願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

嘱託殺人か殺人かの違い

 <教え子を殺害>

      福井大元准教授、嘱託殺人を主張
      教え子の大学院生死亡
         共同通信 2016/9/12

    赤トンボ研究の教え子だった東邦大の大学院
   生菅原みわさんを殺害したとして、殺人罪に問
   われた福井大大学院元特命准教授前園泰徳被告

   は12日、福井地裁裁判員裁判初公判で「事件
   当日に『殺してください』と頼まれたので、首
   を絞めて死なせた。

   この点で起訴事実と異なる」と主張。弁護側は
   嘱託殺人罪に当たると訴えた。

    検察側は冒頭陳述で「2人は交際しており、
   被告は関係が公に広まることを恐れていた。地
   位を失い、妻子を傷つけられることを恐れて被
   害者を殺害した身勝手な犯行」と指摘した。


  * * * * * * * * * * *


 <嘱託殺人罪を適用>

  福井地裁は9月29日、嘱託殺人罪を適用したと報道
 されている。刑は懲役3年6月(求刑・懲役13年)で
 実刑判決となっている。

 判決理由で、「殺害依頼がなかったと認定するには合理
 的な疑いが残る」として、嘱託殺人より重い殺人罪とす
 ることは認めなかった。



 <嘱託殺人の量刑>

  刑法で、殺人罪は死刑又は無期若しくは5年以上の懲役
 となっている。

 一方、嘱託殺人は6月以上7年以下の懲役または禁錮と
 され、大きな違いがある。

  被害者が、病気などで痛みに苦しんで依頼、懇願したと
 いう殺害の場合もあり、犯行に至る経緯や動機に同情の
 余地があることを考慮して刑を猶予された裁判もある。

  今回の事件で検察側は、2人が「不倫関係にあった」
 「自分の家族に危害が加えられたり関係を公にされるのを
 避けるためだった」という。

 正常な判断能力がなく、真に殺害を依頼した事実がないと
 も主張している。



 <裁判所の判断>

  過去の裁判では、次のような点が考慮されている。

 (1)被害者の真意に基づいた殺害依頼があったか
   自由意思により、明確に示されたか

 (2)死亡することの意味を熟慮し、結果を受容
   していたか

 (3)依頼、懇願された経緯や動機には同情の余地
   があるか



 <嘱託殺人の裁判>

  次の事件は、夫の依頼を受けて殺害したという嘱託殺人
 です。36年もの長期間、夫の介護を単独で献身的に行って
 きた被告が、痛みに苦しむ被害者の懇願に従って殺害した
 もので、その犯行の経緯や動機には同情の余地があるとし
 て、寛大な処罰にされた。


    嘱託殺人被告事件
    平成22年10月8日 さいたま地方裁判所

  主文

  被告人を懲役2年6月に処する。

  この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予
  する。


  理由

 (罪となるべき事実)

  被告人は、平成22年3月25日午後9時45分ころ、
  A市Ca番地b被告人方において、夫甲から同人の殺害
  を依頼されてこれに応じ、殺意をもって同人の頚部に
  さらしを巻いて絞めつけるなどし、よってそのころ、
  同所において同人を頚部圧迫による窒息により死亡させ
  て殺害した。


 (量刑の理由)

  1 本件は、被告人が長年介護をしてきた夫である被害
   者に依頼されて同人を殺害したという嘱託殺人の事案
   である。

  2 本件犯行によって、被害者の尊い生命が失われてお
   り、結果は重大である。

   もっとも、被告人は被害者が約36年前に不慮の事故
   によって頚髄を損傷して以来、本件に至るまでの長期
   間にわたって、同人の指示に従い、日常生活の全般に
   ついてほぼ単独で献身的な介護を行ってきたところ

   、、、同人から殺害を懇願されたことから、同人を
   殺害することを決意し、その直後に本件犯行に及んだ
   ものであって、被害者の介護に自らの半生を捧げ、同
   人の指示に忠実に従う生活を送る中で、被告人自身の

   利欲などは全く介在させずに、痛みに苦しむ被害者の
   懇願に従って本件犯行に至ったという経緯や動機には
   同情の余地がある。

    しかしながら、、、被害者の殺害依頼に盲目的に
   従っており、この点はやはり安易かつ短絡的であると
   いわざるを得ない。

 

