願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

ゲームなどの利用規約に違法性がある

 

 ☆オンラインなどの利用規約に同意すると

  利用規約に同意しなければ、次に進めない。しかし
 内容は長文で、しかも専門用語が多用されて難解。

 注意して読むこともなく、つい「同意」をクリックす
 ることになるが、利用規約に同意したがために思わぬ
 損害を被ることがある。

 「フェイスブック」の利用者から個人情報が流出した
 という問題が起こっている。

  利用者は、どのサイトを閲覧すればどういう個人情
 報を提供することになるのか注意する必要がある。

  サービス提供者は、利用者を保護するために具体的
 な措置をとるよう迫られている。違反行為を監督し、
 必要な対策をとるべき責任がある。

  また、分かりやすい規約づくりに取り組むこと。簡
 潔に要約するなど誰でも分かるよう平易にすることが
 求められる。


    フェイスブックのデータ不正共有
    疑惑「8700万人に影響」
    BBCニュース 2018年04月5日

  フェイスブックは4日、最大でフェイスブック利用
 者8700万分のデータが選挙コンサルティング会社の
 英ケンブリッジ・アナリティカにより不適切に共有
 されただろうと発表した。

  フェイスブックマーク・ザッカーバーグ最高経営
 責任者(CEO)は「明らかにもっと対策が必要だった。
 これから進めていく」と述べた。

 記者会見の中でザッカーバーグ氏は、フェイスブック
 は利用者に道具を提供しているのであって、使い方を
 決める主な責任は利用者自身にあると、以前は考えて
 いたと話した。

 しかし同氏は、そのような狭い考え方は「振り返って
 みると間違いだった」と付け加えた。

  「私たちはツールを構築しているだけではなく、人
 がそのツールをどう使い、その結果どうなるかついて
 も、全面的な責任を取る必要がある」


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 ☆利用規約の免責規定   利用者に損害が生じた場合でも会社は責任を負わな  いという規定が問題になっている。  規約の免責規定が法律に背いている場合には、当然  効力がない。  消費者契約法違反、民法公序良俗違反などを理由に  削除を求める裁判がある。       モバゲー利用規約「違法」       弁護士らDeNAを提訴        産経新聞 2018.7.9   IT大手ディー・エヌ・エー(DeNA)運営の  ゲームサイト「Mobage」の利用規約は違法だ  として、埼玉県内の弁護士らで構成するNPO法人  「埼玉消費者被害をなくす会」が9日、同社に規約  の使用差し止めを求める訴訟をさいたま地裁に起こ  した。   訴状によると、利用規約には、DeNA側に故意  や過失があった場合の説明をせずに「社は一切責任  を負わない」「一切損害を賠償しない」と定めた条  項があり、消費者契約法に違反するとしている。  2016年以降、DeNAに過失がある場合には同  社が責任を負うと分かるように個別の条項を変更す  るよう申し入れていたが、DeNAは同社に故意や  過失があった場合の賠償に関しては別の条項で定め  ているとして受け入れなかった。   ☆ツアー参加の規約に免責条項     ツアーの「事故は自己責任」削除     免責条項訴訟で和解、神戸地裁        共同通信 2018/8/17   ツアー参加者に「事故は全て自己責任」との免責  条項を含む同意書への署名を強要するのは消費者契  約法に違反するとして、適格消費者団体「ひょうご  消費者ネット」が、アウトドア用品大手「モンベル」  の関連会社に条項使用差し止めを求めた訴訟は17日  までに、条項を削除することで神戸地裁で和解した。   訴状によると、被告は登山などのツアーを企画す  る「ベルカディア」。同意書では、生命や身体など  に被害が生じた場合に「責任追及は放棄し、全て自  己責任とする」と規定。署名しなければ参加できな  いと説明していた。  ☆消費者契約法  (事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)  第8条  1.次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。  一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を   賠償する責任の全部を免除する条項  二 事業者の債務不履行(故意又は重大な過失による   ものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償   する責任の一部を免除する条項

 

労災認定請求を認められない労働者がある?

