願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

消費喚起など、政府と経済界の構想とは

 <プレミアムフライデー>

     政府・経済界に「プレミアムフライ
     デー」構想 国内の個人消費喚起へ
     経団連、10月にも実行計画策定
        産経新聞 2016.8.13

    政府や経済界で、個人消費を喚起するため、
   月末の金曜は午後3時に仕事を終え、夕方を
   買い物や旅行などに充てる「プレミアムフライ
   デー」構想が検討課題に浮上していることが

   12日、分かった。経団連は政府に先行して、
   10月にもプレミアムフライデーの実行計画
   を策定する方針だ。

    政府は平成32年をめどに名目国内総生産
   (GDP)の600兆円実現を掲げている。

   経団連は、実現には現在300兆円にとど
   まっている個人消費を360兆円に引き上げ
   ることが欠かせないとみている。

    プレミアムフライデーは、早い時間の終業を
   受けて夕方に流通業界や旅行業界、外食産業
   などが連動してイベントを開催するという内容。

   流通業界には商品の価格を引き下げる「セール」
   への抵抗があることを踏まえ、イベントにする
   ことで消費喚起を前面に押し出していく狙いが
   ある。



 <柔軟な働き方>

        副業・兼業解禁へ研究会
        働き方改革推進 政府
        時事通信 2016/10/19

    政府は19日、働き方改革の一環として柔軟
   な働き方を広げるため、「副業・兼業」の解禁
   に関する研究会を新設する方針を固めた。雇用

   関係によらない「フリーランス」の働き方を
   議論する研究会とともに、11月中に経済産業
   省内に設置する方向で調整する。

    副業・兼業は、多くの企業が就業規則などで
   禁止しているが、最近では容認する動きも出て
   きた。2014年の中小企業庁の調査では、
   3.8%の企業が容認していた。

    政府が副業・兼業の解禁を検討するのは、企
   業が抱える有能な人材を広く活用するのが狙い。

   複数のキャリアを積むことで従業員の成長につ
   ながるとの期待もある。一方、労務管理が困難
   になったり、長時間労働を誘発したりする懸念
   も指摘されている。

    フリーランス雇用契約を結ばず、仲介業者
   などを通じて仕事を受注し、収入を得る働き方。
   専門性を生かせる好きな仕事を選びやすいとさ
   れるが、収入が不安定になる問題もある。


  * * * * * * * * * * *


 <イベント開催>

  個人消費が長く低迷しているのは賃金、勤労収入の
 減少が主な原因であるというのが一般的である。

 更に、社会保険料など負担の増大、不安定な雇用、社会
 保障の削減など将来不安の影響が指摘されている。

  商品券の発行やイベント開催といった一時しのぎの策
 が効果あるとは見られていない。



 <人材を広く活用>

 「コスト削減のため、企業が非正規労働者を増やした
  結果、低所得世帯の割合が上昇した。

  賃金を引き上げて個人消費の拡大を促し、経済を活性
  化させるべきだ」

 というのは、数年前に労働経済白書が指摘したところ
 です。

  また、人口減少問題については「若者の仕事の不安定
  化・非正規化は、結婚しない人を必然的に増やすこと
  になった。  結果として出生率・出生数の低下傾向に
  も歯止めがかかっていない。」

