願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

こんなはずではなかった、動機の錯誤

 

 ☆契約の前提が違う

  婚約相手の前妻と離婚が成立していると信じて婚約
 したのに未だ成立していなかった、というケース。

 独身であると認識していたことは当然の前提であり、
 この婚約は錯誤無効と認められている。

  また、新築マンションを購入した買主が、耐震強度
 に偽装の疑いがあることが発覚したために、分譲契約
 の錯誤無効を主張して提訴した。

 裁判では、耐震性不足があったことは売買契約を締結
 する上で極めて重大な問題であり、錯誤の要素性を満
 たしていると認められた。

  売買契約において原告らの意思表示は無効であり、
 被告は売買代金を返還する責任を負う、とされた。

 

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  ☆動機の錯誤とは   民法では、法律行為の要素に錯誤があるときに限り  無効としている。(95条)   ところで、動機の錯誤については裁判で無効と認め  る例は少ないといわれている。  認められるのは、動機が相手方に対して表示されてい  たり相手方も承知しているなど、もし錯誤がなかった  らその意思表示をしなかったであろうと認められる場  合である。  動機が明示されていないが、黙示的に表示されている  ときでも要素の錯誤として無効となる場合がある。  ☆錯誤無効が認められた事例   平成22年4月22日 札幌地裁 判決    本件各売買契約においては、売主である被告は、   建築基準法令所定の基本的性能が具備された建物   である事実を当然の大前提として販売価格を決定   し、販売活動を行った。   原告らもその事実を当然の大前提として分譲物件   を買い受けたことに疑いはない。    ところが、本件各売買契約においては、客観的   には耐震偽装がされた建物の引渡しが予定されて   いた。   であるのに、売主も買主も、これが建築基準法令   所定の基本的性能が具備された建物であるとの誤   解に基づき売買を合意したことになる。   売買目的物の性状に関する錯誤(いわゆる動機に   関する錯誤)があったことになる。    新築マンションにあっては、耐震強度に関する   錯誤は、錯誤を主張する者に契約関係から離脱す   ることを許容すべき程度に重大なものというべき   であり、民法95条の錯誤に該当するものと認め   るのが相当である。   したがって、本件各売買契約に係る原告らの買受   けの意思表示は無効であり、被告は原告らに対し   売買代金を返還する責任を負う。

 

公務員の違法行為で被害者の賠償請求は

 ☆体罰自殺で損害賠償負担

    桜宮高の元顧問に半額負担請求へ
    体罰自殺で大阪市
       共同通信 2017/8/29

  2012年に大阪市立桜宮高のバスケットボール部
 顧問の男性から体罰を受けた男子生徒が自殺した

 問題で、大阪市が、遺族に支払った損害賠償の半額
 を負担するよう元顧問に求め、大阪地裁に提訴する
 方針を固めたことが29日、分かった。

  遺族は13年12月、大阪市に約1億7千万円の損害
 賠償を求めて東京地裁に提訴。同地裁は16年2月、
 市に約7500万円の損害賠償と遅延損害金の支払いを
 命じ、遺族側、市側の双方が控訴せず確定した。



 ☆公務員による違法行為

  公務員による違法行為によって被害を受けた場合は
 公務員個人でなく、国や自治体に賠償責任を求めるこ
 とになっている。


 国家賠償法

  第一条

  1.国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員
   が、その職務を行うについて、故意又は過失
   によって違法に他人に損害を加えたときは、
   国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずる。



  この場合の公務員個人の賠償責任については規定さ
 れていないが、過去の裁判で次のような考えが示され
 ている。


  職務の執行に当たった公務員は、行政機関としての
 地位においても、個人としても、被害者に対しその
 責任を負担するものではない。

   (昭和30年4月19日 最高裁 判決)


  資力のある国又は公共団体から賠償を受けられれば、
 公務員から直接賠償を受けなくても、被害者は被った
 利益は填補され、被害者の救済に欠けることはなく、

 加害者たる公務員も求償を受けることがあるから、
 公務員が特に個人責任を免除され不公平に優遇されて
 いるとはいえない。

   (平成23年7月25日 大阪地裁 判決)


