願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

民泊でも規制緩和

 <民泊普及へ規制緩和>

  旅行者のための民泊が盛んに取り上げられる。そして、
 ここでも強い規制緩和の主張が出ている。


     民泊普及へ規制緩和を後退させるな
       日本経済新聞 2016/03/27

    大手民泊仲介サイトによれば、欧米の先行例
   では、一般の個人が自宅の一室などに旅行者を
   泊める「ホームステイ型民泊」が主流だという。
   休眠資産の有効活用と外国人との交流が主な
   目的になる。

    しかし日本では、収益だけを目的にマンショ
   ンなどの部屋を用意して客を泊める「ビジネス
   型民泊」が多数派を占めている。

   実態は限りなくホテルに近い。このため、ゴミ
   出しなどのトラブルや旅館業界の反発を生んで
   いる。

    これら2タイプの民泊は、きちんと区別して
   議論したい。そうしないと議論が混乱し、結果
   的に新しい旅行文化の芽をつぶすことになりか
   ねない。

    ホームステイ型は宿泊者の身元確認など最低
   限の義務を除き、原則的に自由に認めるべきだ。
   旅館業法はもともとホームステイ型民泊のよう
   な形態を想定しておらず、同法の対象とするこ
   と自体に無理がある。


  * * * * * * * * * * *


 <ビジネス型とホームステイ型>

  「ホームステイ型民泊」が主流だというが、主な目的が
 休眠資産の有効活用と外国人との交流だと。

 「ホームステイ型民泊」といいながら、休眠資産の有効活
 用の目的を認めている。しかも、規制緩和をいうからには
 経済成長のためであろう、そのことは、ビジネスの振興で
 はないか。

 「きちんと区別して議論」するのは難しい。

 大都市で民泊といえばマンションであろうが、空家解消に
 なるとしても、外国人との交流とか旅行文化が期待できる
 はずはない。

  ホームステイ型、とか最低限の義務とか一律に定めなく
 ても各地域の実情を重視し、共同体や各自治体の判断にす
 るのが相応しい事柄ではないのか。

  無理に成長戦略という話になるから、難しくなる。生活
 の安全、社会の安定こそ大切にすべき基盤であろう。

  その点、沖縄タイムスには的確な説明がされている。



    「民泊ルール」定着の鍵は「住民理解」
      沖縄タイムス 2016年2月9日

    一般住宅やマンションの空き室をホテル代わ
   りに使う民泊は、その土地ならではの雰囲気が

   味わえ、価格も手頃と人気だ。貸し出す側も空
   き部屋を有効活用できるメリットがあり、地域
   経済への波及効果も期待される。

    新しい宿泊形態が人気とはいえ、聞こえてく
   るのはなぜかトラブルばかり。本来、有料で繰

   り返し泊めるには旅館業法の営業許可が必要に
   もかかわらず、無許可営業が横行しているから
   だ。 

    知らない人が出入りしセキュリティーに不安
   を覚えるというマンション居住者。近隣住民か
   らは、ごみの未分別や騒音といった生活面での
   苦情も目立つ。 

    ひとたび火事や地震が起きた時の対策など命
   に関わる問題、感染症予防などの課題も指摘さ
   れる。 

    法的な位置付けがあいまいなまま急速に増え
   てきただけに検討すべき課題が多い。 

    県内では修学旅行生を一般家庭で受け入れる
   ホームステイ型の民泊が盛んだ。農作業で汗を

   流し、料理を手伝うなど、体験や交流を重視し
   た取り組みが喜ばれ、それがリピーターにも
   つながっている。 

    民泊のルールづくりでは家主が部屋に居住し
   住宅の一部を貸し出すホームステイ型と、投資
   物件として空き室を活用するケースは分けて
   考えた方がいい。 

    民泊成功の近道は、近隣住民が温かく迎える
   環境を整えることである。市民生活との調和を
   軸にルールを確立すべきだ。

 

沖縄基地移設で、国と県の話し合い

 

