願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

セクハラ告発に名誉棄損で対抗された

 ☆准教授が女子学生にセクハラ

      セクハラ准教授を懲戒解雇
      筑波大、女子学生の体触る
       共同通信 2018/3/1

  筑波大は1日、指導する女子学生の体を触るなど
 のセクハラ行為をしたとして、60代の男性准教授を
 懲戒解雇したと発表した。

  大学によると、准教授は昨年3月、研究の一環で
 行った学外調査の後、帰りが遅くなったとして、
 女子学生と准教授の別荘に宿泊。2人は当初は別々
 の部屋で寝ていたが、准教授が女子学生の部屋に
 侵入し、体を触るなどしたという。

  女子学生が大学に相談し発覚。大学側の聞き取り
 調査に対し、准教授は事実関係を認めている。

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 ☆取引先などからセクハラ

  同じ職場の上司や同僚からセクハラを受けるという
 ケースが多いが、取引先など他社からの被害では扱い
 に困る人もいる。

 場合によっては関係が悪化し、会社の経営に影響しな
 いかと恐れて告発を躊躇し兼ねない。

  しかし、労働者を保護することに変わりないので、
 対応は企業が責任を持ってする必要がある。

 (1)従業員から相談があれば、事実調査を行って適
  切な措置を採ることになる。調査結果を相手方に
  報告し、再発防止措置などを求めなければ、職場の
  安全配慮義務違反を問われる。

 (2)相手方企業は、加害者とされる人物に確認して、
  事実であれば適正な処分、再発防止措置を実施しな
  ければならない。

  加害者本人にとどまらず、企業に使用者責任を問わ
  れることがある。



 ☆告発に対し名誉毀損の主張

 *名誉毀損となるための要件

  セクハラなどの告発をすると、加害者とされる側が
 事実無根の主張をして対抗するケースが少なくない。
 ただ、この対抗策はなかなか通り難い。


  名誉毀損行為については、真実であることの証明が
 あったとき等の要件を充たす場合には罰しないと規定
 されている。(刑法230条の2)

  不法行為による損害賠償も、次の要件をすべて充足
 すれば退けられる。

 1)公共の利害に関する事実についてのもの

 2)目的が専ら公益を図ることにあった場合

 3)真実であることの証明があったとき


  この要件のうち、セクハラの事実が真実である又は
 真実と信じるに相当の理由があると認められれば、
 公共性、公益目的に該当するというケースがほとんど
 である。

 関係機関への通報や情報伝達も、被害を申告し処分を
 要請する必要上正当な目的に基づていると認められれ
 ば、名誉侵害に当たらないとされる。



 ☆セクハラ告発に名誉毀損で争った事例

 (大学教授の女性研究補助員に対するわいせつ行為
  を雑誌に情報提供したことが名誉毀損にあたると
  提訴した)


  告発行為は、適切な被害回復を得られないために、
 自分が真実と考えることを主張して加害者を社会的に
 告発しようとした行為にほかならず、その主張する
 事実が真実である以上、いずれも正当な権利行使とし
 て当然に許される適法な行為である。

  送付行為についても、職場の学長、事務局長などの
 限定された者に対して、処分を求めて事件を告発した
 ものであって、その内容においても正当な権利行使の
 範囲内に止まる行為であって、違法とまで言えない。

  雑誌に情報提供した行為は、加害行為及び事件後の
 加害者の対応についての情報を提供したものであり、
 しかも、真実の情報が提供されている。

 記事は、取材から得られた情報を総合して作成された
 ものであり、記事の内容構成は「B誌」の編集部の
 権限と責任において行われた。

 裁判記録やテープをAに渡したことは、違法な行為と
 は言えないし、この行為と記事が作成され被控訴人の
 名誉が毀損されたこととの相当因果関係を肯定するに
 は至らないというべきである。

  (平成10年12月10日 仙台高裁秋田支部 判決)

 

文化財の価値を守る、文化環境を伝承する

 

 ☆邸宅を宿泊施設に、古墳に案内施設も

  文化財で地域おこし 保護から活用へ法改正
       東京新聞 2017年8月12日

  歴史的な建物や史跡などを生かした地域振興が進
 めやすくなるよう、文化庁は十一日、文化財保護法
 を大幅に改正する方針を決めた。 市町村が地域の

 文化財の保護・活用に関する基本計画を定め、国の
 認定を受けることを条件に、国指定文化財の改修な
 ど現状変更を許可する権限を文化庁長官から市町村
 長に移譲。補助金や税制優遇で観光やにぎわいづく
 りのための活用を後押しする。