  我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者
 に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれ
 を賠償させることにより、被害者が被った不利益を

 補填して、不法行為がなかったときの状態に回復させ
 ることを目的とするものであり、加害者に対する制裁
 や将来における同様の行為の抑止、すなわち一般予防
 を目的とするものではない。

   (平成9年7月11日 最高裁 判決)

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 ☆損害賠償金の求償権   公務員個人に被害者から賠償責任を求めることは  できないが、国又は公共団体が支払った賠償金を、  その公務員に求償する権利が認められている。   第一条   2.前項の場合において、公務員に故意又は重大    な過失があったときは、国又は公共団体は、    その公務員に対して求償権を有する。   公務員に重大な過失があった場合は、その違法行為  により損害を加えた公務員に対して賠償金を負担させ  ることができると定めている。   故意又は重大な過失があったかどうか、認められれ  ば、その個人に負担が求められる。  ☆担当者の重大な過失が認定された判決      元県土建部長らの過失認定      7100万円請求 知事に求める     八重山毎日新聞 2017年07月20日  *識名トンネル訴訟で那覇地裁判決   識名トンネル建設の虚偽契約問題をめぐり、県内  在住の住民が仲井真弘多前知事や当時の県土木建築 部長らで国への補助金返還額のうち利息分の7千百  万円余りを連帯して支払わせるよう翁長県知事に求  めた住民訴訟の判決が19日、那覇地裁であった。  剱持裁判長は、建設工事契約の一部の違法性を認め、  元県土木建築部長と元南部土木事務所長に計7千百  万円余の賠償を請求するよう翁長知事に求める判決  を言い渡した。   この問題で県は、会計監査院から「虚偽の契約書  などを作成し工事の実施を偽装。不適正な経理処理  を行い補助金の交付を受けた」との指摘を受け、  国庫補助金5億7百万円と利息分7千百万円余を返  還している。   判決では、元南部土木事務所長が虚偽契約の締結  に積極的に関与したと認定。元県土木建築部長に  ついては「しかるべき調査をして、これを認識すべ  き義務があったにもかかわらず、これを怠り、注意  義務に違反して阻止しなかった重大な過失があると  言わざるを得ない」とした。

 

消費者の利益を不当に害するか

 ☆がん治療中止でも費用を返還せず

   がん治療中止しても事前支払い費用は一切
   返還せず  消費者団体「不当な内容」と
   契約条項差し止め求め提訴へ
       産経新聞 2017.7.21

  がんの治療を中止しても、事前に患者が支払った
 費用を一切返還しない契約条項は消費者契約法に反
 する不当な内容だとして、岡山市の適格消費者団体

 「消費者ネットおかやま」が21日、広島県福山市
 の「花園クリニック」に対し、契約条項の差し止め
 を求めて広島地裁福山支部に提訴した。

  訴状によると、問題となったのは「樹状細胞療
 法」と呼ばれる先端治療。患者が途中で中止したり、
 死亡したりした場合でも事前に支払った百数十万円
 の費用を一切返還しないという契約を結び、必要
 以上の報酬を得ていると主張している。