 <本土と沖縄の間に信頼関係>

       沖縄は何に憤っているのか
       日本経済新聞 2016/6/21

    日米両国政府は沖縄県の要望を踏まえ、地位
   協定における軍属の範囲の見直しを進めている。
   特権が縮小すれば犯罪抑止効果が見込める。
   ぜひ実現させてほしい。

    問題は本土と沖縄の間に信頼関係がないこと
   だ。日米がいくら努力しても「どうせ小手先の
   対策」と受け止められかねない。

    沖縄の地理的重要性を考えれば一定数の米軍
   が沖縄に駐留することは日本の安全保障にとって
   不可欠だ。沖縄県民にもそう考える人は少なく

   ない。にもかかわらず反基地運動が盛り上がる
   のは、安倍政権の姿勢が県民の心情を硬化させ
   ているからではないか。


    安倍政権は沖縄との話し合いの糸口をまず探
   すべきだ。県民のために一生懸命に動いている
   と思われない限り、どんな対策を実施しても
   効果は生まない。


  * * * * * * * * * * *


 <話し合いの姿勢>

  沖縄の米軍基地移設について、沖縄県では強く反対され
 ているが、政府は日本の安全保障にとって必要不可欠だと
 して強硬に推進しようとする。


  推進側の主張は、米軍が沖縄に駐留する重要性は県民も
 理解しているはず、沖縄の基地負担を軽減すれば反発も和
 らぐに違いない。

 日米の地位協定の見直しを進めている、政府は県南部の米
 軍基地を早期に返還する努力を続ければ政府と県が連携し
 ていけるだろう、という。

 問題は、政府の姿勢が県民の心情を硬化させていること、
 沖縄との話し合いの糸口をまず探すべきだ。


  一方反対側は、普天間の危険性を取り除くために辺野古
 以外の選択肢を探る必要がある。仮に政府が裁判で勝った
 としても、県民の理解なしに移転が進むとは考えられない、
 と主張する。


  推進側、反対側双方とも話し合いを求めているが、その
 内容には大きな違いがある。

 推進側は、適地が他にあり得ない以上沖縄県の理解を得て
 国の安全保障を確保しなければならない。粘り強く交渉し
 ていく以外に方法がない、という立場。


  他方は、これ以上沖縄に基地を押し付けることは許され
 ない、沖縄県の民意は明確になっている、これを尊重して
 解決を図るべきだ。



 <沖縄の歴史を考える>

     辺野古移設  沖縄の歴史向き合って
       京都新聞 2016年06月23日

    米軍属女性殺害事件を受けた琉球新報などに
   よる世論調査で防止策に4割強が全基地撤去、
   3割近くが基地整理縮小を求めた。辺野古移設
   反対は8割超にもなる。

    事件に抗議する県民大会で聞かれた「怒りは
   限界を超えた」の声に、政治は応えられるのか。


    与党の自民は基地負担軽減、辺野古移設の推
   進を掲げるが、公明は公約では触れていない。

    民進党は、米軍再編に関する日米合意や日米
   地位協定改定の提起を挙げる。共産、社民両党
   は辺野古移設反対を打ち出している。

    沖縄に在日米軍専用施設の74%が集中し、
   住民の生命や生活を脅かす現状を放置するのは、
   政治の怠慢だ。各党は公約から踏みだした議論
   を交わす必要がある。


    そもそも本土で反基地運動が盛り上がり、海
   兵隊などが米軍施政下の沖縄に移されてきた。

    そうした沖縄の歴史を本土の人間はどれほど
   知っているだろう。明治政府によって琉球処分
   (併合)が行われ、戦後はサンフラシスコ条約
   で日本が主権回復した際に沖縄は切り離された。

    近年、沖縄では「差別」や「独立」「自己
   決定権」という言葉が切実に語られるという。


    本土の選挙で沖縄が議論されることは少ない。
   本土の多数が日米安保を支持しながら基地問題
   を避けることで、小さな沖縄に押しつける。

   それで民主主義と言えるのか。 暮らしや経済
   だけでなく、一票を投じる前に考えたい。

 