  旧家の邸宅など個人が所有する文化財の場合、維
 持するだけでも負担が大きいため、地域ぐるみで保
 護と活用に取り組む仕組みをつくる。

 権限移譲により、邸宅を結婚式場や宿泊施設として
 使う目的で改修したり、城跡や古墳に案内施設を設
 けたりといった現状変更が市町村の判断でできるよ
 うになる。収益を維持管理に充ててもらう狙いもある。



 ☆文化財を単なる観光資源と見なす風潮


   文化財保護法/活用は手厚く守ってこそ
      西日本新聞 2018/4/29

  気掛かりなのは、政府の姿勢があまりにも「活用
 重視」に傾いていることだ。 法改正の背景には、
 訪日外国人客を対象とした観光資源として、文化財
 の活用を進める現政権の「観光立国」という戦略が
 ある。

 地方創生担当相が昨年、「一番のがんは文化学芸員。
 観光マインドが全くない」などと暴言を吐いたこと
 は記憶に新しい。

 文化財を単なる観光資源と見なす風潮が、法改正の
 底流にあるとすれば、看過できない。

 自治体が文化財の保護と保全に万全を期すためには、
 専門職の養成と配置が欠かせない。

  その余裕がない小規模な町村には、財政と人材の
 両面で支援する必要がある。こうした手当ては大丈
 夫なのか。

 集客が見込める建造物などが大切にされ、古文書な
 ど地味な文化財が軽視される傾向が生じないか。
 また、首長が活用にはやり、保護がおざなりになる
 懸念も拭えない。地方の文化財保護審議会などで厳
 しくチェックする必要があるだろう。

  地域の文化財を未来へ継承することは地域の責務
 だ。手厚く保護してこその活用である。 

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 ☆文化財が軽視される恐れ   上の主張では、まず「文化財を単なる観光資源と見  なす風潮が、法改正の底流にあるとすれば、看過でき  ない」とある。  このことは、「観光客が増えて、文化資産や地域の  環境が損なわれる恐れ」として、古くから指摘されて  きているという。  「観光による、いわば『文化の商品化』で、文化の本  質的な価値が失われかねない。文化保護と観光開発は  往々にして相反する。」(京都新聞 2017年04月23日)  「持続可能な文化観光」のために、文化財保護に必要  な専門職員と行政能力、予算が欠かせない。  小規模組織の自治体では保存のための余裕がない。   「地方創生とは稼ぐこと」と要求する。国に与えら  れた一極集中是正の課題に注力することなく、逆に地  方の努力を求めるものである。  権限移譲すれば収益が増え、地域振興にも活用できる  という狙いには無理がある。  結局、文化財が軽視されるのではないかということが  懸念されている。  ☆文化財保護には、財政と人材面での支援が必要     文化財の活用 万全の保存あってこそ        朝日新聞 2017/12/19   「観光立国」のためならば、多少の疑問や危うさ  には目をつぶる、ということか。  文化庁の審議会が、文化財に関する様々な規制を緩  め、地域おこしなどにも活用できるよう促す答申を  出した。  保存に重点をおいてきた従来の方針からの転換だ。  研究者団体などの慎重意見もあるなか、約半年の議  論でスピード決着させた。   この国の文化財の多くはもろく、すぐに劣化する。  活用に傾くあまり、保存がなおざりになれば、取り  返しがつかない事態を招きかねない。   急ぐべきは、両者のバランスを判断する力をもつ  専門家の育成と配置、そしてその能力を発揮できる  環境づくりである。  思い出すのは「一番のがんは学芸員。観光マインド  が全くない。この連中を一掃しないと」という、4  月の山本幸三・前地方創生相の暴言だ。 学芸員の  仕事に対する理解を欠き、先人が長年守ってきた遺  産を、単なる金もうけの道具としかとらえない考え  が透けて見えた。   最近は文化庁も「文化でかせぐ」をアピールする。  だが、目先の利益とは別の価値を大切にし、その意  義を説くことこそ、本来の役割ではないか。  国や都道府県は市町村をどうチェックし支えるか。  いかなる予算措置が必要か。文化財行政が首長の傘  下に移ったとき、観光・開発優先に走ったり専門職  員の声が届きにくくなったりする危険をどうやって  防ぐか。