東京一極集中が変わるのか

 <文化庁を突破口に>

     京都に文化庁 東京集中正す突破口に
        毎日新聞 2016年3月23日

    政府は国機関の地方移転に関する基本方針を
   決めた。中央省庁に関しては、文化庁京都府
   に数年以内に移転する。消費者庁総務省統計
   局を移転するかについては結論を先送りした。 

    文化庁移転を突破口として、国の行政組織の
   あり方についてさらに踏み込んだ見直しを求め
   たい。 


    文部科学省の外局である文化庁文化財を用
   いた観光戦略の強化などの観点から、一部機能
   を東京に残しての京都移転が有効と判断された。
   関西地域の発信力アップにも寄与する結論と
   いえよう。 

    政府は協議会を設け、移転に伴う組織改革案
   を年内にまとめる。文化庁文化財保護にとど
   まらず、著作権宗教法人など幅広い領域の行政
   を所管する。東京に残す機能の確定などに万全を
   期す必要がある。 

    これまで不十分との指摘もあった文化行政全般
   の拡充に京都移転をつなげていく発想が欠かせ
   ない。政府は移転を機に、地方文化の多様性を

   従来以上に尊重していくと説明している。こう
   した視点を実際に反映できるかで、移転の意義が
   試される。


  * * * * * * * * * * *


 <地方の人口減少は>

  地方では、鉄道廃線が相次いでいる。地方の人口減少が
 進んでいるから、経営採算に合わないという。そして生活
 の足がなくなり、そこから人は離れざるを得ない。悪循環
 になる。

  企業も人も仕事を求め、便利さを享受するために首都圏
 に集まっていく。地方が衰退するのは誰もが分かっている。


  鉄道が民営化され、営利性を追求すれば赤字路線は廃止、
 有料部分を強化することになる。地方の赤字路線を廃止す
 ることが経営努力だと言われると何ともやりきれない。

  中央省庁移転ができない理由を、最もよく知るところが
 解決策を考えられないか。

 地方鉄道の廃線を防ぎ、人が集まる街を取り戻すために
 そこに職場を移すこと。



 <集中是正を掲げるのであれば>

     掛け声倒れの看板政策 中央省庁移転
        東奥日報 2016/09/09

    文化庁を京都に「全面的に移転」するほか、
   消費者庁徳島県に消費者政策の研究・立案拠
   点を設け、総務省は統計データを研究者らに提
   供する統計局業務を和歌山県で実施する。

    このように中央省庁の全面移転は文化庁のみ
   で、しかも具体的な時期は明記されていない。
   消費者庁の移転は、可否判断を見送ったも同然
   と言える。

    国が範を示すことで、民間企業が本社機能を
   地方に移すきっかけにしたいという思惑もあった
   はずだ。

    今からでも遅くない。安倍政権が地方創生、
   東京一極集中の是正を掲げ続けるのであれば、
   誘致の提案を地方から募り各省庁に移転の可否

   を検討させる手法ではなく、すべての中央省庁
   を対象に国主導で移転を議論すべきだ。その際
   には、首都直下型地震といった国難に備える面

   からも、政府のバックアップ機能や中央省庁の
   一部を東京圏外に置くなど、国全体のリスクを
   減らすことも喫緊の課題だ。

    移転できない大きな理由は、他省庁との協議
   あるいは官邸や国会、政治家との調整のために
   は、顔と顔を合わせての関係が必要だというの
   が大方の理屈だろう。

    なぜ、国の仕事だけ頻繁に顔を合わせての調
   整が不可欠なのか。働き方改革を掲げている政
   府や政治家が「移転はできない」と言い続ける
   のは、今の仕事の仕方を変えたくないという
   惰性ではないか。

 

