願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

従業員のミス、会社は弁償させるか


 

 ☆会社と従業員との資力の違い


  従業員が会社の車を壊した、弁償しなければ
  ならないか?


  会社の方は損害賠償を請求しようとする、一方、従業員
 は会社に比べて資力が乏しいから、高額の弁償をすると
 生活が苦しくなりかねない。

  また会社は従業員の力によって活動領域を広げ、多くの
 利益を上げているのに対して、いざ従業員の行為によって
 会社に損害が発生したとき、その損害全部を従業員へ負担
 させることは公平ではない。

  こうした理由から、会社が従業員に負担を強いるのは
 制限されている。

 わざとやったかひどいミスというケースを除いて、仕事の
 上で起こした場合、従業員が全部負担させられることは
 あまりない。

 


 ☆債務不履行による損害賠償の請求

 

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  従業員が仕事でミス。損害賠償
  請求できる?

   広島リビング新聞
   回答:弁護士 地引雅志


 Q 従業員が仕事でミスして会社に損害を与えた
  場合、会社は従業員に対して損害賠償を請求で
  きますか。

 

 A 従業員の行為によって会社に損害が発生した
  場合には、その従業員は会社に対して、債務
  不履行や不法行為に基づく損害賠償責任を負う
  可能性があります。

  典型的なケースとしては、従業員が会社のお金
  を横領したり、会社のルールに背いたり、会社
  の備品などを壊したりして会社に損害を生じさ
  せた場合などです。

 

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  過去の裁判例を見ると、従業員に損害を賠償すべきと
 認めることがある。しかし、従業員にどの程度負担させ
 るかについて制限がされている。

 

  裁判例から抜粋して引用します。


  最高裁 昭和51年7月8日 判決 

 

  使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害
 行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償
 責任を負担したことに基づき損害を被った場合には、

 

 使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の
 業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害
 行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の
 程度その他諸般の事情に照らし、

 

 損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められ
 る限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の
 請求をすることができるものと解すべきである。

 

 

  名古屋地裁 昭和62年7月27日(大隈鐵工所事件)

 

   使用者は、労働者が不注意現象に陥った場合においても
 損害が発生しないような事故防止装置を設けるか、それが
 不可能であれば、保険に加入する等して損害分散の方法を
 とるべきである。

 

  従って、労働者の軽過失、単純な過失による損害につい
 ては本来使用者が負担すべきものであり、労働者の故意
 もしくはこれと同視すべき程度の重大な過失について
 のみ、使用者はその損害を労働者に転嫁できるものと解
 すべきである。


  使用者は労働過程上の労働者の過失により損害を受けた
 としても、それはある程度予測できることであり、その
 損害は費用の一部として製品原価に含ませて損害を吸収
 もしくは実質的に回復することは優に可能である。

 

 また損害保険に加入する等して損害の分散を図ることも
 可能であるのに対し、労働者はそのようなすべを全く持た
 ないのである。

 

  (居眠り予見可能性及び眠り込みの回避可能性
   の不存在)

 

  睡眠はいうまでもなく、人間にとって必要不可欠の一種
 の生理現象である。居眠りもまた一定条件が満たされた
 とき、人間誰しもが陥るものである。単に注意して防ぐ
 ことが可能となる性質のものではない。

 

  特に、深夜交替勤務に従事している労働者にとって、
 夜勤中の居眠りの発生を一般的には予見できたとしても、
 具体的に居眠りの発生を予見し、これを防止することは
 生理的にみて不可能である。