 ☆非常勤職員の労災請求が認められない

    公務災害 申請に「格差」
    非常勤職員 認められないケースも
      東京新聞 2018年8月6日

  自治体で働く非常勤職員が、常勤ならできる公務
 災害の認定を申請できないケースがある。福岡地裁
 では、北九州市の非常勤職員として働いていた女性
 が自殺した後、パワハラなど不適切な労務管理が
 原因だと考える両親が申請を認められなかったこと
 の不当性を問い訴訟中だ。

 非常勤職員などの労働問題に取り組むNPOの調査
 によると、自治体の対応はまちまちで、国に法改正
 を求める声が上がる。


  両親が一六年八月、労災認定について市に尋ねる
 と、市は「申請は認められていない」と回答。市に
 よると、非常勤の労災について本人や家族からの
 認定請求の規定を条例や施行規則で定めておらず、
 事実上、職場が認めた場合以外は申請の道が閉ざさ
 れる。

  佃弁護士は「非常勤であれば、公務災害に遭って
 も労災隠しさえできてしまう制度で、他自治体でも
 起こり得る」と批判する。


    非常勤の労災請求、認定の仕組みを
    総務省が全国に要請
       朝日新聞 2018/8/31

  自治体で働く職員が仕事上の原因で病気やけがを
 した際の公務災害(労災)認定について、総務省は、
 非常勤職員も認定を請求できる仕組みを整えるよう
 全国の自治体に求めた。

 一部の自治体では非常勤職員に認定請求の権利を認
 めない運用をしており、常勤職員との格差が問題と
 なっていた。


  うつ病になり、2015年に亡くなった北九州市
 の元非常勤職員の事例でも、市が遺族の労災請求を
 拒んでいた。

 一方、常勤職員は、第三者機関の地方公務員災害補
 償基金に労災請求の手続きをとるよう法律で定めら
 れている。


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 ☆制度の不備   この件は格差問題というよりも制度の不備と  いう認識です。  北九州市の元非常勤職員の場合、本人や家族から  の申請を受け付けず、市だけの判断で上司らへの  聞き取りを行い「パワハラはなかった」という。   これでは市の都合により運用する危険性があり、  上の佃弁護士が言われる労災隠しを招きやすい。   労災保険は、本来労働者の負傷、死亡等に対し  て迅速かつ公正な保護をするための制度であり、  労働者であれば全てが対象となる。  対象は正社員かどうか、仕事の内容などを問わな  い。アルバイト、日雇、外国人労働者でも適用さ  れる。   <労災認定請求の手順>   労働者災害補償法では、労災の判断は労働基準署長が  判断することになっている。  事業主であれば、マイナスになるような判断は避けたい  から、労災を認めたくない。   従って、この認定には不服申立てが制度化されている。  決定に不服のある場合は、各都道府県労働局に置かれる  労働者災害補償保険審査官に審査請求ができる。  <地方公務員の災害補償>   地方公務員については、別に地方公務員災害補償  法に規定されている。  非常勤職員についても労災補償法の補償制度と同様の  保護規定を定めるよう求めており、認定請求から認定  結果の通知までの手続制度を定めなければならない。  その際、労災隠しが起こらないよう第三者機関に不服  申立てができるようでなければ公正な保護制度として  の意味がない。   基本が、全ての労働者に対して迅速、公正な保護を  するための制度であるから、特定部門の職員について  認定制度がないことは考えられない。

 

交通事故加害者の責任と被害者保護

 ☆米軍トラック運転の死亡事故

      飲酒運転・死亡事故の米兵に
      懲役4年判決 那覇地裁
       沖縄タイムス 2018/04/11

  昨年11月那覇市内で酒気を帯びて米軍のトラック
 を運転し、死亡事故を起こしたとして、自動車運転
 処罰法違反等の罪に問われた米海兵隊所属の上等兵
 の判決公判で、柴田寿宏裁判長は懲役4年を言い渡
 した。

  判決などによると、被告は酒気を帯びた状態で
 米軍トラックを運転し、那覇市の交差点の赤信号を
 見過ごしたまま、同市の男性会社員が運転する軽
 トラックと衝突。男性は胸部圧迫などで死亡した。



 ☆沖縄米海兵隊は「個人の責任」と説明

  この事故について、県議会の代表者が抗議した
 のに対して、米海兵隊側は、個人が起こしたこと
 で組織として責任を負うものではないと説明した。

 公用車の鍵をしっかり管理しているが、彼は勝手
 に持ち出したという。
     (沖縄タイムス 2017年12月5日)

