報道の自由に強い圧力
<怖いのは自主規制> 「反骨のジャーナリスト」むのたけじさんが亡く なった。 「戦争を止められなかった、許した国民にも責任は ある」 社会の公器である新聞は、統制対象になり自由 な言論が許されなくなっていくが、統制よりも怖いのは 自主規制。 家族や周りが怖いと強調した。 (東京新聞 2016.08.22) 表現の自由・報道の自由 権力監視 さらに責任重く 福井新聞 2016年7月24日 *事なかれ主義拡大 政治権力がどの道を選択しようと、国民を縛 る権利はない。そこに報道の自由がある。 憲法21条は「一切の表現の自由」を保障して おり、新聞倫理綱領や放送法は「あらゆる勢力 からの干渉を排する」、「何人からも干渉され、 又は規律されることがない」と定める。 しかし、選挙中のテレビ街頭インタビューで は政策などに明確な判断をせず、曖昧な表現が 多かった感がある。 「気付けば政権と同じ考えを話してくれる人を、 何時間もかけて探しまくっている」。某テレビ 局員の言葉が、萎縮し自粛する報道現場の実態 を端的に表している。 与党は13年12月、秘密漏えいや取得に 最高10年の懲役を科す特定秘密保護法を成立 させた。公務員のほか取材者も処罰される懸念 がある。 秘密指定の妥当性をチェックする監視機能を担 うのは議員や官僚で、独立性が希薄。報道の自由 と国民の知る権利が狭まる可能性が強い。 *新聞つぶせと暴言 メディアに報道の正確性や公正性が求められ ても、言論表現は束縛されない。 だが、自民党が12年4月に決定した憲法改正 草案では21条に「公益及び公の秩序を害する ことを目的とした活動を行うことは認められ ない」との規定を加えた。 「公益」「公の秩序」を時の権力が恣意的に 判断すればどうなるか。 ☆安倍首相が民放の報道番組で、アベノミク スに批判的な街の声を選んでいると非難。 自民党は衆院選前、在京各局に「公正中立」 を求める要請文を提出(14年11月) ☆自民党若手学習会で議員が「マスコミを懲ら しめるには広告料収入をなくせばいい」と 発言、ゲスト作家は「沖縄の二つの新聞は つぶさないといけない」と暴言(15年6月) 安倍政権下で強まる報道への干渉や介入。 戦時中の過ちを繰り返すな、は杞憂だろうか。 *報道の独立性低下 報道の自由に関し、国際ジャーナリスト組織 「国境なき記者団」が180カ国・地域対象に 調査、発表した16年ランキングで、日本は前 年の61位から72位に後退した。10年の 11位から毎年順位を下げている。同組織は 「特に首相に対する批判などで、メディアの 独立性を失っている」と指摘する。 「私はあなたの意見には反対だ。だがあなた がそれを主張する権利は命をかけて守る」。 18世紀の仏思想家ヴォルテールの言葉が世紀 を超えて響く。権力者同様、メディアにもその 覚悟を問うている。 * * * * * * * * * * * 日本では、政権に都合の悪いジャーナリズム はつぶされる ワシントン・ポスト 2016年3月5日 3年前の選挙時に安倍総理によって打ち出され た、日本の低迷中の経済を活性化せんとする 野心的プログラムであるアベノミクスはこれま でのところ好調であるといえるものではない。 安倍首相は、財政的刺激、金融緩和、構造改革 のための「三本の矢」を放つと約束した。日銀 が最近のマイナス金利を含め、急激な反デフレ 手段を講じ、安倍氏は金融面で劇的な政策を打 ち出した。 しかしながら、2015年終盤の3ヶ月間の マイナス成長を含め、迫力に欠ける結果を見て、 日本市民は不安感をいだき、安倍政権の支持率 も落ち込んできている。一方、中国と北朝鮮は 軍事力を示して地域の安定を乱そうとしている。 こうした悪いニュースに囲まれると、一般的 に、多くの指導者達は、それらのニュースを 報道するメディアを非難し始める。 残念ながら安倍氏も例外ではない。事実、政府 とその支援者達による公式・非公式のメディア に対する圧力は、安倍氏が首相になってからの 不満のタネである。多くの市民が、2014年1月 の、公共放送であるNHKの運営を任された安倍 政権支援者の台頭の後ろに、批判的報道を封じ 込めようとする安倍氏の傾向があるとみている。