低所得者の負担軽減策は

 <二極化が進行>

    政府の経済対策 格差の是正こそ急務だ
      秋田魁新報 2016年7月31日

    景気がなかなか回復軌道に乗らないのは、国
   内総生産(GDP)の6割を占める個人消費の
   低迷が最大の要因だ。

   だが、今回の経済対策は総花的で消費底上げに
   正面から取り組んでいるとは言い難い。

    日本総合研究所の試算によると、家計の手取
   りに当たる「可処分所得」は、アベノミクスが
   始まる前の12年から15年まで横ばいでほと

   んど伸びていない。賃上げにより所得の総額は
   増えたものの、所得税社会保険料の負担が
   増加したためだ。

    また、一橋大経済研究所の分析で、2人以上
   の世帯の約4割を占める中間所得層が13~
   15年の3年で減り、高所得層と低所得層への
   二極化が進んだことが明らかになった。

    アベノミクスによる円安株高は大企業の業績
   を引き上げ、富裕層を潤した。だが、今年に
   入って円高株安に振れる場面もあり、専門家か
   らは政策としての限界を指摘する声も出ている。

    消費を上向かせるには、薄くなった中間層を
   再び厚くする対策や、社会保障制度を安定させ

   将来的な安心感を醸成することが欠かせない。
   所得の再分配を図るなど、広がった格差を是正
   する対策こそ急務だ。


  * * * * * * * * * * *


 <高齢者間の所得格差>

  平成24年版ですが、高齢社会白書に「世代間格差・世代
 内格差の存在」とする項目があります。この中に次のよう
 な説明がされている。

  「世代間格差のみならず、高齢者の間の所得格差つまり
 世代内格差は他の年齢層に比べて大きいうえに、拡大して
 いる。

  社会保障制度は全世代に安心を保障し、国民一人ひとり
 の安心感を高めていく制度である。年齢や性別に関係なく、

 全ての人が社会保障の支え手であると同時に、社会保障の
 受益者であることを実感できるようにしていくことが、
 これからの課題である。」


  政府の諮問機関において、この世代内格差=高齢者の間
 の所得格差について、収入が多い高齢者の年金を減らす
 ことが検討されているという。

 収入が多い場合でも、基礎年金に税金が半分充てられてい
 るが、この一部を給付しないことで国の負担を減らすと
 報道されている。

  社会保障の費用は、国民に幅広く負担を求めるという考
 えが受け入れられてきた印象がある。

 しかし、これ程大きな格差が知られることになれば、流れ
 が変わって、応能負担の考えが支持されてもおかしくない。



 <定額制による社会保険料負担>

  自営業者などが加入する国民年金では、平均受給額が
 月額約5万5000円と低い額であり、生活に窮することに
 なっている。

 そして、保険料負担は国民年金の場合所得に関係なく、
 月1万6000円の定額制であり低所得者の負担が重い。

  一方、厚生年金の受給額は、平均で14万5600円で大きな
 違いがある。

 企業などを退職した人の年金額のうち、基礎年金の2分の1
 は国庫負担になっており、この不均衡が問題になっている。



 <高齢者の年金給付抑制>

  次の社説では、高齢者の年金給付引き下げを求めており、
 将来世代の年金が危ういと警告するが、高所得者の年金を
 減額することにも少し触れている。


   年金額改定/給付抑制の遅れは放置できぬ
       読売新聞 2016/2/29

    少子高齢化に対応した年金の給付抑制が、
   一向に進まない。将来世代にしっかりとした
   年金制度を引き継ぐ上で放置できない問題だ。

    現行制度は、現役世代が負担する保険料を
   固定し、収入の範囲内で高齢者に年金を支払う
   方式だ。今の高齢者の給付引き下げが遅れると、
   その分は将来世代の年金を減らして収支バラン
   スを取る。

    給付抑制が予定通り進んでも、将来の年金水
   準は2、3割下がる見込みだ。さらに減額と
   なれば、若年層の理解は得られまい。

    マクロ経済スライドの適用制限を見直し、
   経済情勢にかかわらず完全実施することが不可
   欠だ。

    だが、厚生労働省が今国会に提出する年金改
   革関連法案では、完全実施に踏み込まなかった。

    法案では、高所得者の年金減額などの課題も
   先送りされる見通しだ。早期の給付抑制が財政
   基盤を強化し、子や孫世代の安心につながる。
   丁寧に説明すれば、高齢者も納得するはずだ。