 ☆消費者側の主張

  治療費不返還条項には、「樹状細胞は成分
  採血後一度にまとまった量を作製するため、
  その時点で全額負担になる」としている。

  しかし、樹状細胞療法の治療には、成分
  採血後に、樹状細胞の培養、管理及び培養
  検査、ワクチン投与等が予定される。

  また、成分採血に要する時間はわずか2時
  間程度との説明がなされている。

  少なくとも成分採血の終了時に解除がなさ
  れても、明らかに「平均的な損害」の発生
  が治療費全額に相当することはない。


   成分採血後は治療費が全く返還されない
  とする治療費不返還条項は少なくともその
  一部が消費者契約法9条1号の規定に反し
  無効である。

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 ☆消費者契約法の目的

  消費者と事業者との間には情報の質、量そして交渉
 力の格差が大きいので、消費者の利益を不当に害する
 契約が締結されるおそれがある。

 このため消費者契約法は、消費者の利益を擁護し消費
 者の被害を防止する必要上制定された。

  具体的には、消費者が誤認した場合等に契約の申込
 みを取り消すことができる、消費者の利益を不当に害す
 ることとなる条項を無効とするなどの規定をしている。



 ☆契約解除で高額な損害賠償金

  消費者に不利な契約の例として、特約などによって
 事業者の義務が緩和されたり、消費者の権利が制限さ
 れることがある。

 こうした消費者に一方的に不利な条項は無効とする
 規定がある。

  裁判で争いが多いのは、消費者契約法9条の関連
 です。

 契約解除によって事業者に損害が発生しない、また
 は少ないのに高額の違約金、損害賠償金を消費者に
 求める場合です。

  法律は、契約解除に伴う損害賠償額の予定につき
 事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は
 無効としている。


 *「平均的な損害」とは(消費者庁)

  契約の類型ごとに合理的な算出根拠に基づき算定
 された平均値であり、消費者契約においてあらかじ
 め算定することが可能なものである。

  解除の事由、時期等が同一の区分に属する複数の
 同種契約において、解除されることにより生じる損害
 額の平均値である。



 ☆契約解除の損害事例

 1)登録済未使用車(新古車)の売買契約の
  キャンセルについて、販売会社が消費者に
  違約金を請求した

  平成14年7月19日 大阪地裁 判決

 (1)売買契約の撤回(解除)は契約締結の翌々日
  であった。

 (2)担当者は売買契約締結の際、代金半額の支払
  を受けてから車両を探すと被告に言っていた。

  対象車両を既に確保していたとしても、他の
  顧客に販売できない特注品ではない。

 (3)従って、被告による契約解除のため販売業者
  に通常損害が発生しうるものとは認められない。

  本件違約金請求は消費者契約法9条1号により
  許されない。  2)大学入学辞退者の学納金返還訴訟   平成18年11月27日 最高裁 判決   大学に合格し入学手続きをした後、入学を   辞退した者が、入学金および授業料の返還   を大学側に求めた  (1)入学金は入学できる地位の対価であり、辞退   者でもその地位を得ているから入学金の返還義務   がない。  (2)授業料を返還しない特約は、消費者契約法   9条に規定する損害賠償額の予定などに該当する。  (3)授業料は返還すべきである。   理由   大学が合格者を決定する際に織り込み済みのもの   であれば、在学契約の解除によって大学に生ず   べき平均的な損害は生じない。   従って、客観的に学生が入学すると予測される   時点(入学時期である4月1日)よりも前の時期に   おける在学契約の解除については、授業料の全額   を返還すべきである。   上記時点以後のものであれば、学生が年度に納付   すべき授業料等に相当する損害を大学が被ると   いうべきで、大学に生ずべき平均的な損害を超え   る部分はない。(その場合は返還の必要がない)

 

政権と連携する連合の姿勢

 

 ☆首相と連合の思惑一致と伝える新聞

    成果型労働制  首相と連合、思惑一致
    戸惑い広がる民進
        毎日新聞 2017/7/14

  政府と連合が13日、「高度プロフェッショナル
 制度」の導入に向けて歩み寄ったのは、「働き方改革」
 の具体化で政権の再浮揚を目指す安倍晋三首相と、
 労働政策で存在感を示したい連合の思惑が一致した

 ためだ。神津里季生会長は制度容認を「方針転換では
 ない」と繰り返したが、安倍政権の助け舟になったの
 は間違いない。一方、「蚊帳の外」に置かれた民進党
 には戸惑いが広がっている。

