願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

混合介護と経済の活性化


 <混合介護の規制緩和>       「混合介護」「転職支援」など議論へ       規制改革推進会議         産経新聞 2016.10.6   政府の規制改革推進会議は6日開いた第2回会合で、  今後、重点的に検討を進める課題として「介護サービス  改革」「転職支援」など計5分野を決めた。  介護保険と保険外サービスを組み合わせる「混合介護」  の規制緩和なども議論、安倍晋三政権が最優先に掲げる  構造改革推進に役立てる。来年6月をめどに答申を取り  まとめる。   介護保険に関しては、介護報酬の対象とならない保険  外サービスを同時に提供する「混合介護」は原則禁止さ  れている。ただ、規制が緩和されれば多様なサービスが  可能となり、競争市場の活性化が期待できる。          規制改革の再起動で成長の天井を破れ        日本経済新聞 2016/9/8     全国レベルの規制改革を担ってきた規制改 革会議は、農協改革や保険診療保険外診療    を併用する「混合診療」の拡大を主導した。     これに対し、東京圏、関西圏などが指定さ    れた国家戦略特区では、民家を宿泊施設とし    て提供する「民泊」が実現した。     介護保険のサービスと、保険外のサービス    をくみあわせた「混合介護」の弾力化も実現    すべきだ。第4次産業革命の進展をにらんだ    規制・制度改革も促進したい。     働き方改革として、安倍政権は長時間労働    の是正や同一労働同一賃金を重視しているが、    それだけでは足りない。    成長産業に人材を円滑に移動させるには、    人材紹介などの規制改革も必要である。    少子高齢化が進む中、低い潜在成長率という    天井を突き破るため、規制改革による生産性    向上を急がねばならない。    

    f:id:ansindsib:20161121081756j:plain

 <社会保障制度の縮小>

  規制改革の会議は農業や雇用、医療などの岩盤規制を
 突破するという目的を持ち、農業では株式会社の参入を、
 雇用では解雇規制の緩和などを求めている。

 そして、医療では混合診療の全面解禁を目指しており、
 混合介護を自由に利用できるようにというのも、その
 一環です。

 多様なサービスが提供されて、利用者の利便が向上する
 という解説がされているが、利用者側の要求に応える
 だけに考えられてはいない。

  日本の財政事情は厳しいから、社会保障制度を縮小し
 て経済成長を促進する必要がある。公的保険の適用範囲
 を見直し、公的支出を減らすとともに関連産業の活性化
 を図るというのが主たる目的です。

  混合介護の条件を緩和すれば、介護職の賃金を上げて
 人材の流出を防ぐことができる。介護事業者は多様な
 ニーズに応えた保険外サービスを提供して収益を上げら
 れ、介護業界が成長していく。


 <利用者と提供者側の立場>

  積極推進の立場からは、こうした見方がされているが
 一方、反対側からは、社会保障制度の介護保険を競争
 市場に向けるのは問題だ、所得の差によりサービスに差
 が出ることが懸念されるとしている。

  要介護者の多くは基礎疾患を抱え、負担が過重であり、
 自費サービスを使う余裕はない。

  また、介護される人には認知症などで物事を判断でき
 ない人もあり、利用者側の立場は弱い。提供者側が有利
 になれば、余計なサービスを使う可能性があると説明する。

  現在の厚労省は、混合介護を進めて思わぬサービス料
 を請求されることもあり、利用者保護が損なわれるおそれ
 があるとして慎重といわれている。



      「混合介護」を大きく育てよ        日本経済新聞 2016/9/6     要介護者が増えるのにあわせ、介護給付費は    2015年度の約10兆円から25年度に約20兆円に増    える見通しだ。    一方で日本の財政事情は厳しく、介護人材の処    遇改善のために公定価格である介護報酬を大き    く引き上げるのは難しい。     そんな状況下で混合介護が利用しやすくなれ    ば、事業者は多様な保険外サービスを提供し、    収益を増やしやすくなる。     結果として民間の力で介護職員の賃金を上げ、    人材の定着により介護人材の不足を緩和しやすく    なる。事業者の活発な競争を通じてサービスの    質は向上し、利用者の利便性も増すだろう。     厚労省は混合介護を利用できる条件を緩め、    必要なら法改正も検討してほしい。経済活性化    の効果が期待できる混合介護の弾力化措置に今    こそ踏み切ってほしい。