    「痛み」を伴う改革から逃げていては、社会
   保障制度の維持も財政再建も危うくなる。

 

過労でうつ病、解雇の裁判

 <過労で損害賠償の裁判>

       過労で鬱病東芝に6千万円
       賠償命令 東京高裁
        産経新聞 2016.8.31

    長時間労働鬱病になり、東芝を解雇された
   元社員、重光由美さんが約1億円の損害賠償を

   求めた訴訟の差し戻し判決で東京高裁は31日、
   差し戻し前から賠償額を増額し、東芝に計約
   6千万円の支払いを命じた。

    差し戻し前の東京高裁判決は、神経科への
   通院などを早く申告していれば、東芝が悪化を

   防ぐ措置ができたと判断したが、最高裁は
   「申告がなくても会社は労働者の健康に配慮す
   る必要がある」として差し戻していた。

    今回の判決は重光さんの過失を否定し、差し
   戻し前の判決が320万円とした慰謝料を
   400万円に増額。

   そのほか、東芝が過重な労働を軽減しなかった
   ことに基づく休業損害などを認めた。

    判決によると、重光さんは深谷市の工場で液
   晶生産ラインの開発などを担当。平成13年4
   月に鬱病を発症して10月から欠勤し、16年
   9月に解雇された。


  * * * * * * * * * * *


 <争点が複数>

  主に次の三点について争われ、裁判所は原告(労働者)
 の主張を認めた。


 (1)使用者には、過重労働で労働者の心身の健康を損な
  うことがないよう注意する義務があるのに、違反した。
  (安全配慮義務違反)


 (2)労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養の
  ために休業する期間等は解雇してはならない(労働
  基準法19条)にもかかわらず、これに違反した。


 (3)労働者が自らの精神的健康に関する情報を申告し
  なかったことをもって過失相殺をすることができない。

   使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、
  その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき
  安全配慮義務を負っている。



 <判決理由>

 (1)安全配慮義務違反

  使用者は、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度
 に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう
 注意する義務を負う(最高裁判所平成12年3月24日
 判決)。

  原告はうつ病の発症以前数か月において、各月60時間
 以上の時間外労働を行っており、しばしば休日や深夜の
 勤務を余儀なくされていた。

  その間、プロジェクトのリーダーとしての重責を担う中
 で、業務の日程短縮、業務の内容につき上司からの厳しい
 督促などの経緯等を考えると、原告の業務の負担は相当
 過重なものであった。

  にもかかわらず、被告は原告の業務を軽減することなく、
 引き続き新しいライン立上げプロジェクトに従事させ、
 原告を12日間連続して欠勤させるという事態に陥らせた。


  原告が平成13年4月にうつ病を発症し、症状が増悪し
 ていったのは、被告が、原告の業務の遂行に伴う疲労や
 心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なうことが
 ないような配慮をしない債務不履行によるものである。


(2)労働基準法19条違反

  原告の業務とうつ病の発症との問には相当因果関係が
 あり、当該うつ病は「業務上」の疾病であると認められる。

  本件解雇は、原告が業務上の疾病にかかり療養のために
 休業していた期間にされたものであって、労働基準法19
 条に反し無効である。


(3)自主申告しなかったことをもって過失相殺をすること
 ができない。

  使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その
 健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮
 義務を負っている。

  労働者が過重な業務によってうつ病を発症し増悪させた
 場合に、使用者の安全配慮義務違反等を理由とする損害

 賠償の額を定めるに当たり、当該労働者が自らの精神的
 健康に関する情報を申告しなかったことをもって過失相殺
 をすることができない。

  労働者にとって過重な業務が続く中でその体調の悪化が
 看取される場合には、労働者本人からの積極的な申告が期待

 し難いことを前提とした上で、必要に応じてその業務を軽減
 するなど労働者の心身の健康への配慮に努める必要がある。

 

