公用パソコンでは個人情報が保護されないか? 兵庫県職員が行った通報は公益通報として扱うべきか?
兵庫県職員が行った通報の文書をめぐって、議論になっていることのうち
二点を疑問に思い、調べたところをメモにしました。
まず要約として
(1)個人情報の保護
公用パソコンは公共のものだから、中にある情報はすべて明らかにすべきだ。
そうすれば、真実を知ることができるという意見が圧倒的に多い。
しかし、パソコンの調査をするには企業運営のため合理的必要性を要すると
されている。むやみに調査をすることが認められているわけではない。
(2)公益通報者保護法の外部通報
通報先として、消費者団体、公益通報者支援団体等のほか報道機関が含まれ
ている。
次に、法第二条では、公益通報の要件として不正の目的でないことが明記さ
れているが、これは不正の利益を得る目的、他人に不正の損害を加える目的等
で社会通念上違法性が高い通報とされています。
これらのことから、問題の兵庫県職員の通報は目的、通報先ともに要件を満
たしている。
(3)怪文書扱いについて
事の発端は、問題の通報文書を全く事実のない怪文書だと断定したことに
ある。
名誉棄損の犯罪行為だから混乱を防止するため調査したというが、正当な手続き
を省いて自力で調査、処分を行ったことが問われる。
(4)結論的には
知事が、問題の通報文書を入手した経路等を確認していれば、パソコンを調査
する必要は無かったといえるのではないかということです。

(1)個人情報の保護
公用パソコンに残しているデータは、私的なものであっても管理者の処分
に任されから、プライバシーの侵害を訴えることはできない。具体的な裁判例
もあると言われています。しかも、この意見が社会の多数派になっているよう
に思われる。
これについて疑問を持ち、更に関連する公益通報者保護法も調べることに
しました。
まず、個人情報の保護について
全国労働基準関係団体連合会の判例情報には、次の二例があります。
1)東京地裁 2002年2月26日 判決
2)東京地裁 2001年12月3日 判決
そして、この二件ではいずれも、原告のプライバシーを侵害されたという主張
を認めず請求が棄却されている。
しかし、重要なところは判決理由です。「パソコンの監視、調査が企業の円滑
な運営上必要かつ合理的なものであること、その方法態様が労働者の人格や自由
に対する行き過ぎた支配や拘束ではないことを要する。」としています。
1)東京地裁 2002年2月26日 判決
調査等の必要性を欠いたり、調査の態様等が社会的に許容しうる限界を超えて
いると認められる場合には、労働者の精神的自由を侵害した違法な行為として
不法行為を構成することがある。
2)東京地裁 2001年12月3日 判決
従業員が社内ネットワークシステムを用いて電子メールを私的に使用する場合、
会社側が職務上の合理的必要性が全くないのに専ら個人的な好奇心等から監視し
た場合など、監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生
じた不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた
場合には、プライバシー権の侵害となると解する。
より詳細な判決の要旨、概要などは最下段の通りです。
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(2)公益通報者保護法の外部通報
1)通報先
問題になっている兵庫県職員の通報先に報道機関も含まれているが、
消費者庁の説明では、法第三条 三号の外部通報先として
多数の者に対して事実を知らせる報道機関を例示している。
この場合の保護要件は
役務提供先等に公益通報をすれば、役務提供先が通報者について
知り得た事項を、通報者を特定させるものであると知りながら、正当
な理由がなくて漏らすと信ずるに足りる相当の理由があること
2)「不正の目的」とは
公益通報者保護法で、第二条に公益通報の要件として不正の目的で
ないことが明記されている。
