願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

パワーハラスメントで会社の責任


 ☆トヨタ社長が遺族に直接謝罪、
  一転和解 若手社員パワハラ自殺
    毎日新聞 2021/6/7

  トヨタ自動車の男性社員が2017年に自殺したのは、上司
 のパワーハラスメント適応障害を発症したのが原因だった
 として、豊田章男社長がパワハラと自殺との因果関係を認め、
 男性の遺族に直接謝罪していたことが判明した。

 トヨタ側は徹底した再発防止策を誓うとともに、解決金を
 支払うことで遺族と和解した。

 

             f:id:ansindsib:20210615213332j:plain


 ☆パワーハラスメントの定義

  厚生労働省パワーハラスメントの定義を次のように説明
 しています。 

  職場において行われる

 (1)優越的な関係を背景とした言動であって、

 (2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

 (3)労働者の就業環境が害されるものであり、

 (1)~(3)までの要素を全てみたすもの。


 典型例

 1)身体的な攻撃
   暴行・傷害

 2)精神的な攻撃
   脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言

 3)人間関係からの切り離し
   隔離・仲間外し・無視

 4)過大な要求
   業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの
   強制、仕事の妨害

 5)過小な要求
   業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の
   低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

 6)個の侵害
   私的なことに過度に立ち入ること

 
 ☆パワハラの加害者と会社の責任

  パワーハラスメントを行った社員(加害者)と、その
 使用者は、不法行為等により損害賠償を請求されること
 がある。


 ☆裁判事例1

  会社の上司からパワハラを受け、うつ病になって退職
 を余儀なくされた原告が、加害者と会社に対して不法行
 為と使用者責任に基づく損害賠償を請求し、裁判所は
 これを認めた。


  平成29年12月5日  名古屋地裁 判決

  概要

  被告会社の従業員であった原告が、被告会社において
 上司であった被告Yからパワーハラスメント行為を受け、

 うつ病となり退職を余儀なくされたなどと主張して、被告
 Yに対し不法行為に基づく損害賠償と、被告会社に対し

 使用者責任又は安全配慮義務違反の債務不履行責任に基づ
 く損害賠償として損害金の連帯支払を求める。


  争点

 1)被告Yによるパワハラ行為の有無

 2)被告会社の使用者責任


  裁判所の判断

 1)被告Yによるパワハラ行為の有無

  原告は、平成26年3月頃から手先のしびれと震え、倦怠
 感、記憶の不安定がみられるようになった。

 さらには同年5月以降精神科を受診して同年4月頃に、うつ
 病を発症したと診断され、休職に至ったものである。

 この経緯に照らし合わせても、原告は被告Yの上記言動に
 よってうつ病を発症し休職に至ったものといえる。


 2)被告会社の使用者責任

  被告会社は、被用者の選任、監督について相当の注意をした
 ときでない限り使用者責任を負う(民法715条1項ただし書)。

   被告会社が、本件につき上記の選任、監督について相当の注意
 をしたといえるかについて検討する。

  原告が被告会社に入社した時点において、被告Yには既に
 他の従業員に対する威圧的な言動が時にみられたところであるが、

 そのような被告Yに対する指導等が本件パワハラ行為以前にされ
 た形跡はうかがわれないこと、被告Yの原告に対する本件パワハ
 ラ行為について他の従業員が相談窓口に連絡した形跡もうかが
 われず、抜き打ち調査等でも把握されなかったことなどに照らす
 と、被告会社の措置は奏功しているものではない。

  実際に被告Yの本件パワハラ行為が数箇月にわたって継続して
 いたことからしても、被告会社は被告Yの選任、監督につき相当
 の注意をしたとはいえない。

   そうすると、被告会社は原告に対し被告Yのした本件パワハラ
 行為について使用者責任を負い、被告Yと連帯して損害賠償義務
 を負う。

 
 ☆裁判事例2

  新入社員が上司のパワーハラスメントにより自殺し
 たことにより、この父親が上司(加害者)と会社の
 不法行為責任等を追及した。

 裁判所は、被告(加害者)の発言が人格を否定し、威迫
 するものであり、典型的なパワーハラスメントである
 と認めて損害賠償の支払いを命じた。


  平成26年11月28日 福井地裁 判決

  概要

  新入社員が上司のパワーハラスメントにより自殺したと
 して、原告(亡dの父)が被告bらに対して不法行為責任
 に基づく損害金等の支払を求めた。


  裁判所の判断

 争点1(被告bによる不法行為の有無)