報道の自由に強い圧力

 

 <怖いのは自主規制>

  「反骨のジャーナリスト」むのたけじさんが亡く
 なった。


  「戦争を止められなかった、許した国民にも責任は
 ある」 社会の公器である新聞は、統制対象になり自由

 な言論が許されなくなっていくが、統制よりも怖いのは
 自主規制。 家族や周りが怖いと強調した。
  (東京新聞 2016.08.22)



       表現の自由報道の自由
       権力監視 さらに責任重く
       福井新聞 2016年7月24日


   *事なかれ主義拡大

    政治権力がどの道を選択しようと、国民を縛
   る権利はない。そこに報道の自由がある。

   憲法21条は「一切の表現の自由」を保障して
   おり、新聞倫理綱領や放送法は「あらゆる勢力
   からの干渉を排する」、「何人からも干渉され、
   又は規律されることがない」と定める。

    しかし、選挙中のテレビ街頭インタビューで
   は政策などに明確な判断をせず、曖昧な表現が
   多かった感がある。

   「気付けば政権と同じ考えを話してくれる人を、
   何時間もかけて探しまくっている」。某テレビ
   局員の言葉が、萎縮し自粛する報道現場の実態
   を端的に表している。

    与党は13年12月、秘密漏えいや取得に
   最高10年の懲役を科す特定秘密保護法を成立
   させた。公務員のほか取材者も処罰される懸念
   がある。

   秘密指定の妥当性をチェックする監視機能を担
   うのは議員や官僚で、独立性が希薄。報道の自由
   と国民の知る権利が狭まる可能性が強い。


   *新聞つぶせと暴言

    メディアに報道の正確性や公正性が求められ
   ても、言論表現は束縛されない。

   だが、自民党が12年4月に決定した憲法改正
   草案では21条に「公益及び公の秩序を害する
   ことを目的とした活動を行うことは認められ
   ない」との規定を加えた。

   「公益」「公の秩序」を時の権力が恣意的に
   判断すればどうなるか。


   ☆安倍首相が民放の報道番組で、アベノミク
    スに批判的な街の声を選んでいると非難。
    自民党衆院選前、在京各局に「公正中立」
    を求める要請文を提出(14年11月)

   ☆自民党若手学習会で議員が「マスコミを懲ら
    しめるには広告料収入をなくせばいい」と
    発言、ゲスト作家は「沖縄の二つの新聞は
    つぶさないといけない」と暴言(15年6月)


    安倍政権下で強まる報道への干渉や介入。
   戦時中の過ちを繰り返すな、は杞憂だろうか。


   *報道の独立性低下

    報道の自由に関し、国際ジャーナリスト組織
   「国境なき記者団」が180カ国・地域対象に
   調査、発表した16年ランキングで、日本は前

   年の61位から72位に後退した。10年の
   11位から毎年順位を下げている。同組織は
   「特に首相に対する批判などで、メディアの
   独立性を失っている」と指摘する。


    「私はあなたの意見には反対だ。だがあなた
   がそれを主張する権利は命をかけて守る」。

   18世紀の仏思想家ヴォルテールの言葉が世紀
   を超えて響く。権力者同様、メディアにもその
   覚悟を問うている。 


  * * * * * * * * * * *


    日本では、政権に都合の悪いジャーナリズム
    はつぶされる
      ワシントン・ポスト 2016年3月5日

    3年前の選挙時に安倍総理によって打ち出され
   た、日本の低迷中の経済を活性化せんとする
   野心的プログラムであるアベノミクスはこれま
   でのところ好調であるといえるものではない。