  報道各社の世論調査内閣支持率の下落が止まらず、
 安倍政権は焦りを強めている。秋の臨時国会で残業
 時間の上限規制などを含めた法改正を実現するには、

 民進、共産両党が「残業代ゼロ法案」と批判してきた
 高度プロフェッショナル制度に連合の協力を得る必要
 があった。

 首相官邸幹部は「民進党は連合の意向を無視できない」
 と述べ、連合が容認に転じれば、民進党も政府案に乗ら
 ざるを得ないとの見方を示した。


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 ☆修正内容について批判   連合側が示している修正案と、各紙の批判  1)年104日以上かつ4週間で4日以上の休日取得   を義務付け   → 年104日は祝日を除いた週休2日制に過ぎない。   → 8週で最初と最後に4日ずつ休めば48日連続    の勤務も可能になる。  2)2週間連続の休日取得、臨時の健康診断を条件と   して労使に選ばせる   → 診断を受ければ働かせても構わないと受けとれ    る。長時間労働を助長させるおそれ。  ☆労組の役割を問う   労働組合は政権の諮問機関ではない。働く者を守る  原点に立ち返り、労組としての一線を守るべきだ。       (神戸新聞 2017/07/15)
    連合の姿勢 原点を忘れてないか      信濃毎日新聞 2017年7月15日   連合は、水面下で安倍政権に制度の撤回を求めた。  政府側は残業規制を引き合いに「全部パーにするか、  清濁併せのむか」と容認を迫ったという。   過労自殺も過労死も後を絶たない。働き方の改革は、  不満と不安を募らせている労働者と家族の要請だ。  「できるものならパーにしてみろ」と言い返せばいい。   連合の幹部は「テーブルに着けば政権の思惑にのみ  込まれ、着かなければ何も実現できない」と嘆く。  労働者の意思を背景に主張を貫くことを忘れ、言葉通  り政治にのまれている証しだろう。   連合執行部への批判が強まっている。働く者・生活  する者の集団として世の中の不条理に立ち向かい、  克服する。原点に返らねば求心力を失うことになる。  ☆誰のため、何のため    「残業代ゼロ」 誰のための連合なのか       北海道新聞 2017/07/15   神津会長が、修正点として要求した働き過ぎの防止  策が、長時間労働の歯止めになるかどうか、極めて疑  わしい。   連合側の修正は「年104日以上かつ4週間で4日  以上の休日取得」を義務付けた上で、「2週間連続の  休日取得」「臨時の健康診断」といった条件の中から  労使に選ばせるという内容だ。  104日の休日は週休2日とほとんど変わらない。  臨時の健康診断に至っては、「診断を受ければ働かせ  てもいい」とも受けとれ、むしろ長時間労働を助長さ  せるのではないか。   しかも、いったん導入されれば、突破口となって、  対象が拡大する恐れがある。  かつて経団連は「年収400万円以上」での導入を提言  していた。   残業規制を巡っても、今春、神津会長と、経団連の  榊原定征会長とのトップ会談の結果、「月100時間  未満」で決着した。  これは厚生労働省の過労死ラインと同水準で、上限規制  と呼ぶに値しない。   労働者の代表としての存在意義さえ疑われる状況だ。  誰のため、何のために連合はあるのか、突き詰めて問い  直すべきだ。

 

公益通報者保護法は労働者を守るか

 

 内部告発守秘義務違反か

     加計学園 「守秘義務違反」
     副大臣発言に批判続出
     毎日新聞 2017年6月15日

  加計学園獣医学部新設計画を巡り、内部文書が存在
 すると職員が内部告発して明らかにした場合、国家公務
 員法(守秘義務)違反に問われる可能性があると述べた
 義家弘介文部科学相の発言が波紋を広げている。

