願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

クレジット利用のトラブル(親のカードを子が使った場合など)


 ☆クレジットカードのリボ払い、思わぬ落とし穴
  しっかり確認すべき請求明細
       福井新聞 2021/8/21

   「夫のクレジットカードの支払いがリボ払いになっていて、
 毎月2万円ずつ返済していたが元金が減らず、残債が50万円も
 あることが分かった。毎月の請求明細はスマホにメールされる
 ので分かりにくかった。一括で払って終わりにしたい」という
 相談がありました。

 

  クレジットカードの支払い方法には、一括払いや分割払い
 のほか、利用金額や件数に関わらず毎月一定の金額を支払う
 リボルビング払い(リボ払い)があります。

 リボ払いは、月々の支払いを一定額に抑えられる反面、返済
 が長期化し手数料がかさむことがあります。

 一般的な手数料は実質年利約15%と高く、これは消費者金融
 と変わらない水準であり、注意が必要です。


 (福井県消費生活センター

  長期払いの負担が重すぎて逃れたいという場合、利用者が
 申し出れば設定変更をすることができる。

 福井県消費生活センターに相談した人はカード会社に連絡し、
 一括で返済を終えたという。

  

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 ☆トラブルが増加

 

  クレジットカード関連のトラブルが増加していると言われ
 ます。

 上のようなリボ払いの悩みのほかに、カードの盗難や偽造の
 被害、許可なく子が使ったという問題、購入した商品に欠陥
 があったという場合の対応などがある。

 

 ☆親のカードを子が使った場合

  銀行のカードが盗難や偽造にあって、不正使用された場合、
 預金者保護法により被害全額が補償されることになっている。

 しかし、他人に暗証番号を知らせるなど預金者側に故意、
 重過失があれば補償がされない。

 

  そこで、子が許可なく親のカードを使ってしまったという
 場合に代金の支払いを拒否することは出来るか。

 

 この場合、カード名義人が、落ち度なく管理していたかがまず

 問われている。

 

 一方、カード会社側の代金決済の仕組みが不正利用を妨止する
 仕組みになっているか、またカード利用者の本人確認に不備が
 ないかなども確認して判断されている。

 

   

     

 

 

 ☆クレジットで購入した商品に欠陥があったとき

  商品が見本とは違っていた、商品に欠陥があったなどのケース
 ではどう対応するか。

   購入した商品が引き渡されない、契約したサービスが提供され
 ないなどを理由としてクレジットの支払を停止できる消費者の
 権利がある。

 

 ☆支払停止の抗弁

 支払停止の抗弁というが、こうしたトラブルが解決するまでの間
 クレジット業者からの支払い請求を拒否できる。

 注意すべきは、この抗弁は解決するまでの間一時的に支払を停止
 できるだけであり、契約を解除できる権利ではない。

 販売店との売買契約の解除等を行なわない限り、クレジット契約
 も存続するので、販売者との間で問題を解決しなければならない。

 

通勤災害はどういう場合に認定されるか

 

 <自転車通勤禁止で労災は>

     コロナで注目の「自転車通勤」
    就業規則で禁止されても、労災の対象になる?
    弁護士ドットコム ニュース 2020年07月05日

  都内の会社員男性は、満員電車での感染リスクを抑えるため、
 自宅から会社まで自転車通勤を始めた。

  気になるのは、男性の会社の就業規則で「自転車通勤は禁止」
 とされていることだ。万一の際に労災の対象となるかどうか気に
 なっている。

 就業規則で禁じられている自転車通勤をし、事故にあった場合、
 労災は認められるのだろうか。仲田誠一弁護士に聞いた。


 *労災認定は?