  上記手帳の記載は、被告bの指導に従って被告bから受け
 た指導内容、言われた言葉やこれらを巡っての自問自答が記述
 されたもので、被告b自身も自分が注意したことは手帳に書い
 てノートに写すように指導していたことを認めている。

 また、証拠によると上記の判明しているすべての日付けが被告b
 をチームリーダーとして業務に従事した日である。

 上記手帳の記載によると、dは被告bから次のような言葉又は
 これに類する言葉を投げかけられたことが認められる。

 「学ぶ気持ちはあるのか、いつまで新人気分」、「詐欺と同じ、
 3万円を泥棒したのと同じ」、「毎日同じことを言う身にもなれ」
  、、、

  これらの発言は、仕事上のミスに対する叱責の域を超えてdの
 人格を否定し、威迫するものである。これらの言葉が経験豊かな
 上司から入社後1年にも満たない社員に対してなされたことを考
 えると典型的なパワーハラスメントといわざるを得ず、不法行為
 に当たる。


 争点3(被告会社の責任)

  被告bのdに対する不法行為は、外形上はdの上司としての業務
 上の指導としてなされたものであるから、事業の執行についてなさ
 れた不法行為である。

 本件において、被告会社が被告bに対する監督について相当の注意
 をしていた等の事実を認めるに足りる証拠はないから、被告会社は
 原告に対し民法715条1項の責任を負うこととなる。


 争点4(被告bの不法行為と本件自殺との相当因果関係)

  被告bから人格を否定する言動を執拗に繰り返し受け続けてきた。
 dは高卒の新入社員であり、作業をするに当たっての緊張感や上司
 からの指導を受けた際の圧迫感はとりわけ大きいものがあるから、
 被告bの前記言動から受ける心理的負荷は極めて強度であったと
 いえる。

 このdが受けた心理的負荷の内容や程度に照らせば、被告bの前記
 言動はdに精神障害を発症させるに足りるものであったと認められる。

  そして、dには業務以外の心理的負荷を伴う出来事は確認されて
 いない。

  よって、被告bの不法行為と本件自殺との相当因果関係はこれを
 認めることができる。

 

歩道で高齢者と衝突した中学生に賠償命令

 ☆歩行者にも問われる注意義務

 

  中学生が歩行上の注意義務を怠ったとして、高額の賠償

 金支払命令があった。

  事故は、中学生が急いで歩行する際、対向の高齢女性と

  衝突して転倒させ腰の骨折を負わせたもの。

  この裁判では中学生に故意、過失があったかが争われた。

  中学生側は危険な行為はしていないと主張したが、裁判
 所は安全に配慮して歩く注意義務を怠ったと認め、損害賠
 償を命じた。


 ☆高齢女性に790万円の賠償命令

 高齢女性に徒歩でぶつかった女子中学生
 「賠償金790万円」の理由
 NEWSポストセブン 2021/03/30

  歩道を歩いて人とぶつかった女子中学生に、約790万円
 の賠償命令。そんな判決が3月15日、大分地裁で下された。

  2017年9月、大分市の歩道で登校中の女子中学生と
 ぶつかって転倒した怪我で後遺症が残ったとして、
 同市の80歳代女性が約1150万円の損害賠償を求めていた。

  中学生は前を歩いていた4人の生徒を追い抜こうとした
 際、対向の高齢女性と衝突。両手に野菜を持っていた女性
 は転んで腰の骨を折り、腰が曲がりにくくなるなどの障害
 が残った。

  対向の高齢女性と衝突したが、中学生側は いきなり歩く
 速度を上げたり進路を変える危険な行為はしていない と
 主張した。しかし、歩行者同士が衝突する危険があったと

 して、地裁は 追い抜く際に安全に配慮して歩く注意義務

 を怠った過失がある と判断した。

 