  専門家は「文書は秘密ではない。仮に秘密であっても
 告発には公益性がある」と批判している。



 内部告発者は保護されるか

  まず、結論から整理すると

 (1)公益通報者保護法の趣旨は、通報者を保護すること
   により、国民生活の安定、社会経済の健全な発展を
   図ること。

 (2)この法律は、その趣旨に反し内部告発者を保護する
   効果に欠ける。

 (3)不利益な取扱いから保護するというが、行政罰など
   抑止力がない。結局この法律の意義は乏しく、一般
   の裁判で争うことになる。

 (4)解雇など懲戒処分無効や人事権濫用の労働事件に
   なるが、公益通報者保護法がつくられる前から
   裁判では、労働者が保護される事例が多い。

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 公益通報者保護法の要件   公益通報者保護法は、最近つくられた法律ですが  その趣旨に反し内部告発者を保護する効果に乏しい  といわれている。  (通報の対象事実など要件が非常に限定的)   1)不正の目的でなく、所定の手続により通報する   2)対象を法令違反による犯罪行為に限定   3)通報先    イ)まず、企業内部または通報窓口に    ロ)監督機関に    ハ)マスコミなど外部に通報する場合は、      厳しい要件が加わる  ☆通報に正当性があると認められるには  (マスコミなど外部に通報する場合)   真実であることのほか厳しい要件が加わる   次のいずれかの要件を満たすこと。  1)解雇その他の不利益取扱いを受けるおそれ  2)証拠隠滅のおそれがある  3)公益通報をしないことを要求された   など  ☆通報者を保護する効果は  (公益通報者保護法をつくったという効果は特にない)   公益通報者保護法をつくったから、内部告発が促進  されるとか、告発者の保護が強化されることにはなら  ない。   しかし、この法律があってもなくても裁判による争い  になるが、これまでの裁判事例では告発者が保護される  ことが多い。   また、議論になりやすい内部告発の事実が真実と認め  られるかについては、告発内容が真実であると信ずるに  足る相当の理由があればよい。  結果的に内部告発の事実が証明されなかったとしても、  その信ずる根拠を示せば保護される。  ☆裁判による労働者の保護   結局一般の労働裁判で争うことになるが、これは   公益通報者保護法がなくても、これまで労働者が   保護されてきた労働事件の裁判に頼るだけ。   解雇など懲戒処分無効や人事権濫用が争点になる   と、過去の裁判では労働者が保護される事例が多い。  ☆裁判事例  平成15年6月18日 大阪地堺支部 判決   内部告発には正当性があり、氏名を明らかにして  告発を行えば、弾圧や処分を受けることは想像され  たから、匿名による告発もやむを得なかった。  告発者に対する懲戒解雇、出勤停止、、、が、正当  な内部告発への報復を目的としたものであるとして  Yらの不法行為責任が認められた。 (理由)  内部告発の正当性   内部告発においては、その内容が不当である場合  には組織体等の名誉、信用等に大きな打撃を与える。  一方、これが真実を含む場合には、組織体等の運営  方法等の改善の契機ともなりうるものである。   内部告発の内容の根幹的部分が真実ないしは真実  と信じるについて相当な理由があるか、告発の目的  が公益性を有するか、、、告発の手段・方法の相当  性等を総合的に考慮して、その内部告発が正当と認  められた場合には、内部告発者に対し、仮に名誉、  信用等を毀損されたとしても、これを理由として  懲戒解雇をすることは許されない。   本件内部告発の内容は、Aの創設者の1人で、実  質的に最高責任者であった被告Y1による、Aの  資産の私物化、公私混同の事実があり、それを可能  にしているのが被告Y1及び同Y2によるAの支配  であるから支配をはねのけて不正を正し、Aを生協  組合員の手に取り戻すべきであるとするものと認め  られる。   本件内部告発の目的は、専ら、公共性の高いAに  おける不正の打破や運営等の改善にあったものと  推認される。  そうすると、本件内部告発の目的は、極めて正当な  ものであったと言うべきである。

 

契約約款の規定など民法を改正

 <契約関係の民法改正>

      改正民法、消費者保護に力点
      明治以来の大改正
      時事ドットコム 2017/05/26

  改正の目玉は、インターネット通販サービスの利用
 規約など、事業者が不特定多数の利用者と契約を結ぶ際
 に用いられる「約款」の項目の創設だ。

  膨大で難解な約款を利用者が読み飛ばすことも多く、
 解約時に意図せぬ違約金を請求されたり、一方的な約款
 変更で料金が値上げされたりといった消費者トラブルが
 相次いでいる。

