セクハラ告発に名誉棄損で対抗された
☆准教授が女子学生にセクハラ セクハラ准教授を懲戒解雇 筑波大、女子学生の体触る 共同通信 2018/3/1 筑波大は1日、指導する女子学生の体を触るなど のセクハラ行為をしたとして、60代の男性准教授を 懲戒解雇したと発表した。 大学によると、准教授は昨年3月、研究の一環で 行った学外調査の後、帰りが遅くなったとして、 女子学生と准教授の別荘に宿泊。2人は当初は別々 の部屋で寝ていたが、准教授が女子学生の部屋に 侵入し、体を触るなどしたという。 女子学生が大学に相談し発覚。大学側の聞き取り 調査に対し、准教授は事実関係を認めている。
☆取引先などからセクハラ 同じ職場の上司や同僚からセクハラを受けるという ケースが多いが、取引先など他社からの被害では扱い に困る人もいる。 場合によっては関係が悪化し、会社の経営に影響しな いかと恐れて告発を躊躇し兼ねない。 しかし、労働者を保護することに変わりないので、 対応は企業が責任を持ってする必要がある。 (1)従業員から相談があれば、事実調査を行って適 切な措置を採ることになる。調査結果を相手方に 報告し、再発防止措置などを求めなければ、職場の 安全配慮義務違反を問われる。 (2)相手方企業は、加害者とされる人物に確認して、 事実であれば適正な処分、再発防止措置を実施しな ければならない。 加害者本人にとどまらず、企業に使用者責任を問わ れることがある。 ☆告発に対し名誉毀損の主張 *名誉毀損となるための要件 セクハラなどの告発をすると、加害者とされる側が 事実無根の主張をして対抗するケースが少なくない。 ただ、この対抗策はなかなか通り難い。 名誉毀損行為については、真実であることの証明が あったとき等の要件を充たす場合には罰しないと規定 されている。(刑法230条の2) 不法行為による損害賠償も、次の要件をすべて充足 すれば退けられる。 1)公共の利害に関する事実についてのもの 2)目的が専ら公益を図ることにあった場合 3)真実であることの証明があったとき この要件のうち、セクハラの事実が真実である又は 真実と信じるに相当の理由があると認められれば、 公共性、公益目的に該当するというケースがほとんど である。 関係機関への通報や情報伝達も、被害を申告し処分を 要請する必要上正当な目的に基づていると認められれ ば、名誉侵害に当たらないとされる。 ☆セクハラ告発に名誉毀損で争った事例 (大学教授の女性研究補助員に対するわいせつ行為 を雑誌に情報提供したことが名誉毀損にあたると 提訴した) 告発行為は、適切な被害回復を得られないために、 自分が真実と考えることを主張して加害者を社会的に 告発しようとした行為にほかならず、その主張する 事実が真実である以上、いずれも正当な権利行使とし て当然に許される適法な行為である。 送付行為についても、職場の学長、事務局長などの 限定された者に対して、処分を求めて事件を告発した ものであって、その内容においても正当な権利行使の 範囲内に止まる行為であって、違法とまで言えない。 雑誌に情報提供した行為は、加害行為及び事件後の 加害者の対応についての情報を提供したものであり、 しかも、真実の情報が提供されている。 記事は、取材から得られた情報を総合して作成された ものであり、記事の内容構成は「B誌」の編集部の 権限と責任において行われた。 裁判記録やテープをAに渡したことは、違法な行為と は言えないし、この行為と記事が作成され被控訴人の 名誉が毀損されたこととの相当因果関係を肯定するに は至らないというべきである。 (平成10年12月10日 仙台高裁秋田支部 判決)