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 ☆交通弱者に対する配慮義務

  事故防止のために、特に交通弱者に配慮するよう求めら
 れており、道路交通法などに次のような記述がある。

 〇視覚障害者が安全に歩行をするためには、周囲が視覚障害
  者の歩行特性を知り、事故を起こさない配慮が必要となる。

 〇車いす使用者の移動上の問題

  車いす使用者が歩道上にある店の立て看板,バス停の停車
  場名を記した看板などに通行を妨げられることがある。

 〇高齢者の移動上の問題

  高齢者は、加齢にともなう筋力やバランス機能、視機能、
  認知機能の低下などにより歩行に支障が出ることがある。

 

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 ☆裁判事例

 1)犬の飼い主が負う注意義務について

  ランニングをしていた男性が、路上で犬を
  避けようとして転倒した事故

  平成30年3月23日 大阪地裁 判決
  裁判所の判断

  動物は予想できない行動をとり、人の身体等に損害を
 及ぼすことがあり得るから、係留する義務を負う。

  犬のリードを放した飼い主の過失は、こうした基本的
 な注意義務に違反したもので過失の程度は重い。

 

 2)交差点で自転車と自転車が衝突した事故

  平成14年2月15日 さいたま地裁 判決
  裁判所の判断

  交差点では速度を調節し、左右の安全を確認して事故
 の発生を未然に防止すべき注意義務があったのに被告は
 これを怠った。

  一方、被害者も、交差点を左折する際に直進する左方
 車の有無、その動静を確認しながら道路左側端に沿って
 左折進行していたとすれば、避けられた事故であり、
 被害者も事故回避の注意が不十分であった。

 

ジョブ型雇用か?

 ☆ジョブ型の働き方

 

  社説 会社の都合優先せぬよう

  毎日新聞 2021/3/1


  「ジョブ型」と呼ばれる雇用の導入を、経団連春闘
 呼びかけている。

 ポストごとに職務や必要な能力を具体的に示し、それに
 見合う人材を雇う欧米型の形態だ。

  ジョブ型では、仕事の内容は雇用契約で定められた職務に
 限定される。働き手が主体的にキャリアを形成し、専門性を

 磨けるメリットがある。

  一方で、ポストが不要になれば、働き手も必要なくなる。
 米国では解雇に直結する。正社員を採るより、業務の必要性
 に応じて有期契約で雇おうと考える企業も増えるだろう。

 、、、経済界はかねて、労働市場の流動化に必要だと
 いう理由で、解雇規制の緩和を求めてきた。

  ジョブ型の普及を突破口に、働き手に不利な雇用ルール
 が導入されないか、注意が必要だ。非正規雇用が広がり、
 日本で格差問題が深刻になったのも、雇用規制が緩和され
 た影響が大きい。

  成果主義とセットで議論されがちな点も気がかりだ。

 そもそもジョブ型の賃金は職務に応じて決まり、成果とは
 連動しない。

 

 ☆ジョブ型雇用とは(コトバンク

  職務、勤務地、労働時間などを明確に定めた雇用契約
 主に欧米の企業で採用されている。企業は高い専門スキルを
 有する人材を確保でき、経済状況によって依頼していた職務
 がなくなった場合にも配置転換を行う必要がない。

 

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 ☆企業の事情と労働者の立場

  従来の日本型雇用では、採用した後に社内で人材を育成すること
 が出来たが、ジョブ型雇用では専門スキルを持っていることを
 求め、既にできあがった人材、即戦力の採用が目的になる。

 職種、勤務地が限定されるので、企業の事情でポストが不要と判断
 され、人員削減を決めて解雇ということになり兼ねない。
  
 解雇された労働者は行き場を失ってしまう。このように簡単に解雇
 されたら、本人はもちろん社会全体に影響するし、不安が増大する。

 

  日本では、こういう事態を防止するために労働者保護の法律を
 整備している。そして、これまでは有効に機能してきた。

 解雇や人事異動など条件変更については、裁判において企業側
 の主張がそのまま認められることはない。合理的な理由がなけれ
 ばならない。


    → (裁判事例を下欄に引用しています)

