願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

ジョブ型雇用か?

 ☆ジョブ型の働き方

 

  社説 会社の都合優先せぬよう

  毎日新聞 2021/3/1


  「ジョブ型」と呼ばれる雇用の導入を、経団連春闘
 呼びかけている。

 ポストごとに職務や必要な能力を具体的に示し、それに
 見合う人材を雇う欧米型の形態だ。

  ジョブ型では、仕事の内容は雇用契約で定められた職務に
 限定される。働き手が主体的にキャリアを形成し、専門性を

 磨けるメリットがある。

  一方で、ポストが不要になれば、働き手も必要なくなる。
 米国では解雇に直結する。正社員を採るより、業務の必要性
 に応じて有期契約で雇おうと考える企業も増えるだろう。

 、、、経済界はかねて、労働市場の流動化に必要だと
 いう理由で、解雇規制の緩和を求めてきた。

  ジョブ型の普及を突破口に、働き手に不利な雇用ルール
 が導入されないか、注意が必要だ。非正規雇用が広がり、
 日本で格差問題が深刻になったのも、雇用規制が緩和され
 た影響が大きい。

  成果主義とセットで議論されがちな点も気がかりだ。

 そもそもジョブ型の賃金は職務に応じて決まり、成果とは
 連動しない。

 

 ☆ジョブ型雇用とは(コトバンク

  職務、勤務地、労働時間などを明確に定めた雇用契約
 主に欧米の企業で採用されている。企業は高い専門スキルを
 有する人材を確保でき、経済状況によって依頼していた職務
 がなくなった場合にも配置転換を行う必要がない。

 

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 ☆企業の事情と労働者の立場

  従来の日本型雇用では、採用した後に社内で人材を育成すること
 が出来たが、ジョブ型雇用では専門スキルを持っていることを
 求め、既にできあがった人材、即戦力の採用が目的になる。

 職種、勤務地が限定されるので、企業の事情でポストが不要と判断
 され、人員削減を決めて解雇ということになり兼ねない。
  
 解雇された労働者は行き場を失ってしまう。このように簡単に解雇
 されたら、本人はもちろん社会全体に影響するし、不安が増大する。

 

  日本では、こういう事態を防止するために労働者保護の法律を
 整備している。そして、これまでは有効に機能してきた。

 解雇や人事異動など条件変更については、裁判において企業側
 の主張がそのまま認められることはない。合理的な理由がなけれ
 ばならない。


    → (裁判事例を下欄に引用しています)

 

  にもかかわらず、労働規制の改革が重点課題だと主張する
 企業やエコノミストが多い。

  時間によらず、成果に対して賃金を支払う制度に改革する
 こと、それが労働生産性の向上、経済成長に欠かせないという
 論を展開している。

  しかし、人件費抑制を意図するものであり、消費の促進、
 GDPの増進につながらない。国民全体に好ましい影響は少ない
 だろう。

 

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  裁判例から抜粋して引用します。

 

  平成29年3月8日 東京地裁 判決


 (原告の技能及び能率は低いが、解雇を検討すべき
   ほどに重大な程度に至っているとは認め難い)


 概要

   被告との間で期限の定めがない雇用契約を締結していた原告
 が被告から解雇されたが、その理由とされた業績不良や能力
 不足などの解雇事由が存在しないことから解雇権の濫用として
 無効である等として、労働契約に基づいて地位の確認、賃金の
 支払等を求める事案である。


  解雇に係る解雇予告通知書には「貴殿は,業績が低い状態が
 続いており、その間会社は様々な改善機会の提供やその支援を
 試みたにもかかわらず業績の改善がなされず、この状態を放って
 おくことができないと判断した」と記載されている。

  会社の主張には、「原告が製品の周辺機器の在庫管理や納期
 管理を行っていたが、過剰な在庫を発生させるなど管理能力が
 不足しており、業務態度に問題があった」としている。

 

 裁判所の判断


 本件解雇の有効性の存否及び解雇権濫用の該当性の有無

  原告の不適切な対応等については、そのほとんどが認められ、
 技能及び能率が相当程度に低いものであること、時に他人の
 就業に負荷をかけて支障を及ぼすものであったことが認められ
 るが、しかし、

 原告の執務上の対応の不適切さが解雇を検討すべきほどまでに
 重大な程度に至っているとは認め難く、かえって原告については
 今一度はその適性に合った職への配置転換や業務上の措置を講ず
 ることを職位等級であるバンドを引き下げることも含めて検討す
 べきであった。

  このような検討をすることなくされた本件解雇は客観的に合理
 的な理由を欠き、社会通念上相当とはいえないから権利濫用とし
 て無効というべきである。

 

 

  平成25年3月25日 大阪地裁 判決


 (河川水面のごみ収集清掃中に現金15万円を発見し金品
  を私物化したとして懲戒免職処分を受けたが、免職に付
  すべき行為に該当するとは言い難い)


 概要

  原告らは、大阪市環境局河川事務所において現場作業員である。
 11隻の収集船で河川水面のごみ収集を実施し、ごみは陸揚げ後
 焼却処理等を行っている。

  この河川での清掃中に現金15万円を発見し私物化したとして
 懲戒免職処分を受けた。

 

 判断理由

 

  本件処分理由を構成する遺失物横領罪は、被告においてごみ
 と認識して占有管理しておらず、原告らはその占有を侵害した
 ものではないし、拾得した財物の管理を業務として認識してい
 たわけではない。

 従って、公金物品の横領、窃盗等相手が所有又は占有管理して
 いる財産に関わる犯罪行為とは、違法性の点で明らかに質的に
 差異が認められる。

  以上を考慮すれば、原告らの本件非違行為は本件処分方針が
 当然依拠すべき懲戒処分指針上、当然に免職に付すべき行為に
 該当するとは言い難く、処分方針において免職を基本と規定し
 たのは、そもそも重きに過ぎることが否めない。