 

教育再生のため家庭のあり方を


  <家庭や地域の役割>      自民党「学校・家庭・地域の役割分担」      議論へ部会設置        産経ニュース 2016/10/14   自民党教育再生実行本部(本部長・桜田義孝元文部  科学副大臣)は14日の会合で、「学校・家庭・地域の  教育部会」などの部会を設ける構成案を了承した。  政府の教育再生実行会議は教師の長時間労働が問題だと  して家庭や地域との役割分担に関する議論に近く着手す  る予定で、党も政府と連動して検討を進める。

   f:id:ansindsib:20161121081756j:plain


  <社会化に逆行>   貧困、医療、高齢者介護などを、家庭内に閉じ込めず  社会全体で支えていく「社会化」が進行しているはずが、  最近は個人の責任を強調する姿勢が目立っている。  教育についても奨学金の充実を目指すのは、親の貧困に  左右されぬよう子供を社会で育てるということではな  かったか。   学校や教員の負担が増しているから、家庭や親が責任  を果たすべきだという。全く逆転した発想ではないか。  様々な家庭の事情に配慮せずに教育を担わせる、子供の  権利を削減し、生活に干渉するとは理解できない。  仕事のために教育に時間を割けない家庭の子は一層不利  になる。格差を広げる原因を作り、教育の機会均等精神  にも反している。  <家庭のあり方>     わが家は共働きで2人とも時間は不規則     沖縄タイムス 大弦小弦 2016年11月22日   わが家は共働きで2人とも時間は不規則。口が裂けて  も「子どもへの家庭教育はしっかりやっている」なんて  言えない。自民党はそんな家族を「公的に助ける」とし  て、来年の通常国会に法案を出す。その名は「家庭教育  支援法案」。   一見聞こえがいいネーミングだが、家庭教育を「国家  と社会の形成者として必要な資質を備えさせる」と規定。  自治体はそれに沿った方針を立て、地域住民は協力する  「責務」を負うという内容だ。   「自主性の尊重」は明示されるが、国が「家庭のあり  方」を一律に決め、できなければ自治体や地域が介入す  る。今、盛んに言われている「困っている家には周囲が  手を差し伸べよう」とは似て非なるものだ。   そもそも法案は、子育てに困難を抱える親が求めてい  るものなのか。保育園の充実、現状の支援活動への助成  や人員増など、国がやるべきことは山積している。   識者から「法案は家庭での個の尊厳をうたう憲法24  条改定への布石では」と危ぶむ声が出ている。麻生太郎  副総理が理想とする改憲の手口を「ある日気付いたら変  わっていた」と言ったとおり、法案がすんなり成立し  そうなのが怖い。   国が単一の価値観を法で規定すれば、そこから外れる  人にとっては生きにくい社会になる。周囲に頼りっぱな  しで子育て中の身だが、大きなお世話だ。

 

収賄事件で退職金の返還は?

 

 <退職金返還命令>

     伊勢崎市 収賄有罪判決の元部長に
       退職金返還命じる
       東京新聞 2016年10月29日

  伊勢崎市は二十八日、市発注の工事を巡る贈収賄事件
 で一審で有罪判決を受けた金井哲夫元建設部長(61)