第二条 この法律において「公益通報」とは、次の各号に掲げる者が、不正の
利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、、、
これについても消費者庁の説明では
不正の利益を得る目的、他人に不正の損害を加える目的などを例示しています。
3)結局、この兵庫県職員の通報は目的、通報先ともに要件を満たしている。
(3)怪文書扱いについて
兵庫県知事と幹部職員らは、問題の通報文書は全く事実のない怪文書であり、
名誉棄損の犯罪行為だから調査して混乱を防止する必要があったという。
しかし、名誉棄損であれば民事訴訟なり、刑事告訴という手続きを経て解決す
ることであり、自力で調査、処分を行うことは許されない。
賃貸住宅の貸主が、借家人の家賃滞納を理由に家財道具等を処分して自力で
借家人を追い出すことができないのと同様でしょう。
(4)最後に
個人情報保護の問題は本件では、派生的な事柄です。正当な手順に沿っていれば
何も議論の余地がないはずです。
しかし、県庁内だけでなく、社会的に大きな関心を呼び、話題になっているため
に先に調べたものです。
公用パソコンに残しているデータは、無条件に調査等が認められるわけでは
ない。職務上の合理的必要性、監視の目的、手段等が問われるとされている。
知事が、問題の通報文書を入手した経路等を確認していれば、パソコンを調査す
る必要は無かったと言えるのではなかろうか。

(記)
1)東京地裁 2002年2月26日 判決
〔概要〕
原告:経済情報等を販売する企業で営業業務を担当し、社内システム委員会の
委員を担当していた社員。
被告:原告を雇用する企業と
ある社員に対して誹謗中傷メールが送信されてきた事件等について、事情
聴取等にあたった社員
原告がその誹謗中傷メールの送信者である可能性が高いと被告に判断されて、
被告がパソコン等の調査をしたこと、入手した個人データをその後も返却し
ないことは原告のプライバシー等の侵害に当たるなどと主張した。
〔判決要旨〕
パソコン等の調査や命令も、それが企業の円滑な運営上必要かつ合理的なもの
であること、その方法態様が労働者の人格や自由に対する行きすぎた支配や拘束
ではないことを要し、調査等の必要性を欠いたり、調査の態様等が社会的に許容
しうる限界を超えていると認められる場合には労働者の精神的自由を侵害した
違法な行為として不法行為を構成することがある。
被告の事情聴取は社会的に許容しうる限界を超えて原告の精神的自由を侵害し
た違法行為であるとはいえない、パソコン等の調査をしたことについても、その
調査が社会的に許容しうる限界を超えて原告の精神的自由を侵害した違法な行為
であるとはいえないとされ、原告の請求が棄却された。
〔判断理由〕
企業秩序に違反する行為があった場合には、その違反行為の内容、態様、程度
等を明らかにして、乱された企業秩序の回復に必要な業務上の指示、命令を発し、
又は違反者に対し制裁として懲戒処分を行うため、事実関係の調査をすることが
できる。
しかしながら、上記調査や命令も、それが企業の円滑な運営上必要かつ合理的
なものであること、その方法態様が労働者の人格や自由に対する行きすぎた支配
や拘束ではないことを要し、調査等の必要性を欠いたり、調査の態様等が社会的
に許容しうる限界を超えていると認められる場合には労働者の精神的自由を侵害
した違法な行為として不法行為を構成することがある。
これを検討すると、被告の地位及び監視の必要性については、一応これを認め
ることができる。
これに対し、原告らによる社内ネットワークを用いた電子メールの私的使用の
程度は、限度を超えているといわざるを得ず、被告による電子メールの監視という
事態を招いたことについての原告側の責任、結果として監視された電子メールの
内容及び全ての事実経過を総合考慮すると、被告による監視行為が社会通念上相当
な範囲を逸脱したものであったとまではいえず、原告らが法的保護に値する重大な
プライバシー侵害を受けたとはいえない。
2)2001年12月3日 東京地裁 判決
〔概要〕
原告:会社の営業部長のアシスタントをしていた社員とその夫