 という内容の提言を経団連が発表している。

  ところが、企業は雇用形態の柔軟化、残業代の引き下
 げ、解雇規制の緩和を求める。

 そうすると、労働者の収入は減少し生活が不安定になる。

  優先課題とすべきは、総賃金の下落傾向を止め、労働
 者の安定的な雇用を実現して将来展望を明るくすること
 だといわれている。

  今回の「働き方改革」として柔軟な働き方を広げると
 いうのは、内容としては企業が非正規労働者を広げ、
 人材を流動化していくことを促しているのではないか。

 「人材を広く活用する、勤め先に縛られない自由な発想
 で従業員が成長することを期待する」 というよりも、
 労働規制の緩和を図っていると見られている。

  労働者の処遇改善や従業員の成長よりも、狙いは企業
 から雇用に関する束縛を開放して経済の活性化につなげ
 ることではないか。



 <総人件費を増やす>

    働き方論議始動 総人件費増やす努力を
       北海道新聞 2016/10/02 

    政府の「働き方改革実現会議」の論議が始
   まった。

    社会の活力を高めるには、古い労働慣行を
   見直し、性別、年齢、雇用形態にかかわらず、
   働きやすい環境に変えることが必要だ。

    今回の会議では、長時間労働の抑制と同一
   労働同一賃金の実現が大きなテーマとなる。

    大企業の意識改革も欠かせない。近年、抑制
   傾向にある総人件費を増やすことに努め、多様
   な働き方を支えていってほしい。

    一方、国会では、時間ではなく成果で賃金を
   決める労働基準法改正案が継続審議中だ。野党

   が「残業代ゼロ法案」と批判するように、残業
   と一緒に人件費を削る方向に進むのならば問題
   である。

    働き方改革を、企業の人件費削減の道具にし
   てはならない。大企業は1990年代後半の

   金融危機などの経験から、企業の蓄えに当たる
   内部留保を積み増し、人件費を抑制する傾向を
   強めた。

    蓄えを優先し、人材への投資を軽んじた代償
   は大きい。その象徴が外資に買収されたシャー
   プや、粉飾決算問題を起こした東芝など、製造
   業の競争力低下だ。

    労働者への公正な報酬の配分こそが、企業の
   生産性を高め、持続的成長をもたらすはずで
   ある。

 

労働環境を整備する、企業の責任

 <過労死白書>

     過労死白書 悲劇の防止にどうつなぐ
        高知新聞 2016.10.10

    問われているのは、新たな犠牲を出さないた
   めの具体策だろう。政府は長時間労働の抑制に
   向けた「働き方改革」の議論を始めたが、導き
   出した結論で、国民に本気度を測られることに
   なる。

    悲劇が表面化するたびに長時間労働の弊害が
   叫ばれ、労働者を使い捨てにする「ブラック
   企業」が批判されてもなお、過酷な労働環境に
   変化は乏しい。

    政府の働き方改革には実効性が求められる。
   長時間労働の是正に向け、労働基準法が定めた
   残業に関する労使協定(三六協定)の見直しが
   焦点となろう。

   現行は事実上、労使が合意すれば残業が無制限
   となるため、上限の設定などを検討するという。


    一方で安倍政権は、長時間労働を助長しかね
   ない労基法改正案も国会に提出している。

    高収入の専門職を労働時間規制から外す新制
   度や、事前に定めた以上の残業代が支払われな
   い裁量労働制の対象を拡大させる内容だ。

   長時間労働抑制と矛盾するとの指摘にも、政府
   は見直す気配をみせない。

    財界の要望に沿った経済政策を進めてきた安
   倍政権が、企業側の反発も予想される労働者の
   待遇改善にどこまで踏み込めるか。これまでの
   方向性とちぐはぐさが否めないだけに不透明感
   が漂う。

    労働環境の改善は労働者の命を守り、育児や
   介護との両立にも通じる重要なテーマだ。
   パフォーマンスで終わらせることは許されない。


 <過労自殺で労災認定>

     電通新入社員自殺 繰り返された悲劇
     長時間労働是正、道半ば
       東京新聞 2016年10月10日 

    電通では一九九一年にも、入社二年目の若手
   社員が過労自殺し、遺族が起こした訴訟は過労
   死の企業責任の原点となった。長時間労働の

   是正が叫ばれる中、それに逆行するように、
   高橋さんの残業時間は月八十時間超の過労死
   ラインをはるかに超えていた。

    「会社は過労で社員が心身の健康を損なわな
   いようにする責任がある」。九一年に電通で起

   きた過労自殺をめぐる二〇〇〇年の最高裁判決
   はこう指摘し、電通の責任を認めた。

   過労自殺に対する会社の責任を認める司法判断
   の基準となった。

    過労死問題に詳しく白書作成にもかかわった
   森岡孝二関西大名誉教授は「過重労働に対する
   企業の責任が厳しく問われるようになっている

   にもかかわらず、日本を代表する企業で、しか
   も過去に司法にとがめられた電通過労自殺が
   繰り返されたことは深刻な問題だ。」


  * * * * * * * * * * *


 <企業の安全配慮義務>

  過労による自殺について「電通事件」は、特に社会的
 に注目され、後の労災認定基準などに大きな影響を与え
 たことが知られている。
     (最高裁平成12年3月24日判決)