 に対し、条例に基づき既に受け取った退職金を全額返還
 するよう命じた。市は金額を明らかにしていないが、約
 二千五百万円程度とみられる。

  市が元職員に退職金返還を命じるのは、この条例が制
 定された二〇〇八年以来初めて。条例では、在職中に

 懲戒免職に相当するような行為があったり、在職中の
 行為で禁錮以上の刑事処分を受けたりした場合は退職金
 返還を命じることができる。

  金井元部長は一三年五月と七月、道路などの補修工事
 を市内の土木工事会社が受注できるよう便宜を図った見
 返りに、同社の元役員=贈賄罪で有罪確定=に車購入代

 金や車検代を支払わせ、現金計七十四万六千百五十円を
 受け取ったとして収賄罪に問われた。先月三十日、前橋
 地裁は金井元部長に対し、懲役一年六月、執行猶予三年
 追徴金七十四万六千百五十円の判決を言い渡した。

    f:id:ansindsib:20161118055047j:plain


 <元職員の生活は>   退職金の返還を命じるといっても、市と元職員に法律  関係はないから、返還を請求して応じない場合は裁判を  起こすものと考えられる。  たしかに収賄事件で有罪になったから、市に大きな損害  を与えた人ですが、本人にも生活がある。   懲戒解雇などで退職金を支払わない、返還を求めると  いうケースはよく報道されています。  ただ、裁判では退職金返還について慎重な判断がされて  いる。 問題は退職金の性格です。  退職金には功労報償的な面もあるが、賃金の後払い的な  意味があり、退職後の生活保障的な機能を果たすことも  あると理解されている。  <懲戒処分と退職金不支給>   例えば、飲酒運転で懲戒免職となった岩手県の元教諭  への退職金の支払いなどを巡って争われた裁判で仙台高  裁は、懲戒免職の取り消しは認めなかったが、退職金を  支給しなかった処分を取り消した。  「学校教育への長年の功績を考えれば、退職金を支給し  ないほどの違法行為とは言えない」と判断している。  この場合の判断基準は、問題が特に背信的であって、  永年勤続の功を抹消してしまうほどの行為と言えるか  にある。  その程度によっては、退職金の全額又は一定割合を支払  うべきだとされることがある。就業規則に不支給の規定  があっても全面的には適用されない。  <犯罪行為で処分>   収賄事件ではないが、痴漢行為で執行猶予付き判決を  受けた鉄道会社職員について、東京高裁が懲戒解雇は  有効としたが、退職金は、職員の行為に相当程度の背信  性があったとはいえないことから、全額不支給ではなく  3割を支給すべきであるとした事例がある。   伊勢崎市の件は公務員の犯罪行為であり、組織の規律  市民の信頼等を考慮して、勤続の功も抹消するほどの  行為だと判断されるかどうか。

 

就職率が好調、早期離職も多い

 <3年以内の離職率>

       3年以内の離職、31.9%
       13年春の大卒者 厚労省
        時事通信 2016/10/25

    厚生労働省は25日、2013年3月に大学
   を卒業し、就職した人の離職状況調査を発表し
   た。卒業後3年以内に勤め先を辞めた人の割合
   は前年比0.4ポイント低下の31.9%とな
   り、2年連続で減少した。

   ただ、雇用情勢の改善を背景に希望する仕事を
   求めて転職する人が引き続き多いとみられ、
   3年以内の離職率は4年連続で30%を超えた。

   離職率は1年目が12.8%と最も高く、2年
   目は10.0%、3年目は9.1%。

    3年以内の離職率を事業所の規模別で見ると
   5人未満は59.0%に上るが、1000人以
   上では23.6%にとどまり、規模が大きい
   ほど離職率は低い。

   業種別では、宿泊・飲食サービス業が50.5
   %と最も高く、電力・ガス・熱供給・水道業が
   8.5%と最も低かった。



 <退職理由は>

  理想と現実のギャップと表現されているが、具体的に
 は仕事が合わないこと、労働時間・休日の問題やノルマ
 の重さなどをあげているという。

 つまり、会社側か求職者側かいずれかに情報が十分では
 なかったということ。知識不足が原因になる場合もある
 が、極端にいえばブラック企業のように適切な情報を示
 さず契約する場合がある。