 

中学時代のいじめ被害で訴訟

 

 ☆中学の同級生からいじめ

     28歳、中学時代のいじめで提訴
     「働けない」と卒業生の男性
       共同通信 2018/3/26

  兵庫県福崎町の町立中に在籍した3年間にわたり、
 同級生から暴行などのいじめを受けたのに、学校が
 十分に対応せず、心的外傷後ストレス障害PTSD)

 を発症し働けないとして、卒業生の男性(28)と母
 親が26日、同級生だった男性と両親、町に計約2億
 円の損害賠償を求め、神戸地裁姫路支部に提訴した。

  訴状によると、原告男性は2002年に入学。3年間
 を通じて元同級生から殴ったり蹴ったりされる暴行
 などの被害を受け、別々の高校に進学した後も嫌が

 らせが続いて高校の長期間休学や大学の中退を強い
 られたと主張。14年にPTSDと診断され、仕事に就く
 ことができないとしている。


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 ☆いじめ被害で働けない   中学時代のいじめが後々にも続き、PTSDを発症して  働けなくなったという訴えですが、中学卒業から10年  以上経過している。   学校は全力で対応した、提訴に驚いていると説明し  ている。  他方、原告側は「学校は加害者を擁護した。原告を隔  離して、組織ぐるみの迫害があった」と主張し、診断  を受け弁護士に相談して提訴に踏み切った、という。   不法行為を受けた被害者は、3年間という消滅時効の  期間内に損害賠償の請求をしなければならない。  今回の賠償請求は認められるのか、特に消滅時効の起  算時点をいつと判断されるか。   PTSDと診断されて弁護士に相談し、提訴したという  ことが消滅時効の進行においてどう解釈されるか。  被害者が損害の発生を現実に認識した時がいつになる  かで結論が分かれる。  ☆賠償請求権の消滅時効   不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はそ  の法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間  行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為  の時から二十年を経過したときも、同様とする。  (民法724条)   「損害及び加害者を知った時から三年間行使しない  ときは、時効によって消滅する」という規定について、  具体的に次のように説明されている。 *損害を知った時    最高裁 平成14年1月29日 判決   民法724条にいう「被害者が損害を知った時」とは、   被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解   すべきである。   不法行為の被害者は、損害の発生を現実に認識して   いない場合がある。損害の発生をその発生時におい   て現実に認識していないことはしばしば起こり得る   ことである。   民法724条の短期消滅時効の趣旨は、被害者が不法   行為による損害の発生及び加害者を現実に認識しな   がら3年間も放置していた場合に加害者の法的地位   の安定を図ろうとしているものにすぎず、それ以上   に加害者を保護しようという趣旨ではない。 *加害者を知った時    最高裁 昭和48年11月16日 判決   民法七二四条にいう「加害者ヲ知リタル時」とは、   同条で時効の起算点に関する特則を設けた趣旨に鑑   みれば、加害者に対する賠償請求が事実上可能な   状況のもとに、その可能な程度にこれを知った時を   意味するものと解するのが相当である。  ☆後遺症の場合の原則は   「加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能  な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を  知った」のはいつなのか。   (後遺障害の症状固定診断の時       から消滅時効が進行するという判決)    最高裁 平成16年12月24日 判決   被上告人は、本件後遺障害につき平成9年5月22日   に症状固定という診断を受け、これに基づき後遺   障害等級の事前認定を申請したというのであるから、   被上告人は遅くとも上記症状固定の診断を受けた   時には、本件後遺障害の存在を現実に認識し、加害   者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況   の下に、それが可能な程度に損害の発生を知った   ものというべきである。   症状固定の診断の後、申請した自動車保険料率算定   会による等級認定は、保険金額を算定することを   目的とする損害の査定にすぎない。   被害者の加害者に対する損害賠償請求権の行使を何   ら制約するものではないから、消滅時効の進行に   影響しない。  *この判決によると、「損害を知った時」とは損害の   程度や金額まで知る必要はない。後遺障害の等級   認定手続をしても消滅時効の進行を遅らすことに   ならない。  ☆特別の事情があるとき   しかし、特別の事情があるときは時効による消滅の  効果に影響する。  予想できなかった後遺症が発症した場合は、示談成立  後にも賠償請求ができるとする判決がある。  (示談成立後でも、当時予想できなかった   後遺障害が発症した場合、損害賠償を請求できる)    昭和43年3月15日 最高裁 判決   交通事故による全損害を正確に把握し難い状況の   もとにおいて、早急に小額の賠償金をもって示談   がされた場合において、示談によって被害者が   放棄した損害賠償請求は、示談当時予想していた   損害についてのみと解すべきであって、その当時   予想できなかった後遺症等については、被害者は   後日その損害の賠償を請求することができる。  ☆違法の可能性があると認識できた時から   消滅時効の起算時点をいつにするかを争点とする  裁判で、違法の可能性があることを認識できた時  (=弁護士から指摘された時)を起算点とすべきと  いう最近の判決がある。   商品先物取引により損失を被ったことを知ったと  いうことだけでは、損害賠償請求が可能な程度に  損害、加害者を知ったとはいえない、とされた。  (損害及び加害者を知った時について)    名古屋高裁 平成25年2月27日 判決   取引に関して違法なものである可能性があること   を認識できた時をもって、事実上可能な程度に   損害及び加害者を知ったものというべきである。   控訴人は、弁護士から本件取引による損失につい   て、違法な商品先物取引による被害である可能性   がある旨指摘されたことによって、不法行為によ   る損害賠償請求権についての損害及び加害者を知   ったものである。   従って、民法724条前段による3年の消滅時効期間   は、(弁護士から指摘された)平成23年3月4日か   ら進行するというべきである。          (取引終了からは9年経過)