原発回帰の流れに影響は

 <なぜ原発停止を求めたか>


    原発停止を求めた鹿児島県知事への疑問  
       日本経済新聞 2016/8/28

    鹿児島県三反園訓知事が九州電力に川内
   原子力発電所の一時停止を要請した。地震に対
   する安全性が確認されていないなどとして、

   いったん止めて点検することを求めた。知事に
   は原発の停止を求める法的な権限がなく、異例
   の要請である。その中身や根拠には疑問が少な
   くない。

    川内原発原子力規制委員会の安全審査に合
   格し、前任の伊藤祐一郎知事や薩摩川内市の
   同意を得て、昨年8月に1号機、10月に2号機

   が再稼働した。三反園知事は今年7月の知事選
   で同原発の一時停止を訴え初当選した。要請は
   その公約を実行に移したものだ。

    知事は要請の根拠として、4月の熊本地震で
   震度7の揺れが続き原発の耐震性をめぐる県民

   の不安が強いことを挙げた。事故が起きた際の
   高齢者の避難や車両の確保などにも課題が残る
   とした。

   だが規制委は熊本地震の後に改めて安全性を確
   かめている。田中俊一委員長は「(一時停止し
   て)何を点検するのか」と疑問を呈している。

   避難計画は、もともと県や地元自治体の責任で
   作ったものだ。ここまで詰めれば完璧という

   ゴールはなく不断の改善は欠かせないが、原発
   の運転を続けながらできることが多いのでは
   ないか。

    九電は定期検査のため1号機を10月に、2号
   機を12月から一時停止させる計画を立てている。

   それを待たずに停止を求めるほど差し迫った
   根拠があるのか。知事はそれを示すべきだ。


  * * * * * * * * * * *


 <原発停止を求める意義>

  福島原発の事故のあと安全神話は崩れ、国民の多くは
 原発ゼロ社会を望んでいる。

 そして、政府は原発依存度を可能な限り下げると公約して
 いる。

 原発のない社会に着実に進めていかねばならない、にも
 かかわらず「原発依存」へ回帰の動きが急速に出ている。

  県民の安全・安心を守るとして、原発停止を求めた鹿児
 島県知事に支持が集まるのはこのためである。

 原発再稼働で安全性が確保できるのか不安を抱いている。



 <原発の運転を続ける必要性>

  経済への悪影響を抑え、生活コストを下げるために
 電気料金の上昇を抑制する必要がある。

 天然ガスや石油の輸入に依存して経済力を弱め、安全保障
 にも懸念がある。エネルギー自給を高めることが必要。

 地球温暖化対策上、二酸化炭素を排出しない原発は、重要
 なエネルギーである。

  こうした理由が、電力会社や原発推進の立場から強調さ
 れる。



 <その他の主な対立点>


 *原発積極推進の主張

 1)エネルギー安全保障の観点から多様な選択肢が必要

 2)原子力技術で国際貢献をする、人材・技術を確保する

 3)安全性の確保について、事故が生じる確率と事故の汚染
  など悪影響を、最小化するという考え方が世界の標準

  ゼロリスクはないという前提で、規制基準が策定され、
  安全対策を常に上積みしていく



 *脱原発の主張

 1)原発利用による電気の低料金化は疑わしい

 2)原子力発電は安全性、経済性、環境負荷のいずれに
  も優れた技術といえない

 3)ドイツ環境・原子力大臣は、東京の会見で「経済的
  に見ても原発は費用がかかり、将来世代に責任を持て
  るものではない」と強調している



 <住民の不安を払拭>


    川内原発停止要請 九電は住民の不安払拭を
       熊本日日新聞 2016年08月28日

    知事に原発を止める法的な権限はないものの、
   三反園氏は「県のトップの役割は県民の安全・
   安心を守ること。原発のない社会に一歩でも二歩
   でも進めるには権限など関係ない」

   と強調する。一方の九電にはすんなりと要請に
   応じられない事情がうかがえる。安全に問題が
   ないとする原発を停止する前例をつくれば他原発
   に同様の動きが波及しかねない。

   原発の停止は経営悪化に直結するだけに、予定外
   の停止を避けたいのが本音だろう。

    とはいえ、地元の声をないがしろにはできまい。
   川内原発はもともと1号機が10月、2号機が
   12月からそれぞれ定期検査が予定され、2カ月
   程度運転を停止する。