 本来、合意に至ることがないようなケースがあるという
 ことは、就職後3年にならなくとも就職すら避けても
 おかしくない、不本意な就職といえる。



 <その後の再就職は>

    年長者が、「若者には我慢が足りない」ということが
 あるが、事情を知っていないと批判される。

 まず、企業側の事情として人件費を使う余裕がない、
 新入社員に研修などスキルを着けるためのコストを惜し
 むようになっている。

 スキルを必要としない企業、単純作業の多いサービス業
 など離職率の高い業界への就職率が高いのが現実である
 のに、好況を反映して全体に求人が伸びているかの報道
 は偏っていると指摘されている。

  従って、早期離職後の再就職は厳しく、もっと条件の
 悪い企業、ブラック的な業界に行ってしまうという状況
 があるという。

 キャリアを積めず、「キャリアがない」と扱われるから
 次の就職先を探すのは容易でない。

 一方、離職率の低い会社は、コストをかけても教育して
 いるので辞められない、定着する傾向がある。


  * * * * * * * * * * *


 <就職率は最高を更新>

     大卒就職率97.3% 1997年
     以降で最高
       朝日新聞 2016年5月20日

    今春卒業した大学生の就職率は97・3%で
   前年同期から0・6ポイント増え、調査を始め
   た1997年以来最高となった。文部科学省と
   厚生労働省が20日発表した。

   2011年に最低(91・0%)を記録した後
   5年連続で改善し、これまでの最高だったリー
   マン・ショック前の08年3月卒(96・9%)
   を上回った。

    就職率が改善した理由について、文科省の担
   当者は「景気が良くなって企業側の求人需要が
   非常に高まっている」と説明。


    全国の高校に実施した調査では、今春卒業し
   た高校生の3月末時点の就職率は97・7%
   (前年同期比0・2ポイント増)と6年連続で
   改善。調査は1977年から続けており、24
   年ぶりの高水準だった。

   特に製造、建設、小売業の求人数が伸びたと
   いう。

 

農業と鉄道会社で働く

 <農業の競争力>

    農業とIT 実用化で輸出競争力高めよう
       読売新聞 2016年09月27日

    農業を収益性の高い成長産業にするには、
   若者や企業など多様な担い手を呼び込むことが
   欠かせない。それには、農業とITの結び付き
   をより強固にすることだ。

    畜産物や果実は、日本産の高級品が海外でも
   人気を博す。先端技術が実用化されれば、輸出
   競争力を一段と引き上げるだろう。

    IT活用の効果を最大限に発揮させるには、
   構造改革を進めることも忘れてはならない。

   自動化や機械化のメリットをより大きく引き出
   すためには、営農の大規模化が不可欠だ。

    バラマキ型の農業補助制度を改め、経営意欲
   の高い中核的な農家に支援を集中する。企業に
   よる農業参入のハードルを下げる。農地を集約
   して規模拡大を図る。

