沖縄米軍基地建設の問題
国も沖縄県も同じ行政なのに
日本経済新聞 2015/9/16
翁長雄志知事は前知事が下した移設先の埋め立て許可を
取り消す手続きに入ると表明した。自身の判断の是非を問う
県民投票の実施も検討中だそうだ。
こうしたやり方がよい結果に結びつくとは思えない。
政府と県は以前にも法廷で争ったことがある。1995~96
年にあった代理署名拒否訴訟だ。米軍への用地提供に応
じない地主に代わって知事がする応諾の署名を当時の
大田昌秀氏が拒み、政府が裁判所に訴えた。
最高裁は政府に軍配を上げ、大田氏も最後は署名をした。
政府と県の双方に感情的なしこりが残った。これと同じこと
を繰り返すのはあまりにも不毛である。
1カ月の集中協議期間が終わる際、政府と沖縄県はなお
話し合いを続けるための枠組みをつくることで合意した。
このパイプを生かして接点を探るべきだ。
政府は県南部の米軍基地はできるだけ広範囲かつ早期
の返還が実現するように努める方針だ。そのことが沖縄県
民に理解されれば、普天間移設への反発も少しは和らぐ
のではないか。
どうすれば沖縄の基地負担を軽くできるか。政府と県が
連携して考えてほしい。
<沖縄代理署名訴訟>
*代理署名訴訟は、駐留軍用に土地を使用するため
に必要な手続きを沖縄県知事が拒否したことから
国が起こした訴訟。
平成8年に最高裁判決があった。
*駐留軍用地特措法:駐留軍用に必要とする土地等
を使用、収用する手続法。
土地収用法の手続きを簡略化している。
*土地所有者が応じない場合、市町村長(都道府県知事)
が代わって物件調書に署名押印を行うことで、国の使用
が可能になる。
*判決では、憲法に違反するという県知事側の主張を棄却、
その上で主務大臣がした職務執行命令に、重大で明白な
瑕疵があるとはいえない、と結論付けた。
<辺野古埋立承認取消の理由>
*辺野古埋立に反対の立場をとっていた前知事が、国が
申請した公有水面埋立てを2013年12月承認した。
*国の働きかけに応じて従来の姿勢を翻し、埋立を承認
したが、公有水面埋立法に規定する審査を十分行って
いない。
*公有水面埋立法4条の適合要件を満たした場合を除き
埋立の免許をすることができない。
*環境保全や災害防止への配慮についての要件審査が
不十分であって、承認には法的な瑕疵がある。
<協議の必要性>
辺野古移転賛成の立場
政府と県の間で合意した内容で進める他ない、裁判になれ
ば解決が難しくなる。
沖縄代理署名訴訟では、最高裁判決で政府が勝訴したが、
その結果、政府と県の間に感情的なしこりが残った。
沖縄県は政府と話し合いを続け、連携を図るべきだ。
政府は米軍基地の早期返還に努力して県民の反発を和らげ
ていくことだろう。
反対派の主張
沖縄県民の民意を尊重して解決を図るべきだ。
辺野古以外の選択肢を探るべく、米国との協議始めて欲しい。
仮に政府が裁判で勝ったとしても、県民の理解なしに移転が
進むとは考えられない。
辺野古埋め立て 「承認取り消し」尊重せよ
新潟日報 2015/09/15
裁判で県に勝てばいいという問題ではない。政府は作業を
中止するべきだ。
沖縄県の翁長雄志知事は宜野湾市の米軍普天間飛行場の
移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しに向け
た手続き開始を表明した。
政府は対抗措置を取る構えだが、県と法廷で対峙する異常
な事態は避けねばならない。沖縄県民の民意を尊重して、
米国と問題解決に向けた協議に入るべきだ。
政府が強気の姿勢を取り続けるのは、法廷闘争になった
場合でも県に負けることはないとの自信があるからであろう。
しかし、仮に裁判で勝ったとしても、県民が移設工事に納得
し、工事が順調に進むようになるとは到底考えられない。
反対運動は、移設予定地に近い米軍基地の周辺や海上
だけではなく、東京・国会前でも行われるようになっている。
全国的な広がりを見せつつあるのだ。
米国は、日本国内の世論の高まりが在沖縄米軍全体の
部隊運用の障害になりかねないとの懸念を深めている。
政府と沖縄県の対立は、結果的に日米関係にもマイナスと
なる可能性があるといえる。
普天間の危険性を取り除くための、辺野古以外の選択肢を
探る必要がある。早急に協議を始めてもらいたい。