 

  にもかかわらず、労働規制の改革が重点課題だと主張する
 企業やエコノミストが多い。

  時間によらず、成果に対して賃金を支払う制度に改革する
 こと、それが労働生産性の向上、経済成長に欠かせないという
 論を展開している。

  しかし、人件費抑制を意図するものであり、消費の促進、
 GDPの増進につながらない。国民全体に好ましい影響は少ない
 だろう。

 

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  裁判例から抜粋して引用します。

 

  平成29年3月8日 東京地裁 判決


 (原告の技能及び能率は低いが、解雇を検討すべき
   ほどに重大な程度に至っているとは認め難い)


 概要

   被告との間で期限の定めがない雇用契約を締結していた原告
 が被告から解雇されたが、その理由とされた業績不良や能力
 不足などの解雇事由が存在しないことから解雇権の濫用として
 無効である等として、労働契約に基づいて地位の確認、賃金の
 支払等を求める事案である。


  解雇に係る解雇予告通知書には「貴殿は,業績が低い状態が
 続いており、その間会社は様々な改善機会の提供やその支援を
 試みたにもかかわらず業績の改善がなされず、この状態を放って
 おくことができないと判断した」と記載されている。

  会社の主張には、「原告が製品の周辺機器の在庫管理や納期
 管理を行っていたが、過剰な在庫を発生させるなど管理能力が
 不足しており、業務態度に問題があった」としている。

 

 裁判所の判断


 本件解雇の有効性の存否及び解雇権濫用の該当性の有無

  原告の不適切な対応等については、そのほとんどが認められ、
 技能及び能率が相当程度に低いものであること、時に他人の
 就業に負荷をかけて支障を及ぼすものであったことが認められ
 るが、しかし、

 原告の執務上の対応の不適切さが解雇を検討すべきほどまでに
 重大な程度に至っているとは認め難く、かえって原告については
 今一度はその適性に合った職への配置転換や業務上の措置を講ず
 ることを職位等級であるバンドを引き下げることも含めて検討す
 べきであった。

  このような検討をすることなくされた本件解雇は客観的に合理
 的な理由を欠き、社会通念上相当とはいえないから権利濫用とし
 て無効というべきである。

 

 

  平成25年3月25日 大阪地裁 判決


 (河川水面のごみ収集清掃中に現金15万円を発見し金品
  を私物化したとして懲戒免職処分を受けたが、免職に付
  すべき行為に該当するとは言い難い)


 概要

  原告らは、大阪市環境局河川事務所において現場作業員である。
 11隻の収集船で河川水面のごみ収集を実施し、ごみは陸揚げ後
 焼却処理等を行っている。

  この河川での清掃中に現金15万円を発見し私物化したとして
 懲戒免職処分を受けた。

 

 判断理由

 

  本件処分理由を構成する遺失物横領罪は、被告においてごみ
 と認識して占有管理しておらず、原告らはその占有を侵害した
 ものではないし、拾得した財物の管理を業務として認識してい
 たわけではない。

 従って、公金物品の横領、窃盗等相手が所有又は占有管理して
 いる財産に関わる犯罪行為とは、違法性の点で明らかに質的に
 差異が認められる。

  以上を考慮すれば、原告らの本件非違行為は本件処分方針が
 当然依拠すべき懲戒処分指針上、当然に免職に付すべき行為に
 該当するとは言い難く、処分方針において免職を基本と規定し
 たのは、そもそも重きに過ぎることが否めない。

 

従業員のミス、会社は弁償させるか


 

 ☆会社と従業員との資力の違い


  従業員が会社の車を壊した、弁償しなければ
  ならないか?


  会社の方は損害賠償を請求しようとする、一方、従業員
 は会社に比べて資力が乏しいから、高額の弁償をすると
 生活が苦しくなりかねない。

  また会社は従業員の力によって活動領域を広げ、多くの
 利益を上げているのに対して、いざ従業員の行為によって
 会社に損害が発生したとき、その損害全部を従業員へ負担
 させることは公平ではない。

  こうした理由から、会社が従業員に負担を強いるのは
 制限されている。

 わざとやったかひどいミスというケースを除いて、仕事の
 上で起こした場合、従業員が全部負担させられることは
 あまりない。

 


 ☆債務不履行による損害賠償の請求

 

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  従業員が仕事でミス。損害賠償
  請求できる?