被告:会社の事業部長
被告の事業部長から、飲食の誘いなどを内容とする電子メールが送られた
ため、被告を批判する内容の電子メールを夫に対して送信しようとしたが、
操作を誤り被告宛に送信してしまった。
これを読んだ被告は、原告メールの使用を監視し始めていたところ、これら
一連の行為のなかで被告は原告が自分をセクシュアル・ハラスメント行為で
告発しようとしている動きなどを知り、勧誘メールは個人的な付き合いを
意図したものでない、とする等のメールを送った。
このため、原告がメールを閲読した行為等が不法行為に該当するとして
損害賠償の支払を請求した
〔判決要旨〕
会社のサーバーを利用したメールでは、監視の目的、手段及びその態様等を総合
考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較考量の上、社会通念上相当な範囲を
逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害となると解するのが
相当である。
被告による監視行為が社会通念上相当な範囲を逸脱したものであったとまでは
いえず、原告が法的保護に値する重大なプライバシー侵害を受けたとはいえない
というべきである
として、請求が棄却された。
〔判断理由〕
、 原告らによる社内ネットワークを用いた電子メールの私的使用の程度は、前記
の限度を超えているといわざるを得ず、被告による電子メールの監視という事態
を招いたことについての原告側の責任、結果として監視された電子メールの内容
及び既に判示した本件における全ての事実経過を総合考慮すると、被告による監視
行為が社会通念上相当な範囲を逸脱したものであったとまではいえず、原告らが
法的保護に値する重大なプライバシー侵害を受けたとはいえない。
原発再稼働賛成が反対を上回る
原発再稼働賛成50% 反対35%を上回る
朝日世論調査 2024年2月19日
朝日新聞社が2月17、18日に実施した全国世論調査(電話)で、現在停止
している原子力発電所の運転再開について賛否を尋ねたところ、「賛成」は50%、
「反対」は35%だった。
今回は、能登半島地震から1カ月半余り経った時点での調査。前回の昨年2月調査
に続き、「賛成」が「反対」を上回った。
原発の運転再開について尋ねた調査は、東日本大震災のあと、おおむね「賛成」
が3割前後、反対が5~6割で推移。
前回調査で初めて賛否が逆転し、「賛成」51%、「反対」42%だった。

原子力発電の運転再開について賛否を問う最近の世論調査では、
放射能災害よりもエネルギー不安を深刻に考えるようになったという。
東日本大震災のときの災害は忘れられているのだろうか。
原発推進を見直すべきだという意見では、特に次のようなことが指摘されて
いる。
*原子力の発電コストは他の発電に比べ安価であり、エネルギー効率が良く、
安定的に供給できる。かつ地球温暖化防止に優れている。
こうした利点が認められているが、
一方、放射能災害の危険性、放射性廃棄物の処分に多大な負担を要する。
高レベル放射性廃棄物の最終処分では、地下300mより深い地層に埋設し
何百年、何千年も管理しなけれなならないという。世代を越えた負担になる。
クレジット利用のトラブル(親のカードを子が使った場合など)
☆クレジットカードのリボ払い、思わぬ落とし穴
しっかり確認すべき請求明細
福井新聞 2021/8/21
「夫のクレジットカードの支払いがリボ払いになっていて、
毎月2万円ずつ返済していたが元金が減らず、残債が50万円も
あることが分かった。毎月の請求明細はスマホにメールされる
ので分かりにくかった。一括で払って終わりにしたい」という
相談がありました。
クレジットカードの支払い方法には、一括払いや分割払い
のほか、利用金額や件数に関わらず毎月一定の金額を支払う
リボルビング払い(リボ払い)があります。
リボ払いは、月々の支払いを一定額に抑えられる反面、返済
が長期化し手数料がかさむことがあります。
一般的な手数料は実質年利約15%と高く、これは消費者金融