  就業規則で自転車通勤を禁止されている場合、事故になっても
 労災は認められないのでしょうか

  いいえ、就業規則の定めは、労働基準監督署が行う労災判断に
 は関係がありません。

 質問のケースでは、労災認定される可能性が高いです。労基署が、
 (1)住居と就業場所間の往復である、(2)「合理的な経路及び
 方法」である、と判断すれば通勤災害として認定されます。

 

 <通勤災害認定の要件>

  ☆合理的な経路及び方法による移動かどうか


    労働者災害補償保険法7条に

  通勤災害に関する保険給付の通勤とは、として次のように定義
  している。

   労働者が就業に関し、次に掲げる移動を合理的な経路及び方法に
  より行うことをいう。

  一 住居と就業の場所との間の往復

  二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動

  三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動


   そして、労働者が移動の経路を逸脱し又は移動を中断した場合に
  は、その逸脱又は中断の間そしてその後の移動は通勤としない。

 

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 <合理的な経路及び方法とは>

  ☆通勤のために通常利用する経路であれば合理的な経路となる


  厚労省の説明によると、通勤のために通常利用する経路であれば、
 複数あったとしてもいずれも合理的な経路になる。

  また、当日の交通事情により迂回する経路など、通勤のために
 やむを得ずとる経路も合理的な経路となる。

 そして、鉄道等公共交通機関を利用することが多い場合にも、平常
  用いているかどうかにかかわらず、社会一般に通勤に利用する限り
 において自転車、徒歩等による移動も合理的な方法と認められる。

 

 <移動の経路を逸脱し又は移動を中断した場合>

  ☆移動の経路を逸脱とは、就業や通勤と関係ない目的
   で合理的な経路をそれることをいう


  厚労省東京労働局の説明によると、中断とは、通勤の経路上で
 通勤と関係ない行為を行うことをいう。

 ただし、通勤の途中で近くの公衆便所を使用する、ジュースを購入
 する等のささいな行為を行う場合には、逸脱、中断とならない。

 そして、日常生活上必要な行為で、病院で診察を受けることなどを
 やむを得ない事由により行う場合には、合理的な経路に復した後は
 再び通勤となる。

 

 <住居と就業の場所との間>

  ☆帰宅途中に義父の介護をした後交通事故に遭った場合、
   通勤災害が認定されるか


  平成18年4月12日 大阪地方裁判所の判決によると

  事業場から退勤後の帰宅途中交通事故に遭った労働者が、労災保
 険の休業給付を申請した。

 羽曳野労働基準監督署長は、原告の負傷は通勤災害に当たらないと
 して、休業給付を不支給とする処分を行った。

  原告の帰宅途中に事故が発生したが、争点は、義父の介護のため
 義父宅に立ち寄って介護したのが「就業に関し」移動したものか、
 通勤経路から逸脱していないか、などであった。

 事情を総合すると、義父の介護のため義父宅に立ち寄って介護した
 のは、日常生活のために必要不可欠な行為であったと認められ、
 労災保険法の「通勤」の要件を充たしていると判断された。


  裁判所の判断

 1)義父の介護は業務と無関係か

  原告は義父宅に立ち寄った後は、原告宅に帰宅する目的で事業
 場からの移動を開始しているのであるから、原告の帰宅行為が
 業務と無関係ということはできない。


 2)本件介護の必要性

  義父と同居する義兄又は原告の妻による介護のできない時間
 帯において原告が介護することは、原告の日常生活のために
 必要不可欠な行為であったと認められる。

 労災保険規則8条1号の「日用品の購入その他これに準ずる行為」
 には、このような介護をも含むものと解される。


 3)本件事故が合理的経路に復した後の事故であるか

  原告は、本件事故の当日義父宅を出た後まず、コンビニに行き自己の
 夕食を購入しその後本件交差点において事故にあった。

 事故は、交差点の東側部分を南から北に歩行中の原告に西から東に直進
 してきた原動機付自転車が衝突したというものである。

 原告は本件交差点東側の道路を南から北へわたった地点で事故にあった
 ことが認められるのであって、原告が本来の合理的な通勤経路に復した
 後に本件事故が生じたものと認めて差し支えない。

  そうすると、本件事故は労災保険法7条3項ただし書の「当該逸脱又
 は中断の間」に生じたものではなく、同条1項2号の「通勤」の要件を
 充たすこととなる。

 