   広島リビング新聞
   回答:弁護士 地引雅志


 Q 従業員が仕事でミスして会社に損害を与えた
  場合、会社は従業員に対して損害賠償を請求で
  きますか。

 

 A 従業員の行為によって会社に損害が発生した
  場合には、その従業員は会社に対して、債務
  不履行や不法行為に基づく損害賠償責任を負う
  可能性があります。

  典型的なケースとしては、従業員が会社のお金
  を横領したり、会社のルールに背いたり、会社
  の備品などを壊したりして会社に損害を生じさ
  せた場合などです。

 

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  過去の裁判例を見ると、従業員に損害を賠償すべきと
 認めることがある。しかし、従業員にどの程度負担させ
 るかについて制限がされている。

 

  裁判例から抜粋して引用します。


  最高裁 昭和51年7月8日 判決 

 

  使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害
 行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償
 責任を負担したことに基づき損害を被った場合には、

 

 使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の
 業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害
 行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の
 程度その他諸般の事情に照らし、

 

 損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められ
 る限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の
 請求をすることができるものと解すべきである。

 

 

  名古屋地裁 昭和62年7月27日(大隈鐵工所事件)

 

   使用者は、労働者が不注意現象に陥った場合においても
 損害が発生しないような事故防止装置を設けるか、それが
 不可能であれば、保険に加入する等して損害分散の方法を
 とるべきである。

 

  従って、労働者の軽過失、単純な過失による損害につい
 ては本来使用者が負担すべきものであり、労働者の故意
 もしくはこれと同視すべき程度の重大な過失について
 のみ、使用者はその損害を労働者に転嫁できるものと解
 すべきである。


  使用者は労働過程上の労働者の過失により損害を受けた
 としても、それはある程度予測できることであり、その
 損害は費用の一部として製品原価に含ませて損害を吸収
 もしくは実質的に回復することは優に可能である。

 

 また損害保険に加入する等して損害の分散を図ることも
 可能であるのに対し、労働者はそのようなすべを全く持た
 ないのである。

 

  (居眠り予見可能性及び眠り込みの回避可能性
   の不存在)

 

  睡眠はいうまでもなく、人間にとって必要不可欠の一種
 の生理現象である。居眠りもまた一定条件が満たされた
 とき、人間誰しもが陥るものである。単に注意して防ぐ
 ことが可能となる性質のものではない。

 

  特に、深夜交替勤務に従事している労働者にとって、
 夜勤中の居眠りの発生を一般的には予見できたとしても、
 具体的に居眠りの発生を予見し、これを防止することは
 生理的にみて不可能である。

 

下請け業者に不当な取扱い

 ☆不当に代金を減額

      森永製菓に下請法違反勧告
      公取委 不当に代金減額
       産経新聞 2019.4.23

  森永製菓が菓子などの製造委託先5社に支払う
 代金を不当に計約950万円減額したのは下請法
 違反に当たるとして、公正取引委員会は23日、
 同社に再発防止を勧告した。

 公取委によると、森永製菓は平成28年11月~
 30年5月、5社から仕入れる菓子や食料品の
 単価を引き下げた際、改定前に発注した分にも新
 たな単価を適用することで、本来の代金より少な
 い額を支払っていた。

  下請法は、下請け業者に責任がないのに、発注
 時に定めた金額を減額して支払うことを禁止して
 いる。下請け側と減額に合意していても同法違反
 となる。
     f:id:ansindsib:20190714144108j:plain