   安倍首相は、財政的刺激、金融緩和、構造改革
   のための「三本の矢」を放つと約束した。日銀

   が最近のマイナス金利を含め、急激な反デフレ
   手段を講じ、安倍氏は金融面で劇的な政策を打
   ち出した。

   しかしながら、2015年終盤の3ヶ月間の
   マイナス成長を含め、迫力に欠ける結果を見て、

   日本市民は不安感をいだき、安倍政権の支持率
   も落ち込んできている。一方、中国と北朝鮮は
   軍事力を示して地域の安定を乱そうとしている。

    こうした悪いニュースに囲まれると、一般的
   に、多くの指導者達は、それらのニュースを
   報道するメディアを非難し始める。

   残念ながら安倍氏も例外ではない。事実、政府
   とその支援者達による公式・非公式のメディア
   に対する圧力は、安倍氏が首相になってからの

   不満のタネである。多くの市民が、2014年1月
   の、公共放送であるNHKの運営を任された安倍
   政権支援者の台頭の後ろに、批判的報道を封じ
   込めようとする安倍氏の傾向があるとみている。

 

年金運用、一喜一憂の必要ない?


      年金積立金運用損 老後の財布
      私物化は困る
       福井新聞 2016年7月22日

 

    年金世代ともなると給付額の変動にはこと
   のほか敏感になる。そんな思いを逆なでする

    ように公的年金積立金の運用損が何と莫大な
   ことか。

 

   世界株安の影響で2015年度は決算で5兆

   数千億円の損失という。年金維持に積立金の

   運用は欠かせないが、これだけ巨額のリスク

   となると首をかしげる国民も多いはずだ。

 

    短期的には問題視する損失ではないのだろ
   うが、わずか3カ月で8兆円近い額が消えて
   も「たいしたことはない(政府)」という。

 

   投資リスクが極端に増しているのに、数字上
   の感覚がまひしているかのようだ。

 

   安倍晋三首相も運用損批判に対し先の国会で
   「短期の変動について答弁しても意味がない。 

   積立金運用はある程度長期的な視点で行うべ
   きで、安倍政権下の3年に約38兆円の運用
   益がある」と反論している。

 

    過去の実績を見ると確かに長期的にはプラ
   スが大きい。しかし安倍首相が胸を張るこの

   38兆円は、積立金の多くを株式のリスク投
   資へ移す以前の、安全運用によって累積した

   収益である。

 

   着実に利益を上げていた運用法をなぜ変更し

   たのか、十分な説明はなされていない。

 

    13年度末まで国内債券が過半数を占め安
   全確実な運用のおかげで、積立金残高は15
   年末現在で約140兆円。

 

   国民の共有財産である積立金はこのように堅

   実に維持すべき対象であり、安定給付への

   不安をなくすことが国が負う責務である。

 

    不用意な運用損の尻拭いは結局国民が被る。
   給付は下がり、保険料は上がる。その責任を
   政府もGPIFも常に無自覚であってはなる
   まい。

 


  * * * * * * * * * * *

 
 <年金の安定的運用とリスク>

 

  年金運用に多額の損失が出たと発表したが、一喜一憂
 する必要はない、長期的には相当な運用益がある、と政府
 は反論する。

 

 ところが、年金運用の独立行政法人(GPIF)が批判さ
 れるのは、その運用方針である。

 

 具体的には年金が安定的に給付されるのか、投資対象に
 株式のウェイトを高めたことを問題視する。

 

 ハイリスク・ハイリターンは好調のときに歓迎されるが、
 いつまでも続く保証はない。悲惨な結果も覚悟しなけれ
 ばならない。

 

 アメリカでは、公的年金の運用にリスク資産への投資は
 していないといわれている。

 

  また、説明で単年度の結果はともかく、年金資産は40兆
 円余り増えているというはおかしい。

 

 投資する資産の割合を変更して、株式比率を12%から
 50%に引き上げたのは、14年(平成26年)10月だと
 いうことが抜けている。

 

 株式比率を引き上げる前に累積した資産を正当化しても
 意味がない。

 

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  ※ GPIFは14年(平成26年)10月、投資する資産
   の割合を変更し、従来は12%ずつだった国内外の株式
   比率を計50%に引き上げた。(京都新聞

 

 