企業の人事権と社員の利益

 

 <営業成績が悪いとして解雇>


 アマゾン労組幹部が普通解雇、無効訴え提訴
 弁護士ドットコムニュース 2021/4/28

  アマゾンジャパンで働いていた40代男性が4月27日、普通
 解雇されたのは不当だとして、解雇無効と解雇された後の
 賃金支払いを求め東京地裁に提訴した。


  訴状などによると、男性は営業本部などを経て、一般家電
 を扱う出店者に「アマゾンプライム」の利用を提案する販売
 促進を担当していた。

  2019年2月、上司から「成績が悪い」などと言われ、社内で
 「コーチングプラン」と言われるPIP(業績改善プログラム)
 の開始を告げられた。

 課題が設定され、男性は数値をいずれも達成。しかし、上司
 から「できたとは認めない」などと言われたため、「東京管
 理職ユニオン」のアマゾン支部に加入。7月から団体交渉を
 行ったが、回答は得られなかった。

 

 <人事評価には使用者に広範な裁量が認められる>

  降格になった労働者が賃金差額等の支払いを求めたのに
 対して、請求を棄却した事例もあります。

 人事評価には裁量が大きく働くものであり、社会通念上妥当
 を欠くと認められる証拠がない限り違法とすることはできない
 と判断している。

     (裁判事例1)

 
 <人事評価が合理性を欠く場合等には、違法になる>

  人事評価には、使用者に広範な裁量が認められている。
 しかし、純然たる自由裁量ではなく、評価が合理性を欠く
 とか社会通念上著しく妥当を欠く場合は、違法になること
 がある。

     (裁判事例2)

 

 <配転命令も無効になることがある>

  配転は、職員の生活に相応の影響を及ぼすことがある。
 使用者は権限を無制限で行使できるわけではなく、配転命令
 に業務上の必要性が存在しない場合など特段の事情があり、
 その権限の行使が権利の濫用に該当する場合には、配転命令
 は無効というべきである。

  (最高裁 昭和61年7月14日 判決参照)

     (裁判事例3)

  

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雁田山

 

  裁判事例を引用します

 

 (裁判事例1)

  平成 9年11月25日 大阪高裁 判決

  判断

  人事考課は、労働者の保有する労働能力、実際の業務の
 成績その他の多種の要素を総合判断するもので、その評価
 も一義的に定量判断が可能なわけではないため、裁量が大
 きく働くものである。

  人事考課をするに当たり、評価の前提となった事実について
 誤認があるとか、動機において不当なものがあったとか等に
 より、評価が合理性を欠き、社会通念上著しく妥当を欠くと
 認められない限りこれを違法とすることはできない。

 本件において、証拠によるもこれらの事情が存在したと認める
 ことはできない。

 

 (裁判事例2)
  平成19年2月26日 東京地裁 判決
  概要

  消費者金融業の検査室部長らが不正融資を看過したなどと
 して降格処分や減給処分を受けたのは不当として、処分の無効
 及び未払い賃金の支払等を求めた事案である。


  裁判所の判断

  部長が、支店長の不正貸付け発覚から事情聴取までに4か月
 ほどかかったことを理由に降格及び減給された。

 しかし、事情聴取が部長の職務として当初から予定されていた
 かどうか判然としない

 いかに人事権の行使が使用者の裁量行為であるとはいえ,給与
 の減額を伴う降格を是認し得るような事情はなかったといわざる
 を得ない。

 したがって、原告に対してされた本件降格は無効である。

 

 (裁判事例3)
 平成29年3月21日 東京地裁 判決

 概要

  東京都文京区所在の出版社の従業員が、埼玉県戸田市α
 所在の戸田分室で勤務するように命じられた。

  会社は、度重なる不当労働行為救済命令を受けながら、
 本社社屋から組合員がいなくなるように配転命令をしたもの
 であり、不法な目的に基づいている等と原告が主張し、戸田
 分室に勤務する義務のないことの確認を求めた事案である。


