低所得者の負担軽減策は
<二極化が進行> 政府の経済対策 格差の是正こそ急務だ 秋田魁新報 2016年7月31日 景気がなかなか回復軌道に乗らないのは、国 内総生産(GDP)の6割を占める個人消費の 低迷が最大の要因だ。 だが、今回の経済対策は総花的で消費底上げに 正面から取り組んでいるとは言い難い。 日本総合研究所の試算によると、家計の手取 りに当たる「可処分所得」は、アベノミクスが 始まる前の12年から15年まで横ばいでほと んど伸びていない。賃上げにより所得の総額は 増えたものの、所得税や社会保険料の負担が 増加したためだ。 また、一橋大経済研究所の分析で、2人以上 の世帯の約4割を占める中間所得層が13~ 15年の3年で減り、高所得層と低所得層への 二極化が進んだことが明らかになった。 アベノミクスによる円安株高は大企業の業績 を引き上げ、富裕層を潤した。だが、今年に 入って円高株安に振れる場面もあり、専門家か らは政策としての限界を指摘する声も出ている。 消費を上向かせるには、薄くなった中間層を 再び厚くする対策や、社会保障制度を安定させ 将来的な安心感を醸成することが欠かせない。 所得の再分配を図るなど、広がった格差を是正 する対策こそ急務だ。 * * * * * * * * * * * <高齢者間の所得格差> 平成24年版ですが、高齢社会白書に「世代間格差・世代 内格差の存在」とする項目があります。この中に次のよう な説明がされている。 「世代間格差のみならず、高齢者の間の所得格差つまり 世代内格差は他の年齢層に比べて大きいうえに、拡大して いる。 社会保障制度は全世代に安心を保障し、国民一人ひとり の安心感を高めていく制度である。年齢や性別に関係なく、 全ての人が社会保障の支え手であると同時に、社会保障の 受益者であることを実感できるようにしていくことが、 これからの課題である。」 政府の諮問機関において、この世代内格差=高齢者の間 の所得格差について、収入が多い高齢者の年金を減らす ことが検討されているという。 収入が多い場合でも、基礎年金に税金が半分充てられてい るが、この一部を給付しないことで国の負担を減らすと 報道されている。 社会保障の費用は、国民に幅広く負担を求めるという考 えが受け入れられてきた印象がある。 しかし、これ程大きな格差が知られることになれば、流れ が変わって、応能負担の考えが支持されてもおかしくない。 <定額制による社会保険料負担> 自営業者などが加入する国民年金では、平均受給額が 月額約5万5000円と低い額であり、生活に窮することに なっている。 そして、保険料負担は国民年金の場合所得に関係なく、 月1万6000円の定額制であり低所得者の負担が重い。 一方、厚生年金の受給額は、平均で14万5600円で大きな 違いがある。 企業などを退職した人の年金額のうち、基礎年金の2分の1 は国庫負担になっており、この不均衡が問題になっている。 <高齢者の年金給付抑制> 次の社説では、高齢者の年金給付引き下げを求めており、 将来世代の年金が危ういと警告するが、高所得者の年金を 減額することにも少し触れている。 年金額改定/給付抑制の遅れは放置できぬ 読売新聞 2016/2/29 少子高齢化に対応した年金の給付抑制が、 一向に進まない。将来世代にしっかりとした 年金制度を引き継ぐ上で放置できない問題だ。 現行制度は、現役世代が負担する保険料を 固定し、収入の範囲内で高齢者に年金を支払う 方式だ。今の高齢者の給付引き下げが遅れると、 その分は将来世代の年金を減らして収支バラン スを取る。 給付抑制が予定通り進んでも、将来の年金水 準は2、3割下がる見込みだ。さらに減額と なれば、若年層の理解は得られまい。 マクロ経済スライドの適用制限を見直し、 経済情勢にかかわらず完全実施することが不可 欠だ。 だが、厚生労働省が今国会に提出する年金改 革関連法案では、完全実施に踏み込まなかった。 法案では、高所得者の年金減額などの課題も 先送りされる見通しだ。早期の給付抑制が財政 基盤を強化し、子や孫世代の安心につながる。 丁寧に説明すれば、高齢者も納得するはずだ。 「痛み」を伴う改革から逃げていては、社会 保障制度の維持も財政再建も危うくなる。