 

正規、非正規労働者の格差訴訟

 ☆不合理な格差かどうか

   正社員との待遇格差で最高裁が初の判断へ
       NHK 2018年3月7日

  正社員と契約社員などとの待遇の違いが労働契約
 法で禁止されている不合理な格差にあたるかどうか
 が争われた裁判で、最高裁判所は、来月双方の主張
 を聞く弁論を開くことを決めました。

 最高裁は、どのような待遇の違いが不合理な格差に
 あたるのか、初めての判断を示すものと見られます。

  労働契約法の20条では、有期雇用の契約社員など
 と正社員との間で待遇に不合理な格差を設けること
 が禁じられています。

 この規定をめぐって、横浜市の運送会社と浜松市の
 物流会社の嘱託社員や契約社員が同一の待遇を求め
 てそれぞれ起こした2件の裁判で、最高裁判所は、
 来月20日と23日に双方の主張を聞く弁論を開くこと
 を決めました。

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 ☆同じ仕事で待遇が違う

  同じ仕事をしているのに正社員と非正規で賃金など
 に格差がある。この格差は不当だと各地で訴えが出て
 いる。

  過去の裁判では、職種が違う、雇用形態が異なる場
 合に客観的に格差を判断することは難しいとされた例
 がある。

  「賃金が労働の対価であるといっても、年齢、学歴、
  勤続年数、企業貢献度、勤労意欲を期待する企業側
  の思惑などが考慮され、純粋に労働の価値のみに
  よって決定されるものではない。

  雇用形態が異なるから賃金制度も異なるが、これを
  必ずしも不合理ということはできない。」

   (大阪地裁 平成14年5月22日 判決)


  一方、様々な要因に基づく待遇の差に使用者側の
 裁量も認めるが、その格差が許容範囲を越えれば、
 公序良俗違反となる。


  「業務内容、勤務時間及び日数等が正社員と同様と
  認められる臨時社員の賃金が、勤務年数の同じ正社
  員の8割以下という顕著な賃金格差を維持拡大しつ
  つ長期間の雇用を継続した。

  均等待遇の理念に違反する格差であり、会社が賃金
  格差を正当化する事情を何ら主張立証していない。」

  (違法の判決:長野地裁上田支部 平成8年3月15日)