 これを契機に、精神的面での安全配慮義務が特に注意さ
 れるようになったというものです。


  この裁判で会社側がした主張には、次のようなものが
 ある。

 (会社側の主張)

  *うつ病はあくまでも感情上の苦悩が問題となる病気
   であり、過労等の肉体疲労で疲憊性うつ病になるこ
   とはない。

  *本人の個人生活、家庭環境等の事情が自殺の原因で
   ある。

  *自殺は自ら死を選択するものであり、会社側には
   それを予見することも、回避することも全く不可能
   である。本件死亡につき、安全配慮義務が成立する
   余地がない。


 (裁判所の判断)

  慢性疲労が自律神経失調症状と抑うつ状態を招き、
 反応性うつ病を引き起こすことがあるとするのは神経
 医学会の定説である。

  継続的に長時間にわたる残業を行わざるを得ない状態
 になっていた本人の上司らは、本人の残業や健康状態の
 悪化を知っていたものと認められる。

  本人がうつ病等の精神疾患にかかり、その結果自殺す
 ることもあり得ることを予見することが可能であったと
 いうべきである。

  使用者は、雇用する労働者が労働によって健康を害さ
 ないように、労働時間などの労働条件や労働環境を整備
 する義務を負う。

 

医療分野の規制と経済成長

 <医療分野の生産性向上>

    日本再興 医療・介護の生産性向上が課題
       毎日新聞 2016/09/15

   *国民皆保険堅持か混合診療解禁か
    議論が再燃 

    医療・介護分野で生産性を高め、所得を伸ば
   していくことが、再興戦略では欠かせない課題
   となっている。

    では、医療や介護の分野で、どのようにして、
   再興戦略を実施していくのだろうか。そこで問
   題となるのは、国民皆保険制度との兼ね合いだ。

    混合診療の拡大により競争メカニズムが働く
   ようにすべきという指摘もあるが、この混合診
   療の解禁をめぐっては、これまでも激しい攻防
   が繰り広げられてきた。

    保険診療の対象となっていない新しい医療や
   医薬品を使いたいという要望は強い。政府の

   規制改革・民間開放推進会議や経済界の強い主
   張を受け、04年に混合診療の拡大が決まった
   ものの、全面解禁は見送られている。

    混合診療をめぐっては、私費の部分の拡大は
   保険財政を安定させる一方で、医療機関がもう

   かる私費診療に力を注ぎ、保険医療の水準が低
   くなり、国民皆保険制度の崩壊につながるとい
   う反対論も根強い。 

    保険制度を基本としながらも公費の投入で支
   えている現在の医療や介護の仕組みをどうする

   のか。さらに、革新的な医療や介護の技術、
   サービスを生み出すには、競争原理に基づいた
   私費による診療や治療の拡大が不可欠という。 

    医療や介護分野の生産性向上が、日本経済の
   再興のカギを握っているとはいえ、国民皆保険
   制度のもとで、医療、介護制度の改革をどの
   ように進めていくのかの議論が再燃しそうだ。

     (部分的に引用した)


  * * * * * * * * * * *


 <公的制度の縮小>

  上の記事は歯切れが悪いが、要するに公的制度の縮小
 が大っぴらに主張されるようになっている。

 公的サービスを続けることが財政的に厳しいから、むしろ
 それを好機として、医療分野においても民間産業の成長を
 進めていく。

 公的な保険の対象外となる民間サービスを積極的に育て、
 拡大していこうという動きが経済関係者にとどまらず、
 広がっていることを表している。

  健康、長寿など富裕層向けの医療サービスが広がって、
 成長するのはいいが、普通の国民に不可欠な保険サービス
 を削ることがあっては社会が安定しない。



 <社会保障費の抑制>

  高齢者の増加で、国民の保険料や税負担が高騰していく。
 負担をどう分け合うかという議論は避けられない、という。

 しかし、生活が苦しい人をないがしろするような制度にし
 てはセイフティネットにならない。

 ゆとりのある人から、能力に応じて負担を増やしてもらう
 ように社会保障を維持して欲しい。

  高齢者の窓口負担を引き上げるにしても、経済力に応じ
 た負担に変えていく、保険の適用範囲について漢方薬や
 うがい薬を一部自己負担にするなどの話は、医療費削減の
 手段としてあるのかも知れないが。



