時から   消滅時効の起算時点をいつにするかを争点とする  裁判で、違法の可能性があることを認識できた時  (=弁護士から指摘された時)を起算点とすべきと  いう最近の判決がある。   商品先物取引により損失を被ったことを知ったと  いうことだけでは、損害賠償請求が可能な程度に  損害、加害者を知ったとはいえない、とされた。  (損害及び加害者を知った時について)    名古屋高裁 平成25年2月27日 判決   取引に関して違法なものである可能性があること   を認識できた時をもって、事実上可能な程度に   損害及び加害者を知ったものというべきである。   控訴人は、弁護士から本件取引による損失につい   て、違法な商品先物取引による被害である可能性   がある旨指摘されたことによって、不法行為によ   る損害賠償請求権についての損害及び加害者を知   ったものである。   従って、民法724条前段による3年の消滅時効期間   は、(弁護士から指摘された)平成23年3月4日か   ら進行するというべきである。          (取引終了からは9年経過)

 

正規、非正規労働者の格差訴訟

 ☆不合理な格差かどうか

   正社員との待遇格差で最高裁が初の判断へ
       NHK 2018年3月7日

  正社員と契約社員などとの待遇の違いが労働契約
 法で禁止されている不合理な格差にあたるかどうか
 が争われた裁判で、最高裁判所は、来月双方の主張
 を聞く弁論を開くことを決めました。

 最高裁は、どのような待遇の違いが不合理な格差に
 あたるのか、初めての判断を示すものと見られます。

  労働契約法の20条では、有期雇用の契約社員など
 と正社員との間で待遇に不合理な格差を設けること
 が禁じられています。

 この規定をめぐって、横浜市の運送会社と浜松市の
 物流会社の嘱託社員や契約社員が同一の待遇を求め
 てそれぞれ起こした2件の裁判で、最高裁判所は、
 来月20日と23日に双方の主張を聞く弁論を開くこと
 を決めました。

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 ☆同じ仕事で待遇が違う

  同じ仕事をしているのに正社員と非正規で賃金など
 に格差がある。この格差は不当だと各地で訴えが出て
 いる。

  過去の裁判では、職種が違う、雇用形態が異なる場
 合に客観的に格差を判断することは難しいとされた例
 がある。

  「賃金が労働の対価であるといっても、年齢、学歴、
  勤続年数、企業貢献度、勤労意欲を期待する企業側
  の思惑などが考慮され、純粋に労働の価値のみに
  よって決定されるものではない。

  雇用形態が異なるから賃金制度も異なるが、これを
  必ずしも不合理ということはできない。」

   (大阪地裁 平成14年5月22日 判決)


  一方、様々な要因に基づく待遇の差に使用者側の
 裁量も認めるが、その格差が許容範囲を越えれば、
 公序良俗違反となる。


  「業務内容、勤務時間及び日数等が正社員と同様と
  認められる臨時社員の賃金が、勤務年数の同じ正社
  員の8割以下という顕著な賃金格差を維持拡大しつ
  つ長期間の雇用を継続した。

  均等待遇の理念に違反する格差であり、会社が賃金
  格差を正当化する事情を何ら主張立証していない。」

  (違法の判決:長野地裁上田支部 平成8年3月15日)



 ☆労働契約法の規定

  過去の裁判で格差を容認する判決、違法とする判決
 に分かれていたが、平成25年に法改正があり労働契約
 法に次のような規定が盛り込まれた。

 *労働契約法20条

  有期契約者の労働条件が、期間の定めがあることに
 より、期間の定めのない契約者の労働条件と相違する
 場合には、職務の内容などの事情を考慮して、不合理
 と認められるものであってはならない。


  最近の格差訴訟で通勤手当、年末年始勤務手当、住
 居手当に差があるのは不合理で違法だとする判決が相
 次いでいる。

  労働条件の格差が、相当な事情に基づいているので
 あれば、使用者側は合理的に説明しなければならない。

  説明にならないと分かる場合と容易に判断できない
 ことがある。仕事内容の違いが賃金差をどの程度まで
 許すのか、その線引きは難しい。



 <最高裁の判断は>

  裁判で格差を容認した判決の理由には、正社員に対
 する将来の役割期待を上げるものがある。

  *将来的に枢要な職務及び責任を担うことが期待さ
   れる正社員

  *優秀な人材の獲得や定着を図る

  *長期的な勤務に対する動機付けを行う


  しかし、経験や能力、成果などに違いがないのに
 将来の期待を込めて格差を正当化することはできなく
 なっている。

  過去に正社員の8割以下となれば許容範囲を超える
 とした判決もあるが、これからの裁判で不合理と決め
 る判断基準を最高裁が有効に示せるか問われている。

 