    農業の「稼ぐ力」を強めるには規制改革と
   技術革新の相乗効果を上げる戦略が求められて
   いる。


  * * * * * * * * * * *


 <棚田を守る>

  「儲かる農業」を謳い、農業の収益性を向上させる、
 競争力をつけると強調する。

 地方農村に行っては、「美しい日本」「棚田を守る」と
 演説する政治家がいる。

  棚田を守るとは、農業を食料生産に限ることなくその
 多面的機能を認めること、そのために補助を惜しまない
 ということ。

  「農業に多面的機能」というと、経済関係者はこれを
 ムダとして切り捨てる。

  ムダといえば、地方の赤字鉄道廃止を主張する。また、
 過疎地の保護をやめて都市に集住することも主張する。

 彼らは経済効率第一で多様性を侮り、画一的な社会を
 進めることになる。

  自然にしても社会的にも、画一的なものよりも多様性
 を持った方が生き残りやすいと一般に考えられている。

 画一的な社会の危険性は、現在でも広く認識されており、
 いかにして、多様性を図るかは重要な課題となっている。

  農業に環境保護、景観や農村地域の文化保全などを認
 めること、地方の多様な都市が発達、存在することに
 重きを置くかどうか。

 ヨーロッパなどの農業国も、こうしたことを目的に補助
 をしていることはよく知られている。


 <兼業農家>

  農業に収益性を求め、その生産で自立することを求め
 る立場からは兼業農家は、農業を遅らせる弊害とされる。

  しかし、どの企業でも主力部門を専業で通しているの
 は数少ない。トヨタは織機からスタートしてトラック、
 そして乗用車の自動車生産が中心になっている。

  最近農業就業者が増えているといわれるが、被用者と
 しての就業が多い。つまり、農業労働プラス安定収入が
 受け入れられている。兼業農家を批判する必要があるか
 どうか。

  多角経営で企業を維持、発展させているのがほとんど
 だろうが、JRについても注目されている。



 <JR九州の副業>

       JR九州30年越しの上場
       ななつ星と副業と
        NHK 2016.10.28 

   *上場実現の秘策は「副業」

    危機感を募らせた社員たちが収益改善の秘策
   と考えたのが「副業」、つまり異業種への参入
   でした。

   駅ビルやホテル開発はもちろん、マンション開
   発に学童保育の運営。農業、ドラッグストア、
   それに居酒屋や八百屋など、将来の成長が期待
   出来る事業には何でも挑戦しました。

    JR九州は数々の副業で経営を多角化し、収
   益源をいくつも育てた結果、今年3月期の決算
   で、売り上げにあたる営業収益が過去最高の
   3779億円に上りました。

   このうちの実に6割が鉄道運輸収入以外の関連
   事業によるもので、JR九州は約30年をかけ

   て従来の「鉄道会社」のビジネスモデルを超え
   た「総合的なまちづくり企業」に姿を変えたの
   です。

 

外国人実習で補完できるか

 <介護職に外国人>

      介護職に外国人材拡大 関連
      2法案が衆院通過
      日本経済新聞 2016/10/25

    人手不足が深刻化する介護現場での外国人材
   の受け入れを増やす出入国管理・難民認定法
   改正案が、25日午後の衆院本会議で自民、公明、
   民進など各党の賛成多数で可決された。

   日本の介護福祉士の国家資格を持つ外国人を対
   象に介護職の在留資格を新設。働きながら技術
   を学ぶ技能実習制度の対象職種にも介護を新た
   に加える。

    技能実習の期間を最長3年から5年に延長す
   る外国人技能実習適正実施法案と併せて可決し
   た。実習先の団体や企業を監督する組織も新設
   し、実習生に対する人権侵害を防ぐ。

    現在、看護・介護の分野で外国人の受け入れ
   が認められるのはインドネシアなど3カ国と結
   ぶ経済連携協定(EPA)の枠組みのみ。

   法整備後はEPA締結国以外からも留学生とし
   て日本に入国し、介護福祉士の資格取得後に
   就労ビザに切り替えて正式に働くことが可能に
   なる。技能実習生には日本の介護サービスを学
   びながら就労に従事してもらう。