 ☆優越的地位の濫用と下請法   独占禁止法は、不公正な取引方法を禁止しており、その  代表的な行為が「優越的地位の濫用」です。  取引上優越した地位にある企業が、取引先に不当に不利益  を与えることであり、具体的には押し付け販売、返品、  従業員派遣や協賛金負担などを強いることがある。   下請事業者と親事業者との取引に、こうした不公正な  取引が起こりやすく、それを防止し下請事業者の利益を  保護するために下請法が制定されている。  ☆下請法に規制される親事業者の禁止行為   注文した物品等の受領を拒否すること   代金を支払期日までに支払わないこと   定めていた下請代金を減額すること   受け取った物を返品すること   不相当に低い下請代金を定めて買いたたくこと   など  <下請事業者の了解を得ている場合でも>   下請法の禁止規定には、「下請事業者の責に帰すべき  理由がないのに」としており、下請事業者の合意があって  も違反になる。  *下請事業者の支払合意が有効か否かについて     札幌地裁の判決(平成31年3月14日)    民法は、私的自治をその基本理念としているが、   同法90条により私人間の合意を無効とすることは、   私的自治への介入であるから、同条の適用は私的自   治への過剰な介入とならないよう慎重に判断されな   ければならない。    しかし、取引の一方当事者が暴利行為ないし優越   的地位の濫用に及んだ場合には、民法90条により   その取引条件を無効とすることにより相手方当事者   を救済し、健全な取引秩序を回復する必要がある。   この取引条件は、相手方当事者の自由かつ自主的な   判断に基づくものではなく、私的自治の前提を欠い   ているから、これを無効としても私的自治への過剰   な介入にはならない。    以上から、販促協力金の支払合意が公序良俗に反   するとして民法90条により無効とされるためには、   合意が暴利行為ないし優越的地位の濫用に該当する   ことが必要である。

 

管理職とは、管理監督者とは

 

 ☆管理監督者に該当しない

    日産に残業代支払い命令 元社員
   「管理監督者」該当せず 横浜地裁
     時事通信 2019年03月26日

  日産自動車の課長級社員だった男性の遺族が、
 同社に未払い残業代約524万円を求めた訴訟の
 判決が26日、横浜地裁であった。

 新谷晋司裁判長は、男性が残業代の支給対象外と
 なる「管理監督者」に該当しないと判断し、約
 357万円の支払いを命じた。

  争点は、上司の指揮命令を受けずに特定の業務
 に従事するとされる「スタッフ職」だった男性が、
 管理監督者に当たるかどうかだった。

 新谷裁判長は「男性に重要な職責や権限が付与さ
 れていたとは認められない」と述べ、労働条件な
 どが経営者と一体的立場である管理監督者には
 該当しないと判断。

 海外戦略を担当していた男性は支店長に相当し、
 管理監督者に当たるとした日産側の主張を退けた。 


      教頭過労自殺を労災認定
      管理監督者に当たらず
       産経新聞 2019.2.1

  羽曳野労働基準監督署大阪府藤井寺市の私立
 大阪緑涼高で昨年3月、男性教頭が自殺したのは
 長時間労働と上司とのトラブルが原因として労災
 を認めた。

  遺族側代理人の松丸正弁護士によると、労基署
 は男性が労働基準法上、残業代や休日出勤手当の
 支払い対象外となる「管理監督者」には当たら
 ないと認定。

  労基署は適応障害を昨年3月中旬に発症したと
 認定し、発症前の2カ月の時間外労働が少なくと
 も月130時間、147時間だったとした。


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 ☆名ばかり店長   時間外労働の割増賃金を支払うことを避けるため肩書  だけ管理職にする賃金抑制策が話題になっている。  労働基準法では、管理監督者に当たる労働者は労働時間  や休日の規定が適用されないことになっている。  入社して間もない労働者を名ばかり店長にしている例は、  実体がないと分かりやすいが、課長級社員や学校の教頭  職など判断がつきにくい場合がある。   どのように区別するのか、管理監督者と認める判断  基準が次のように示されている。  ☆管理職手当を受けても     管理監督者とは認められない   消防署の主幹として管理職手当の支給を受けて  いた職員が、時間外勤務手当等の支払を請求した  件で、裁判所は管理職手当が支払われていること  だけをもって管理監督者と認めることはできない、  と判断している。  (名古屋高裁 平成21年11月11日 判決)  理 由   管理監督者は、労働時間等の規制を超えて活動するこ  とが要請されるような重要な職務と責任、権限を付与さ  れ、勤務態様も労働時間等の規制になじまない立場にあ  ると考えられているから、  (1) その労働者が実質的に経営者と一体的な立場にある   といえるだけの重要な職務と責任、権限を付与されて   いるか、  (2) 経営や労務管理等に関する重要事項にどの程度関与   しているか、  (3) 出退勤を管理されることなく、勤務時間について   ある程度の自由が認められているか、  (4) 給与や手当等において、その地位と職責に相応しい   待遇がなされているか等について検討し実質的、総合   的に判断すべきである。   いわゆる管理職手当が支払われているとしても、その  ことだけをもってその労働者を管理監督者と認めること  はできない。

