願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

自由貿易のリーダーと国内産業の衰退

 ☆国際協調をリードする責任

   日欧EPAが発効 巨大な貿易圏を生かそう
       毎日新聞 2019年2月1日

  米国の専横で混乱する国際秩序の立て直しにつなげ
 てほしい。

 日本と欧州連合経済連携協定(EPA)が発効した。
 関税撤廃の対象は幅広く、日欧双方に大きなメリット
 をもたらす。 

  日本の消費者は欧州産のワインやチーズを安く買え
 る。欧州への自動車輸出にも追い風となる。政府は経済
 効果を5兆円強と試算している。

 農家への影響に目配りしつつ、国内全体の活性化につな
 げるべきだ。 

 日本が米国と近く行う貿易交渉でも、米国の保護主義
 圧力の防波堤となる。

 英国の離脱交渉や反EU政党の台頭に揺れるEUにも
 プラスだ。 

  EUは対日輸出が3割以上増える可能性があるとみ
 ている。自由貿易のメリットがEU各国に広がれば、
 経済統合の意義が改めて認識される契機になりうる。
 EUの求心力回復に役立つ効果が期待できる。 

 世界経済は米中貿易戦争で悪化の恐れが強まっている。
 日欧の経済が自由貿易で底上げされると、世界全体の
 安定にも寄与する。 

 日欧EPAは、TPPとともに世界の自由貿易をけん
 引する車の両輪にもなる。

 EUの要であるドイツのメルケル首相が来週、来日し
 て安倍晋三首相と会談する。EPA発効を踏まえ協調
 の意義を確認する見通しだ。 

 日本は6月の主要20カ国・地域首脳会議で議長国を
 務める。

 首相はドイツなどと緊密に連携し国際協調をリードす
 る責任がある。


 ☆政府への注文

  自由貿易のけん引車になれ、と盛り上げる全国紙です。

 では、地方紙の方は、農業生産の方に目を向けた論調
 になるかと思いきや、そうではない。

 世界に自由貿易の意義を示すよう促すとともに、農家
 に対しても追加対策を忘れてはいけない、といいます。


 ....................

  自由貿易による多角的な国際協調の枠組みを、日欧  が基軸となって立て直す責務を負う図式だ。   政府の責任は、自動車など工業製品の輸出増と引き  換えに逆風にさらされる農業関係者への支援対策を  万全に成し遂げることにある。  畜産農家らは多方面から厳しい攻勢を受け続けること  になろう。  農業生産額の減少は年1100億円と見込まれる。  市場開放による影響を見極め、農家の体質強化や経営  安定などの追加対策にも十分配慮してほしい。    (河北新報 2019/2/2)


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  しかし、行き過ぎた市場開放に疑問を示し、農山  漁村が衰退する問題を取り上げるのは、次の社説です。  ☆自由貿易のメリットばかり強調       する一方、農山漁村は衰退    TPP発効 農の営み、次につなごう       中國新聞 2018/12/31   関税撤廃が柱となる協定は、来年2月に欧州連合と  の間でもスタートする。TPPを離脱した米国も日本  市場を狙っている。  国内農家にすれば試練のドミノ倒しが始まる。  諸外国は「食料安全保障」を重んじる。安保は何も  防衛に限った話ではない。  行き過ぎた市場開放や工業最優先の通商政策は、平等  や公平の観点からも問題がある。弱い立場にある人を  切り捨てない社会こそ、私たちが望む姿ではないか。  人口減少社会では海外に活路を求めるのは、やむを得  ない。保護貿易の議論は別にしても、ことさらTPP  のメリットばかりを唱える政府には違和感を禁じ得ない。   日本の経済効果は7兆8千億円、、、。  雲をつかむような数字が羅列される一方、目に見える  確かな現実が農山漁村の衰退である。  高齢化や担い手不足にあえぎ、耕作放棄地も増え続け  る。漁業や林業を含め第1次産業が中心の地方にとって  は、コミュニティー存亡の危機とも言えよう。   強者の論理を改めて感じたのは、国連の「小農宣言」  採決を先日棄権したことである。  家族経営や兼業など比較的規模の小さな農家への財政  支援を各国に求める内容だ。ビジネスとは一線を画し、  代々の土地を守る農の営みをどう保つか。  棚田のような耕作条件が厳しい土地を多く抱える中国  地方の中山間地域の農家は、同じ訴えを政府にぶつけ  てきた。棄権という選択は理解に苦しむ。