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 ☆交通事故による被害者を保護   損害補償についての日米の協定等は別にして、一般  の事故の場合、被害者、加害者とその使用者の関係は  どう扱われるのか。   会社の従業員が交通事故などを起こして他人に損害  を与えた場合、まず加害者本人が賠償しなければなら  ない。  しかし、損害の補償を考えると被害者に十分なことが  できるか疑わしい。そこで、被害者保護のための法整  備がされている。   一つは、自動車損害賠償保障法の「運行供用者責任」  という規定で、もう一つが民法使用者責任である。   従業員は資力が十分でないことを考慮して、責任の  負担者を広げ、被害者に有利な規定になっている。  ☆運行供用者責任   会社が所有する自動車を従業員が私用で運転し、  交通事故を起こしたという場合、加害の従業員だけ  でなく運行供用者もその責任を負う。  無断で社用車を利用していた場合でも、運行供用者が  賠償責任を問われる。  この場合に被害者の立証責任は軽減され、損害賠償  請求が容易になっている。   運行供用者とは、自動車の運行を支配し利益を得て  いる者と定義される。  この運行供用者責任は、自動車事故による人身損害に  限られる。  ☆使用者責任   使用者は、従業員が第三者に加えた損害について、  その賠償責任を負う。  加害者である従業員は資力が十分でないことが多い。  そのため使用者にも責任を負わせ、被害者の保護を  図っている。   使用者は従業員を使用して利益を得ている。損失が  あっても、負担をすべきであるという考えに基づいて  いる。   「ある事業のために他人を使用する者は、被用者が  その事業の執行について第三者に加えた損害を賠償す  る責任を負う」と、使用者責任を規定している。  問題となるのは、「事業の執行について」どう判断す  るかであり争いが多い。   営業マンが詐欺を働いて会社の責任を問われた場合  に、本来業務と関係がない、個人の犯行であると主張  することがある。  しかし、この「事業の執行について」は、その社員が  行った行為が外形的に職務の範囲内に属すると認めら  れるかどうかであり、真の担当業務の如何を問わない。  ☆交通事故の損害について   使用者責任が認められた事例   会社の従業員が私用のために会社の自動車を運転し  た場合であっても、民法第七一五条の「事業ノ執行」  につきなされたものと認めるのが相当である。   昭和37年11月8日 最高裁 判決  理由   Dが会社の業務用自動車を運転して進行中、注意  義務を怠って本件事故を起すに至った。  Dは商品の外交販売に従事し、仕事上の必要に応じ  随時その自動車の使用を許されていた。   事故を起した自動車はDの専用ではなく、使用し  たのは勤務時間後のことであり、使用目的も恣意的  なものであった。  であっても、外形的にみればDのこの行為は、会社の  運転手としての職務行為の範囲に属するものとして、  会社の事業の執行と認めることの妨げとなるものでは  ない。

 

セクハラ告発に名誉棄損で対抗された

 ☆准教授が女子学生にセクハラ

      セクハラ准教授を懲戒解雇
      筑波大、女子学生の体触る
       共同通信 2018/3/1

  筑波大は1日、指導する女子学生の体を触るなど
 のセクハラ行為をしたとして、60代の男性准教授を
 懲戒解雇したと発表した。

  大学によると、准教授は昨年3月、研究の一環で
 行った学外調査の後、帰りが遅くなったとして、
 女子学生と准教授の別荘に宿泊。2人は当初は別々
 の部屋で寝ていたが、准教授が女子学生の部屋に
 侵入し、体を触るなどしたという。

  女子学生が大学に相談し発覚。大学側の聞き取り
 調査に対し、准教授は事実関係を認めている。

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 ☆取引先などからセクハラ

  同じ職場の上司や同僚からセクハラを受けるという
 ケースが多いが、取引先など他社からの被害では扱い
 に困る人もいる。

 場合によっては関係が悪化し、会社の経営に影響しな
 いかと恐れて告発を躊躇し兼ねない。

  しかし、労働者を保護することに変わりないので、
 対応は企業が責任を持ってする必要がある。

 (1)従業員から相談があれば、事実調査を行って適
  切な措置を採ることになる。調査結果を相手方に
  報告し、再発防止措置などを求めなければ、職場の
  安全配慮義務違反を問われる。