 <必要な医療を受けられるように>

    混合診療の拡大 「成長」の道具にするな
       京都新聞 2014年06月12日

    保険が使える診療と保険のきかない自由診療
   を併用する「混合診療」を拡大し、新たに
   「患者申出療養制度」を設けるという。

    命を左右する医療を、経済対策の道具とみる
   ような姿勢を危ぶむ。安易な混合診療の拡大は、

   いつでもどこでも比較的安価に医療を受けられ
   る日本の「国民皆保険」の基盤を崩しかねない。
   慎重な検討を求めたい。

    混合診療が認められても、自由診療部分は
   自己負担になる。それこそが政府の狙いで、医
   薬業界の利益が増し、市場が活気づくと見込む。

   新制度により、新薬や先端機器の治療などを望
   む患者には受診しやすくなる面もあろう。

    だが、混合診療をなし崩しに広げれば、高い
   治療費を払えない人は必要な医療が受けられな
   い事態になりかねない。混合診療を認めるにし

   ても、有効性が確認できれば保険適用にしてい
   くのが原則だ。保険給付費を抑えるため、自由
   診療を増やす発想は許されない。

    薬をめぐる製薬業者と医療者の癒着や不正も
   問題化している。経済的な思惑を排し、患者の
   利益を最優先に制度を議論すべきだ。

 

役に立つことは100年後かもしれない

 <基礎的なことを大事に>

    ノーベル賞大隅氏基礎科学に光当たった
        中国新聞 2016/10/4

    日本人が当たり前のようにノーベル賞をもら
   う時代になったのだろう。東京工業大栄誉教授
   の大隅良典さんがことしの医学生理学賞に決
   まった。

   「オートファジー(自食作用)」と呼ばれる細
   胞の仕組みを解明した研究が高く評価された。

    オートファジーは細胞が自分のタンパク質を
   分解し、リサイクルするメカニズムといえる。
 
   生命の維持に欠かせない機能であり、もし異常
   があればパーキンソン病などにつながるため
   創薬への道も開けた。こうした地道な基礎生物
   学の分野に光が当たったことも喜ばしい。

    ひたむきな好奇心と探究心が研究を膨らませ
   たのだろう。

    もう一つ注目すべきは基礎科学研究者として
   の強い自負ではなかろうか。本人は折に触れて
   「研究がどう役に立つかは気にしない」と語って

   きた。肝心のオートファジーに関しても医学分野
   への展開はさほど意識していなかったようだ。
   応用的な研究をする後輩に対しては「もっと基礎
   的なことを大事に」と、よく指導していたと聞く。

    ふと気付いたものの探究を、純粋に楽しむ。
   そこにこそ神髄があるという発想だろう。

   「科学が役に立つという言葉が社会を駄目にし
   ている」「将来を見据え、科学を一つの文化と
   して認めてくれる社会を」。

    記者会見での大隅さんの発言が印象的だ。
   目先の「役に立つ」研究に国のお金が振り向け
   られ、成果主義に陥りがちな日本の科学技術へ
   の警告にほかならない。

    自然科学分野のノーベル賞は20年前から
   30年前の研究に対するものが多い。日本で
   いえば構造不況に陥る前に、基礎科学が一定に

   重視されていた時代の研究への評価が、今に
   なって世界的に定着してきた。そうした見方も
   できなくはない。

    それが最近の受賞ラッシュの背景にあると
   すれば、将来的にはどうなるだろう。既に国立
   大や研究機関では、基礎科学研究の停滞どころ
   か弱体化しているとの指摘が絶えない。博士
   課程に進む若者も減っている。

    だからこそ「サイエンスは全てが成功する
   わけではないが、チャレンジすることが大切だ」
   という大隅さんの若い世代への呼び掛けは重い。

   必ずしも成果を見通せず、日の当たらない多く
   の研究を焦らず育てる気概がなければ、日本の
   科学力は盤石とはいえない。朗報に沸く中で、
   そのことも考えておきたい。