大学定員抑制法で一極集中の是正か

 ☆東京一極集中是正法案

    東京一極集中是正法案:23区内の
    大学の10年間定員凍結
      毎日新聞 2018年1月19日

  政府は、「東京一極集中」を是正する法案の概要
 をまとめた。東京23区内の大学の定員増を10年
 間認めず、地方の大学や中核産業の振興計画を作成
 した自治体に助成する。

 梶山弘志地方創生担当相は19日、法案概要を示し、
 「東京の一極集中をしっかり是正していくことが
 地方創生にもつながる。政策総動員であたりたい」
 と述べた。安倍政権は2019年の統一地方選や
 参院選対策として、地方創生に注力する方針だ。

  東京圏(東京、千葉、神奈川、埼玉の1都3県)
 に地方から若者が流入していることを踏まえ、東京
 23区内の大学を対象に、10年間の時限措置とし
 て「学部などの学生の収容定員を増加させてはなら
 ないと規定する。

  「ただ、定員増を法律で凍結する方針に対しては、
 日本私立大学連盟の鎌田薫会長、、、東京都の小池
 百合子知事も「東京の国際競争力を低下させる」と
 撤回を求めた経緯がある。政府は時限措置にする
 ことで関係者の理解を得たい考えだ。


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 ☆何を優先するか

    一極集中是正/地方大振興と言うなら
       信濃毎日/2018/1/17

  東京の大学の定員を抑えれば地方は活性化する。
 そんな短絡的な発想で法律をつくっては困る。

  政府は東京23区内の大学定員増を原則10年間
 認めないとする一極集中是正の関連法案をつくり、
 22日召集の通常国会に提出する方針である。


  だが、東京の大学を出た若者があまり地方に戻ら
 ないのは、希望する就職先が少ないことが大きな
 要因だ。大学定員を抑えて解決する問題ではない。

  一極集中是正のため優先すべきは地方の雇用の確
 保である。企業の本社機能の地方移転や地方採用枠、
 地域限定社員の導入などを促す施策を強く進めるべ
 きだろう。

  大学が多い都会で学生が学ぶことは地方にとって
 マイナスではない。さまざまな勉強をした若者たち
 がUターンできれば、地域の活力になる。定員抑制
 は時代に合った学部・学科の新設を妨げ、学生の選
 択の幅も狭めてしまう。



 ☆東京一極集中をどうするのか

  東京の大学定員を抑制して、一極集中を是正すると
 いうのは短絡的で困ったことだと思う。

 大学を卒業しても、他に魅力的な都市がなければ東京
 へ東京へと集まる。

  人口と産業の集積が多様な魅力と吸引力をもたらし、
 モノ・カネを呼び込んでいる、と最近の首都圏白書は
 認めている。

 更に国際競争力を強化して日本全体を牽引しなければ
 ならないという。

  国際競争のために東京へ資金、人材、企業を更に集
 中すべきだという主張は、そのまま逆に地方が不利で
 ある理由を表している。

 収益性が低いのは地方の努力不足が主因ではない、
 だから政府や企業の機能を地方に移転しなければなら
 ないと決めたはずである。

  首都機能の移転が実現するまでは、首都税のような
 国税をかけて地方に渡しても良さそうだが、東京都は
 独自財源を侵すべからずと、主張しているらしい。



 ☆一極でなく多極を目指す

    東京一極集中 このままじゃいけない
       朝日新聞 2017年2月20日

  東京一極集中に歯止めがかからない。 総務省の
 人口移動報告で、東京圏の1都3県は昨年も12万
 人弱の転入超過になった。

  過度の一極集中は日本全体の未来を揺るがしかね
 ない。どうすれば是正できるか。地方創生の5カ年
 計画の折り返しを迎える今、政策を練り直すべきだ。

  根本的な問題点は、東京に集まり過ぎている行政
 や経済の機能を、国土全体にどう分散していくか、
 という骨太の理念がいっこうに見えないことだ。

  地方創生の目玉だったはずの中央省庁の地方移転
 が、その典型だ。 全面移転するのは文化庁のみに
 とどまった。


  「東京一極でなく、多極を目指す」という理念を
 明確かつ具体的に示すべきではないか。

  今の地方創生はもっぱら国が交付金で自治体の奮
 起を求める相変わらずの中央集権型だ。政府は昨年
 末から、東京都心部の大学の新増設を抑える検討も
 始めた。だが卒業後も働きやすく、住みたいと思わ
 せる地方を増やさないと、若い世代の流入を抑える
 効果は期待薄だろう。