 判断

 *配転命令は裁量権の濫用に当たるか

  配転は職員の生活に相応の影響を及ぼすことがあるから、
 使用者はその権限を無制限で行使できるわけではない。

  事情を総合考慮すると、本件配転命令は業務上の必要性が
 ないといえ、命令は裁量権を濫用したものとして違法、無効
 である。なお、仮に業務上の必要性がないとはいえないとして
 も、被告に不当な目的があると認められるので、いずれにして
 も本件配転命令は違法、無効である。

 

パワーハラスメントで会社の責任


 ☆トヨタ社長が遺族に直接謝罪、
  一転和解 若手社員パワハラ自殺
    毎日新聞 2021/6/7

  トヨタ自動車の男性社員が2017年に自殺したのは、上司
 のパワーハラスメント適応障害を発症したのが原因だった
 として、豊田章男社長がパワハラと自殺との因果関係を認め、
 男性の遺族に直接謝罪していたことが判明した。

 トヨタ側は徹底した再発防止策を誓うとともに、解決金を
 支払うことで遺族と和解した。

 

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 ☆パワーハラスメントの定義

  厚生労働省パワーハラスメントの定義を次のように説明
 しています。 

  職場において行われる

 (1)優越的な関係を背景とした言動であって、

 (2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

 (3)労働者の就業環境が害されるものであり、

 (1)~(3)までの要素を全てみたすもの。


 典型例

 1)身体的な攻撃
   暴行・傷害

 2)精神的な攻撃
   脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言

 3)人間関係からの切り離し
   隔離・仲間外し・無視

 4)過大な要求
   業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの
   強制、仕事の妨害

 5)過小な要求
   業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の
   低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

 6)個の侵害
   私的なことに過度に立ち入ること

 
 ☆パワハラの加害者と会社の責任

  パワーハラスメントを行った社員(加害者)と、その
 使用者は、不法行為等により損害賠償を請求されること
 がある。


 ☆裁判事例1

  会社の上司からパワハラを受け、うつ病になって退職
 を余儀なくされた原告が、加害者と会社に対して不法行
 為と使用者責任に基づく損害賠償を請求し、裁判所は
 これを認めた。


  平成29年12月5日  名古屋地裁 判決

  概要

  被告会社の従業員であった原告が、被告会社において
 上司であった被告Yからパワーハラスメント行為を受け、

 うつ病となり退職を余儀なくされたなどと主張して、被告
 Yに対し不法行為に基づく損害賠償と、被告会社に対し

 使用者責任又は安全配慮義務違反の債務不履行責任に基づ
 く損害賠償として損害金の連帯支払を求める。


  争点

 1)被告Yによるパワハラ行為の有無

 2)被告会社の使用者責任


  裁判所の判断

 1)被告Yによるパワハラ行為の有無

  原告は、平成26年3月頃から手先のしびれと震え、倦怠
 感、記憶の不安定がみられるようになった。

 さらには同年5月以降精神科を受診して同年4月頃に、うつ
 病を発症したと診断され、休職に至ったものである。

 この経緯に照らし合わせても、原告は被告Yの上記言動に
 よってうつ病を発症し休職に至ったものといえる。


 2)被告会社の使用者責任

  被告会社は、被用者の選任、監督について相当の注意をした
 ときでない限り使用者責任を負う(民法715条1項ただし書)。

   被告会社が、本件につき上記の選任、監督について相当の注意
 をしたといえるかについて検討する。

  原告が被告会社に入社した時点において、被告Yには既に
 他の従業員に対する威圧的な言動が時にみられたところであるが、

 そのような被告Yに対する指導等が本件パワハラ行為以前にされ
 た形跡はうかがわれないこと、被告Yの原告に対する本件パワハ
 ラ行為について他の従業員が相談窓口に連絡した形跡もうかが
 われず、抜き打ち調査等でも把握されなかったことなどに照らす
 と、被告会社の措置は奏功しているものではない。