  * * * * * * * * * * *


 <20年後か、100年後かも>

  ノーベル賞受賞大隅さんの会見内容を伝える記事が
 出ています。印象に残ったのは、

  「本当に役にたつのは、10年後か20年後か、あるい
   は100年後かもしれない。」

  「ゆとりを持って基礎科学を見守ってくれる社会に
   なってほしい。」

  という言葉です。



 <社会がゆとりを持って>


   「社会がゆとりを持って基礎科学を見守って」
   ノーベル賞大隅良典さんは
   受賞会見で繰り返し訴えた
     ハフィントンポスト 2016年10月03日


    受賞決定直後の10月3日夜に、東京工業大学
   で記者会見した大隅さんが繰り返し語ったのは、

   短期的な成果に直結しない基礎科学を追究する
   科学的精神の重要さ、そして、それがなかなか
   許されなくなっている社会への憂いだった。


   *「人がやっていないことをやる方が楽しい。
    サイエンスの本質」

    私は競争があまり好きではありませんで、人
   がよってたかってやっているより、人がやって
   いないことをやる方が楽しいんだと、ある意味

   でサイエンスの本質みたいなことだと思って
   おります。誰が一番乗りかを競うより、誰も
   やっていないことを見つけた喜びが研究者を支
   えると常々思っています。


   *「私は大変憂えている」

    「少しでも社会がゆとりを持って基礎科学を
   見守ってくれる社会になってほしい」。会見で
   大隅さんはそう繰り返した。

   しかし「そういうことがなかなか難しい世の中
   になっている」「私は大変憂えている」とも
   語った。

  (背景には、政府による学術研究予算の削減が
   続いていることがある。)

    本当に役に立つことは10年後、あるいは100
   年後かもしれない。社会が将来を見据えて、
   科学を一つの文化として認めてくれるような
   社会にならないかなあと強く願っています。

 

随意契約にする理由は

 <契約方法は適切か>

      国民文化祭のロゴ「高すぎる」
      市民団体が提訴
      読売新聞 2016年09月18日

    「第32回国民文化祭・なら2017」の
   ロゴマーク制作費が高すぎるなどとして、奈良
   県生駒市の市民団体「見張り番・生駒」は16

   日、国文祭実行委会長の荒井知事らに対し、
   510万円の損害賠償を求める訴えを地裁に
   起こした。

    訴状などによると、実行委は熊本県のPR
   キャラクター「くまモン」を手がけた東京の
   デザイン会社にロゴマークの制作を委託。

   随意契約で、費用が540万円かかった点に
   ついて、「公募や入札を実施していれば制作費
   は30万円だった」などと主張している。


  * * * * * * * * * * *


 <随意契約が認められる場合>

  国や地方公共団体などの契約では、一般競争契約が
 原則になっている。

 例外的に随意契約が認められることがあるが、不公正な
 運用がないよう厳しく制限されている。

 「その性質又は目的が競争入札に適しない場合」、
 「競争入札にすることが不利になるもの」などとされる
 が、随意契約についてルールを細かく定めている。

  例えば、さいたま市随意契約ガイドラインに、次の
 ような説明がある。


 (随意契約ができる場合)

  ○契約履行中の者に履行させた場合、履行期間の短縮、
   経費の節減が確保できる等有利と認められるとき

  ○現に契約履行中の契約に直接関連する契約で一定の
   条件を満たしたとき

  ○急ぎ契約をしなければ、契約をする機会を失い、
   又は著しく不利な価格をもって契約をしなければ
   ならないこととなるおそれがあるとき

  ○契約の履行にあたり、ノウハウ、データ等の取得、
   業務への習熟その他の当該契約においてのみ要求
   される知識、能力等を有することが必要な契約を
   締結しようとする場合 



 <契約の違法性について争い>

  しかし、契約担当者としては業務がスムースに進む
 ことを優先して、競争入札の手間を省きたがる傾向に
 ある。また、実際に競争入札によると、十分な質が確保
 されるかということもいわれる。