と変わらない水準であり、注意が必要です。
長期払いの負担が重すぎて逃れたいという場合、利用者が
申し出れば設定変更をすることができる。
福井県消費生活センターに相談した人はカード会社に連絡し、
一括で返済を終えたという。

☆トラブルが増加
クレジットカード関連のトラブルが増加していると言われ
ます。
上のようなリボ払いの悩みのほかに、カードの盗難や偽造の
被害、許可なく子が使ったという問題、購入した商品に欠陥
があったという場合の対応などがある。
☆親のカードを子が使った場合
銀行のカードが盗難や偽造にあって、不正使用された場合、
預金者保護法により被害全額が補償されることになっている。
しかし、他人に暗証番号を知らせるなど預金者側に故意、
重過失があれば補償がされない。
そこで、子が許可なく親のカードを使ってしまったという
場合に代金の支払いを拒否することは出来るか。
この場合、カード名義人が、落ち度なく管理していたかがまず
問われている。
一方、カード会社側の代金決済の仕組みが不正利用を妨止する
仕組みになっているか、またカード利用者の本人確認に不備が
ないかなども確認して判断されている。

☆クレジットで購入した商品に欠陥があったとき
商品が見本とは違っていた、商品に欠陥があったなどのケース
ではどう対応するか。
購入した商品が引き渡されない、契約したサービスが提供され
ないなどを理由としてクレジットの支払を停止できる消費者の
権利がある。
☆支払停止の抗弁
支払停止の抗弁というが、こうしたトラブルが解決するまでの間
クレジット業者からの支払い請求を拒否できる。
注意すべきは、この抗弁は解決するまでの間一時的に支払を停止
できるだけであり、契約を解除できる権利ではない。
販売店との売買契約の解除等を行なわない限り、クレジット契約
も存続するので、販売者との間で問題を解決しなければならない。
通勤災害はどういう場合に認定されるか
<自転車通勤禁止で労災は>
コロナで注目の「自転車通勤」
就業規則で禁止されても、労災の対象になる?
弁護士ドットコム ニュース 2020年07月05日
都内の会社員男性は、満員電車での感染リスクを抑えるため、
自宅から会社まで自転車通勤を始めた。
気になるのは、男性の会社の就業規則で「自転車通勤は禁止」
とされていることだ。万一の際に労災の対象となるかどうか気に
なっている。
就業規則で禁じられている自転車通勤をし、事故にあった場合、
労災は認められるのだろうか。仲田誠一弁護士に聞いた。
*労災認定は?
就業規則で自転車通勤を禁止されている場合、事故になっても
労災は認められないのでしょうか
いいえ、就業規則の定めは、労働基準監督署が行う労災判断に
は関係がありません。
質問のケースでは、労災認定される可能性が高いです。労基署が、
(1)住居と就業場所間の往復である、(2)「合理的な経路及び
方法」である、と判断すれば通勤災害として認定されます。
<通勤災害認定の要件>
☆合理的な経路及び方法による移動かどうか
労働者災害補償保険法7条に
通勤災害に関する保険給付の通勤とは、として次のように定義
している。
労働者が就業に関し、次に掲げる移動を合理的な経路及び方法に
より行うことをいう。
一 住居と就業の場所との間の往復
二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動
そして、労働者が移動の経路を逸脱し又は移動を中断した場合に
は、その逸脱又は中断の間そしてその後の移動は通勤としない。

<合理的な経路及び方法とは>
☆通勤のために通常利用する経路であれば合理的な経路となる
厚労省の説明によると、通勤のために通常利用する経路であれば、
複数あったとしてもいずれも合理的な経路になる。
また、当日の交通事情により迂回する経路など、通勤のために
やむを得ずとる経路も合理的な経路となる。
そして、鉄道等公共交通機関を利用することが多い場合にも、平常
用いているかどうかにかかわらず、社会一般に通勤に利用する限り
において自転車、徒歩等による移動も合理的な方法と認められる。