 (2)相手方企業は、加害者とされる人物に確認して、
  事実であれば適正な処分、再発防止措置を実施しな
  ければならない。

  加害者本人にとどまらず、企業に使用者責任を問わ
  れることがある。



 ☆告発に対し名誉毀損の主張

 *名誉毀損となるための要件

  セクハラなどの告発をすると、加害者とされる側が
 事実無根の主張をして対抗するケースが少なくない。
 ただ、この対抗策はなかなか通り難い。


  名誉毀損行為については、真実であることの証明が
 あったとき等の要件を充たす場合には罰しないと規定
 されている。(刑法230条の2)

  不法行為による損害賠償も、次の要件をすべて充足
 すれば退けられる。

 1)公共の利害に関する事実についてのもの

 2)目的が専ら公益を図ることにあった場合

 3)真実であることの証明があったとき


  この要件のうち、セクハラの事実が真実である又は
 真実と信じるに相当の理由があると認められれば、
 公共性、公益目的に該当するというケースがほとんど
 である。

 関係機関への通報や情報伝達も、被害を申告し処分を
 要請する必要上正当な目的に基づていると認められれ
 ば、名誉侵害に当たらないとされる。



 ☆セクハラ告発に名誉毀損で争った事例

 (大学教授の女性研究補助員に対するわいせつ行為
  を雑誌に情報提供したことが名誉毀損にあたると
  提訴した)


  告発行為は、適切な被害回復を得られないために、
 自分が真実と考えることを主張して加害者を社会的に
 告発しようとした行為にほかならず、その主張する
 事実が真実である以上、いずれも正当な権利行使とし
 て当然に許される適法な行為である。

  送付行為についても、職場の学長、事務局長などの
 限定された者に対して、処分を求めて事件を告発した
 ものであって、その内容においても正当な権利行使の
 範囲内に止まる行為であって、違法とまで言えない。

  雑誌に情報提供した行為は、加害行為及び事件後の
 加害者の対応についての情報を提供したものであり、
 しかも、真実の情報が提供されている。

 記事は、取材から得られた情報を総合して作成された
 ものであり、記事の内容構成は「B誌」の編集部の
 権限と責任において行われた。

 裁判記録やテープをAに渡したことは、違法な行為と
 は言えないし、この行為と記事が作成され被控訴人の
 名誉が毀損されたこととの相当因果関係を肯定するに
 は至らないというべきである。

  (平成10年12月10日 仙台高裁秋田支部 判決)

 

文化財の価値を守る、文化環境を伝承する

 

 ☆邸宅を宿泊施設に、古墳に案内施設も

  文化財で地域おこし 保護から活用へ法改正
       東京新聞 2017年8月12日

  歴史的な建物や史跡などを生かした地域振興が進
 めやすくなるよう、文化庁は十一日、文化財保護法
 を大幅に改正する方針を決めた。 市町村が地域の

 文化財の保護・活用に関する基本計画を定め、国の
 認定を受けることを条件に、国指定文化財の改修な
 ど現状変更を許可する権限を文化庁長官から市町村
 長に移譲。補助金や税制優遇で観光やにぎわいづく
 りのための活用を後押しする。

  旧家の邸宅など個人が所有する文化財の場合、維
 持するだけでも負担が大きいため、地域ぐるみで保
 護と活用に取り組む仕組みをつくる。

 権限移譲により、邸宅を結婚式場や宿泊施設として
 使う目的で改修したり、城跡や古墳に案内施設を設
 けたりといった現状変更が市町村の判断でできるよ
 うになる。収益を維持管理に充ててもらう狙いもある。



 ☆文化財を単なる観光資源と見なす風潮


   文化財保護法/活用は手厚く守ってこそ
      西日本新聞 2018/4/29

  気掛かりなのは、政府の姿勢があまりにも「活用
 重視」に傾いていることだ。 法改正の背景には、
 訪日外国人客を対象とした観光資源として、文化財
 の活用を進める現政権の「観光立国」という戦略が
 ある。

