願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

反グローバル化批判にも怪しさ

 <世界経済が停滞する>

       「トランプ大統領」の衝撃
       保護主義に利はない
        朝日新聞/2016/11/11

    世界経済は低成長に陥り、国際的な経済摩
   擦が相次ぐ。英国の 欧州連合(EU)離脱

   決定に続き、トランプ氏の言動と政策が反
   グローバル化をあおることになれば、世界経
   済は本格的な停滞に陥りかねない。

    今世紀に入って世界貿易機関WTO)で
   の多国間交渉が行き詰まるなか、自由化の原
   動力は二国間や地域内の自由貿易協定(FT

   A)に移った。 とくに規模が大きい「メガ
   FTA」が注目され、その先陣を切ると見ら
   れてきたのがTPPだった。

    貿易や投資の自由化には、競争に敗れた産
   業の衰退や海外移転による失業など、負の側
   面がともなう。恩恵を受ける人と取り残され
   る人との格差拡大への不満と怒りが世界中に
   広がる。

    だからといって、自由化に背を向けても解
   決にはならない。

   新たな産業の振興と就労支援など社会保障の
   てこ入れ、教育の強化と課題は山積する。大
   企業や富裕層による国際的な税逃れへの対応
   も待ったなしだ。

    自由化で成長を促し、経済の規模を大きく
   する。同時にその果実の公平な分配を強める。
   トランプ氏を含む各国の指導者はその基本に
   立ち返るべきだ。

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    <批判する側の成長論>

  反グローバル化の対応策として、自由化で成長を促し、
 経済の規模を大きくする。同時にその果実の公平な分配
 を強めると説明している。

 「自由化に背を向けても解決にはならない」とするが、
 その表現はかつて「企業負担を重くして労働者の利益が
 増えるわけではない」という説明を呼び起こす。

 これまで成長促進のため法人税減税など企業負担を軽減
 し、競争力を高めるという政策を採ってきた。企業利益
 を増やして従業員の待遇改善に回すことになると主張し
 て既に長期間を経過している。

  「自由貿易を推進し経済成長を図ろうとするのは、
 国民一人一人の暮らしを豊かにするためではないのか。
 成長は手段であり、目的ではない」(河北新報 11/25)
 
  いわゆるトリクルダウン効果があれば「富める者が富
 んで、貧しい者にも自然に富が浸透する」ことになり、
 国民全体の利益になるはずではなかったか。

 結果が伴っていれば、不満と怒りが世界中に広がること
 はない。


  グローバル化は世界の貧しい人々に恩恵をもたらした
 が、「政府の怠慢で職を失った人が多い、欧州では法人
 税率が高止まりしている」(ロイターのコラムニスト)
 と、今どき強調しても説得力はない。

 社会保障のてこ入れや教育の強化のほか大企業や富裕層
 による国際的な税逃れを急げと対策を説くのも空しい。

  セーフティネット充実の重要性、中間層の強化そして
 個人消費で貢献の大きい所得層こそ優遇するという主張
 が以前からあった。

 しかし、労働者保護や社会福祉を削減してでも企業負担
 を軽減するという姿勢を続けている。



 <富の集中と貧困層の拡大>

       そろそろ真面目に考えたほうが
      山陰中央新報 明窓 '16/11/29

    何か世界が浮足立っているように思えてな
   らない。トランプ次期米大統領の出現以降、
   各国首脳たちもアメリカの変化を予測できず
   疑心暗鬼が満ちている。

    過激な言説で米国内の人種や宗教を分断し
   ないか。一国主義、孤立主義的「トランプ主
   義」が、他国にも伝播しないか。

   いわば、融和の求心力を失い、解体の遠心力
   が働く心配。中でもグローバル経済が危機に
   陥ると叫ぶ人が多い。

    確かにそうだが何にでも裏表はあり、日の
   当たる所に日陰はできる。グローバル経済は
   良いことずくめではなかった。

   国籍不明の金融資本主義はリーマン・ショック
   を教訓とせず、資産バブルとバブル崩壊の爆弾
   を抱えたままだ。

    アメリカ経済はここ40年、莫大な貿易赤字
   を出し続けながら行き詰まらなかった。それを
   上回る資金を新興国に投入し、金融によって
   利益を上げていたからだ。

   その結果、鉄鋼、自動車、真面目にものを作る
   人々は居場所を失った。

    金融の世界で成功した一握りの人に、途方も
   ない富が集中し、貧困層が拡大。今や「富は積
   もれど民は窮す」の様相だ。

   タックスヘイブン租税回避地)に富を隠した
   不届き者も暴かれて、若者が抱く格差社会への
   不満は発火寸前。

    日本が後ろ姿を追い続けたアメリカという国
   は、偉大な反面教師でもあり続ける。「忘れ去
   られた人々をなくす」と訴えたトランプ氏で
   変わるのか。グローバル化に取り残された人の
   敗者復活はどうか。そろそろトランプ出現の
   意味を、真面目に考えた方が良さそうだ。