<移動の経路を逸脱し又は移動を中断した場合>
☆移動の経路を逸脱とは、就業や通勤と関係ない目的
で合理的な経路をそれることをいう
厚労省東京労働局の説明によると、中断とは、通勤の経路上で
通勤と関係ない行為を行うことをいう。
ただし、通勤の途中で近くの公衆便所を使用する、ジュースを購入
する等のささいな行為を行う場合には、逸脱、中断とならない。
そして、日常生活上必要な行為で、病院で診察を受けることなどを
やむを得ない事由により行う場合には、合理的な経路に復した後は
再び通勤となる。
<住居と就業の場所との間>
☆帰宅途中に義父の介護をした後交通事故に遭った場合、
通勤災害が認定されるか
平成18年4月12日 大阪地方裁判所の判決によると
事業場から退勤後の帰宅途中交通事故に遭った労働者が、労災保
険の休業給付を申請した。
羽曳野労働基準監督署長は、原告の負傷は通勤災害に当たらないと
して、休業給付を不支給とする処分を行った。
原告の帰宅途中に事故が発生したが、争点は、義父の介護のため
義父宅に立ち寄って介護したのが「就業に関し」移動したものか、
通勤経路から逸脱していないか、などであった。
事情を総合すると、義父の介護のため義父宅に立ち寄って介護した
のは、日常生活のために必要不可欠な行為であったと認められ、
労災保険法の「通勤」の要件を充たしていると判断された。
裁判所の判断
1)義父の介護は業務と無関係か
原告は義父宅に立ち寄った後は、原告宅に帰宅する目的で事業
場からの移動を開始しているのであるから、原告の帰宅行為が
業務と無関係ということはできない。
2)本件介護の必要性
義父と同居する義兄又は原告の妻による介護のできない時間
帯において原告が介護することは、原告の日常生活のために
必要不可欠な行為であったと認められる。
労災保険規則8条1号の「日用品の購入その他これに準ずる行為」
には、このような介護をも含むものと解される。
3)本件事故が合理的経路に復した後の事故であるか
原告は、本件事故の当日義父宅を出た後まず、コンビニに行き自己の
夕食を購入しその後本件交差点において事故にあった。
事故は、交差点の東側部分を南から北に歩行中の原告に西から東に直進
してきた原動機付自転車が衝突したというものである。
原告は本件交差点東側の道路を南から北へわたった地点で事故にあった
ことが認められるのであって、原告が本来の合理的な通勤経路に復した
後に本件事故が生じたものと認めて差し支えない。
そうすると、本件事故は労災保険法7条3項ただし書の「当該逸脱又
は中断の間」に生じたものではなく、同条1項2号の「通勤」の要件を
充たすこととなる。
企業の人事権と社員の利益
<営業成績が悪いとして解雇>
アマゾン労組幹部が普通解雇、無効訴え提訴
弁護士ドットコムニュース 2021/4/28
アマゾンジャパンで働いていた40代男性が4月27日、普通
解雇されたのは不当だとして、解雇無効と解雇された後の
賃金支払いを求め東京地裁に提訴した。
訴状などによると、男性は営業本部などを経て、一般家電
を扱う出店者に「アマゾンプライム」の利用を提案する販売
促進を担当していた。
2019年2月、上司から「成績が悪い」などと言われ、社内で
「コーチングプラン」と言われるPIP(業績改善プログラム)
の開始を告げられた。
課題が設定され、男性は数値をいずれも達成。しかし、上司
から「できたとは認めない」などと言われたため、「東京管
理職ユニオン」のアマゾン支部に加入。7月から団体交渉を
行ったが、回答は得られなかった。
<人事評価には使用者に広範な裁量が認められる>
降格になった労働者が賃金差額等の支払いを求めたのに
対して、請求を棄却した事例もあります。
人事評価には裁量が大きく働くものであり、社会通念上妥当
を欠くと認められる証拠がない限り違法とすることはできない
と判断している。
(裁判事例1)
<人事評価が合理性を欠く場合等には、違法になる>
人事評価には、使用者に広範な裁量が認められている。
しかし、純然たる自由裁量ではなく、評価が合理性を欠く
とか社会通念上著しく妥当を欠く場合は、違法になること