  実際に被告Yの本件パワハラ行為が数箇月にわたって継続して
 いたことからしても、被告会社は被告Yの選任、監督につき相当
 の注意をしたとはいえない。

   そうすると、被告会社は原告に対し被告Yのした本件パワハラ
 行為について使用者責任を負い、被告Yと連帯して損害賠償義務
 を負う。

 
 ☆裁判事例2

  新入社員が上司のパワーハラスメントにより自殺し
 たことにより、この父親が上司(加害者)と会社の
 不法行為責任等を追及した。

 裁判所は、被告(加害者)の発言が人格を否定し、威迫
 するものであり、典型的なパワーハラスメントである
 と認めて損害賠償の支払いを命じた。


  平成26年11月28日 福井地裁 判決

  概要

  新入社員が上司のパワーハラスメントにより自殺したと
 して、原告(亡dの父)が被告bらに対して不法行為責任
 に基づく損害金等の支払を求めた。


  裁判所の判断

 争点1(被告bによる不法行為の有無)

  上記手帳の記載は、被告bの指導に従って被告bから受け
 た指導内容、言われた言葉やこれらを巡っての自問自答が記述
 されたもので、被告b自身も自分が注意したことは手帳に書い
 てノートに写すように指導していたことを認めている。

 また、証拠によると上記の判明しているすべての日付けが被告b
 をチームリーダーとして業務に従事した日である。

 上記手帳の記載によると、dは被告bから次のような言葉又は
 これに類する言葉を投げかけられたことが認められる。

 「学ぶ気持ちはあるのか、いつまで新人気分」、「詐欺と同じ、
 3万円を泥棒したのと同じ」、「毎日同じことを言う身にもなれ」
  、、、

  これらの発言は、仕事上のミスに対する叱責の域を超えてdの
 人格を否定し、威迫するものである。これらの言葉が経験豊かな
 上司から入社後1年にも満たない社員に対してなされたことを考
 えると典型的なパワーハラスメントといわざるを得ず、不法行為
 に当たる。


 争点3(被告会社の責任)

  被告bのdに対する不法行為は、外形上はdの上司としての業務
 上の指導としてなされたものであるから、事業の執行についてなさ
 れた不法行為である。

 本件において、被告会社が被告bに対する監督について相当の注意
 をしていた等の事実を認めるに足りる証拠はないから、被告会社は
 原告に対し民法715条1項の責任を負うこととなる。


 争点4(被告bの不法行為と本件自殺との相当因果関係)

  被告bから人格を否定する言動を執拗に繰り返し受け続けてきた。
 dは高卒の新入社員であり、作業をするに当たっての緊張感や上司
 からの指導を受けた際の圧迫感はとりわけ大きいものがあるから、
 被告bの前記言動から受ける心理的負荷は極めて強度であったと
 いえる。

 このdが受けた心理的負荷の内容や程度に照らせば、被告bの前記
 言動はdに精神障害を発症させるに足りるものであったと認められる。

  そして、dには業務以外の心理的負荷を伴う出来事は確認されて
 いない。

  よって、被告bの不法行為と本件自殺との相当因果関係はこれを
 認めることができる。

 

歩道で高齢者と衝突した中学生に賠償命令

 ☆歩行者にも問われる注意義務

 

  中学生が歩行上の注意義務を怠ったとして、高額の賠償

 金支払命令があった。

  事故は、中学生が急いで歩行する際、対向の高齢女性と

  衝突して転倒させ腰の骨折を負わせたもの。

  この裁判では中学生に故意、過失があったかが争われた。

  中学生側は危険な行為はしていないと主張したが、裁判
 所は安全に配慮して歩く注意義務を怠ったと認め、損害賠
 償を命じた。


 ☆高齢女性に790万円の賠償命令

 高齢女性に徒歩でぶつかった女子中学生
 「賠償金790万円」の理由
 NEWSポストセブン 2021/03/30

  歩道を歩いて人とぶつかった女子中学生に、約790万円
 の賠償命令。そんな判決が3月15日、大分地裁で下された。

  2017年9月、大分市の歩道で登校中の女子中学生と
 ぶつかって転倒した怪我で後遺症が残ったとして、
 同市の80歳代女性が約1150万円の損害賠償を求めていた。

