法人税減税の方針<オピニオン比較>
<積極的な評価> 経済成長に必要な制度が前進したという主張。
与党税制大綱 経済再生へ着実に改革進めよ 読売新聞 2014年12月31日 経済成長に資する税制の見直しが、一歩前進したと言え るだろう。 最大の焦点だった法人税の実効税率は、現在 の34・62%(標準値)から、15年度に2・51%、 16年度に0・78%以上引き下げることで決着した。 実効税率の引き下げは、産業の空洞化に歯止めをかけ、 海外から日本への投資を促す効果が期待される。経済政策 「アベノミクス」が掲げる成長戦略の柱だ。 大綱が、欧州やアジア諸国並みの20%台への引き下げに 一定の道筋を示したことは評価できる。 地方に本社や研究施設を移転・新設した企業の法人税を 軽減する制度を創設する方針も示した。 気がかりなのは、法人税減税に伴う税収の減少額を埋める 財源を十分確保できなかったことだ。 15年度の実効税率引き下げには1兆円強の財源が必要に なる。与党は、赤字企業でも事業規模に応じて納税する外形 標準課税の拡大などで財源の一部を捻出したが、全額は賄え なかった。 特定業界の法人税負担を軽減する租税特別措置の縮小を ごく一部にとどめた影響が大きい。 20%台への引き下げの実現に向け、租税特別措置などの 大胆な改革に踏み込むべきである。
法人減税、得するのは誰 国、企業、家計? 日本経済新聞 2014年8月19日 *企業に活力 家計にも還流 企業の約7割は赤字で法人税を払っていない。米国、英国、 韓国などでは約5割の企業が税金を納めているそうだ。 ところが「日本企業の納税総額を国内総生産(GDP)比で みると約3%で、法人税率が日本より低い英国や韓国と同じ レベルです」と担当者。 一部に偏った負担構造なので、政府や与党は国と地方を合わ せて約35%の税率を20%台に下げ、広く薄く課税する改革案 を議論している。 *法人税負担、最終的には個人 企業から賃金や報酬を受け取った人は個人として所得税を 納める。個人と法人を分けたからといって、課税を逃れられ るわけではない。 そもそも「税金を負担するのは、法人税であっても突き詰め ると消費者や労働者などの個人」(一橋大学の佐藤主光教授) だ。 仮に法人税を上げて消費税や個人所得税を下げたとし ても、個人の負担が減るとは限らない。
<条件付きの立場> 国民の理解を得るためには、十分説明する必要があると 注文。
法人減税 国民の理解が不可欠だ 毎日新聞 2014年12月31日 14年度改正でも復興特別法人税が廃止された。増大する 社会保障費に対応するためだとして消費税は4月に8%に 増税されたのに、なぜ企業ばかり優遇するのかという疑問が 広がっても不思議ではない。 増税や食料品などの相次ぐ値上げで影響を受けている消費者 に対し、十分に納得のいく説明が不可欠だ。 日本の法人税が欧州やアジア各国に比べて高いのは事実 だ。安倍政権は国際競争力の強化と、海外からの投資を呼び 込む狙いで、成長戦略の柱として減税に取り組んできた。 ただ、円安や株高の効果で輸出産業を中心に企業業績は 好調だ。自動車など過去最高益を上げている企業も少なく ない。 それにもかかわらず、賃金や設備投資は期待ほど伸びて いない。そこに重ねて法人減税を実施しても、企業の内部 留保を積み上げるだけとの懸念が拭えない。 減税による税収減の穴埋め策の柱は、事業規模に対して 課税する法人事業税(地方税)の外形標準課税の拡大だ。 赤字企業への課税も強化される。 税負担は薄く広くという公平性に沿ったものだが、結果と して利益が大きい企業には有利に働く。
<大企業優遇に疑問> 富裕層と中低所得層との所得格差が広がっている。 格差解消の効果が見通せない。
経済対策と法人税減税 格差解消は見通せず 共同通信 2014/12/27 政府は景気を下支えする経済対策を取りまとめた。アベ ノミクスで大企業や富裕層が潤った一方、中小企業や中低 所得層との格差は広がっている。 今回の対策は増税や円安に苦しむ家計や中小企業に配慮す る姿勢を示すが、格差解消につながる効果があるかは見通 せない。 経済対策と同時並行で調整が進む来年度税制改正大綱で は、法人税の実効税率の下げ幅を、来年度からの2年間で 3%超とすることが固まった。 黒字の大企業の税負担を減らす一方、財源確保のために 赤字企業の負担は増やす。「勝ち組」を優遇して経済成長 のけん引役とするアベノミクスの基本姿勢は変わっていない。