がある。
(裁判事例2)
<配転命令も無効になることがある>
配転は、職員の生活に相応の影響を及ぼすことがある。
使用者は権限を無制限で行使できるわけではなく、配転命令
に業務上の必要性が存在しない場合など特段の事情があり、
その権限の行使が権利の濫用に該当する場合には、配転命令
は無効というべきである。
(最高裁 昭和61年7月14日 判決参照)
(裁判事例3)

裁判事例を引用します
(裁判事例1)
平成 9年11月25日 大阪高裁 判決
判断
人事考課は、労働者の保有する労働能力、実際の業務の
成績その他の多種の要素を総合判断するもので、その評価
も一義的に定量判断が可能なわけではないため、裁量が大
きく働くものである。
人事考課をするに当たり、評価の前提となった事実について
誤認があるとか、動機において不当なものがあったとか等に
より、評価が合理性を欠き、社会通念上著しく妥当を欠くと
認められない限りこれを違法とすることはできない。
本件において、証拠によるもこれらの事情が存在したと認める
ことはできない。
(裁判事例2)
平成19年2月26日 東京地裁 判決
概要
消費者金融業の検査室部長らが不正融資を看過したなどと
して降格処分や減給処分を受けたのは不当として、処分の無効
及び未払い賃金の支払等を求めた事案である。
裁判所の判断
部長が、支店長の不正貸付け発覚から事情聴取までに4か月
ほどかかったことを理由に降格及び減給された。
しかし、事情聴取が部長の職務として当初から予定されていた
かどうか判然としない
いかに人事権の行使が使用者の裁量行為であるとはいえ,給与
の減額を伴う降格を是認し得るような事情はなかったといわざる
を得ない。
したがって、原告に対してされた本件降格は無効である。
(裁判事例3)
平成29年3月21日 東京地裁 判決
概要
東京都文京区所在の出版社の従業員が、埼玉県戸田市α
所在の戸田分室で勤務するように命じられた。
会社は、度重なる不当労働行為救済命令を受けながら、
本社社屋から組合員がいなくなるように配転命令をしたもの
であり、不法な目的に基づいている等と原告が主張し、戸田
分室に勤務する義務のないことの確認を求めた事案である。
判断
*配転命令は裁量権の濫用に当たるか
配転は職員の生活に相応の影響を及ぼすことがあるから、
使用者はその権限を無制限で行使できるわけではない。
事情を総合考慮すると、本件配転命令は業務上の必要性が
ないといえ、命令は裁量権を濫用したものとして違法、無効
である。なお、仮に業務上の必要性がないとはいえないとして
も、被告に不当な目的があると認められるので、いずれにして
も本件配転命令は違法、無効である。
パワーハラスメントで会社の責任
☆ トヨタ社長が遺族に直接謝罪、
一転和解 若手社員パワハラ自殺
毎日新聞 2021/6/7
トヨタ自動車の男性社員が2017年に自殺したのは、上司
のパワーハラスメントで適応障害を発症したのが原因だった
として、豊田章男社長がパワハラと自殺との因果関係を認め、
男性の遺族に直接謝罪していたことが判明した。
トヨタ側は徹底した再発防止策を誓うとともに、解決金を
支払うことで遺族と和解した。

☆パワーハラスメントの定義
厚生労働省はパワーハラスメントの定義を次のように説明
しています。
職場において行われる
(1)優越的な関係を背景とした言動であって、
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
(3)労働者の就業環境が害されるものであり、
(1)~(3)までの要素を全てみたすもの。
典型例
1)身体的な攻撃
暴行・傷害
2)精神的な攻撃
脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
3)人間関係からの切り離し
隔離・仲間外し・無視
4)過大な要求
業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの
強制、仕事の妨害
5)過小な要求
