願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

収賄事件で退職金の返還は?

 

 <退職金返還命令>

     伊勢崎市 収賄有罪判決の元部長に
       退職金返還命じる
       東京新聞 2016年10月29日

  伊勢崎市は二十八日、市発注の工事を巡る贈収賄事件
 で一審で有罪判決を受けた金井哲夫元建設部長(61)

 に対し、条例に基づき既に受け取った退職金を全額返還
 するよう命じた。市は金額を明らかにしていないが、約
 二千五百万円程度とみられる。

  市が元職員に退職金返還を命じるのは、この条例が制
 定された二〇〇八年以来初めて。条例では、在職中に

 懲戒免職に相当するような行為があったり、在職中の
 行為で禁錮以上の刑事処分を受けたりした場合は退職金
 返還を命じることができる。

  金井元部長は一三年五月と七月、道路などの補修工事
 を市内の土木工事会社が受注できるよう便宜を図った見
 返りに、同社の元役員=贈賄罪で有罪確定=に車購入代

 金や車検代を支払わせ、現金計七十四万六千百五十円を
 受け取ったとして収賄罪に問われた。先月三十日、前橋
 地裁は金井元部長に対し、懲役一年六月、執行猶予三年
 追徴金七十四万六千百五十円の判決を言い渡した。

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 <元職員の生活は>   退職金の返還を命じるといっても、市と元職員に法律  関係はないから、返還を請求して応じない場合は裁判を  起こすものと考えられる。  たしかに収賄事件で有罪になったから、市に大きな損害  を与えた人ですが、本人にも生活がある。   懲戒解雇などで退職金を支払わない、返還を求めると  いうケースはよく報道されています。  ただ、裁判では退職金返還について慎重な判断がされて  いる。 問題は退職金の性格です。  退職金には功労報償的な面もあるが、賃金の後払い的な  意味があり、退職後の生活保障的な機能を果たすことも  あると理解されている。  <懲戒処分と退職金不支給>   例えば、飲酒運転で懲戒免職となった岩手県の元教諭  への退職金の支払いなどを巡って争われた裁判で仙台高  裁は、懲戒免職の取り消しは認めなかったが、退職金を  支給しなかった処分を取り消した。  「学校教育への長年の功績を考えれば、退職金を支給し  ないほどの違法行為とは言えない」と判断している。  この場合の判断基準は、問題が特に背信的であって、  永年勤続の功を抹消してしまうほどの行為と言えるか  にある。  その程度によっては、退職金の全額又は一定割合を支払  うべきだとされることがある。就業規則に不支給の規定  があっても全面的には適用されない。  <犯罪行為で処分>   収賄事件ではないが、痴漢行為で執行猶予付き判決を  受けた鉄道会社職員について、東京高裁が懲戒解雇は  有効としたが、退職金は、職員の行為に相当程度の背信  性があったとはいえないことから、全額不支給ではなく  3割を支給すべきであるとした事例がある。   伊勢崎市の件は公務員の犯罪行為であり、組織の規律  市民の信頼等を考慮して、勤続の功も抹消するほどの  行為だと判断されるかどうか。

 

就職率が好調、早期離職も多い

 <3年以内の離職率>

       3年以内の離職、31.9%
       13年春の大卒者 厚労省
        時事通信 2016/10/25

    厚生労働省は25日、2013年3月に大学
   を卒業し、就職した人の離職状況調査を発表し
   た。卒業後3年以内に勤め先を辞めた人の割合
   は前年比0.4ポイント低下の31.9%とな
   り、2年連続で減少した。

   ただ、雇用情勢の改善を背景に希望する仕事を
   求めて転職する人が引き続き多いとみられ、
   3年以内の離職率は4年連続で30%を超えた。

   離職率は1年目が12.8%と最も高く、2年
   目は10.0%、3年目は9.1%。

    3年以内の離職率を事業所の規模別で見ると
   5人未満は59.0%に上るが、1000人以
   上では23.6%にとどまり、規模が大きい
   ほど離職率は低い。