 <長期的な視野で体制を>


       長期で安定した年金運用に 
       日本経済新聞 2016/8/1

 

    公的年金積立金の運用で、2015年度は5兆
   3千億円の損失が出たことが公表された。
   国内外での株価の低迷が影響した。

 

    大きな損失には違いないが、年金運用は
   長期的な視野で評価されるべきものだ。01年
   度に積立金の自主運用が始まって以降では

 

   収益をあげた年も多く、累積では40兆円余り
   年金資産は増えている。単年度の結果だけで
   一喜一憂する必要はないだろう。

 

   とはいえ、できる限り安定した運用を目指す
   べきであることは間違いない。運用を担う
   年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)
   の体制強化を進めてほしい。

 

    厚生年金と国民年金の積立金は約130兆円
   ある。GPIFはこれを国内外の株式や債券
   に投資し、運用している。

 

    14年秋までのポートフォリオは国内債券の
   比率が高かった。その後、効率運用を目指し、

   債券比率を下げ株式に振り向ける新ポート
   フォリオを策定したところに株安が重なり、
   損失が出た格好だ。

 

    リスク資産への投資を増やしながら安定運
   用を目指すには、相応の体制が必要だ。

   まずは、専門家らの合議による意思決定を
   より重視する組織に変えるための関連法案を
   早急に成立させてほしい。

 

社会保障の財源確保


     責任ある社会保障の将来像を示せ
       日本経済新聞 2016/6/30


   *求められる財源の確保

    政府はこれまで収入以上の支出によって
   社会保障を広げてきた。足りない分は借金で
   賄った。その結果が国内総生産(GDP)の
   2倍を超える債務残高だ。

 

   先進国の中で最悪の財政状況であり、そのツ
   ケは将来世代に回される。

 

   「社会保障と税の一体改革」は、予定通りの
   増税ができないことで事実上、頓挫した。
   いま一度練り直しが求められる。

 

    25年には団塊の世代がすべて75歳以上とな
   り、医療や介護の需要が急速に高まると予想
   される。この状態に耐えうる一体改革を早急
   に進める必要がある。

 

   消費税率は10%でも足りないとみる向きが多
   い。その先をどうするのか。消費税以外の
   増税の選択肢も含め、もっと真剣に議論され
   るべきだ。

 


 *給付のスリム化も必要

 

    増税社会保険料のアップを抑えるには、
   社会保障給付の抑制も欠かせない。医療にし
   ても介護にしても、一定の年齢以上ならば

 

   一律に手厚く給付するのではなく、それぞれ
   の収入などを踏まえ給付を絞り込む必要が
   ある。

 

    社会保障と税、それに働き方も含めて、
   総合的にこの国の制度をどう変えていくかと
   いう視点が、求められている。

 


  * * * * * * * * * * *

 


 <幅広く公平に負担>

 

  社会保障の財源確保のため、消費税増税を急ぐべきで
 ある、消費税率は10%でも足りないというのが財務省など
 行政や経済界の大勢のようです。

 

 消費税が望ましいのは、高齢化社会における社会保障には、
 高齢者を含めて国民全体で広く負担する必要があるからと
 いう。

 

 特に働く世代は社会保険料所得税を負担して高齢者を支
 えており、これ以上頼ることはできない。

 世代間の公平のためにも、各年代層で広く負担できる消費
 税を増やすのは当然である、という考えです。

 

  ただ、徴税する立場からすると、第一に税収の安定性で
 あり、景気の動向に左右されにくい、そして取りやすいと
 いうことでしょう。

 

  しかし、社会保障だから各年齢、各所得階層に幅広く
 負担を求めるべきなのか。富の再分配をして、社会保障
 教育費にも役立てられる。

 

 消費税は各所得階層に定率で負担させる。低所得者に優し
 い制度ではない。むしろ所得の大部分を消費に支出する
 から、消費税収では特に中低所得者の貢献が大きい。

 

  所得税の累進度を強めても、若年層の負担は比較的少な
 いはず。資産課税をすれば、むしろ老人の負担が大きく
 なる。

 