 ☆労働契約法の規定

  過去の裁判で格差を容認する判決、違法とする判決
 に分かれていたが、平成25年に法改正があり労働契約
 法に次のような規定が盛り込まれた。

 *労働契約法20条

  有期契約者の労働条件が、期間の定めがあることに
 より、期間の定めのない契約者の労働条件と相違する
 場合には、職務の内容などの事情を考慮して、不合理
 と認められるものであってはならない。


  最近の格差訴訟で通勤手当、年末年始勤務手当、住
 居手当に差があるのは不合理で違法だとする判決が相
 次いでいる。

  労働条件の格差が、相当な事情に基づいているので
 あれば、使用者側は合理的に説明しなければならない。

  説明にならないと分かる場合と容易に判断できない
 ことがある。仕事内容の違いが賃金差をどの程度まで
 許すのか、その線引きは難しい。



 <最高裁の判断は>

  裁判で格差を容認した判決の理由には、正社員に対
 する将来の役割期待を上げるものがある。

  *将来的に枢要な職務及び責任を担うことが期待さ
   れる正社員

  *優秀な人材の獲得や定着を図る

  *長期的な勤務に対する動機付けを行う


  しかし、経験や能力、成果などに違いがないのに
 将来の期待を込めて格差を正当化することはできなく
 なっている。

  過去に正社員の8割以下となれば許容範囲を超える
 とした判決もあるが、これからの裁判で不合理と決め
 る判断基準を最高裁が有効に示せるか問われている。

 

大学定員抑制法で一極集中の是正か

 ☆東京一極集中是正法案

    東京一極集中是正法案:23区内の
    大学の10年間定員凍結
      毎日新聞 2018年1月19日

  政府は、「東京一極集中」を是正する法案の概要
 をまとめた。東京23区内の大学の定員増を10年
 間認めず、地方の大学や中核産業の振興計画を作成
 した自治体に助成する。

 梶山弘志地方創生担当相は19日、法案概要を示し、
 「東京の一極集中をしっかり是正していくことが
 地方創生にもつながる。政策総動員であたりたい」
 と述べた。安倍政権は2019年の統一地方選や
 参院選対策として、地方創生に注力する方針だ。

  東京圏(東京、千葉、神奈川、埼玉の1都3県)
 に地方から若者が流入していることを踏まえ、東京
 23区内の大学を対象に、10年間の時限措置とし
 て「学部などの学生の収容定員を増加させてはなら
 ないと規定する。

  「ただ、定員増を法律で凍結する方針に対しては、
 日本私立大学連盟の鎌田薫会長、、、東京都の小池
 百合子知事も「東京の国際競争力を低下させる」と
 撤回を求めた経緯がある。政府は時限措置にする
 ことで関係者の理解を得たい考えだ。


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 ☆何を優先するか

    一極集中是正/地方大振興と言うなら
       信濃毎日/2018/1/17

  東京の大学の定員を抑えれば地方は活性化する。
 そんな短絡的な発想で法律をつくっては困る。

  政府は東京23区内の大学定員増を原則10年間
 認めないとする一極集中是正の関連法案をつくり、
 22日召集の通常国会に提出する方針である。


  だが、東京の大学を出た若者があまり地方に戻ら
 ないのは、希望する就職先が少ないことが大きな
 要因だ。大学定員を抑えて解決する問題ではない。

  一極集中是正のため優先すべきは地方の雇用の確
 保である。企業の本社機能の地方移転や地方採用枠、
 地域限定社員の導入などを促す施策を強く進めるべ
 きだろう。

  大学が多い都会で学生が学ぶことは地方にとって
 マイナスではない。さまざまな勉強をした若者たち
 がUターンできれば、地域の活力になる。定員抑制
 は時代に合った学部・学科の新設を妨げ、学生の選
 択の幅も狭めてしまう。