   運転再開には地元の同意を得るのが慣例化している。
   三反園氏は「九電が要請にどう対応するかで総合的
   に判断したい」としており、状況によっては難航

   する可能性もある。そうならないためには九電の
   真摯な対応が欠かせない。避難計画の支援強化で県
   と積極的に連携するなど、住民の安全を最優先する
   姿勢を示すべきだ。

 

民泊でも規制緩和

 <民泊普及へ規制緩和>

  旅行者のための民泊が盛んに取り上げられる。そして、
 ここでも強い規制緩和の主張が出ている。


     民泊普及へ規制緩和を後退させるな
       日本経済新聞 2016/03/27

    大手民泊仲介サイトによれば、欧米の先行例
   では、一般の個人が自宅の一室などに旅行者を
   泊める「ホームステイ型民泊」が主流だという。
   休眠資産の有効活用と外国人との交流が主な
   目的になる。

    しかし日本では、収益だけを目的にマンショ
   ンなどの部屋を用意して客を泊める「ビジネス
   型民泊」が多数派を占めている。

   実態は限りなくホテルに近い。このため、ゴミ
   出しなどのトラブルや旅館業界の反発を生んで
   いる。

    これら2タイプの民泊は、きちんと区別して
   議論したい。そうしないと議論が混乱し、結果
   的に新しい旅行文化の芽をつぶすことになりか
   ねない。

    ホームステイ型は宿泊者の身元確認など最低
   限の義務を除き、原則的に自由に認めるべきだ。
   旅館業法はもともとホームステイ型民泊のよう
   な形態を想定しておらず、同法の対象とするこ
   と自体に無理がある。


  * * * * * * * * * * *


 <ビジネス型とホームステイ型>

  「ホームステイ型民泊」が主流だというが、主な目的が
 休眠資産の有効活用と外国人との交流だと。

 「ホームステイ型民泊」といいながら、休眠資産の有効活
 用の目的を認めている。しかも、規制緩和をいうからには
 経済成長のためであろう、そのことは、ビジネスの振興で
 はないか。

 「きちんと区別して議論」するのは難しい。

 大都市で民泊といえばマンションであろうが、空家解消に
 なるとしても、外国人との交流とか旅行文化が期待できる
 はずはない。

  ホームステイ型、とか最低限の義務とか一律に定めなく
 ても各地域の実情を重視し、共同体や各自治体の判断にす
 るのが相応しい事柄ではないのか。

  無理に成長戦略という話になるから、難しくなる。生活
 の安全、社会の安定こそ大切にすべき基盤であろう。

  その点、沖縄タイムスには的確な説明がされている。



    「民泊ルール」定着の鍵は「住民理解」
      沖縄タイムス 2016年2月9日

    一般住宅やマンションの空き室をホテル代わ
   りに使う民泊は、その土地ならではの雰囲気が

   味わえ、価格も手頃と人気だ。貸し出す側も空
   き部屋を有効活用できるメリットがあり、地域
   経済への波及効果も期待される。

    新しい宿泊形態が人気とはいえ、聞こえてく
   るのはなぜかトラブルばかり。本来、有料で繰

   り返し泊めるには旅館業法の営業許可が必要に
   もかかわらず、無許可営業が横行しているから
   だ。 

    知らない人が出入りしセキュリティーに不安
   を覚えるというマンション居住者。近隣住民か
   らは、ごみの未分別や騒音といった生活面での
   苦情も目立つ。 

    ひとたび火事や地震が起きた時の対策など命
   に関わる問題、感染症予防などの課題も指摘さ
   れる。 

    法的な位置付けがあいまいなまま急速に増え
   てきただけに検討すべき課題が多い。 

    県内では修学旅行生を一般家庭で受け入れる
   ホームステイ型の民泊が盛んだ。農作業で汗を

   流し、料理を手伝うなど、体験や交流を重視し
   た取り組みが喜ばれ、それがリピーターにも
   つながっている。 

    民泊のルールづくりでは家主が部屋に居住し
   住宅の一部を貸し出すホームステイ型と、投資
   物件として空き室を活用するケースは分けて
   考えた方がいい。 

    民泊成功の近道は、近隣住民が温かく迎える
   環境を整えることである。市民生活との調和を
   軸にルールを確立すべきだ。

 