   業種別では、宿泊・飲食サービス業が50.5
   %と最も高く、電力・ガス・熱供給・水道業が
   8.5%と最も低かった。



 <退職理由は>

  理想と現実のギャップと表現されているが、具体的に
 は仕事が合わないこと、労働時間・休日の問題やノルマ
 の重さなどをあげているという。

 つまり、会社側か求職者側かいずれかに情報が十分では
 なかったということ。知識不足が原因になる場合もある
 が、極端にいえばブラック企業のように適切な情報を示
 さず契約する場合がある。

 本来、合意に至ることがないようなケースがあるという
 ことは、就職後3年にならなくとも就職すら避けても
 おかしくない、不本意な就職といえる。



 <その後の再就職は>

    年長者が、「若者には我慢が足りない」ということが
 あるが、事情を知っていないと批判される。

 まず、企業側の事情として人件費を使う余裕がない、
 新入社員に研修などスキルを着けるためのコストを惜し
 むようになっている。

 スキルを必要としない企業、単純作業の多いサービス業
 など離職率の高い業界への就職率が高いのが現実である
 のに、好況を反映して全体に求人が伸びているかの報道
 は偏っていると指摘されている。

  従って、早期離職後の再就職は厳しく、もっと条件の
 悪い企業、ブラック的な業界に行ってしまうという状況
 があるという。

 キャリアを積めず、「キャリアがない」と扱われるから
 次の就職先を探すのは容易でない。

 一方、離職率の低い会社は、コストをかけても教育して
 いるので辞められない、定着する傾向がある。


  * * * * * * * * * * *


 <就職率は最高を更新>

     大卒就職率97.3% 1997年
     以降で最高
       朝日新聞 2016年5月20日

    今春卒業した大学生の就職率は97・3%で
   前年同期から0・6ポイント増え、調査を始め
   た1997年以来最高となった。文部科学省と
   厚生労働省が20日発表した。

   2011年に最低(91・0%)を記録した後
   5年連続で改善し、これまでの最高だったリー
   マン・ショック前の08年3月卒(96・9%)
   を上回った。

    就職率が改善した理由について、文科省の担
   当者は「景気が良くなって企業側の求人需要が
   非常に高まっている」と説明。


    全国の高校に実施した調査では、今春卒業し
   た高校生の3月末時点の就職率は97・7%
   (前年同期比0・2ポイント増)と6年連続で
   改善。調査は1977年から続けており、24
   年ぶりの高水準だった。

   特に製造、建設、小売業の求人数が伸びたと
   いう。

 

農業と鉄道会社で働く

 <農業の競争力>

    農業とIT 実用化で輸出競争力高めよう
       読売新聞 2016年09月27日

    農業を収益性の高い成長産業にするには、
   若者や企業など多様な担い手を呼び込むことが
   欠かせない。それには、農業とITの結び付き
   をより強固にすることだ。

    畜産物や果実は、日本産の高級品が海外でも
   人気を博す。先端技術が実用化されれば、輸出
   競争力を一段と引き上げるだろう。

    IT活用の効果を最大限に発揮させるには、
   構造改革を進めることも忘れてはならない。

   自動化や機械化のメリットをより大きく引き出
   すためには、営農の大規模化が不可欠だ。

    バラマキ型の農業補助制度を改め、経営意欲
   の高い中核的な農家に支援を集中する。企業に
   よる農業参入のハードルを下げる。農地を集約
   して規模拡大を図る。