  地方の魅力を高めるには、核となる都市を中心に、
 各地域の特性を踏まえた策を実行していくしかある
 まい。そのためには、地方が自主性を発揮できる
 権限と財源が欠かせない。

 

40代の貧困と高齢者の社会保障

 ☆働き盛り世帯で低所得化

    働き盛り世帯で年間所得300万円
    未満の割合が増加
        TBS 10/24

  世帯主が40代の働き盛り世帯で年間の所得が
 300万円未満の割合が増加していることが、厚生
 労働省の調査で分かりました。

  24日公表された厚生労働白書によりますと、世帯
 主が40代で年間の所得が300万円未満の世帯の
 割合は1994年の11.2%から20年間で5.4
 ポイント増加し、16.6%でした。

  一方、世帯主が65歳以上の高齢者世帯では100
 万円未満の割合が減少し、200万円以上500万
 円未満の割合はおよそ6ポイント増加し、48.2%
 でした。

  白書では、社会保障高齢者に手厚い仕組みになって
 いて、今後は現役世代の所得の向上を支援し、全世代
 型の社会保障へ転換していくべきと指摘しています。



 ☆所得の分布状況

  基礎資料となっている国民生活基礎調査を比較する
 と年齢別、所得金額階級別分布は次表のようになって
 いる。
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 年間所得200万円未満の割合は

   平成9年 → 平成28年

 (総数で)14.8 → 19.6% = 1.32倍

 (40代で) 5.3 → 9.5 = 1.79倍

 (65歳以上)26.4 → 28.2 = 1.07倍

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 ☆40代の高所得者    20年間の推移をより詳しく比較すると   f:id:ansindsib:20180104043308j:plain
  40代で高所得者の割合が目立っている。

 (1)たしかに、40代で低所得者の割合が上昇し逆に
   65歳以上は、上昇が少ない。

 (2)しかし、総数で見ても300万円未満、100万円未
   満ともかなり上昇している。

   この間に1世帯当たり平均所得金額は17%減少し
   ており、所得の中間を表す中央値は21%減少して
   いる。

   低所得化は全世代に及んでいることを示している。


 (3)一方、高所得者の割合を比較すると、40代では
   500万円以上の高所得者の割合は他の年代に比べ
   堅調である。総数での減少に比べ緩やかになって
   いる。
      (40代は0.9倍、総数で0.79倍)


 (4)要するに、40代では低所得者が増加している反
   面高所得者の減少があまりない。

 (5)所得格差が40代において、顕著になっているこ
   とが分かる。



 ☆所得格差の広がり

  40代で低所得化しているこの期間に、非正規雇用労
 働者が15%余り増えているという現象が並行している。

 厚労省が、40代が高齢者の社会保障充実のために犠牲
 になって、低所得化していると導くのであれば不適切
 である。

  世代間の不公平ではなく、各世代ともに所得格差が
 広がっているのを解決しなければならない。

 必要なのは、低所得層のかさ上げによる格差解消であ
 り、そのため高所得者に貢献を求めること。福祉削減
 の政策は、これと逆行している。

 

有期契約から無期労働契約に転換する

 ☆無期労働契約への転換を回避

  大手自動車メーカー、期間従業員の無期雇用を
   回避 労働契約法の「5年ルール」が骨抜きに
     朝日新聞 2017年11月04日

  トヨタ自動車やホンダなど大手自動車メーカーが、
 期間従業員が期限を区切らない契約に切り替わるの
 を避けるよう雇用ルールを変更したことが分かった。

 改正労働契約法で定められた無期への転換が本格化
 する来年4月を前に、すべての自動車大手が期間
 従業員の無期転換を免れることになる。雇用改善を
 促す法改正が「骨抜き」になりかねない状況だ。

  2013年に施行された改正労働契約法で、期間
 従業員ら非正社員が同じ会社で通算5年を超えて働
 いた場合、本人が希望すれば無期に転換できる「5
 年ルール」が導入された。

