労働時間規制の緩和<オピニオン比較>
柔軟に働くホワイトカラーをより多く 日本経済新聞 2015/1/18 新しい制度を利用できる人を、もっと広げられないか。 労働 時間の長さではなく、成果に応じて賃金を払う「ホワ イトカラー・エグゼンプション」の導入に向け厚生労働省 が示した案は、対象者を限定しすぎている。 新制度は短い時間で成果をあげる効率的な働き方を促す。 企業の生産性も高める。より多くの人が対象になるよう 設計すべきだ。 効率的な働き方によって1人あたりの生産性が上がれば 労働力不足を補う効果も期待できる。 だが厚労省が労働政策審議会に示した案は、制度の意義 を十分に生かせるか疑問だ。対象者を少なくとも1千万円 強の年収がある、金融ディーラー、アナリストなどの専門 職に限っている。 裁量労働制の対象に営業職の一部などを加えることも 厚労省は打ち出した。ホワイトカラー・エグゼンプション を使える人が増えれば柔軟な働き方が広がる。この制度の 普及に向け、十分な健康管理ができる環境づくりを急ぎ たい。
<柔軟で効率的な労働> まず、時間でなく成果に応じて評価しなければ、人も企業も育た ないという主張です。 これには、現行でも短時間で成果を上げる働き方を禁じる法律は ない。労使の創意工夫により、柔軟で効率的な労働を実現する ことができるという反対意見がある。 そして、大きな違いは労使が対等に交渉できるかというところ です。力関係で社員が企業の要求を拒むことは難しい。 力関係を考えれば、社員が企業の要求を拒めるとは考えにくい。 年収が高い専門職でも、企業との交渉力があるとは言えない、と いう点です。 だから、対象拡大と過重労働の懸念が問題になっている。そもそも 労基法の目的は立場の弱い労働者の保護にある、というのが特徴 です。 <労働時間を厳格に>
「残業代ゼロ」案 過労防止の規制が先だ 北海道新聞 2015/01/19 そもそも短時間で成果を上げる働き方を禁じる法律など ない。成果主義を導入している企業もあり、現行制度でも 労使の創意工夫によって、柔軟で効率的な労働を実現する のは可能なはずだ。 労働規制緩和を成長戦略に位置付け、労基法に手を加え てまで「働き方改革」の旗を振る政府の姿勢は、企業寄り と批判されても仕方あるまい。 年収1千万円以上の給与所得者は管理職を含め、全体の 4%程度にすぎない。年収要件に不満な経済界は、適用 範囲を拡大するよう圧力を強めるだろう。 本人の同意が導入の前提だが、力関係を考えれば、社員 が企業の要求を拒めるとは考えにくい。 まず労働時間の厳格な上限を設定し、併せて抜け道を ふさぐ補完的な規制を整備するのが筋だ。 過労防止の保証抜きでは、仕事と生活の両立どころか、 仕事と生命の両立さえ危ぶまれる。
<労働側が選べる働き方こそ>
雇用「改悪」国会 許されぬ 保護ルール の大転換 愛媛新聞 2015年01月28日 会社が決める「成果」を達成できなければ、いくら働い ても残業代も割増賃金も支払われない新制度は、どう見て も使用者側のコスト削減のメリットしかない。 労働生産性を上げるなら、既存の裁量労働制の援用で十分 可能。結局は、残業時間ではなく残業代を削りたいだけで、 長時間労働の抑制どころか際限なき助長につながりかね ない。 当初案より限定的だが、国の分科会では既に使用者側 委員が拡大を声高に求めている。ひとたび導入を許せば 改定はたやすく、歯止めになる保証は何もない。 ノルマが絡む営業職にまで広がれば労働者は一層追い込 まれよう。「弱い者いじめと言われかねない法案」は やはり廃案しかあるまい。 もちろん長時間労働の是正自体は喫緊の課題。改革や 対策は必要だが、政権の進める方向性とは逆で、環境 整備や「働かせ方」の見直しこそ先決である。多様な働き 方も、労働側が選べてこそ。