    農業の「稼ぐ力」を強めるには規制改革と
   技術革新の相乗効果を上げる戦略が求められて
   いる。


  * * * * * * * * * * *


 <棚田を守る>

  「儲かる農業」を謳い、農業の収益性を向上させる、
 競争力をつけると強調する。

 地方農村に行っては、「美しい日本」「棚田を守る」と
 演説する政治家がいる。

  棚田を守るとは、農業を食料生産に限ることなくその
 多面的機能を認めること、そのために補助を惜しまない
 ということ。

  「農業に多面的機能」というと、経済関係者はこれを
 ムダとして切り捨てる。

  ムダといえば、地方の赤字鉄道廃止を主張する。また、
 過疎地の保護をやめて都市に集住することも主張する。

 彼らは経済効率第一で多様性を侮り、画一的な社会を
 進めることになる。

  自然にしても社会的にも、画一的なものよりも多様性
 を持った方が生き残りやすいと一般に考えられている。

 画一的な社会の危険性は、現在でも広く認識されており、
 いかにして、多様性を図るかは重要な課題となっている。

  農業に環境保護、景観や農村地域の文化保全などを認
 めること、地方の多様な都市が発達、存在することに
 重きを置くかどうか。

 ヨーロッパなどの農業国も、こうしたことを目的に補助
 をしていることはよく知られている。


 <兼業農家>

  農業に収益性を求め、その生産で自立することを求め
 る立場からは兼業農家は、農業を遅らせる弊害とされる。

  しかし、どの企業でも主力部門を専業で通しているの
 は数少ない。トヨタは織機からスタートしてトラック、
 そして乗用車の自動車生産が中心になっている。

  最近農業就業者が増えているといわれるが、被用者と
 しての就業が多い。つまり、農業労働プラス安定収入が
 受け入れられている。兼業農家を批判する必要があるか
 どうか。

  多角経営で企業を維持、発展させているのがほとんど
 だろうが、JRについても注目されている。



 <JR九州の副業>

       JR九州30年越しの上場
       ななつ星と副業と
        NHK 2016.10.28 

   *上場実現の秘策は「副業」

    危機感を募らせた社員たちが収益改善の秘策
   と考えたのが「副業」、つまり異業種への参入
   でした。

   駅ビルやホテル開発はもちろん、マンション開
   発に学童保育の運営。農業、ドラッグストア、
   それに居酒屋や八百屋など、将来の成長が期待
   出来る事業には何でも挑戦しました。

    JR九州は数々の副業で経営を多角化し、収
   益源をいくつも育てた結果、今年3月期の決算
   で、売り上げにあたる営業収益が過去最高の
   3779億円に上りました。

   このうちの実に6割が鉄道運輸収入以外の関連
   事業によるもので、JR九州は約30年をかけ

   て従来の「鉄道会社」のビジネスモデルを超え
   た「総合的なまちづくり企業」に姿を変えたの
   です。

 

外国人実習で補完できるか

 <介護職に外国人>

      介護職に外国人材拡大 関連
      2法案が衆院通過
      日本経済新聞 2016/10/25

    人手不足が深刻化する介護現場での外国人材
   の受け入れを増やす出入国管理・難民認定法
   改正案が、25日午後の衆院本会議で自民、公明、
   民進など各党の賛成多数で可決された。

   日本の介護福祉士の国家資格を持つ外国人を対
   象に介護職の在留資格を新設。働きながら技術
   を学ぶ技能実習制度の対象職種にも介護を新た
   に加える。

    技能実習の期間を最長3年から5年に延長す
   る外国人技能実習適正実施法案と併せて可決し
   た。実習先の団体や企業を監督する組織も新設
   し、実習生に対する人権侵害を防ぐ。

    現在、看護・介護の分野で外国人の受け入れ
   が認められるのはインドネシアなど3カ国と結
   ぶ経済連携協定(EPA)の枠組みのみ。

   法整備後はEPA締結国以外からも留学生とし
   て日本に入国し、介護福祉士の資格取得後に
   就労ビザに切り替えて正式に働くことが可能に
   なる。技能実習生には日本の介護サービスを学
   びながら就労に従事してもらう。