   厚生労働省の試算では2025年に日本国内で約
   38万人の介護職が不足するとされ、政府は外国
   人材の登用が不可避とみている。


  * * * * * * * * * * *


 <実習生の受入れ目的>

  技能実習制度については、劣悪な労働環境や賃金不払
 いが問題になっている。

 外国人技能実習生の受入れ先を調査した結果、7割以上
 で違反が見つかったという。

  技術移転による途上国の発展という目的は形ばかりで、
 実態は安い労働力として実習生を利用していると批判さ
 れている。

 国連や米国政府からは「人身売買」「強制労働」などと
 指摘されているという。

  今回受け入れの拡大で、実習生に対する人権侵害を防
 止する姿勢を見せている。監視機関を新設して、立ち入
 り調査ができるという。

 しかし、現在の制度的な問題を残したまま実習生の不当
 待遇が解決することはない。

  成長戦略の一つにしている目的は、低賃金や重労働を
 理由に日本人が避け、人手不足となっている職場に穴埋
 めとして使うことにある。

  こうした厳しい労働環境を改善して、まず日本人も
 好んで就労できる条件に変えることが必要である。

 でなければ、現在従事する労働者の賃金などは一層悪化
 していくおそれがある。

 人手不足が深刻で外国人材が必要という、その現場の
 労働環境を変えることこそ急ぐべき課題である。



 <人権軽視の構造問題>

       外国人介護職拡大へ
      人権軽視の「使い捨て」危惧する
       愛媛新聞 2016年10月26日

    2025年には介護職員が約38万人不足す
   るとされ、対策が急務であることに違いはない。

   だが、日本人でも賃金が安く抑えられ、厳しい
   労働環境から人手不足に陥っている現状を変え
   ることが先決だ。その抜本改革なしに外国人で

   安易に労働力の穴埋めをしようとしても解決に
   ならない。コミュニケーションの難しさから
   介護事故やサービス低下にもつながりかねない。

    このままでは働く外国人の人権が守られず
   「使い捨て」にされることを危惧する。技能
   実習制度に関してはかねて、劣悪な労働環境や
   賃金不払いが問題になっている。

   日本の技術を途上国の経済発展に生かすという
   本来の目的は形骸化しており、低賃金労働者の
   確保に利用されているとして海外からも批判が
   絶えない。

   制度自体廃止すべき時機がとうにきているにも
   かかわらず、拡大へ逆行することに異議を唱え
   たい。

    新たな「外国人技能実習適正実施法案」では、
   不正監視機関を設置し、受け入れ団体や企業を
   立ち入り調査するという。だがこれまで同様、

   実習生が働く場所を変更することは原則できず、
   実習期間の途中に受け入れ先の都合で強制的に
   帰国させることも禁じていない。

   実習生を弱い立場に押しやる構造的な問題の
   放置は看過できない。

    さらに政府は、現在フィリピンなど3カ国か
   ら経済連携協定(EPA)に基づき受け入れて
   いる介護職員についても、就労先を拡大する
   方針だ。

    だがEPAで来日した多くが仕事を辞めて
   帰国している現実を忘れてはならない。他職種
   に就いている実習生の失踪も後を絶たない。

 

消費喚起など、政府と経済界の構想とは

 <プレミアムフライデー>

     政府・経済界に「プレミアムフライ
     デー」構想 国内の個人消費喚起へ
     経団連、10月にも実行計画策定
        産経新聞 2016.8.13

    政府や経済界で、個人消費を喚起するため、
   月末の金曜は午後3時に仕事を終え、夕方を
   買い物や旅行などに充てる「プレミアムフライ
   デー」構想が検討課題に浮上していることが

   12日、分かった。経団連は政府に先行して、
   10月にもプレミアムフライデーの実行計画
   を策定する方針だ。

    政府は平成32年をめどに名目国内総生産
   (GDP)の600兆円実現を掲げている。

   経団連は、実現には現在300兆円にとど
   まっている個人消費を360兆円に引き上げ
   ることが欠かせないとみている。

    プレミアムフライデーは、早い時間の終業を
   受けて夕方に流通業界や旅行業界、外食産業
   などが連動してイベントを開催するという内容。

   流通業界には商品の価格を引き下げる「セール」
   への抵抗があることを踏まえ、イベントにする
   ことで消費喚起を前面に押し出していく狙いが
   ある。



 <柔軟な働き方>

        副業・兼業解禁へ研究会
        働き方改革推進 政府
        時事通信 2016/10/19

    政府は19日、働き方改革の一環として柔軟
   な働き方を広げるため、「副業・兼業」の解禁
   に関する研究会を新設する方針を固めた。雇用

   関係によらない「フリーランス」の働き方を
   議論する研究会とともに、11月中に経済産業
   省内に設置する方向で調整する。

    副業・兼業は、多くの企業が就業規則などで
   禁止しているが、最近では容認する動きも出て
   きた。2014年の中小企業庁の調査では、
   3.8%の企業が容認していた。