 地方創生担当相が昨年、「一番のがんは文化学芸員。
 観光マインドが全くない」などと暴言を吐いたこと
 は記憶に新しい。

 文化財を単なる観光資源と見なす風潮が、法改正の
 底流にあるとすれば、看過できない。

 自治体が文化財の保護と保全に万全を期すためには、
 専門職の養成と配置が欠かせない。

  その余裕がない小規模な町村には、財政と人材の
 両面で支援する必要がある。こうした手当ては大丈
 夫なのか。

 集客が見込める建造物などが大切にされ、古文書な
 ど地味な文化財が軽視される傾向が生じないか。
 また、首長が活用にはやり、保護がおざなりになる
 懸念も拭えない。地方の文化財保護審議会などで厳
 しくチェックする必要があるだろう。

  地域の文化財を未来へ継承することは地域の責務
 だ。手厚く保護してこその活用である。 

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 ☆文化財が軽視される恐れ   上の主張では、まず「文化財を単なる観光資源と見  なす風潮が、法改正の底流にあるとすれば、看過でき  ない」とある。  このことは、「観光客が増えて、文化資産や地域の  環境が損なわれる恐れ」として、古くから指摘されて  きているという。  「観光による、いわば『文化の商品化』で、文化の本  質的な価値が失われかねない。文化保護と観光開発は  往々にして相反する。」(京都新聞 2017年04月23日)  「持続可能な文化観光」のために、文化財保護に必要  な専門職員と行政能力、予算が欠かせない。  小規模組織の自治体では保存のための余裕がない。   「地方創生とは稼ぐこと」と要求する。国に与えら  れた一極集中是正の課題に注力することなく、逆に地  方の努力を求めるものである。  権限移譲すれば収益が増え、地域振興にも活用できる  という狙いには無理がある。  結局、文化財が軽視されるのではないかということが  懸念されている。  ☆文化財保護には、財政と人材面での支援が必要     文化財の活用 万全の保存あってこそ        朝日新聞 2017/12/19   「観光立国」のためならば、多少の疑問や危うさ  には目をつぶる、ということか。  文化庁の審議会が、文化財に関する様々な規制を緩  め、地域おこしなどにも活用できるよう促す答申を  出した。  保存に重点をおいてきた従来の方針からの転換だ。  研究者団体などの慎重意見もあるなか、約半年の議  論でスピード決着させた。   この国の文化財の多くはもろく、すぐに劣化する。  活用に傾くあまり、保存がなおざりになれば、取り  返しがつかない事態を招きかねない。   急ぐべきは、両者のバランスを判断する力をもつ  専門家の育成と配置、そしてその能力を発揮できる  環境づくりである。  思い出すのは「一番のがんは学芸員。観光マインド  が全くない。この連中を一掃しないと」という、4  月の山本幸三・前地方創生相の暴言だ。 学芸員の  仕事に対する理解を欠き、先人が長年守ってきた遺  産を、単なる金もうけの道具としかとらえない考え  が透けて見えた。   最近は文化庁も「文化でかせぐ」をアピールする。  だが、目先の利益とは別の価値を大切にし、その意  義を説くことこそ、本来の役割ではないか。  国や都道府県は市町村をどうチェックし支えるか。  いかなる予算措置が必要か。文化財行政が首長の傘  下に移ったとき、観光・開発優先に走ったり専門職  員の声が届きにくくなったりする危険をどうやって  防ぐか。

 

中学時代のいじめ被害で訴訟

 

 ☆中学の同級生からいじめ

     28歳、中学時代のいじめで提訴
     「働けない」と卒業生の男性
       共同通信 2018/3/26

  兵庫県福崎町の町立中に在籍した3年間にわたり、
 同級生から暴行などのいじめを受けたのに、学校が
 十分に対応せず、心的外傷後ストレス障害PTSD)