  中学生は前を歩いていた4人の生徒を追い抜こうとした
 際、対向の高齢女性と衝突。両手に野菜を持っていた女性
 は転んで腰の骨を折り、腰が曲がりにくくなるなどの障害
 が残った。

  対向の高齢女性と衝突したが、中学生側は いきなり歩く
 速度を上げたり進路を変える危険な行為はしていない と
 主張した。しかし、歩行者同士が衝突する危険があったと

 して、地裁は 追い抜く際に安全に配慮して歩く注意義務

 を怠った過失がある と判断した。

 

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 ☆交通弱者に対する配慮義務

  事故防止のために、特に交通弱者に配慮するよう求めら
 れており、道路交通法などに次のような記述がある。

 〇視覚障害者が安全に歩行をするためには、周囲が視覚障害
  者の歩行特性を知り、事故を起こさない配慮が必要となる。

 〇車いす使用者の移動上の問題

  車いす使用者が歩道上にある店の立て看板,バス停の停車
  場名を記した看板などに通行を妨げられることがある。

 〇高齢者の移動上の問題

  高齢者は、加齢にともなう筋力やバランス機能、視機能、
  認知機能の低下などにより歩行に支障が出ることがある。

 

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 ☆裁判事例

 1)犬の飼い主が負う注意義務について

  ランニングをしていた男性が、路上で犬を
  避けようとして転倒した事故

  平成30年3月23日 大阪地裁 判決
  裁判所の判断

  動物は予想できない行動をとり、人の身体等に損害を
 及ぼすことがあり得るから、係留する義務を負う。

  犬のリードを放した飼い主の過失は、こうした基本的
 な注意義務に違反したもので過失の程度は重い。

 

 2)交差点で自転車と自転車が衝突した事故

  平成14年2月15日 さいたま地裁 判決
  裁判所の判断

  交差点では速度を調節し、左右の安全を確認して事故
 の発生を未然に防止すべき注意義務があったのに被告は
 これを怠った。

  一方、被害者も、交差点を左折する際に直進する左方
 車の有無、その動静を確認しながら道路左側端に沿って
 左折進行していたとすれば、避けられた事故であり、
 被害者も事故回避の注意が不十分であった。

 

ジョブ型雇用か?

 ☆ジョブ型の働き方

 

  社説 会社の都合優先せぬよう

  毎日新聞 2021/3/1


  「ジョブ型」と呼ばれる雇用の導入を、経団連春闘
 呼びかけている。

 ポストごとに職務や必要な能力を具体的に示し、それに
 見合う人材を雇う欧米型の形態だ。

  ジョブ型では、仕事の内容は雇用契約で定められた職務に
 限定される。働き手が主体的にキャリアを形成し、専門性を

 磨けるメリットがある。

  一方で、ポストが不要になれば、働き手も必要なくなる。
 米国では解雇に直結する。正社員を採るより、業務の必要性
 に応じて有期契約で雇おうと考える企業も増えるだろう。

 、、、経済界はかねて、労働市場の流動化に必要だと
 いう理由で、解雇規制の緩和を求めてきた。

  ジョブ型の普及を突破口に、働き手に不利な雇用ルール
 が導入されないか、注意が必要だ。非正規雇用が広がり、
 日本で格差問題が深刻になったのも、雇用規制が緩和され
 た影響が大きい。

  成果主義とセットで議論されがちな点も気がかりだ。

 そもそもジョブ型の賃金は職務に応じて決まり、成果とは
 連動しない。

 

 ☆ジョブ型雇用とは(コトバンク

  職務、勤務地、労働時間などを明確に定めた雇用契約
 主に欧米の企業で採用されている。企業は高い専門スキルを
 有する人材を確保でき、経済状況によって依頼していた職務
 がなくなった場合にも配置転換を行う必要がない。