   厚生労働省の試算では2025年に日本国内で約
   38万人の介護職が不足するとされ、政府は外国
   人材の登用が不可避とみている。


  * * * * * * * * * * *


 <実習生の受入れ目的>

  技能実習制度については、劣悪な労働環境や賃金不払
 いが問題になっている。

 外国人技能実習生の受入れ先を調査した結果、7割以上
 で違反が見つかったという。

  技術移転による途上国の発展という目的は形ばかりで、
 実態は安い労働力として実習生を利用していると批判さ
 れている。

 国連や米国政府からは「人身売買」「強制労働」などと
 指摘されているという。

  今回受け入れの拡大で、実習生に対する人権侵害を防
 止する姿勢を見せている。監視機関を新設して、立ち入
 り調査ができるという。

 しかし、現在の制度的な問題を残したまま実習生の不当
 待遇が解決することはない。

  成長戦略の一つにしている目的は、低賃金や重労働を
 理由に日本人が避け、人手不足となっている職場に穴埋
 めとして使うことにある。

  こうした厳しい労働環境を改善して、まず日本人も
 好んで就労できる条件に変えることが必要である。

 でなければ、現在従事する労働者の賃金などは一層悪化
 していくおそれがある。

 人手不足が深刻で外国人材が必要という、その現場の
 労働環境を変えることこそ急ぐべき課題である。



 <人権軽視の構造問題>

       外国人介護職拡大へ
      人権軽視の「使い捨て」危惧する
       愛媛新聞 2016年10月26日

    2025年には介護職員が約38万人不足す
   るとされ、対策が急務であることに違いはない。

   だが、日本人でも賃金が安く抑えられ、厳しい
   労働環境から人手不足に陥っている現状を変え
   ることが先決だ。その抜本改革なしに外国人で

   安易に労働力の穴埋めをしようとしても解決に
   ならない。コミュニケーションの難しさから
   介護事故やサービス低下にもつながりかねない。

    このままでは働く外国人の人権が守られず
   「使い捨て」にされることを危惧する。技能
   実習制度に関してはかねて、劣悪な労働環境や
   賃金不払いが問題になっている。

   日本の技術を途上国の経済発展に生かすという
   本来の目的は形骸化しており、低賃金労働者の
   確保に利用されているとして海外からも批判が
   絶えない。

   制度自体廃止すべき時機がとうにきているにも
   かかわらず、拡大へ逆行することに異議を唱え
   たい。

    新たな「外国人技能実習適正実施法案」では、
   不正監視機関を設置し、受け入れ団体や企業を
   立ち入り調査するという。だがこれまで同様、

   実習生が働く場所を変更することは原則できず、
   実習期間の途中に受け入れ先の都合で強制的に
   帰国させることも禁じていない。

   実習生を弱い立場に押しやる構造的な問題の
   放置は看過できない。

    さらに政府は、現在フィリピンなど3カ国か
   ら経済連携協定(EPA)に基づき受け入れて
   いる介護職員についても、就労先を拡大する
   方針だ。

    だがEPAで来日した多くが仕事を辞めて
   帰国している現実を忘れてはならない。他職種
   に就いている実習生の失踪も後を絶たない。

 

消費喚起など、政府と経済界の構想とは

 <プレミアムフライデー>

     政府・経済界に「プレミアムフライ
     デー」構想 国内の個人消費喚起へ
     経団連、10月にも実行計画策定
        産経新聞 2016.8.13

    政府や経済界で、個人消費を喚起するため、
   月末の金曜は午後3時に仕事を終え、夕方を
   買い物や旅行などに充てる「プレミアムフライ
   デー」構想が検討課題に浮上していることが

   12日、分かった。経団連は政府に先行して、
   10月にもプレミアムフライデーの実行計画
   を策定する方針だ。

    政府は平成32年をめどに名目国内総生産
   (GDP)の600兆円実現を掲げている。

   経団連は、実現には現在300兆円にとど
   まっている個人消費を360兆円に引き上げ
   ることが欠かせないとみている。

    プレミアムフライデーは、早い時間の終業を
   受けて夕方に流通業界や旅行業界、外食産業
   などが連動してイベントを開催するという内容。

   流通業界には商品の価格を引き下げる「セール」
   への抵抗があることを踏まえ、イベントにする
   ことで消費喚起を前面に押し出していく狙いが
   ある。



 <柔軟な働き方>

        副業・兼業解禁へ研究会
        働き方改革推進 政府
        時事通信 2016/10/19

    政府は19日、働き方改革の一環として柔軟
   な働き方を広げるため、「副業・兼業」の解禁
   に関する研究会を新設する方針を固めた。雇用

   関係によらない「フリーランス」の働き方を
   議論する研究会とともに、11月中に経済産業
   省内に設置する方向で調整する。

    副業・兼業は、多くの企業が就業規則などで
   禁止しているが、最近では容認する動きも出て
   きた。2014年の中小企業庁の調査では、
   3.8%の企業が容認していた。