 を発症し働けないとして、卒業生の男性(28)と母
 親が26日、同級生だった男性と両親、町に計約2億
 円の損害賠償を求め、神戸地裁姫路支部に提訴した。

  訴状によると、原告男性は2002年に入学。3年間
 を通じて元同級生から殴ったり蹴ったりされる暴行
 などの被害を受け、別々の高校に進学した後も嫌が

 らせが続いて高校の長期間休学や大学の中退を強い
 られたと主張。14年にPTSDと診断され、仕事に就く
 ことができないとしている。


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 ☆いじめ被害で働けない   中学時代のいじめが後々にも続き、PTSDを発症して  働けなくなったという訴えですが、中学卒業から10年  以上経過している。   学校は全力で対応した、提訴に驚いていると説明し  ている。  他方、原告側は「学校は加害者を擁護した。原告を隔  離して、組織ぐるみの迫害があった」と主張し、診断  を受け弁護士に相談して提訴に踏み切った、という。   不法行為を受けた被害者は、3年間という消滅時効の  期間内に損害賠償の請求をしなければならない。  今回の賠償請求は認められるのか、特に消滅時効の起  算時点をいつと判断されるか。   PTSDと診断されて弁護士に相談し、提訴したという  ことが消滅時効の進行においてどう解釈されるか。  被害者が損害の発生を現実に認識した時がいつになる  かで結論が分かれる。  ☆賠償請求権の消滅時効   不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はそ  の法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間  行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為  の時から二十年を経過したときも、同様とする。  (民法724条)   「損害及び加害者を知った時から三年間行使しない  ときは、時効によって消滅する」という規定について、  具体的に次のように説明されている。 *損害を知った時    最高裁 平成14年1月29日 判決   民法724条にいう「被害者が損害を知った時」とは、   被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解   すべきである。   不法行為の被害者は、損害の発生を現実に認識して   いない場合がある。損害の発生をその発生時におい   て現実に認識していないことはしばしば起こり得る   ことである。   民法724条の短期消滅時効の趣旨は、被害者が不法   行為による損害の発生及び加害者を現実に認識しな   がら3年間も放置していた場合に加害者の法的地位   の安定を図ろうとしているものにすぎず、それ以上   に加害者を保護しようという趣旨ではない。 *加害者を知った時    最高裁 昭和48年11月16日 判決   民法七二四条にいう「加害者ヲ知リタル時」とは、   同条で時効の起算点に関する特則を設けた趣旨に鑑   みれば、加害者に対する賠償請求が事実上可能な   状況のもとに、その可能な程度にこれを知った時を   意味するものと解するのが相当である。  ☆後遺症の場合の原則は   「加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能  な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を  知った」のはいつなのか。   (後遺障害の症状固定診断の時       から消滅時効が進行するという判決)    最高裁 平成16年12月24日 判決   被上告人は、本件後遺障害につき平成9年5月22日   に症状固定という診断を受け、これに基づき後遺   障害等級の事前認定を申請したというのであるから、   被上告人は遅くとも上記症状固定の診断を受けた   時には、本件後遺障害の存在を現実に認識し、加害   者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況   の下に、それが可能な程度に損害の発生を知った   ものというべきである。   症状固定の診断の後、申請した自動車保険料率算定   会による等級認定は、保険金額を算定することを   目的とする損害の査定にすぎない。   被害者の加害者に対する損害賠償請求権の行使を何   ら制約するものではないから、消滅時効の進行に   影響しない。  *この判決によると、「損害を知った時」とは損害の   程度や金額まで知る必要はない。後遺障害の等級   認定手続をしても消滅時効の進行を遅らすことに   ならない。  ☆特別の事情があるとき   しかし、特別の事情があるときは時効による消滅の  効果に影響する。  予想できなかった後遺症が発症した場合は、示談成立  後にも賠償請求ができるとする判決がある。  (示談成立後でも、当時予想できなかった   後遺障害が発症した場合、損害賠償を請求できる)    昭和43年3月15日 最高裁 判決   交通事故による全損害を正確に把握し難い状況の   もとにおいて、早急に小額の賠償金をもって示談   がされた場合において、示談によって被害者が   放棄した損害賠償請求は、示談当時予想していた   損害についてのみと解すべきであって、その当時   予想できなかった後遺症等については、被害者は   後日その損害の賠償を請求することができる。  ☆違法の可能性があると認識できた時から   消滅時効の起算時点をいつにするかを争点とする  裁判で、違法の可能性があることを認識できた時  (=弁護士から指摘された時)を起算点とすべきと  いう最近の判決がある。   商品先物取引により損失を被ったことを知ったと  いうことだけでは、損害賠償請求が可能な程度に  損害、加害者を知ったとはいえない、とされた。  (損害及び加害者を知った時について)    名古屋高裁 平成25年2月27日 判決   取引に関して違法なものである可能性があること   を認識できた時をもって、事実上可能な程度に   損害及び加害者を知ったものというべきである。   控訴人は、弁護士から本件取引による損失につい   て、違法な商品先物取引による被害である可能性   がある旨指摘されたことによって、不法行為によ   る損害賠償請求権についての損害及び加害者を知   ったものである。   従って、民法724条前段による3年の消滅時効期間   は、(弁護士から指摘された)平成23年3月4日か   ら進行するというべきである。          (取引終了からは9年経過)

