願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

忖度する人とされる人

 <忖度を上司は知らない>

  忖度(そんたく)という言葉が話題になっている。

 他人の気持ちを推し量ることに過ぎないが、今議論され
 ているのは官僚が上司の意向を伺って先回りの行動を
 すること。首尾よく運べば評価が良くなる。

  しかし、問題は失敗や不正などが疑われた場合にどう
 扱うかということになる。

  専門家の説明によると、(1)忖度をされる上司は知ら
 ない。

 (2)忖度で不正、不当な行為は行われない。

 (3)不正、不当な行為となった場合は、勝手にした者
 が悪いだけになる。

  この説明で納得できないのは、(1)上司に認められる
 ためには、結果も途中経過も気付いてもらわなければ
 意味がない。

 (2)責任は下位者が負うことになるからといって、誰も
 がする常識的な行動で、高い評価がもらえるか。

  一番の問題は、忖度して行った結果が失敗して不正な
 どの追及を受ける場合。(3)勝手にした者が悪いだけと
 いうことになるのか。
     f:id:ansindsib:20170401040426j:plain


 <使用者と労働者>   労働事件では、上司の黙認ということがよく争点に  なっている。  残業時間の割増賃金にも、労災認定の際の労働時間に  ついて争いになる場合にも、裁判所は明示と黙示をほぼ  同等に扱っているのではないか。   就業規則等に、残業許可制を定めている場合や上司が  口頭で残業を禁止していることがある。  ところが、従業員が残業をしているのを黙認、放置して  いる場合、使用者の黙示の命令があったとみなされて  いる。  また、業務上の必要がある、残業をせざるを得ない状況  であるのに、残業を許可しないという場合にも同様に  扱われる。  <黙認の重さ>   上司が部下に対してする「黙認」がどう扱われるかと  いう問題がある。  口頭や書面で明示しない場合に、何も関係なしとされる  かというと、そうではない。   労働事件だけではない。「黙認」を軽く扱われない  ことがある。  法律によって違うだろうが、刑事事件においても「黙示  的な意思連絡があった」、「黙示の依頼があった」と  認定して有罪判決をしている事例がある。  <犯罪の黙認>   2度目差し戻し審で懲役6年=組員銃所持、   元幹部の共謀認定 大阪地裁       時事通信 2017/03/24   警護役の組員に拳銃を持たせたとして、銃刀法違反  (共同所持)罪に問われた指定暴力団の元幹部滝沢孝  被告の差し戻し審判決が大阪地裁であった。   芦高裁判長は「滝沢被告が抗争相手から襲撃される  危険を認識し、組員の銃所持を当然として受け入れて  いたと推認できる」と指摘。  同被告と組員との間で黙示的な意思連絡があったとし  て共謀を認めた。    飲酒運転同乗に有罪判決    懲役1年10月執行猶予4年     読売新聞 2012/07/06  *地裁、「暗に依頼」認定   長野市で昨年(2011)11月、女性2人が飲酒運転の  車にはねられて死傷したひき逃げ事件で、当時19歳  の元少年の飲酒運転と知りながら同乗したとして、  道交法違反(酒気帯び運転同乗)に問われた同市三輪、  無職宮沢翔幸被告の判決が5日、長野地裁であった。   高木順子裁判官は、被告が言葉に出さずに暗に運転  を依頼した場合も同法が適用されると認定し、懲役  1年10月、執行猶予4年を言い渡した。   判決は、飲酒運転への同乗を重く罰する立法趣旨  も検討し、「送ってほしいという被告の意図を運転者  が了解しており、明示的な依頼の言葉はなかったが、  『黙示の依頼』があったと認定するべきだ」と判断  した。

 

県知事の反対に国が賠償請求

 <国が県知事に賠償請求>

      辺野古移設、国と県神経戦
     「賠償請求」で沖縄けん制 政府
        時事通信 2017/03/27

  米軍普天間飛行場移設先の埋め立て承認の撤回を表明
 した同県の翁長雄志知事に対し、菅義偉官房長官は27
 日、損害賠償請求訴訟を起こす可能性に言及した。

 移設阻止を掲げてあらゆる強硬手段を辞さない構えの
 翁長氏に対し、再考を促す思惑も透ける。国と県の争い
 は、再び法廷に持ち込まれる可能性もはらみつつ、神経
 戦の様相を呈している。



 <ネットの反応>

  翁長知事に賠償請求の可能性も
  フジテレビ系(FNN) 3/27


  この記事に対して、支持が圧倒的に多いが、次のよう
 なコメントもある。  


 (コメントの例)

  *私たちの税金が翁長のおかげでどれだけ無駄に
   されたか! 賠償請求するべきです!