  一方、随意契約による不正や業者との癒着など問題に
 なることが多く、住民訴訟も各地で起こされている。

 「競争入札の実施が困難ではなかった」、「緊急性、
 専門性を認めることはできない」などと判断されて、
 随意契約は違法とした判決がある。

  契約が合理的な裁量判断により決定されているか、と
 いうところが難しい。

 

嘱託殺人か殺人かの違い

 <教え子を殺害>

      福井大元准教授、嘱託殺人を主張
      教え子の大学院生死亡
         共同通信 2016/9/12

    赤トンボ研究の教え子だった東邦大の大学院
   生菅原みわさんを殺害したとして、殺人罪に問
   われた福井大大学院元特命准教授前園泰徳被告

   は12日、福井地裁裁判員裁判初公判で「事件
   当日に『殺してください』と頼まれたので、首
   を絞めて死なせた。

   この点で起訴事実と異なる」と主張。弁護側は
   嘱託殺人罪に当たると訴えた。

    検察側は冒頭陳述で「2人は交際しており、
   被告は関係が公に広まることを恐れていた。地
   位を失い、妻子を傷つけられることを恐れて被
   害者を殺害した身勝手な犯行」と指摘した。


  * * * * * * * * * * *


 <嘱託殺人罪を適用>

  福井地裁は9月29日、嘱託殺人罪を適用したと報道
 されている。刑は懲役3年6月(求刑・懲役13年)で
 実刑判決となっている。

 判決理由で、「殺害依頼がなかったと認定するには合理
 的な疑いが残る」として、嘱託殺人より重い殺人罪とす
 ることは認めなかった。



 <嘱託殺人の量刑>

  刑法で、殺人罪は死刑又は無期若しくは5年以上の懲役
 となっている。

 一方、嘱託殺人は6月以上7年以下の懲役または禁錮と
 され、大きな違いがある。

  被害者が、病気などで痛みに苦しんで依頼、懇願したと
 いう殺害の場合もあり、犯行に至る経緯や動機に同情の
 余地があることを考慮して刑を猶予された裁判もある。

  今回の事件で検察側は、2人が「不倫関係にあった」
 「自分の家族に危害が加えられたり関係を公にされるのを
 避けるためだった」という。

 正常な判断能力がなく、真に殺害を依頼した事実がないと
 も主張している。



 <裁判所の判断>

  過去の裁判では、次のような点が考慮されている。

 (1)被害者の真意に基づいた殺害依頼があったか
   自由意思により、明確に示されたか

 (2)死亡することの意味を熟慮し、結果を受容
   していたか

 (3)依頼、懇願された経緯や動機には同情の余地
   があるか



 <嘱託殺人の裁判>

  次の事件は、夫の依頼を受けて殺害したという嘱託殺人
 です。36年もの長期間、夫の介護を単独で献身的に行って
 きた被告が、痛みに苦しむ被害者の懇願に従って殺害した
 もので、その犯行の経緯や動機には同情の余地があるとし
 て、寛大な処罰にされた。


    嘱託殺人被告事件
    平成22年10月8日 さいたま地方裁判所

  主文

  被告人を懲役2年6月に処する。

  この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予
  する。


  理由

 (罪となるべき事実)

  被告人は、平成22年3月25日午後9時45分ころ、
  A市Ca番地b被告人方において、夫甲から同人の殺害
  を依頼されてこれに応じ、殺意をもって同人の頚部に
  さらしを巻いて絞めつけるなどし、よってそのころ、
  同所において同人を頚部圧迫による窒息により死亡させ
  て殺害した。


 (量刑の理由)

  1 本件は、被告人が長年介護をしてきた夫である被害
   者に依頼されて同人を殺害したという嘱託殺人の事案
   である。

  2 本件犯行によって、被害者の尊い生命が失われてお
   り、結果は重大である。

   もっとも、被告人は被害者が約36年前に不慮の事故
   によって頚髄を損傷して以来、本件に至るまでの長期
   間にわたって、同人の指示に従い、日常生活の全般に
   ついてほぼ単独で献身的な介護を行ってきたところ