 

正規、非正規労働者の格差訴訟

 ☆不合理な格差かどうか

   正社員との待遇格差で最高裁が初の判断へ
       NHK 2018年3月7日

  正社員と契約社員などとの待遇の違いが労働契約
 法で禁止されている不合理な格差にあたるかどうか
 が争われた裁判で、最高裁判所は、来月双方の主張
 を聞く弁論を開くことを決めました。

 最高裁は、どのような待遇の違いが不合理な格差に
 あたるのか、初めての判断を示すものと見られます。

  労働契約法の20条では、有期雇用の契約社員など
 と正社員との間で待遇に不合理な格差を設けること
 が禁じられています。

 この規定をめぐって、横浜市の運送会社と浜松市の
 物流会社の嘱託社員や契約社員が同一の待遇を求め
 てそれぞれ起こした2件の裁判で、最高裁判所は、
 来月20日と23日に双方の主張を聞く弁論を開くこと
 を決めました。

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 ☆同じ仕事で待遇が違う

  同じ仕事をしているのに正社員と非正規で賃金など
 に格差がある。この格差は不当だと各地で訴えが出て
 いる。

  過去の裁判では、職種が違う、雇用形態が異なる場
 合に客観的に格差を判断することは難しいとされた例
 がある。

  「賃金が労働の対価であるといっても、年齢、学歴、
  勤続年数、企業貢献度、勤労意欲を期待する企業側
  の思惑などが考慮され、純粋に労働の価値のみに
  よって決定されるものではない。

  雇用形態が異なるから賃金制度も異なるが、これを
  必ずしも不合理ということはできない。」

   (大阪地裁 平成14年5月22日 判決)


  一方、様々な要因に基づく待遇の差に使用者側の
 裁量も認めるが、その格差が許容範囲を越えれば、
 公序良俗違反となる。


  「業務内容、勤務時間及び日数等が正社員と同様と
  認められる臨時社員の賃金が、勤務年数の同じ正社
  員の8割以下という顕著な賃金格差を維持拡大しつ
  つ長期間の雇用を継続した。

  均等待遇の理念に違反する格差であり、会社が賃金
  格差を正当化する事情を何ら主張立証していない。」

  (違法の判決:長野地裁上田支部 平成8年3月15日)



 ☆労働契約法の規定

  過去の裁判で格差を容認する判決、違法とする判決
 に分かれていたが、平成25年に法改正があり労働契約
 法に次のような規定が盛り込まれた。

 *労働契約法20条

  有期契約者の労働条件が、期間の定めがあることに
 より、期間の定めのない契約者の労働条件と相違する
 場合には、職務の内容などの事情を考慮して、不合理
 と認められるものであってはならない。


  最近の格差訴訟で通勤手当、年末年始勤務手当、住
 居手当に差があるのは不合理で違法だとする判決が相
 次いでいる。

  労働条件の格差が、相当な事情に基づいているので
 あれば、使用者側は合理的に説明しなければならない。

  説明にならないと分かる場合と容易に判断できない
 ことがある。仕事内容の違いが賃金差をどの程度まで
 許すのか、その線引きは難しい。



 <最高裁の判断は>

  裁判で格差を容認した判決の理由には、正社員に対
 する将来の役割期待を上げるものがある。

  *将来的に枢要な職務及び責任を担うことが期待さ
   れる正社員

  *優秀な人材の獲得や定着を図る

  *長期的な勤務に対する動機付けを行う


  しかし、経験や能力、成果などに違いがないのに
 将来の期待を込めて格差を正当化することはできなく
 なっている。

  過去に正社員の8割以下となれば許容範囲を超える
 とした判決もあるが、これからの裁判で不合理と決め
 る判断基準を最高裁が有効に示せるか問われている。