 

クーリング・オフ期間経過の場合

 ☆高齢者に押し買い

    高齢者標的に強引に安く買い取り
    押し買い容疑で6人逮捕
     河北新報 2018年09月20日

  貴金属の訪問購入の際、客に適切な説明をしな
 かったとして、宮城、岩手、山形、福島4県警の
 合同捜査本部は20日、特定商取引法違反(不実
 告知など)の疑いで、仙台市青葉区の訪問買い取り
 会社「リサイクルセンター東北」社長佐瀬常太容疑
 者と現・元従業員5人を逮捕した。

  6人は被害者宅を訪問して不要な貴金属を買い取
 る際、売買時の契約に必要な書面を渡さなかった上、
 クーリングオフの説明もしなかった。

 「クーリングオフはできない」と虚偽説明したケー
 スもあったという。


 *特定商取引法は、訪問販売についてクーリングオフ制
  度を認めているが、25年2月から押し買い=訪問購入
  にもクーリングオフ制度が適用されることになった。

 

 

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 ☆クーリングオフ=契約申込みの撤回   特定商取引法に規定する訪問販売等の契約では、消費  者保護のためのクーリングオフ制度がある。  この制度は、理由を問わず無条件に、一方的に申込みの  撤回ができるという特徴がある。相手の同意も必要ない。   特定商取引法に定める契約で、消費者が冷静な判断が  できないような場合リスクの高い取引を行うことがある。  このため、消費者が頭を冷やして考え直せるというのが  制度の趣旨です。  ただし、書面により契約申込みの撤回等を行うこと、定  められた期間内に行うことが必要とされている。  ☆クーリングオフの期間   訪問販売等では8日間、連鎖販売取引等では20日間の  期間内であれば、無条件で契約申込みの撤回等を行うこ  とができる。  この期間の始めはいつからか、契約を承諾した日から起  算するのか、ということが争いになることが多い。  また、事業者が誤った説明をしたまま契約したという場  合もある。   特定商取引法には、「契約内容を明らかにする書面を  受領した日から起算して」と規定している。  そこで問題になるのは、事業者がこの書面を交付してい  ない場合、書面に不備がある場合や虚偽の説明を行って  いる場合です。  こうした場合は、書面を受領したことにならないので、  クーリングオフの期間は進行しない。事業者がクーリン  グ・オフの期間が過ぎていると主張できない。  事業者から法律で定めた書面の交付を受けた日が期間の  起算点となる。  ☆契約から2か月以上経過して認められた事例  平成17年5月25日 京都地裁 判決   リフォーム工事と浄水器の販売を業とする会社が訪問  販売により、商品の販売と水道管洗浄作業請負の契約を  原告と締結し、契約金として116万円を受領した。  原告は契約から2か月以上経過して契約解除の意思表示を  したが、これが有効かどうかが争われた。  判決理由   被告が原告に交付した水道管洗浄作業請負契約書、工  事請負契約書は法5条2項、1項1号、4条に定める記載事  項に不備がある。   水道管洗浄作業請負契約書において、役務提供契約に  もかかわらず、法4条4号に定める事項の記載がなされて  いない。  工事請負契約書において、法4条4号の記載を欠いている  だけでなく、支払方法について単に「ローン」とあるの  みであり、法4条2号の記載も欠いている。    、、、   したがって、被告が原告に交付した前記書面は、法5条  の書面に該当しないというべきである。   そうすると、旧法9条1項に基づく解除の期間は進行し  ていないから、原告の行った解除は有効である。