願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

通勤災害はどういう場合に認定されるか

 

 <自転車通勤禁止で労災は>

     コロナで注目の「自転車通勤」
    就業規則で禁止されても、労災の対象になる?
    弁護士ドットコム ニュース 2020年07月05日

  都内の会社員男性は、満員電車での感染リスクを抑えるため、
 自宅から会社まで自転車通勤を始めた。

  気になるのは、男性の会社の就業規則で「自転車通勤は禁止」
 とされていることだ。万一の際に労災の対象となるかどうか気に
 なっている。

 就業規則で禁じられている自転車通勤をし、事故にあった場合、
 労災は認められるのだろうか。仲田誠一弁護士に聞いた。


 *労災認定は?

  就業規則で自転車通勤を禁止されている場合、事故になっても
 労災は認められないのでしょうか

  いいえ、就業規則の定めは、労働基準監督署が行う労災判断に
 は関係がありません。

 質問のケースでは、労災認定される可能性が高いです。労基署が、
 (1)住居と就業場所間の往復である、(2)「合理的な経路及び
 方法」である、と判断すれば通勤災害として認定されます。

 

 <通勤災害認定の要件>

  ☆合理的な経路及び方法による移動かどうか


    労働者災害補償保険法7条に

  通勤災害に関する保険給付の通勤とは、として次のように定義
  している。

   労働者が就業に関し、次に掲げる移動を合理的な経路及び方法に
  より行うことをいう。

  一 住居と就業の場所との間の往復

  二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動

  三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動


   そして、労働者が移動の経路を逸脱し又は移動を中断した場合に
  は、その逸脱又は中断の間そしてその後の移動は通勤としない。

 

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 <合理的な経路及び方法とは>

  ☆通勤のために通常利用する経路であれば合理的な経路となる


  厚労省の説明によると、通勤のために通常利用する経路であれば、
 複数あったとしてもいずれも合理的な経路になる。

  また、当日の交通事情により迂回する経路など、通勤のために
 やむを得ずとる経路も合理的な経路となる。

 そして、鉄道等公共交通機関を利用することが多い場合にも、平常
  用いているかどうかにかかわらず、社会一般に通勤に利用する限り
 において自転車、徒歩等による移動も合理的な方法と認められる。

 

 <移動の経路を逸脱し又は移動を中断した場合>

  ☆移動の経路を逸脱とは、就業や通勤と関係ない目的
   で合理的な経路をそれることをいう


  厚労省東京労働局の説明によると、中断とは、通勤の経路上で
 通勤と関係ない行為を行うことをいう。

 ただし、通勤の途中で近くの公衆便所を使用する、ジュースを購入
 する等のささいな行為を行う場合には、逸脱、中断とならない。

 そして、日常生活上必要な行為で、病院で診察を受けることなどを
 やむを得ない事由により行う場合には、合理的な経路に復した後は
 再び通勤となる。

 

 <住居と就業の場所との間>

  ☆帰宅途中に義父の介護をした後交通事故に遭った場合、
   通勤災害が認定されるか


  平成18年4月12日 大阪地方裁判所の判決によると

  事業場から退勤後の帰宅途中交通事故に遭った労働者が、労災保
 険の休業給付を申請した。

 羽曳野労働基準監督署長は、原告の負傷は通勤災害に当たらないと
 して、休業給付を不支給とする処分を行った。

  原告の帰宅途中に事故が発生したが、争点は、義父の介護のため
 義父宅に立ち寄って介護したのが「就業に関し」移動したものか、
 通勤経路から逸脱していないか、などであった。

 事情を総合すると、義父の介護のため義父宅に立ち寄って介護した
 のは、日常生活のために必要不可欠な行為であったと認められ、
 労災保険法の「通勤」の要件を充たしていると判断された。


  裁判所の判断

 1)義父の介護は業務と無関係か

  原告は義父宅に立ち寄った後は、原告宅に帰宅する目的で事業
 場からの移動を開始しているのであるから、原告の帰宅行為が
 業務と無関係ということはできない。


 2)本件介護の必要性

  義父と同居する義兄又は原告の妻による介護のできない時間
 帯において原告が介護することは、原告の日常生活のために
 必要不可欠な行為であったと認められる。

 労災保険規則8条1号の「日用品の購入その他これに準ずる行為」
 には、このような介護をも含むものと解される。


 3)本件事故が合理的経路に復した後の事故であるか

  原告は、本件事故の当日義父宅を出た後まず、コンビニに行き自己の
 夕食を購入しその後本件交差点において事故にあった。

 事故は、交差点の東側部分を南から北に歩行中の原告に西から東に直進
 してきた原動機付自転車が衝突したというものである。

 原告は本件交差点東側の道路を南から北へわたった地点で事故にあった
 ことが認められるのであって、原告が本来の合理的な通勤経路に復した
 後に本件事故が生じたものと認めて差し支えない。

  そうすると、本件事故は労災保険法7条3項ただし書の「当該逸脱又
 は中断の間」に生じたものではなく、同条1項2号の「通勤」の要件を
 充たすこととなる。