 申し込みがあれば会社は拒めない。長く働く労働者
 を無期雇用にするよう会社に促し、契約期間が終わ
 れば雇い止めされる可能性がある不安定な非正社員
 を減らす目的だった。

 施行から5年後の18年4月から無期に切り替わる
 非正社員が出てくる。

  改正法には企業側の要望を受け「抜け道」も用意
 された。

 契約終了後から再雇用までの「空白期間」が6カ月
 以上あると、それ以前の契約期間はリセットされ、
 通算されない。これを自動車各社が利用している。

 

 

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 ☆労働契約法改正

 *無期労働契約への転換

  平成25年4月1日から施行された労働契約法改正に
 より、以降に有期労働契約の締結もしくは更新をした
 場合には、その5年後の平成30年(2018年)4月1日か
 ら、労働者は使用者に対して無期雇用の申込みができ
 るようになる。

  厚労省の説明によると、この改正は「有期労働契約
 の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消」
 することを目的にしている。

  多くの会社で有期社員が戦力として定着しており、
 恒常的な労働力であることから、1年契約を毎年自動
 的に更新しているという実態を背景にしている。



 ☆無期転換で企業に負担感

  ところが、この無期転換のルールは企業側には負担
 が掛かることから、2018年問題として対策が検討され
 ているという。改正の趣旨に反する対応が問題になって
 おり、上の新聞記事はその典型です。


  景況などの理由で人員整理するにも解雇ができない、
 無期契約とする場合にどういう労働条件にすれば企業
 負担がやわらぐか。


 *無期転換を実施する労働者を制限するため、能力や
  貢献度を厳しく評価する

 *有期契約労働者の更新を慎重にして、無期転換を
  避ける



 ☆クーリング期間を利用

  無期転換を免れるために大手自動車メーカーが利用
 しているのが、クーリングという6カ月の「空白期間」
 です。

 今回の法改正で、有期労働契約の間に契約がない期間
 が6か月以上あるときは通算契約期間に含めないという
 例外規定が設けられた。

  これについて、厚労省は「無期転換ルールを避ける
 ことを目的として、無期転換申込権が発生する前に
 雇止めをすることは労働契約法の趣旨にてらして望ま
 しいものではない」と説明している。

 労働組合総連合は、雇止めの抑制策や法施行後の検証、
 制度の見直しを訴えている。



 ☆雇い止め、解雇の制限

   ただし、有期労働契約の雇止めが認められるかとな
 ると簡単ではない。雇止めについても解雇権濫用とし
 て無効となることがある。

 最高裁判決で示された次の場合に「客観的に合理的な
 理由を欠き、社会通念上相当であると認められないと
 き」は雇止めが認められず、従前と同一の労働条件で
 有期労働契約が更新される。


 *過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止め
  が無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認
  められるもの
   (最高裁 昭和49年7月22日 判決)


 *労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時
  にその有期労働契約が更新されるものと期待するこ
  とについて合理的な理由があると認められるもの
   (最高裁 昭和61年12月4日 判決)

 

定額払い固定残業代制度の問題

 

 ☆残業手当の新制度

    トヨタ自動車が新人事制度導入へ
      CBCテレビ 2017/10/14

  トヨタ自動車は入社10年目以降の社員を対象に、
 実際の残業時間に関係なく、毎月17万円を残業
 手当として一律に支給する制度を導入することを決
 めた。

  新しい制度は、入社10年目以降の主任職は本人
 が希望し承認されれば、実際の残業時間に関係なく
 17万円を支給される。

  これは主任職の平均で残業手当45時間分にあた
 り、残業を少なくすればするほどメリットがある
 仕組み。残業が45時間を超えた場合、手当は上乗
 せされる。

  導入は今年12月の予定で、トヨタ自動車は
 「賃金は労働時間の対価であるという考えを払拭し、
 メリハリある働き方につなげたい」としている。

 

 