沖縄基地移設で、国と県の話し合い

 

 <本土と沖縄の間に信頼関係>

       沖縄は何に憤っているのか
       日本経済新聞 2016/6/21

    日米両国政府は沖縄県の要望を踏まえ、地位
   協定における軍属の範囲の見直しを進めている。
   特権が縮小すれば犯罪抑止効果が見込める。
   ぜひ実現させてほしい。

    問題は本土と沖縄の間に信頼関係がないこと
   だ。日米がいくら努力しても「どうせ小手先の
   対策」と受け止められかねない。

    沖縄の地理的重要性を考えれば一定数の米軍
   が沖縄に駐留することは日本の安全保障にとって
   不可欠だ。沖縄県民にもそう考える人は少なく

   ない。にもかかわらず反基地運動が盛り上がる
   のは、安倍政権の姿勢が県民の心情を硬化させ
   ているからではないか。


    安倍政権は沖縄との話し合いの糸口をまず探
   すべきだ。県民のために一生懸命に動いている
   と思われない限り、どんな対策を実施しても
   効果は生まない。


  * * * * * * * * * * *


 <話し合いの姿勢>

  沖縄の米軍基地移設について、沖縄県では強く反対され
 ているが、政府は日本の安全保障にとって必要不可欠だと
 して強硬に推進しようとする。


  推進側の主張は、米軍が沖縄に駐留する重要性は県民も
 理解しているはず、沖縄の基地負担を軽減すれば反発も和
 らぐに違いない。

 日米の地位協定の見直しを進めている、政府は県南部の米
 軍基地を早期に返還する努力を続ければ政府と県が連携し
 ていけるだろう、という。

 問題は、政府の姿勢が県民の心情を硬化させていること、
 沖縄との話し合いの糸口をまず探すべきだ。


  一方反対側は、普天間の危険性を取り除くために辺野古
 以外の選択肢を探る必要がある。仮に政府が裁判で勝った
 としても、県民の理解なしに移転が進むとは考えられない、
 と主張する。


  推進側、反対側双方とも話し合いを求めているが、その
 内容には大きな違いがある。

 推進側は、適地が他にあり得ない以上沖縄県の理解を得て
 国の安全保障を確保しなければならない。粘り強く交渉し
 ていく以外に方法がない、という立場。


  他方は、これ以上沖縄に基地を押し付けることは許され
 ない、沖縄県の民意は明確になっている、これを尊重して
 解決を図るべきだ。



 <沖縄の歴史を考える>

     辺野古移設  沖縄の歴史向き合って
       京都新聞 2016年06月23日

    米軍属女性殺害事件を受けた琉球新報などに
   よる世論調査で防止策に4割強が全基地撤去、
   3割近くが基地整理縮小を求めた。辺野古移設
   反対は8割超にもなる。

    事件に抗議する県民大会で聞かれた「怒りは
   限界を超えた」の声に、政治は応えられるのか。


    与党の自民は基地負担軽減、辺野古移設の推
   進を掲げるが、公明は公約では触れていない。

    民進党は、米軍再編に関する日米合意や日米
   地位協定改定の提起を挙げる。共産、社民両党
   は辺野古移設反対を打ち出している。

    沖縄に在日米軍専用施設の74%が集中し、
   住民の生命や生活を脅かす現状を放置するのは、
   政治の怠慢だ。各党は公約から踏みだした議論
   を交わす必要がある。


    そもそも本土で反基地運動が盛り上がり、海
   兵隊などが米軍施政下の沖縄に移されてきた。

    そうした沖縄の歴史を本土の人間はどれほど
   知っているだろう。明治政府によって琉球処分
   (併合)が行われ、戦後はサンフラシスコ条約
   で日本が主権回復した際に沖縄は切り離された。

    近年、沖縄では「差別」や「独立」「自己
   決定権」という言葉が切実に語られるという。


    本土の選挙で沖縄が議論されることは少ない。
   本土の多数が日米安保を支持しながら基地問題
   を避けることで、小さな沖縄に押しつける。

   それで民主主義と言えるのか。 暮らしや経済
   だけでなく、一票を投じる前に考えたい。