刑事裁判で無罪、民事では損害賠償
<教え子殺害で賠償請求> 「嘱託殺人納得できぬ」遺族が提訴 教え子殺害、元准教授に賠償求める 福井新聞 2017年3月22日 福井県勝山市で2015年3月、赤トンボの研究 をしていた東邦大の大学院生菅原みわさん=当時 (25)=が絞殺された事件で、菅原さんの遺族が 22日までに、殺害した元福井大大学院特命准教授 の前園泰徳受刑者に計1億2223万円の損害賠償 を求めて千葉地裁に提訴した。 前園受刑者は15年4月、教え子の菅原さんを 殺害したとして殺人罪で起訴されたが、福井地裁の 裁判員裁判の判決では嘱託殺人罪が適用され同9月、 懲役3年6月(求刑懲役13年)が言い渡された。 福井地検、被告とも控訴せず判決が確定した。 今回の訴状では、「嘱託を裏付ける証拠が無い。 被告は秘密裏にしていた不倫関係が公になれば、 地位や名誉、家族を失うのでないかと恐れた。被告 に被害者を殺害する動機があった」などと主張して おり、民事裁判でも再び嘱託の有無が争点になる とみられる。
<刑事で無罪、民事は敗訴の事例> 「疑わしきは罰せず」といわれて、刑事裁判では 厳しい証明が求められる。被告人を有罪とするには 疑問が残るという場合は無罪判決にならざるを得な という。 一方、民事裁判の証明は、「通常人が疑いを差し 挟まない程度に真実」と確信できることが基準に なっている。 一般人の常識的な考えに近い判断がされている。 そのために、同じ事件でも民事と刑事の裁判で異な る結論が出ることがあるとされ、次のような事例が ある。 *低血糖による意識障害でひき逃げ事故 横浜地裁 平成24年3月21日 判決 無罪 (低血糖による意識障害に陥り、事故の 認識があったか疑問が残る) 東京地裁 平成25年3月7日 判決 死亡した高校生の遺族に損害賠償を命令 (血糖値の管理を怠る過失があった) *浦安市立小学校の児童虐待事件 千葉地裁 平成17年4月28日 判決 無罪 (犯罪の時間と場所が特定できない) 千葉地裁 平成20年12月24日 判決 浦安市と県に賠償命令 (証言は内容も具体的で迫真性がある)
<教え子殺害事件の特殊性> 元准教授側は争う姿勢であると報道され、嘱託殺人罪 は刑事裁判でも認められているから責任を問われないと のコメントが紹介されている。 一方、遺族側は嘱託殺人罪の認定に納得していない。 被害者の殺害嘱託はなく、単純殺人罪が成立することを 主張立証していくという。 先の刑事裁判の判決は嘱託殺人罪を適用し、懲役3年 6月を言い渡した。判決理由は、「自殺の意思を有して いた可能性は否定できない」「嘱託がなかったと認定す るには合理的な疑いが残る」となっている。 裁判所も、単純殺人罪が成立する可能性が高いが、嘱 託殺人罪を否定することができないという刑事裁判の 原則に基づく結論になった。 従って、嘱託殺人罪でも実刑であり量刑はかなり重いの であろう、検察側も控訴せず判決が確定している。 今回の民事裁判は、損害賠償を請求するものであり、 「嘱託殺人か、単純殺人罪が成立するか」の争い以前に、 殺人を実行して被害者は帰らないという事実は動かない。 しかも、老人介護や病苦による嘱託殺人とは全く異な るから、損害賠償の請求は相当程度認められるのでは ないか。 刑事裁判の裁判長は、「後先を深く考えない軽はずみな 行為で、強い非難は免れない」と述べたと報道されて いる。 <刑事事件で不起訴、民事で賠償命令> 男性に1500万円の支払い命令 テレビ和歌山 2017-03-28 一昨年、紀の川市に住む老夫婦がキャッシュカー ドを使い、現金1500万円を不正に引き出された として日本郵便の男性に対し損害賠償を求めていた 民事裁判の判決が27日あり、和歌山地方裁判所は 男性に全額返還を命じる判決を言い渡しました。 事件発覚当時、男性は窃盗の疑いで警察に逮捕され ましたが、刑事事件としては嫌疑不十分で、不起訴 処分となっていました。 判決を受けたのは、紀の川市に住む43歳の男性 です。判決によりますと、平成26年10月ごろ、 当時、郵便局の渉外担当として紀の川市の夫婦と親 密な関係にあった男性は、夫婦から言葉巧みに暗証 番号を聞き出し、キャッシュカードを持ち出して、 現金1500万円を無断で引き出したものです。 27日の裁判で、和歌山地方裁判所の山下隼人 裁判官は、キャッシュカードの暗証番号を入手した 時期と、夫婦の口座から初めて出金があった時期が 極めて近かったことや、男性が当時、外国為替証拠 金取引口座へ、被害額と一致する送金があったこと、 さらに、男性の携帯電話に暗証番号が記録された痕 跡があったことなどから、夫婦の口座から1500 万円を引き出したのは男性と認定し、全額を支払う よう命じました。 事件発覚当時、男性は、窃盗の疑いで警察に逮捕 されましたが、和歌山区検察庁は、嫌疑不十分で 不起訴処分としていました。