  *この件だけでなく、これまでの沖縄県、反体制
   派による妨害で余計にかかった工事経費すべて、
   翁長知事と沖縄県、反体制団体に賠償請求して
   ください。那覇空港滑走路増設工事も含めて。

  *というより逮捕、懲役にしてほしい。(賛成86:9)



 <勝訴後の抵抗に備え>

  ちなみに、沖縄県知事の埋め立て承認取り消しに対し
 て国が起こした訴訟中にも、次のような報道がされた。

   政府、辺野古沖縄県に損害賠償請求を検討
   国勝訴後の抵抗に備え
        産経新聞 2016/12/11

  政府が、米軍普天間飛行場名護市辺野古移設に関す
 る沖縄県との対立をめぐり、県に対する損害賠償請求を
 行う検討に入ったことが10日、明らかになった。

  翁長雄志知事の埋め立て承認取り消しについて、最高
 裁で政府側勝訴が確定した後も翁長氏が移設に抵抗を続
 ける場合を念頭に置く。抵抗は政府と県が交わした和解
 条項に反し、翁長氏が想定する対抗手段は知事権限の
 乱用と位置づける。

     f:id:ansindsib:20170222054725j:plain

 <表現の自由を抑制>   この対応について、新聞もテレビも発表の内容を伝え  るだけで、その意味合いや影響などに触れていない。  尋常でないと思えるが、民主主義国では「スラップ訴訟」  として、問題にされるという。   ウィキペディアによると、  スラップ訴訟とは   威圧訴訟、恫喝訴訟は訴訟の形態の一つで、大企業や  政府などの優越者が公の場での発言や政府・自治体など  の対応を求めて行動を起こした権力を持たない比較弱者  や個人・市民・被害者に対して、恫喝・発言封じなどの  威圧的、恫喝的あるいは報復的な目的で起こす訴訟。   被告となった反対勢力は、法廷準備費用・時間的拘束  などの負担を強いられるため、訴えられた本人だけで  なく、訴えられることの怖さから、他の市民・被害者や  メディアの言論や行動までもが委縮し、さらには被害者  の泣き寝入りも誘発され、証人の確保さえ難しくなる。  仮に原告が敗訴しても、主目的となる嫌がらせは達成さ  れることになる。そのため、原告よりも経済的に力の劣  る個人が標的になる。あえて批判するメディアを訴えず  に、取材対象者である市民を訴える例もある。   そのため、表現の自由を揺るがす行為として欧米を  中心に問題化しており、スラップを禁じる法律を制定し  た自治体もある(カリフォルニア州。「反SLAPP法」に  基づき、被告側が提訴をスラップであると反論して認め  られれば公訴は棄却され、訴訟費用の負担義務は原告側  に課される)。

 

財産の差し押さえと生活の保障

 <賠償金など不払い解消>

      養育費不払い解消へ新制度
      裁判所が口座照会
       共同通信 2016/9/12

  民事裁判で支払い義務が確定した子どもの養育費や
 犯罪被害者への賠償金が支払われないケースを減らす
 ため、法務省は12日までに、支払い義務がある人の財産
 の差し押さえを容易にする制度を導入する方針を固めた。