  世代間格差を強調する人は、国民年金の平均受給額が約
 5万5000円となっているのをどう考えるのか。

 絶対額が低い、それでも将来世代はもっと下がるといって、
 月額何万も抑えるべきだといえるのか。

 

  世代間格差よりも深刻なのは、どの世代にも貧富の格差
 が大きいことであろう。

 

 

 <貧富の二極化>


     3党合意の崩壊/「社会保障と税」
     どうするの
       河北新報 2016年06月18日

 

    現下と将来の生活に直結する政策課題。
   言い換えれば今とこれからの暮らしの安定と
   安心に関わる問題である。

 

   そして、このことが景気を大きく左右する個
   人消費の背景にあることはいうまでもない。

 

    アベノミクスが経済格差を拡大したことは
   否定できまい。大企業、富裕層を優遇し、そ
   の富を滴り落とすことを狙いながら、そうは

 

   ならずに富はとどまり、一方で雇用が増えた
   といっても、多くは低賃金の非正規労働で
   ある。

 

    いわゆる中間層が細り貧富の二極化が加速、
   中でも低所得・貧困層が厚みを増した。この
   格差を是正することなしに安定も安心もある
   まい。

 

   社会保障も税も、その重要な役割は再配分機
   能にある。税は「持てる者」から取って
   「持たざる者」に分配する。

 

   社会保障は、みんなの負担で高齢者や弱者ら
   を支える相互扶助の仕組みである。

   社会の底上げを図り、将来にわたる保障を得
   る上で、この再配分機能の発揮こそが求めら
   れているのではないか。

 

    2度延期され実施の確証もない10%増税
   は、ほごも同然だ。いかに格差を正し将来
   不安を拭うか、3党は社会保障と税の新たな

 

   改革像を示すべきだ。そうしなければ無責任
   との断罪を免れまい。政治への不信を深めて
   はならない。

 

退職勧奨、いやがらせ

 
<業務命令権の乱用>        教科担当外しは無効        須磨学園教諭の訴え認める         神戸新聞 2016/5/26     教科担当を外されるなど不当な待遇を受けた    として、須磨学園高校の教諭後藤芳春さんが    学校法人須磨学園と理事長、学園長を相手取り、    約630万円の損害賠償などを求めた訴訟の    判決公判が26日、神戸地裁であった。    倉地康弘裁判長は担当を外した業務命令を無効    とし、慰謝料など約180万円の支払いを命じた。     判決などによると、後藤さんは2011年3月、    教員としての勤務成績が悪いなどとして教科担当    を外され、図書室での日本史の教材研究を命じら    れた。その後、「辞めた方がいい。居残るなら    退職金を減らす」などと退職を迫られ、12年    12月から約7カ月間、自宅待機をさせられる    などしたという。     倉地裁判長は「(担当を外したのは)特段の    理由がない。自主退職に追い込む不当な動機で、    業務命令権の乱用」と指摘。    「一連の行為は社会通念上、相当と認められる    範囲を超える不法行為。嫌がらせともいえる」と    して慰謝料の請求を認めた。  * * * * * * * * * * *  <退職勧奨と解雇>   経営不振や企業の再編、人員削減などの必要から、  従業員に自主的な退職を求めるという退職勧奨が話題  になります。  退職勧奨にとどまらず、強要やいやがらせを行って解雇  に至るというケースが問題になる。  <退職勧奨は違法か>   退職勧奨行為が許容されるか、違法となるかについて、  その判断基準を示した判決がある。  「労働者の自発的な退職意思の形成を目的として、その   実現のため社会通念上相当と認められる限度を超えた   不当な心理的圧力や名誉感情を不当に害する言動を   することは許されず、そのような退職勧奨行為は不法   行為を構成する。    しかし、退職勧奨対象社員が消極的な意思を表明し   た場合でも、在籍し続けた場合におけるデメリット、   退職した場合におけるメリットについて、更に具体的   かつ丁寧に説明又は説得活動をして、再検討を求めた   りすることは、社会通念上相当と認められる範囲を   逸脱したものでない限り、当然に許容される。」  <退職勧奨が違法とされた事例>   自発的な退職意思の形成を促す限度を越えて   いると判定した裁判例   第一回の勧奨以来一貫して勧奨に応じないことを表明  しており、退職する意思のないことを理由を示して明確  に表明している。  それ以上交渉を続ける余地はなかったものというペきで  ある。   六人の勧奨担当者が一人ないし四人で、長いときには  一時間半にも及ぷ勧奨を繰り返したもので、明らかに  退職勧奨として許容される限界を越えている。   また、原告らに際限なく勧奨が続くのではないかとの  不安感を与え、心理的圧迫を加えたものであって、許さ  れないものといわなければならない。   本件退職勧奨はその本来の目的である被勧奨者の自発  的な退職意思の形成を促す限度を越え、心理的圧力を加  えて退職を強要したものと認めるのが相当である。     労働相談Q&A 退職勧奨・退職強要    福岡県労働局労働政策課 2016年3月31日    退職の意思がないのに、一旦、退職届を出してしま   うと、取消しや無効の立証が難しくなります。    退職強要に労働者が対抗する主な方法としては、   上司や使用者に対し退職の意思がないことを明確に伝え、   退職強要は不法行為に当たるのでただちに止めるよう   内容証明郵便で通告する方法があります。   退職強要を止めない場合は、ひとりで悩まず、最寄りの   労働者支援事務所に早めにご相談ください。