    政府が副業・兼業の解禁を検討するのは、企
   業が抱える有能な人材を広く活用するのが狙い。

   複数のキャリアを積むことで従業員の成長につ
   ながるとの期待もある。一方、労務管理が困難
   になったり、長時間労働を誘発したりする懸念
   も指摘されている。

    フリーランス雇用契約を結ばず、仲介業者
   などを通じて仕事を受注し、収入を得る働き方。
   専門性を生かせる好きな仕事を選びやすいとさ
   れるが、収入が不安定になる問題もある。


  * * * * * * * * * * *


 <イベント開催>

  個人消費が長く低迷しているのは賃金、勤労収入の
 減少が主な原因であるというのが一般的である。

 更に、社会保険料など負担の増大、不安定な雇用、社会
 保障の削減など将来不安の影響が指摘されている。

  商品券の発行やイベント開催といった一時しのぎの策
 が効果あるとは見られていない。



 <人材を広く活用>

 「コスト削減のため、企業が非正規労働者を増やした
  結果、低所得世帯の割合が上昇した。

  賃金を引き上げて個人消費の拡大を促し、経済を活性
  化させるべきだ」

 というのは、数年前に労働経済白書が指摘したところ
 です。

  また、人口減少問題については「若者の仕事の不安定
  化・非正規化は、結婚しない人を必然的に増やすこと
  になった。  結果として出生率・出生数の低下傾向に
  も歯止めがかかっていない。」

 という内容の提言を経団連が発表している。

  ところが、企業は雇用形態の柔軟化、残業代の引き下
 げ、解雇規制の緩和を求める。

 そうすると、労働者の収入は減少し生活が不安定になる。

  優先課題とすべきは、総賃金の下落傾向を止め、労働
 者の安定的な雇用を実現して将来展望を明るくすること
 だといわれている。

  今回の「働き方改革」として柔軟な働き方を広げると
 いうのは、内容としては企業が非正規労働者を広げ、
 人材を流動化していくことを促しているのではないか。

 「人材を広く活用する、勤め先に縛られない自由な発想
 で従業員が成長することを期待する」 というよりも、
 労働規制の緩和を図っていると見られている。

  労働者の処遇改善や従業員の成長よりも、狙いは企業
 から雇用に関する束縛を開放して経済の活性化につなげ
 ることではないか。



 <総人件費を増やす>

    働き方論議始動 総人件費増やす努力を
       北海道新聞 2016/10/02 

    政府の「働き方改革実現会議」の論議が始
   まった。

    社会の活力を高めるには、古い労働慣行を
   見直し、性別、年齢、雇用形態にかかわらず、
   働きやすい環境に変えることが必要だ。

    今回の会議では、長時間労働の抑制と同一
   労働同一賃金の実現が大きなテーマとなる。

    大企業の意識改革も欠かせない。近年、抑制
   傾向にある総人件費を増やすことに努め、多様
   な働き方を支えていってほしい。

    一方、国会では、時間ではなく成果で賃金を
   決める労働基準法改正案が継続審議中だ。野党

   が「残業代ゼロ法案」と批判するように、残業
   と一緒に人件費を削る方向に進むのならば問題
   である。

    働き方改革を、企業の人件費削減の道具にし
   てはならない。大企業は1990年代後半の

   金融危機などの経験から、企業の蓄えに当たる
   内部留保を積み増し、人件費を抑制する傾向を
   強めた。

    蓄えを優先し、人材への投資を軽んじた代償
   は大きい。その象徴が外資に買収されたシャー
   プや、粉飾決算問題を起こした東芝など、製造
   業の競争力低下だ。

    労働者への公正な報酬の配分こそが、企業の
   生産性を高め、持続的成長をもたらすはずで
   ある。