    政府が副業・兼業の解禁を検討するのは、企
   業が抱える有能な人材を広く活用するのが狙い。

   複数のキャリアを積むことで従業員の成長につ
   ながるとの期待もある。一方、労務管理が困難
   になったり、長時間労働を誘発したりする懸念
   も指摘されている。

    フリーランス雇用契約を結ばず、仲介業者
   などを通じて仕事を受注し、収入を得る働き方。
   専門性を生かせる好きな仕事を選びやすいとさ
   れるが、収入が不安定になる問題もある。


  * * * * * * * * * * *


 <イベント開催>

  個人消費が長く低迷しているのは賃金、勤労収入の
 減少が主な原因であるというのが一般的である。

 更に、社会保険料など負担の増大、不安定な雇用、社会
 保障の削減など将来不安の影響が指摘されている。

  商品券の発行やイベント開催といった一時しのぎの策
 が効果あるとは見られていない。



 <人材を広く活用>

 「コスト削減のため、企業が非正規労働者を増やした
  結果、低所得世帯の割合が上昇した。

  賃金を引き上げて個人消費の拡大を促し、経済を活性
  化させるべきだ」

 というのは、数年前に労働経済白書が指摘したところ
 です。

  また、人口減少問題については「若者の仕事の不安定
  化・非正規化は、結婚しない人を必然的に増やすこと
  になった。  結果として出生率・出生数の低下傾向に
  も歯止めがかかっていない。」

 という内容の提言を経団連が発表している。

  ところが、企業は雇用形態の柔軟化、残業代の引き下
 げ、解雇規制の緩和を求める。

 そうすると、労働者の収入は減少し生活が不安定になる。

  優先課題とすべきは、総賃金の下落傾向を止め、労働
 者の安定的な雇用を実現して将来展望を明るくすること
 だといわれている。

  今回の「働き方改革」として柔軟な働き方を広げると
 いうのは、内容としては企業が非正規労働者を広げ、
 人材を流動化していくことを促しているのではないか。

 「人材を広く活用する、勤め先に縛られない自由な発想
 で従業員が成長することを期待する」 というよりも、
 労働規制の緩和を図っていると見られている。

  労働者の処遇改善や従業員の成長よりも、狙いは企業
 から雇用に関する束縛を開放して経済の活性化につなげ
 ることではないか。



 <総人件費を増やす>

    働き方論議始動 総人件費増やす努力を
       北海道新聞 2016/10/02 

    政府の「働き方改革実現会議」の論議が始
   まった。

    社会の活力を高めるには、古い労働慣行を
   見直し、性別、年齢、雇用形態にかかわらず、
   働きやすい環境に変えることが必要だ。

    今回の会議では、長時間労働の抑制と同一
   労働同一賃金の実現が大きなテーマとなる。

    大企業の意識改革も欠かせない。近年、抑制
   傾向にある総人件費を増やすことに努め、多様
   な働き方を支えていってほしい。

    一方、国会では、時間ではなく成果で賃金を
   決める労働基準法改正案が継続審議中だ。野党

   が「残業代ゼロ法案」と批判するように、残業
   と一緒に人件費を削る方向に進むのならば問題
   である。

    働き方改革を、企業の人件費削減の道具にし
   てはならない。大企業は1990年代後半の

   金融危機などの経験から、企業の蓄えに当たる
   内部留保を積み増し、人件費を抑制する傾向を
   強めた。

    蓄えを優先し、人材への投資を軽んじた代償
   は大きい。その象徴が外資に買収されたシャー
   プや、粉飾決算問題を起こした東芝など、製造
   業の競争力低下だ。

    労働者への公正な報酬の配分こそが、企業の
   生産性を高め、持続的成長をもたらすはずで
   ある。

 

労働環境を整備する、企業の責任

 <過労死白書>

     過労死白書 悲劇の防止にどうつなぐ
        高知新聞 2016.10.10

    問われているのは、新たな犠牲を出さないた
   めの具体策だろう。政府は長時間労働の抑制に
   向けた「働き方改革」の議論を始めたが、導き
   出した結論で、国民に本気度を測られることに
   なる。