 

テナント従業員の自殺で資産価値が低下

 <飛び降り自殺をさせない義務>

  珍しい裁判事例だろうと思います。  飛び降りた従業員は、どういう状況だったのでしょうか。

 

    飛び降り自殺 テナントに賠償命令
    「させない義務を負う」
      毎日新聞 2016年8月8日

 *ビル所有会社にとり資産価値低下、
 「1000万円支払いを」

  オフィスビルのテナント企業の社員が飛び降り自殺した
 ため物件価値が下がったとして、ビル所有会社がテナント
 企業に約5000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京

 地裁は8日、1000万円の支払いを命じる判決を言い渡
 した。池田幸司裁判官は「テナント側は、借りた室内や
 共用部分で従業員を自殺させないよう配慮する注意義務を
 負う」と指摘した。

  判決によると、テナント企業の男性社員が2014年、
 ビルの外付け非常階段から敷地外に転落して死亡した。

 ビルを売り出していた所有会社は、事故後は「精神的瑕疵
 有り」と明記したうえ販売額を約1割(約4500万円)
 引き下げて売却した。

  テナント側は、共用部分で自殺すると予測できず賃貸
 契約上の注意義務に含まれない、居住用に比べて物件価値

 への影響は限定的だ、などと反論したが、判決は「日常的
 に人が出入りする建物で、心理的嫌悪感を抱かせる」とし

 て自殺による価値低下を認め、借り主にはそれを防ぐ義務
 があると指摘。自殺で1000万円分の損害が生じたと
 結論付けた。

 自殺者が出ると物件の価値が低下するということはよくある  話でしょう。  それがために損害を被れば、賠償請求を起こすのも当然です。   過去に建物内で殺人事件が発生したことがあり、住み心地  が良くない、嫌悪すべき心理的欠陥が存在すると判断された  裁判事例もある。   一方、テナント側の職場に安全配慮、注意義務を負わされ  るのも、労働問題として常識内です。  使用者は、労働者が心身の健康を損なうことがないよう注意  する義務を負うとして、安全配慮義務を怠った場合に賠償  責任を認める判決が出ている。   今回のケースでは、被害者がビル所有会社で、加害者が  テナントという点が特異です。その原因はテナントの従業員  が自殺をしたということになっている。  従業員の自殺が、職場内に問題があってのことか否かが分か  りません。  しかし、資産価値が低下するようなことを従業員に「させな  い義務を負う」とすると、広くなりすぎでなかろうか。