  このため、「消費者の利益を一方的に害する」条項は
 無効であることを明記。内容変更は限定的に容認する。

  保険や銀行預金など契約が長期にわたる業態に配慮し、
 消費者利益への適合性と、必要性や妥当性などの事情に
 照らして合理的な場合は可能とした。

  約款に関するルールを確立することで、「利用者が
 約款を読まないことを前提にした悪質な事業者を抑止
 する」(法務省)のが狙い。ただ、経済界は利便性の
 高い約款への規制強化に抵抗したため、「利益を一方的
 に害する」以上の具体的な規制は見送られた。



 <改正の特徴>

  「大改正」と報道されているが、契約ルールを明文化
 して、一般に分かりやすくするのが目的だという。

  特に大きな変化が起こるというものではなく、裁判など
 で長い間に練られ、既に定着したものが法律になる。

  この改正の中で、日ごろの生活に関係するのが約款に
 ついて新たに規定されることです。

   約款は保険、運送、銀行取引などにおいて、多数の
 顧客と同じ内容の契約を締結する際に用いられる、統一
 した様式の契約条項。


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 <約款についてトラブル>

  約款の内容については、契約の一方である企業などが
 意図するところを作成して顧客に示すだけであって交渉
 の余地がない。

 細かく、難しい条項を読むということも少ないので、後
 でトラブルになり易い。免責条項や解約条項、違約金
 など顧客が不利益を受けることが問題になっている。

  今回改正の法律に、消費者が一方的に不利になる内容
 の条項は無効とする、と規定される。

 ただし、契約であることを消費者に示されて、合意すれ
 ば内容を理解していなくても契約が成立すると明記される。


  約款の免責条項が有効かが争われたケースで、最近
 話題になった裁判で判断が出されています。

  札幌ドームでプロ野球の試合中にファウルボールが
 観客に当たり、女性が失明した事故で球団に損害賠償を
 求めた裁判の控訴審判決です。



 <約款について争われた事例>

  平成28年5月20日 札幌高裁 判決

  争点(免責条項適用の有無)について

  (1) 控訴人ファイターズは、被控訴人との
   間においては、契約約款中の本件免責
   条項により主催者及び球場管理者は、

   観客が被ったファウルボールに起因する
   損害について責任を負わない旨の合意が
   成立していた。

   従って、控訴人ファイターズは本件事故
   について責任を負わない旨主張する。


  (2) しかしながら、以下のとおり本件に
   おいて上記合意が成立したとは認められ
   ない。

   本件のような具体的な法的紛争において
   て免責条項による法的効果を主張する
   ためには、

   観客である被控訴人において、その条項
   を現実に了解しているか、仮に具体的な

   了解はないとしても了解があったものと
   推定すべき具体的な状況があったことが
   必要である。

   本件においてはかかる状況は認められ
   ない。


刑事裁判で無罪、民事では損害賠償

 

 <教え子殺害で賠償請求>

   「嘱託殺人納得できぬ」遺族が提訴
    教え子殺害、元准教授に賠償求める
      福井新聞 2017年3月22日

  福井県勝山市で2015年3月、赤トンボの研究
 をしていた東邦大の大学院生菅原みわさん=当時
 (25)=が絞殺された事件で、菅原さんの遺族が

 22日までに、殺害した元福井大大学院特命准教授
 の前園泰徳受刑者に計1億2223万円の損害賠償
 を求めて千葉地裁に提訴した。

  前園受刑者は15年4月、教え子の菅原さんを
 殺害したとして殺人罪で起訴されたが、福井地裁の
 裁判員裁判の判決では嘱託殺人罪が適用され同9月、
 懲役3年6月(求刑懲役13年)が言い渡された。
 福井地検、被告とも控訴せず判決が確定した。