業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の
低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
6)個の侵害
私的なことに過度に立ち入ること
☆パワハラの加害者と会社の責任
パワーハラスメントを行った社員(加害者)と、その
使用者は、不法行為等により損害賠償を請求されること
がある。
☆裁判事例1
会社の上司からパワハラを受け、うつ病になって退職
を余儀なくされた原告が、加害者と会社に対して不法行
為と使用者責任に基づく損害賠償を請求し、裁判所は
これを認めた。
平成29年12月5日 名古屋地裁 判決
概要
被告会社の従業員であった原告が、被告会社において
上司であった被告Yからパワーハラスメント行為を受け、
うつ病となり退職を余儀なくされたなどと主張して、被告
Yに対し不法行為に基づく損害賠償と、被告会社に対し
使用者責任又は安全配慮義務違反の債務不履行責任に基づ
く損害賠償として損害金の連帯支払を求める。
争点
1)被告Yによるパワハラ行為の有無
2)被告会社の使用者責任
裁判所の判断
1)被告Yによるパワハラ行為の有無
原告は、平成26年3月頃から手先のしびれと震え、倦怠
感、記憶の不安定がみられるようになった。
さらには同年5月以降精神科を受診して同年4月頃に、うつ
病を発症したと診断され、休職に至ったものである。
この経緯に照らし合わせても、原告は被告Yの上記言動に
よってうつ病を発症し休職に至ったものといえる。
2)被告会社の使用者責任
被告会社は、被用者の選任、監督について相当の注意をした
ときでない限り使用者責任を負う(民法715条1項ただし書)。
被告会社が、本件につき上記の選任、監督について相当の注意
をしたといえるかについて検討する。
原告が被告会社に入社した時点において、被告Yには既に
他の従業員に対する威圧的な言動が時にみられたところであるが、
そのような被告Yに対する指導等が本件パワハラ行為以前にされ
た形跡はうかがわれないこと、被告Yの原告に対する本件パワハ
ラ行為について他の従業員が相談窓口に連絡した形跡もうかが
われず、抜き打ち調査等でも把握されなかったことなどに照らす
と、被告会社の措置は奏功しているものではない。
実際に被告Yの本件パワハラ行為が数箇月にわたって継続して
いたことからしても、被告会社は被告Yの選任、監督につき相当
の注意をしたとはいえない。
そうすると、被告会社は原告に対し被告Yのした本件パワハラ
行為について使用者責任を負い、被告Yと連帯して損害賠償義務
を負う。
☆裁判事例2
新入社員が上司のパワーハラスメントにより自殺し
たことにより、この父親が上司(加害者)と会社の
不法行為責任等を追及した。
裁判所は、被告(加害者)の発言が人格を否定し、威迫
するものであり、典型的なパワーハラスメントである
と認めて損害賠償の支払いを命じた。
平成26年11月28日 福井地裁 判決
概要
新入社員が上司のパワーハラスメントにより自殺したと
して、原告(亡dの父)が被告bらに対して不法行為責任
に基づく損害金等の支払を求めた。
裁判所の判断
争点1(被告bによる不法行為の有無)
上記手帳の記載は、被告bの指導に従って被告bから受け
た指導内容、言われた言葉やこれらを巡っての自問自答が記述
されたもので、被告b自身も自分が注意したことは手帳に書い
てノートに写すように指導していたことを認めている。
また、証拠によると上記の判明しているすべての日付けが被告b
をチームリーダーとして業務に従事した日である。
上記手帳の記載によると、dは被告bから次のような言葉又は
これに類する言葉を投げかけられたことが認められる。
「学ぶ気持ちはあるのか、いつまで新人気分」、「詐欺と同じ、
3万円を泥棒したのと同じ」、「毎日同じことを言う身にもなれ」
、、、
これらの発言は、仕事上のミスに対する叱責の域を超えてdの
人格を否定し、威迫するものである。これらの言葉が経験豊かな
上司から入社後1年にも満たない社員に対してなされたことを考