 ☆東京一極集中をどうするのか

  東京の大学定員を抑制して、一極集中を是正すると
 いうのは短絡的で困ったことだと思う。

 大学を卒業しても、他に魅力的な都市がなければ東京
 へ東京へと集まる。

  人口と産業の集積が多様な魅力と吸引力をもたらし、
 モノ・カネを呼び込んでいる、と最近の首都圏白書は
 認めている。

 更に国際競争力を強化して日本全体を牽引しなければ
 ならないという。

  国際競争のために東京へ資金、人材、企業を更に集
 中すべきだという主張は、そのまま逆に地方が不利で
 ある理由を表している。

 収益性が低いのは地方の努力不足が主因ではない、
 だから政府や企業の機能を地方に移転しなければなら
 ないと決めたはずである。

  首都機能の移転が実現するまでは、首都税のような
 国税をかけて地方に渡しても良さそうだが、東京都は
 独自財源を侵すべからずと、主張しているらしい。



 ☆一極でなく多極を目指す

    東京一極集中 このままじゃいけない
       朝日新聞 2017年2月20日

  東京一極集中に歯止めがかからない。 総務省の
 人口移動報告で、東京圏の1都3県は昨年も12万
 人弱の転入超過になった。

  過度の一極集中は日本全体の未来を揺るがしかね
 ない。どうすれば是正できるか。地方創生の5カ年
 計画の折り返しを迎える今、政策を練り直すべきだ。

  根本的な問題点は、東京に集まり過ぎている行政
 や経済の機能を、国土全体にどう分散していくか、
 という骨太の理念がいっこうに見えないことだ。

  地方創生の目玉だったはずの中央省庁の地方移転
 が、その典型だ。 全面移転するのは文化庁のみに
 とどまった。


  「東京一極でなく、多極を目指す」という理念を
 明確かつ具体的に示すべきではないか。

  今の地方創生はもっぱら国が交付金で自治体の奮
 起を求める相変わらずの中央集権型だ。政府は昨年
 末から、東京都心部の大学の新増設を抑える検討も
 始めた。だが卒業後も働きやすく、住みたいと思わ
 せる地方を増やさないと、若い世代の流入を抑える
 効果は期待薄だろう。

  地方の魅力を高めるには、核となる都市を中心に、
 各地域の特性を踏まえた策を実行していくしかある
 まい。そのためには、地方が自主性を発揮できる
 権限と財源が欠かせない。

 

40代の貧困と高齢者の社会保障

 ☆働き盛り世帯で低所得化

    働き盛り世帯で年間所得300万円
    未満の割合が増加
        TBS 10/24

  世帯主が40代の働き盛り世帯で年間の所得が
 300万円未満の割合が増加していることが、厚生
 労働省の調査で分かりました。

  24日公表された厚生労働白書によりますと、世帯
 主が40代で年間の所得が300万円未満の世帯の
 割合は1994年の11.2%から20年間で5.4
 ポイント増加し、16.6%でした。

  一方、世帯主が65歳以上の高齢者世帯では100
 万円未満の割合が減少し、200万円以上500万
 円未満の割合はおよそ6ポイント増加し、48.2%
 でした。

  白書では、社会保障高齢者に手厚い仕組みになって
 いて、今後は現役世代の所得の向上を支援し、全世代
 型の社会保障へ転換していくべきと指摘しています。



 ☆所得の分布状況

  基礎資料となっている国民生活基礎調査を比較する
 と年齢別、所得金額階級別分布は次表のようになって
 いる。
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 年間所得200万円未満の割合は

   平成9年 → 平成28年

 (総数で)14.8 → 19.6% = 1.32倍

 (40代で) 5.3 → 9.5 = 1.79倍

 (65歳以上)26.4 → 28.2 = 1.07倍

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 ☆40代の高所得者    20年間の推移をより詳しく比較すると   f:id:ansindsib:20180104043308j:plain
  40代で高所得者の割合が目立っている。

 (1)たしかに、40代で低所得者の割合が上昇し逆に
   65歳以上は、上昇が少ない。

 (2)しかし、総数で見ても300万円未満、100万円未
   満ともかなり上昇している。

   この間に1世帯当たり平均所得金額は17%減少し
   ており、所得の中間を表す中央値は21%減少して
   いる。

   低所得化は全世代に及んでいることを示している。


 (3)一方、高所得者の割合を比較すると、40代では
   500万円以上の高所得者の割合は他の年代に比べ
   堅調である。総数での減少に比べ緩やかになって
   いる。
      (40代は0.9倍、総数で0.79倍)