 裁判所が金融機関に預貯金口座の有無を照会し、支店名
 や残高を回答させる仕組みを柱とする。

 経済的に困窮している離婚女性や犯罪被害者などの救済
 につながる可能性があり、法改正を求める声が上がって
 いた。



 <強制執行による取り立て>

  貸した金銭を戻す場合や事故による損害の賠償を求め
 るときなどに、裁判で請求を認められたとしても、任意
 に支払われなければ解決にならない。

 この裁判で認められた権利をどう実現するか、という大
 きな問題がある。自力で相手から奪うということは認め
 られない。

 国の機関に強制執行を請求し、財産の差し押さえにより
 回収することになる。 その手続きは「民事執行法」に
 よることになっている。

      f:id:ansindsib:20170316040623j:plain


 <生活困窮者の差し押さえ>   逆の立場では、生活に困って救済が必要な問題がある。  ローンの支払いが滞ったり、税金を滞納して財産を強制  的に差し押さえされて生存が脅かされる場合がある。       熊本地震 義援金差し押さえ       禁止法案が衆院通過         産経新聞 2016.5.19   衆院は19日の本会議で熊本地震の発生後に全国から  寄せられる義援金の差し押さえを禁止する法案を全会  一致で可決した。  住宅ローンなど借金がある被災者に配られる義援金など  について、金融機関などによる差し押さえを禁止する。  施行前に集められた義援金も保護の対象。  <差押禁止の財産>   差し押さえ禁止財産とは    給与や期末手当、老齢年金など生活に欠くことが   できない財産は、全額を差し押さえすることが禁止   されている。   税の滞納について、差し押さえを実施する場合は、   家族構成や収入などの状況をみながら各自治体が   判断している、という。(コトバンクから)   憲法が保障する生存権がある。「すべて国民は、健康  で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とされ  ており、最低限の生活ができないような強制執行は許さ  れない。  1)年金の給付を受ける権利は、差し押えができない。    (国民年金法24条)   ただし、これを預金として管理されている財産は禁止   財産にならない。  2)税金の徴収については、給料等のうち最低生活費に   相当する額は、差し押えができない。  3)一般の民事手続きによる差し押えは、給料等の4分   の3は、生活の維持に必要なため禁止されている。         災害弔慰金や義援金       熊本日日新聞 2016年10月4日   問)熊本地震に関連して義援金などの支払いを受ける    権利や、実際に支給されたお金を、債権者は差し押    さえることができるのでしょうか。   答)これらの支給を受ける権利の譲り渡し、担保提供、    差し押さえは法律で禁止されています。また、実際    に受領した金銭の差し押さえも禁じられています。    ですから、債権者がこれらの権利や金銭を差し押さ    えることはできないのはもちろん、もし差し押さえ    られた場合には、その効力を争うことができます。     ただ、実際に支給を受けた後の預貯金口座の預金    や現金が、他の預貯金や現金と混じってしまうと、    差し押さえ禁止財産かどうかが分からなくなる場合    もあります。区別して管理したほうがよいでしょう。

 

高齢者と若者の社会保障負担

 <若者に厳しい政策>

    社会保障費の偏り 若者が声を上げる番だ
       毎日新聞 2016年2月14日 

  若い世代の社会保障費が極端に少ないのが日本の特徴
 だ。人口減少を食い止め、持続可能な社会にするために
 は「支える側」を拡充する必要がある。


  日本の社会保障の給付費は年金と医療で約8割を占め
 る。医療費のうち65歳以上が全体の58%を占め、
 現役世代とは1人当たりで4倍の開きがある。


 日本の高齢化は世界で最も進んでおり、高齢者向け経費
 がある程度かさむのはやむを得ないとしても、若者への
 支出は少な過ぎる。 


  現在は低賃金の非正規雇用が4割を占め、共働き世帯
 が専業主婦世帯より多くなった。


 非正規社員の待遇改善やひとり親家庭への支援、保育の
 拡充などが不可欠となっているのだ。 

  財政規律を守り、社会保障費全体を抑制する中で若い
 世代に予算を投入するには、働き続けられる人への年金
 支給を遅らせ、経済的に余裕のある高齢者の医療や介護
 の自己負担を引き上げるなどの政策が必要だ。 

  これまで政府は高齢者に厳しい政策を検討はしてきた
 が、実行は後回しにされることが多かった。高齢者の方
 が若者より投票率がはるかに高いうえ、高齢化の進展で
 年々高齢者の数が増えていくため、選挙のたびに高齢者
 に歓迎される公約が掲げられてきたためだ。