 

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 ☆企業の事情と労働者の立場

  従来の日本型雇用では、採用した後に社内で人材を育成すること
 が出来たが、ジョブ型雇用では専門スキルを持っていることを
 求め、既にできあがった人材、即戦力の採用が目的になる。

 職種、勤務地が限定されるので、企業の事情でポストが不要と判断
 され、人員削減を決めて解雇ということになり兼ねない。
  
 解雇された労働者は行き場を失ってしまう。このように簡単に解雇
 されたら、本人はもちろん社会全体に影響するし、不安が増大する。

 

  日本では、こういう事態を防止するために労働者保護の法律を
 整備している。そして、これまでは有効に機能してきた。

 解雇や人事異動など条件変更については、裁判において企業側
 の主張がそのまま認められることはない。合理的な理由がなけれ
 ばならない。


    → (裁判事例を下欄に引用しています)

 

  にもかかわらず、労働規制の改革が重点課題だと主張する
 企業やエコノミストが多い。

  時間によらず、成果に対して賃金を支払う制度に改革する
 こと、それが労働生産性の向上、経済成長に欠かせないという
 論を展開している。

  しかし、人件費抑制を意図するものであり、消費の促進、
 GDPの増進につながらない。国民全体に好ましい影響は少ない
 だろう。

 

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  裁判例から抜粋して引用します。

 

  平成29年3月8日 東京地裁 判決


 (原告の技能及び能率は低いが、解雇を検討すべき
   ほどに重大な程度に至っているとは認め難い)


 概要

   被告との間で期限の定めがない雇用契約を締結していた原告
 が被告から解雇されたが、その理由とされた業績不良や能力
 不足などの解雇事由が存在しないことから解雇権の濫用として
 無効である等として、労働契約に基づいて地位の確認、賃金の
 支払等を求める事案である。


  解雇に係る解雇予告通知書には「貴殿は,業績が低い状態が
 続いており、その間会社は様々な改善機会の提供やその支援を
 試みたにもかかわらず業績の改善がなされず、この状態を放って
 おくことができないと判断した」と記載されている。

  会社の主張には、「原告が製品の周辺機器の在庫管理や納期
 管理を行っていたが、過剰な在庫を発生させるなど管理能力が
 不足しており、業務態度に問題があった」としている。

 

 裁判所の判断


 本件解雇の有効性の存否及び解雇権濫用の該当性の有無

  原告の不適切な対応等については、そのほとんどが認められ、
 技能及び能率が相当程度に低いものであること、時に他人の
 就業に負荷をかけて支障を及ぼすものであったことが認められ
 るが、しかし、

 原告の執務上の対応の不適切さが解雇を検討すべきほどまでに
 重大な程度に至っているとは認め難く、かえって原告については
 今一度はその適性に合った職への配置転換や業務上の措置を講ず
 ることを職位等級であるバンドを引き下げることも含めて検討す
 べきであった。

  このような検討をすることなくされた本件解雇は客観的に合理
 的な理由を欠き、社会通念上相当とはいえないから権利濫用とし
 て無効というべきである。

 

 

  平成25年3月25日 大阪地裁 判決


 (河川水面のごみ収集清掃中に現金15万円を発見し金品
  を私物化したとして懲戒免職処分を受けたが、免職に付
  すべき行為に該当するとは言い難い)


 概要

  原告らは、大阪市環境局河川事務所において現場作業員である。
 11隻の収集船で河川水面のごみ収集を実施し、ごみは陸揚げ後
 焼却処理等を行っている。

  この河川での清掃中に現金15万円を発見し私物化したとして
 懲戒免職処分を受けた。

 

 判断理由

 

  本件処分理由を構成する遺失物横領罪は、被告においてごみ
 と認識して占有管理しておらず、原告らはその占有を侵害した
 ものではないし、拾得した財物の管理を業務として認識してい
 たわけではない。