   、、、同人から殺害を懇願されたことから、同人を
   殺害することを決意し、その直後に本件犯行に及んだ
   ものであって、被害者の介護に自らの半生を捧げ、同
   人の指示に忠実に従う生活を送る中で、被告人自身の

   利欲などは全く介在させずに、痛みに苦しむ被害者の
   懇願に従って本件犯行に至ったという経緯や動機には
   同情の余地がある。

    しかしながら、、、被害者の殺害依頼に盲目的に
   従っており、この点はやはり安易かつ短絡的であると
   いわざるを得ない。

 

東京一極集中が変わるのか

 <文化庁を突破口に>

     京都に文化庁 東京集中正す突破口に
        毎日新聞 2016年3月23日

    政府は国機関の地方移転に関する基本方針を
   決めた。中央省庁に関しては、文化庁京都府
   に数年以内に移転する。消費者庁総務省統計
   局を移転するかについては結論を先送りした。 

    文化庁移転を突破口として、国の行政組織の
   あり方についてさらに踏み込んだ見直しを求め
   たい。 


    文部科学省の外局である文化庁文化財を用
   いた観光戦略の強化などの観点から、一部機能
   を東京に残しての京都移転が有効と判断された。
   関西地域の発信力アップにも寄与する結論と
   いえよう。 

    政府は協議会を設け、移転に伴う組織改革案
   を年内にまとめる。文化庁文化財保護にとど
   まらず、著作権宗教法人など幅広い領域の行政
   を所管する。東京に残す機能の確定などに万全を
   期す必要がある。 

    これまで不十分との指摘もあった文化行政全般
   の拡充に京都移転をつなげていく発想が欠かせ
   ない。政府は移転を機に、地方文化の多様性を

   従来以上に尊重していくと説明している。こう
   した視点を実際に反映できるかで、移転の意義が
   試される。


  * * * * * * * * * * *


 <地方の人口減少は>

  地方では、鉄道廃線が相次いでいる。地方の人口減少が
 進んでいるから、経営採算に合わないという。そして生活
 の足がなくなり、そこから人は離れざるを得ない。悪循環
 になる。

  企業も人も仕事を求め、便利さを享受するために首都圏
 に集まっていく。地方が衰退するのは誰もが分かっている。


  鉄道が民営化され、営利性を追求すれば赤字路線は廃止、
 有料部分を強化することになる。地方の赤字路線を廃止す
 ることが経営努力だと言われると何ともやりきれない。

  中央省庁移転ができない理由を、最もよく知るところが
 解決策を考えられないか。

 地方鉄道の廃線を防ぎ、人が集まる街を取り戻すために
 そこに職場を移すこと。



 <集中是正を掲げるのであれば>

     掛け声倒れの看板政策 中央省庁移転
        東奥日報 2016/09/09

    文化庁を京都に「全面的に移転」するほか、
   消費者庁徳島県に消費者政策の研究・立案拠
   点を設け、総務省は統計データを研究者らに提
   供する統計局業務を和歌山県で実施する。

    このように中央省庁の全面移転は文化庁のみ
   で、しかも具体的な時期は明記されていない。
   消費者庁の移転は、可否判断を見送ったも同然
   と言える。

    国が範を示すことで、民間企業が本社機能を
   地方に移すきっかけにしたいという思惑もあった
   はずだ。

    今からでも遅くない。安倍政権が地方創生、
   東京一極集中の是正を掲げ続けるのであれば、
   誘致の提案を地方から募り各省庁に移転の可否

   を検討させる手法ではなく、すべての中央省庁
   を対象に国主導で移転を議論すべきだ。その際
   には、首都直下型地震といった国難に備える面

   からも、政府のバックアップ機能や中央省庁の
   一部を東京圏外に置くなど、国全体のリスクを
   減らすことも喫緊の課題だ。

    移転できない大きな理由は、他省庁との協議
   あるいは官邸や国会、政治家との調整のために
   は、顔と顔を合わせての関係が必要だというの
   が大方の理屈だろう。

    なぜ、国の仕事だけ頻繁に顔を合わせての調
   整が不可欠なのか。働き方改革を掲げている政
   府や政治家が「移転はできない」と言い続ける
   のは、今の仕事の仕方を変えたくないという
   惰性ではないか。