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 ☆固定残業代制度の特徴   固定残業代(定額払い)制度は、基本給や手当など  に一定時間分時間外労働等の割増賃金を含めて支給す  る制度。  労働基準法に反することはないが、使用者側が残業代  等の割増賃金を支払わないようにするための方策に  悪用されているケースが多い。   残業を少なくすると利点をいう人もいる。「脱時間  給」と報道する新聞もある。  ただ、企業としては主に給料計算のコストを抑える効  果を期待している。  残業代を削減するために悪用されるケースも多いと言  われている。  実際に残業を行っていてもその割増賃金を正当に支払  わず、「固定残業代として残業代を払っている」と  主張し争いになっている。  ☆労基法の割増賃金との関係   この固定残業代制度が認められるためには、次の  ような要件を備えなければならない。   *固定残業代制度を採用することが労働契約の内容    となっていること   *通常の労働時間に対する賃金部分と固定残業部分    が明確に区別されていること   *通常の労働時間に対する賃金により計算した割増    賃金とを比較対照できること   *実際の残業時間数が、標準残業時間数を超えた場    合には、労働基準法によりその超えた部分の割増    賃金を支払うこと  ☆裁判事例   労基法の割増賃金に代わる定額払いの   固定残業代とは認められないとされた   平成25年2月28日 東京地裁 判決  概 要   I T 関連の企業に正社員として入社していたが、  会社の給与規程には、超過勤務手当に代えて精勤  手当を定額で支給すると規定していた。  労基法の割増賃金に代えて基本給などに含めて定額  払いの残業代とする制度が有効か争われた。  判決理由  次の要件を備えているか  (1)当該手当が実質的に時間外労働の対価として    の性格を有していること  (2)定額残業代として労基法所定の額が支払われ    ているか否かを判定することができるよう、    その約定(合意)の中に明確な指標が存在して    いること  要件(1)について   精勤手当は年齢、勤続年数等により数回変動して  おり、時間外労働の対価としての性質以外のものが  含まれているものとみるのが自然である。  また、時間外労働の対価以外に合理的な支給根拠、  目的を見出すことができない性質の手当であるとは  いい難い。  要件(2)について   支給額に固定性(定額制)が認められ、かつ、  その額が何時間分の時間外労働に相当するのかが  指標として明確にされていることが必要である。   ところが、固定性(定額制)に疑問がある。  また、その合意中に支給額が何時間分の時間外労働  に相当するものかを明確にする指標を見出すことは  できない。

 

こんなはずではなかった、動機の錯誤

 

 ☆契約の前提が違う

  婚約相手の前妻と離婚が成立していると信じて婚約
 したのに未だ成立していなかった、というケース。

 独身であると認識していたことは当然の前提であり、
 この婚約は錯誤無効と認められている。

  また、新築マンションを購入した買主が、耐震強度
 に偽装の疑いがあることが発覚したために、分譲契約
 の錯誤無効を主張して提訴した。

 裁判では、耐震性不足があったことは売買契約を締結
 する上で極めて重大な問題であり、錯誤の要素性を満
 たしていると認められた。

  売買契約において原告らの意思表示は無効であり、
 被告は売買代金を返還する責任を負う、とされた。

 

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  ☆動機の錯誤とは   民法では、法律行為の要素に錯誤があるときに限り  無効としている。(95条)   ところで、動機の錯誤については裁判で無効と認め  る例は少ないといわれている。  認められるのは、動機が相手方に対して表示されてい  たり相手方も承知しているなど、もし錯誤がなかった  らその意思表示をしなかったであろうと認められる場  合である。  動機が明示されていないが、黙示的に表示されている  ときでも要素の錯誤として無効となる場合がある。  ☆錯誤無効が認められた事例   平成22年4月22日 札幌地裁 判決    本件各売買契約においては、売主である被告は、   建築基準法令所定の基本的性能が具備された建物   である事実を当然の大前提として販売価格を決定   し、販売活動を行った。   原告らもその事実を当然の大前提として分譲物件   を買い受けたことに疑いはない。    ところが、本件各売買契約においては、客観的   には耐震偽装がされた建物の引渡しが予定されて   いた。   であるのに、売主も買主も、これが建築基準法令   所定の基本的性能が具備された建物であるとの誤   解に基づき売買を合意したことになる。   売買目的物の性状に関する錯誤(いわゆる動機に   関する錯誤)があったことになる。    新築マンションにあっては、耐震強度に関する   錯誤は、錯誤を主張する者に契約関係から離脱す   ることを許容すべき程度に重大なものというべき   であり、民法95条の錯誤に該当するものと認め   るのが相当である。   したがって、本件各売買契約に係る原告らの買受   けの意思表示は無効であり、被告は原告らに対し   売買代金を返還する責任を負う。