 (4)要するに、40代では低所得者が増加している反
   面高所得者の減少があまりない。

 (5)所得格差が40代において、顕著になっているこ
   とが分かる。



 ☆所得格差の広がり

  40代で低所得化しているこの期間に、非正規雇用労
 働者が15%余り増えているという現象が並行している。

 厚労省が、40代が高齢者の社会保障充実のために犠牲
 になって、低所得化していると導くのであれば不適切
 である。

  世代間の不公平ではなく、各世代ともに所得格差が
 広がっているのを解決しなければならない。

 必要なのは、低所得層のかさ上げによる格差解消であ
 り、そのため高所得者に貢献を求めること。福祉削減
 の政策は、これと逆行している。

 

有期契約から無期労働契約に転換する

 ☆無期労働契約への転換を回避

  大手自動車メーカー、期間従業員の無期雇用を
   回避 労働契約法の「5年ルール」が骨抜きに
     朝日新聞 2017年11月04日

  トヨタ自動車やホンダなど大手自動車メーカーが、
 期間従業員が期限を区切らない契約に切り替わるの
 を避けるよう雇用ルールを変更したことが分かった。

 改正労働契約法で定められた無期への転換が本格化
 する来年4月を前に、すべての自動車大手が期間
 従業員の無期転換を免れることになる。雇用改善を
 促す法改正が「骨抜き」になりかねない状況だ。

  2013年に施行された改正労働契約法で、期間
 従業員ら非正社員が同じ会社で通算5年を超えて働
 いた場合、本人が希望すれば無期に転換できる「5
 年ルール」が導入された。

 申し込みがあれば会社は拒めない。長く働く労働者
 を無期雇用にするよう会社に促し、契約期間が終わ
 れば雇い止めされる可能性がある不安定な非正社員
 を減らす目的だった。

 施行から5年後の18年4月から無期に切り替わる
 非正社員が出てくる。

  改正法には企業側の要望を受け「抜け道」も用意
 された。

 契約終了後から再雇用までの「空白期間」が6カ月
 以上あると、それ以前の契約期間はリセットされ、
 通算されない。これを自動車各社が利用している。

 

 

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 ☆労働契約法改正

 *無期労働契約への転換

  平成25年4月1日から施行された労働契約法改正に
 より、以降に有期労働契約の締結もしくは更新をした
 場合には、その5年後の平成30年(2018年)4月1日か
 ら、労働者は使用者に対して無期雇用の申込みができ
 るようになる。

  厚労省の説明によると、この改正は「有期労働契約
 の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消」
 することを目的にしている。

  多くの会社で有期社員が戦力として定着しており、
 恒常的な労働力であることから、1年契約を毎年自動
 的に更新しているという実態を背景にしている。



 ☆無期転換で企業に負担感

  ところが、この無期転換のルールは企業側には負担
 が掛かることから、2018年問題として対策が検討され
 ているという。改正の趣旨に反する対応が問題になって
 おり、上の新聞記事はその典型です。


  景況などの理由で人員整理するにも解雇ができない、
 無期契約とする場合にどういう労働条件にすれば企業
 負担がやわらぐか。


 *無期転換を実施する労働者を制限するため、能力や
  貢献度を厳しく評価する

 *有期契約労働者の更新を慎重にして、無期転換を
  避ける



 ☆クーリング期間を利用

  無期転換を免れるために大手自動車メーカーが利用
 しているのが、クーリングという6カ月の「空白期間」
 です。

 今回の法改正で、有期労働契約の間に契約がない期間
 が6か月以上あるときは通算契約期間に含めないという
 例外規定が設けられた。

  これについて、厚労省は「無期転換ルールを避ける
 ことを目的として、無期転換申込権が発生する前に
 雇止めをすることは労働契約法の趣旨にてらして望ま
 しいものではない」と説明している。

 労働組合総連合は、雇止めの抑制策や法施行後の検証、
 制度の見直しを訴えている。



 ☆雇い止め、解雇の制限

   ただし、有期労働契約の雇止めが認められるかとな
 ると簡単ではない。雇止めについても解雇権濫用とし
 て無効となることがある。

 最高裁判決で示された次の場合に「客観的に合理的な
 理由を欠き、社会通念上相当であると認められないと
 き」は雇止めが認められず、従前と同一の労働条件で
 有期労働契約が更新される。


 *過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止め
  が無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認
  められるもの
   (最高裁 昭和49年7月22日 判決)


 *労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時
  にその有期労働契約が更新されるものと期待するこ
  とについて合理的な理由があると認められるもの
   (最高裁 昭和61年12月4日 判決)