願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

食料自給率目標引き下げ<オピニオン比較>

 

   食料自給率 農業政策の目標として適切か
       読売新聞 2015年04月06日

  補助金農政を正当化するための数値目標なら、必要
 ない。 政府が今後の農政の指針となる「食料・農業・
 農村基本計画」を策定した。

 食物のカロリーを基準に算出する食料自給率の目標に
 ついて、現在の50%から45%に下げた。

  より現実的な数字に改めたのだろうが、そもそも目標に
 掲げることが適切なのか、疑問である。

  政府は、カロリーベースの自給率を、国内生産による
 食料安定確保の目安と位置付けている。

  だが、自給率上昇にはコメなど熱量の高い穀物の増産
 が有効で、コメ農家への過剰な保護政策の根拠に使わ
 れてきた面がある。

  日本農業は、カロリーは低くても価値の高い野菜や果物
 などが強みだ。その実力を示す的確な指標と言えまい。

 基本計画も「食料の潜在生産能力を示す指標としては
 一定の限界がある」と認めた。

  それならば、目標を取り下げるべきだったのではないか。
  政府は、カロリーベースとは別に、生産額ベースの自給
 率目標を70%から73%に引き上げた。

  現在は65%で、目標達成には農産物の付加価値の
 大幅な向上が必要だ。農家に「稼ぐ力」の強化を促す方向
 性は、理解できる。

  経済界などからは、農業の成長力・稼ぐ力を強化すべきだと  いう声が支配的です。  カロリーベースの自給率に拘る限り、付加価値の高い農業へ  転換できない。 食糧不足の問題は、多様な輸入先があれば  何の不安もない。   こういう論調で揃っており、新聞・テレビも同様の報道をして  いる。   一方で、世界の人口増加は食料需給に深刻な影響を及ぼし  兼ねない、国内で必要な食料を生産するという安全保障面を  おろそかにすることはできない、という主張も少なくない。

 

    食料自給率目標 引き下げは安易すぎる
      北海道新聞 2015年03月29日

  自ら掲げた目標を達成困難とみるや放棄する。引き下げ
 は安易すぎる。食は国民生活に直結する問題だ。見直し
 が農業の弱体化につながることがあってはならない。

  自給率には農業の実情を反映していないとの指摘が
 ある。国産が多い野菜はカロリーが低く、輸入飼料に依存
 する畜産品は自給とみなされない。そんな理由からだ。

  しかし、中長期的視点に立てば、世界は人口増加など
 で食料需給が逼迫する恐れもある。

  自給率はそうした中で、生きていくのに必要な食料を
 どれだけ自力で手に入れることができるのかを示す目安
 として定着している。軽視していいわけはない。

 

     食料自給率  目標引き下げは疑問だ
        京都新聞 2015年3月16日

  食料自給は国民の食の基盤にかかわる重要テーマで、
 難しいからと目標を下げるのは疑問だ。環太平洋連携

 協定(TPP)交渉が進む中、関税引き下げで輸入農産物
 が増え、自給率が下がることへの予防線との見方もある。

 国内農業の立て直しと同時に、先進国の中でも低い自給
 率を着実に高めていく戦略が必要だ。

  世界の人口増加で食料需給は逼迫が見込まれ、相次
 ぐ異常気象や紛争、相場の混乱で日本の食卓は大きな
 影響を受ける。

 不測に備えた自衛策として自給率向上は不可欠だ。農業
 大国でない英国やスイスなども向上に努めている。

  食料の自給を高める上で、世界中から買い集める大量
 調達・消費の在り方も見直したい。

 輸送や流通ロスで膨大な資源を浪費している。地域の
 農業とコミュニティーを守り、商工業と連携した6次産業
 化を進めるためにも「地産地消」を広げることが重要だ。

 消費者にとっても食の安全や安定確保につながる方向
 性ではないか。