 従って、公金物品の横領、窃盗等相手が所有又は占有管理して
 いる財産に関わる犯罪行為とは、違法性の点で明らかに質的に
 差異が認められる。

  以上を考慮すれば、原告らの本件非違行為は本件処分方針が
 当然依拠すべき懲戒処分指針上、当然に免職に付すべき行為に
 該当するとは言い難く、処分方針において免職を基本と規定し
 たのは、そもそも重きに過ぎることが否めない。

 

従業員のミス、会社は弁償させるか


 

 ☆会社と従業員との資力の違い


  従業員が会社の車を壊した、弁償しなければ
  ならないか?


  会社の方は損害賠償を請求しようとする、一方、従業員
 は会社に比べて資力が乏しいから、高額の弁償をすると
 生活が苦しくなりかねない。

  また会社は従業員の力によって活動領域を広げ、多くの
 利益を上げているのに対して、いざ従業員の行為によって
 会社に損害が発生したとき、その損害全部を従業員へ負担
 させることは公平ではない。

  こうした理由から、会社が従業員に負担を強いるのは
 制限されている。

 わざとやったかひどいミスというケースを除いて、仕事の
 上で起こした場合、従業員が全部負担させられることは
 あまりない。

 


 ☆債務不履行による損害賠償の請求

 

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  従業員が仕事でミス。損害賠償
  請求できる?

   広島リビング新聞
   回答:弁護士 地引雅志


 Q 従業員が仕事でミスして会社に損害を与えた
  場合、会社は従業員に対して損害賠償を請求で
  きますか。

 

 A 従業員の行為によって会社に損害が発生した
  場合には、その従業員は会社に対して、債務
  不履行や不法行為に基づく損害賠償責任を負う
  可能性があります。

  典型的なケースとしては、従業員が会社のお金
  を横領したり、会社のルールに背いたり、会社
  の備品などを壊したりして会社に損害を生じさ
  せた場合などです。

 

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  過去の裁判例を見ると、従業員に損害を賠償すべきと
 認めることがある。しかし、従業員にどの程度負担させ
 るかについて制限がされている。

 

  裁判例から抜粋して引用します。


  最高裁 昭和51年7月8日 判決 

 

  使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害
 行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償
 責任を負担したことに基づき損害を被った場合には、

 

 使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の
 業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害
 行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の
 程度その他諸般の事情に照らし、

 

 損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められ
 る限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の
 請求をすることができるものと解すべきである。

 

 

  名古屋地裁 昭和62年7月27日(大隈鐵工所事件)

 

   使用者は、労働者が不注意現象に陥った場合においても
 損害が発生しないような事故防止装置を設けるか、それが
 不可能であれば、保険に加入する等して損害分散の方法を
 とるべきである。

 

  従って、労働者の軽過失、単純な過失による損害につい
 ては本来使用者が負担すべきものであり、労働者の故意
 もしくはこれと同視すべき程度の重大な過失について
 のみ、使用者はその損害を労働者に転嫁できるものと解
 すべきである。


  使用者は労働過程上の労働者の過失により損害を受けた
 としても、それはある程度予測できることであり、その
 損害は費用の一部として製品原価に含ませて損害を吸収
 もしくは実質的に回復することは優に可能である。

 

 また損害保険に加入する等して損害の分散を図ることも
 可能であるのに対し、労働者はそのようなすべを全く持た
 ないのである。

 

  (居眠り予見可能性及び眠り込みの回避可能性
   の不存在)

 

  睡眠はいうまでもなく、人間にとって必要不可欠の一種
 の生理現象である。居眠りもまた一定条件が満たされた
 とき、人間誰しもが陥るものである。単に注意して防ぐ
 ことが可能となる性質のものではない。

 

  特に、深夜交替勤務に従事している労働者にとって、
 夜勤中の居眠りの発生を一般的には予見できたとしても、
 具体的に居眠りの発生を予見し、これを防止することは
 生理的にみて不可能である。