  今回の訴状では、「嘱託を裏付ける証拠が無い。
 被告は秘密裏にしていた不倫関係が公になれば、
 地位や名誉、家族を失うのでないかと恐れた。被告

 に被害者を殺害する動機があった」などと主張して
 おり、民事裁判でも再び嘱託の有無が争点になる
 とみられる。

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 <刑事で無罪、民事は敗訴の事例>   「疑わしきは罰せず」といわれて、刑事裁判では  厳しい証明が求められる。被告人を有罪とするには  疑問が残るという場合は無罪判決にならざるを得な  という。   一方、民事裁判の証明は、「通常人が疑いを差し  挟まない程度に真実」と確信できることが基準に  なっている。  一般人の常識的な考えに近い判断がされている。  そのために、同じ事件でも民事と刑事の裁判で異な  る結論が出ることがあるとされ、次のような事例が  ある。  *低血糖による意識障害でひき逃げ事故   横浜地裁 平成24年3月21日 判決   無罪   (低血糖による意識障害に陥り、事故の    認識があったか疑問が残る)   東京地裁 平成25年3月7日 判決   死亡した高校生の遺族に損害賠償を命令   (血糖値の管理を怠る過失があった)  *浦安市立小学校の児童虐待事件   千葉地裁 平成17年4月28日 判決   無罪   (犯罪の時間と場所が特定できない)   千葉地裁 平成20年12月24日 判決   浦安市と県に賠償命令   (証言は内容も具体的で迫真性がある)
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 <教え子殺害事件の特殊性>   元准教授側は争う姿勢であると報道され、嘱託殺人罪  は刑事裁判でも認められているから責任を問われないと  のコメントが紹介されている。   一方、遺族側は嘱託殺人罪の認定に納得していない。  被害者の殺害嘱託はなく、単純殺人罪が成立することを  主張立証していくという。   先の刑事裁判の判決は嘱託殺人罪を適用し、懲役3年  6月を言い渡した。判決理由は、「自殺の意思を有して  いた可能性は否定できない」「嘱託がなかったと認定す  るには合理的な疑いが残る」となっている。   裁判所も、単純殺人罪が成立する可能性が高いが、嘱  託殺人罪を否定することができないという刑事裁判の  原則に基づく結論になった。  従って、嘱託殺人罪でも実刑であり量刑はかなり重いの  であろう、検察側も控訴せず判決が確定している。   今回の民事裁判は、損害賠償を請求するものであり、  「嘱託殺人か、単純殺人罪が成立するか」の争い以前に、  殺人を実行して被害者は帰らないという事実は動かない。  しかも、老人介護や病苦による嘱託殺人とは全く異な  るから、損害賠償の請求は相当程度認められるのでは  ないか。  刑事裁判の裁判長は、「後先を深く考えない軽はずみな  行為で、強い非難は免れない」と述べたと報道されて  いる。  <刑事事件で不起訴、民事で賠償命令>     男性に1500万円の支払い命令      テレビ和歌山 2017-03-28 一昨年、紀の川市に住む老夫婦がキャッシュカー  ドを使い、現金1500万円を不正に引き出された  として日本郵便の男性に対し損害賠償を求めていた  民事裁判の判決が27日あり、和歌山地方裁判所は  男性に全額返還を命じる判決を言い渡しました。  事件発覚当時、男性は窃盗の疑いで警察に逮捕され  ましたが、刑事事件としては嫌疑不十分で、不起訴  処分となっていました。   判決を受けたのは、紀の川市に住む43歳の男性  です。判決によりますと、平成26年10月ごろ、  当時、郵便局の渉外担当として紀の川市の夫婦と親  密な関係にあった男性は、夫婦から言葉巧みに暗証  番号を聞き出し、キャッシュカードを持ち出して、  現金1500万円を無断で引き出したものです。   27日の裁判で、和歌山地方裁判所の山下隼人  裁判官は、キャッシュカードの暗証番号を入手した  時期と、夫婦の口座から初めて出金があった時期が  極めて近かったことや、男性が当時、外国為替証拠  金取引口座へ、被害額と一致する送金があったこと、  さらに、男性の携帯電話に暗証番号が記録された痕  跡があったことなどから、夫婦の口座から1500  万円を引き出したのは男性と認定し、全額を支払う  よう命じました。   事件発覚当時、男性は、窃盗の疑いで警察に逮捕  されましたが、和歌山区検察庁は、嫌疑不十分で  不起訴処分としていました。