    悲劇が表面化するたびに長時間労働の弊害が
   叫ばれ、労働者を使い捨てにする「ブラック
   企業」が批判されてもなお、過酷な労働環境に
   変化は乏しい。

    政府の働き方改革には実効性が求められる。
   長時間労働の是正に向け、労働基準法が定めた
   残業に関する労使協定(三六協定)の見直しが
   焦点となろう。

   現行は事実上、労使が合意すれば残業が無制限
   となるため、上限の設定などを検討するという。


    一方で安倍政権は、長時間労働を助長しかね
   ない労基法改正案も国会に提出している。

    高収入の専門職を労働時間規制から外す新制
   度や、事前に定めた以上の残業代が支払われな
   い裁量労働制の対象を拡大させる内容だ。

   長時間労働抑制と矛盾するとの指摘にも、政府
   は見直す気配をみせない。

    財界の要望に沿った経済政策を進めてきた安
   倍政権が、企業側の反発も予想される労働者の
   待遇改善にどこまで踏み込めるか。これまでの
   方向性とちぐはぐさが否めないだけに不透明感
   が漂う。

    労働環境の改善は労働者の命を守り、育児や
   介護との両立にも通じる重要なテーマだ。
   パフォーマンスで終わらせることは許されない。


 <過労自殺で労災認定>

     電通新入社員自殺 繰り返された悲劇
     長時間労働是正、道半ば
       東京新聞 2016年10月10日 

    電通では一九九一年にも、入社二年目の若手
   社員が過労自殺し、遺族が起こした訴訟は過労
   死の企業責任の原点となった。長時間労働の

   是正が叫ばれる中、それに逆行するように、
   高橋さんの残業時間は月八十時間超の過労死
   ラインをはるかに超えていた。

    「会社は過労で社員が心身の健康を損なわな
   いようにする責任がある」。九一年に電通で起

   きた過労自殺をめぐる二〇〇〇年の最高裁判決
   はこう指摘し、電通の責任を認めた。

   過労自殺に対する会社の責任を認める司法判断
   の基準となった。

    過労死問題に詳しく白書作成にもかかわった
   森岡孝二関西大名誉教授は「過重労働に対する
   企業の責任が厳しく問われるようになっている

   にもかかわらず、日本を代表する企業で、しか
   も過去に司法にとがめられた電通過労自殺が
   繰り返されたことは深刻な問題だ。」


  * * * * * * * * * * *


 <企業の安全配慮義務>

  過労による自殺について「電通事件」は、特に社会的
 に注目され、後の労災認定基準などに大きな影響を与え
 たことが知られている。
     (最高裁平成12年3月24日判決)

 これを契機に、精神的面での安全配慮義務が特に注意さ
 れるようになったというものです。


  この裁判で会社側がした主張には、次のようなものが
 ある。

 (会社側の主張)

  *うつ病はあくまでも感情上の苦悩が問題となる病気
   であり、過労等の肉体疲労で疲憊性うつ病になるこ
   とはない。

  *本人の個人生活、家庭環境等の事情が自殺の原因で
   ある。

  *自殺は自ら死を選択するものであり、会社側には
   それを予見することも、回避することも全く不可能
   である。本件死亡につき、安全配慮義務が成立する
   余地がない。


 (裁判所の判断)

  慢性疲労が自律神経失調症状と抑うつ状態を招き、
 反応性うつ病を引き起こすことがあるとするのは神経
 医学会の定説である。

  継続的に長時間にわたる残業を行わざるを得ない状態
 になっていた本人の上司らは、本人の残業や健康状態の
 悪化を知っていたものと認められる。

  本人がうつ病等の精神疾患にかかり、その結果自殺す
 ることもあり得ることを予見することが可能であったと
 いうべきである。

  使用者は、雇用する労働者が労働によって健康を害さ
 ないように、労働時間などの労働条件や労働環境を整備
 する義務を負う。

 