えると典型的なパワーハラスメントといわざるを得ず、不法行為
に当たる。
争点3(被告会社の責任)
被告bのdに対する不法行為は、外形上はdの上司としての業務
上の指導としてなされたものであるから、事業の執行についてなさ
れた不法行為である。
本件において、被告会社が被告bに対する監督について相当の注意
をしていた等の事実を認めるに足りる証拠はないから、被告会社は
原告に対し民法715条1項の責任を負うこととなる。
争点4(被告bの不法行為と本件自殺との相当因果関係)
被告bから人格を否定する言動を執拗に繰り返し受け続けてきた。
dは高卒の新入社員であり、作業をするに当たっての緊張感や上司
からの指導を受けた際の圧迫感はとりわけ大きいものがあるから、
被告bの前記言動から受ける心理的負荷は極めて強度であったと
いえる。
このdが受けた心理的負荷の内容や程度に照らせば、被告bの前記
言動はdに精神障害を発症させるに足りるものであったと認められる。
そして、dには業務以外の心理的負荷を伴う出来事は確認されて
いない。
よって、被告bの不法行為と本件自殺との相当因果関係はこれを
認めることができる。
歩道で高齢者と衝突した中学生に賠償命令
☆歩行者にも問われる注意義務
中学生が歩行上の注意義務を怠ったとして、高額の賠償
金支払命令があった。
事故は、中学生が急いで歩行する際、対向の高齢女性と
衝突して転倒させ腰の骨折を負わせたもの。
この裁判では中学生に故意、過失があったかが争われた。
中学生側は危険な行為はしていないと主張したが、裁判
所は安全に配慮して歩く注意義務を怠ったと認め、損害賠
償を命じた。
☆高齢女性に790万円の賠償命令
高齢女性に徒歩でぶつかった女子中学生
「賠償金790万円」の理由
NEWSポストセブン 2021/03/30
歩道を歩いて人とぶつかった女子中学生に、約790万円
の賠償命令。そんな判決が3月15日、大分地裁で下された。
2017年9月、大分市の歩道で登校中の女子中学生と
ぶつかって転倒した怪我で後遺症が残ったとして、
同市の80歳代女性が約1150万円の損害賠償を求めていた。
中学生は前を歩いていた4人の生徒を追い抜こうとした
際、対向の高齢女性と衝突。両手に野菜を持っていた女性
は転んで腰の骨を折り、腰が曲がりにくくなるなどの障害
が残った。
対向の高齢女性と衝突したが、中学生側は いきなり歩く
速度を上げたり進路を変える危険な行為はしていない と
主張した。しかし、歩行者同士が衝突する危険があったと
して、地裁は 追い抜く際に安全に配慮して歩く注意義務
を怠った過失がある と判断した。

☆交通弱者に対する配慮義務
事故防止のために、特に交通弱者に配慮するよう求めら
れており、道路交通法などに次のような記述がある。
〇視覚障害者が安全に歩行をするためには、周囲が視覚障害
者の歩行特性を知り、事故を起こさない配慮が必要となる。
〇車いす使用者の移動上の問題
車いす使用者が歩道上にある店の立て看板,バス停の停車
場名を記した看板などに通行を妨げられることがある。
〇高齢者の移動上の問題
高齢者は、加齢にともなう筋力やバランス機能、視機能、
認知機能の低下などにより歩行に支障が出ることがある。

☆裁判事例
1)犬の飼い主が負う注意義務について
ランニングをしていた男性が、路上で犬を
避けようとして転倒した事故
平成30年3月23日 大阪地裁 判決
裁判所の判断
動物は予想できない行動をとり、人の身体等に損害を
及ぼすことがあり得るから、係留する義務を負う。
犬のリードを放した飼い主の過失は、こうした基本的
な注意義務に違反したもので過失の程度は重い。
2)交差点で自転車と自転車が衝突した事故
平成14年2月15日 さいたま地裁 判決
裁判所の判断
交差点では速度を調節し、左右の安全を確認して事故
の発生を未然に防止すべき注意義務があったのに被告は
これを怠った。
一方、被害者も、交差点を左折する際に直進する左方
車の有無、その動静を確認しながら道路左側端に沿って
左折進行していたとすれば、避けられた事故であり、
被害者も事故回避の注意が不十分であった。