医療分野の規制と経済成長

 <医療分野の生産性向上>

    日本再興 医療・介護の生産性向上が課題
       毎日新聞 2016/09/15

   *国民皆保険堅持か混合診療解禁か
    議論が再燃 

    医療・介護分野で生産性を高め、所得を伸ば
   していくことが、再興戦略では欠かせない課題
   となっている。

    では、医療や介護の分野で、どのようにして、
   再興戦略を実施していくのだろうか。そこで問
   題となるのは、国民皆保険制度との兼ね合いだ。

    混合診療の拡大により競争メカニズムが働く
   ようにすべきという指摘もあるが、この混合診
   療の解禁をめぐっては、これまでも激しい攻防
   が繰り広げられてきた。

    保険診療の対象となっていない新しい医療や
   医薬品を使いたいという要望は強い。政府の

   規制改革・民間開放推進会議や経済界の強い主
   張を受け、04年に混合診療の拡大が決まった
   ものの、全面解禁は見送られている。

    混合診療をめぐっては、私費の部分の拡大は
   保険財政を安定させる一方で、医療機関がもう

   かる私費診療に力を注ぎ、保険医療の水準が低
   くなり、国民皆保険制度の崩壊につながるとい
   う反対論も根強い。 

    保険制度を基本としながらも公費の投入で支
   えている現在の医療や介護の仕組みをどうする

   のか。さらに、革新的な医療や介護の技術、
   サービスを生み出すには、競争原理に基づいた
   私費による診療や治療の拡大が不可欠という。 

    医療や介護分野の生産性向上が、日本経済の
   再興のカギを握っているとはいえ、国民皆保険
   制度のもとで、医療、介護制度の改革をどの
   ように進めていくのかの議論が再燃しそうだ。

     (部分的に引用した)


  * * * * * * * * * * *


 <公的制度の縮小>

  上の記事は歯切れが悪いが、要するに公的制度の縮小
 が大っぴらに主張されるようになっている。

 公的サービスを続けることが財政的に厳しいから、むしろ
 それを好機として、医療分野においても民間産業の成長を
 進めていく。

 公的な保険の対象外となる民間サービスを積極的に育て、
 拡大していこうという動きが経済関係者にとどまらず、
 広がっていることを表している。

  健康、長寿など富裕層向けの医療サービスが広がって、
 成長するのはいいが、普通の国民に不可欠な保険サービス
 を削ることがあっては社会が安定しない。



 <社会保障費の抑制>

  高齢者の増加で、国民の保険料や税負担が高騰していく。
 負担をどう分け合うかという議論は避けられない、という。

 しかし、生活が苦しい人をないがしろするような制度にし
 てはセイフティネットにならない。

 ゆとりのある人から、能力に応じて負担を増やしてもらう
 ように社会保障を維持して欲しい。

  高齢者の窓口負担を引き上げるにしても、経済力に応じ
 た負担に変えていく、保険の適用範囲について漢方薬や
 うがい薬を一部自己負担にするなどの話は、医療費削減の
 手段としてあるのかも知れないが。



 <必要な医療を受けられるように>

    混合診療の拡大 「成長」の道具にするな
       京都新聞 2014年06月12日

    保険が使える診療と保険のきかない自由診療
   を併用する「混合診療」を拡大し、新たに
   「患者申出療養制度」を設けるという。

    命を左右する医療を、経済対策の道具とみる
   ような姿勢を危ぶむ。安易な混合診療の拡大は、

   いつでもどこでも比較的安価に医療を受けられ
   る日本の「国民皆保険」の基盤を崩しかねない。
   慎重な検討を求めたい。

    混合診療が認められても、自由診療部分は
   自己負担になる。それこそが政府の狙いで、医
   薬業界の利益が増し、市場が活気づくと見込む。

   新制度により、新薬や先端機器の治療などを望
   む患者には受診しやすくなる面もあろう。

    だが、混合診療をなし崩しに広げれば、高い
   治療費を払えない人は必要な医療が受けられな
   い事態になりかねない。混合診療を認めるにし

   ても、有効性が確認できれば保険適用にしてい
   くのが原則だ。保険給付費を抑えるため、自由
   診療を増やす発想は許されない。

    薬をめぐる製薬業者と医療者の癒着や不正も
   問題化している。経済的な思惑を排し、患者の
   利益を最優先に制度を議論すべきだ。