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 <世代間対立と社会保障削減>   世代間の対立を煽るような改革論が、若者に受けて  いた時期があった。経済関係者に多い議論でしたが、  単に世代間の不公平を指摘するのではなく、社会保障費  削減の主張につながっていたようです。   「社会保障亡国論」とか、労働分野の構造改革を主張  する立場。医療や介護を民間企業にゆだねて、社会保障  から成長産業に変えるという。   しかし、この議論は一面的な印象がある。現実の社会  で、どういう結びつきを考えてのことか。  家族では高齢者と、社会では先輩とも向き合っている。  相続遺産の多寡を云云しなくとも、世代間の関係は軽視  できない。   具体的に考えて、父母や祖父母の介護をする場合、  介護給付金がなければ困る。年金も充当しなければ若い  人は生活費に不足が出て父母の世話はできない。   高齢者の社会保障費を削減すれば、若者の負担が減る  とばかりは言えない。   むしろ、子どもの貧困、若年労働者の低収入、そして  低年金の高齢者など世代内に所得格差があり、そのため  の社会保障を充実させなければならない。  <高齢者か若者かではない>     高齢者の定義 見直しは慎重に論議せよ         高知新聞 2017.01.10   「高齢者」の定義を現在の65歳以上から10歳引き  上げ、75歳以上にするよう求める提言を日本老年学会  などが発表した。   だが、高齢者の年齢定義の見直し論議は慎重でなけれ  ばならない。社会保障や雇用制度と不可分の関係にある  からだ。方向性を誤れば、老後の穏やかな暮らしを揺る  がすことになりかねない。   退職後や老後に望む生活形態は人それぞれである。  高齢化が進むにつれ、さらに多様化するだろう。  「生涯現役」として働き続けたい人もいれば、趣味や  家族との時間を大切にしたい人もいるはずだ。  多様な価値観を認め合う余力がなければ、豊かな社会と  は言えまい。   現状の格差も深刻な課題だ。高収入を得ている人がい  る一方で、無年金や低年金で苦しんでいる人は少なくな  い。困窮者や健康を害した人には社会の支援が不可欠だ。   目指す社会の方向を見定めながら高齢者の定義も幅広  い観点から論議を重ねることが望まれる。

 

有給休暇の規制改革?

 <有給休暇で意見書>

     有給休暇、勤務初日から
     規制改革会議が意見書
     時事通信 2017/01/26

  政府の規制改革推進会議は26日、年次有給休暇
 が入社後半年間は取得できない現行の労働基準法を
 見直し、勤務初日から一定日数が与えられるべきだ
 との意見書をまとめた。

  意見書は、継続して6カ月勤務した後に10日間
 の年休が付与される現行制度は「休暇利用のニーズ
 を満たしておらず、転職にも不利」と指摘している。



 <理解し難い改革論議>

  疑問の多い提言だと思います。まず、「入社後
 半年間は取得できない現行の労働基準法を見直し」
 というのは、不適切な表現でしょう。

 労働基準法は、入社後すぐに有給休暇を与えること
 を促してもいないが、禁じているわけではない。
 現に企業によっては、半年間を置かずに有給休暇を
 取得できるところはあるはず。

 労働基準法には、次のように明記されている。

 第一条

  この法律で定める労働条件の基準は最低のもので
 あるから、労働関係の当事者は、この基準を理由と
 して労働条件を低下させてはならないことはもとより、
 その向上を図るように努めなければならない。 



 <提言の狙い>

  次に、この提言の目的、趣旨は「転職に不利」な
 規定を改めることにある。

      有給休暇「勤務初日から」
      規制改革会議が提言  
       日経新聞 2017/1/26

  政府の規制改革推進会議は26日、有給休暇制度の改善
 に関する提言をまとめた。入社後半年たたないと有休が

 与えられない現行制度を改め、勤務初日から付与する
 仕組みへ見直すよう求めた。転職しても不利にならない
 環境をつくり、成長産業への労働移動を促す狙いだ。

  現在の労働基準法は企業に対し、入社後7カ月目で
 10日間の有給休暇の付与を義務付けている。入社直後
 は有休が取れない企業が多く、転職の意欲をそぐ要因
 になっているとの指摘がある。

 

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 <雇用の流動化>   この規制改革会議は、医療では自由診療の解禁などを  主張しているが、労働については解雇規制の緩和、雇用  の流動化を意図している。  現在の法制、裁判では労働者保護が強すぎる。生産性の  低い産業から成長分野に、人材が柔軟に動けるようにし  なければ、社会全体が豊かにならないという。   今回の提言も、こうした観点から長年勤続者に有利と  なっているという理由で取り上げたのだろうか。しかし、  その効果がいかほど見込めるだろう。  会議のメンバーが言うように、生産性の高い成長産業は  人材不足で、成熟産業が余分な人を抱えているとすれば、  好条件を示せば容易に誘い込むことができる。  有給休暇を入社後すぐに与えることは、現行でも可能で  あり、介護や育児休暇を採りにくい人がいれば、積極的  に採用活動に動いたらどうか。   改革論は解雇や人員整理の方に重点が傾き、「成長  産業」の人材吸収に消極過ぎるのではなかろうか。  <有給休暇の消化率> 有給休暇について、今の問題は取得する権利を持ち  ながら、現実に利用する人が少ないことである。  有給休暇を取れば、上司がよく思わない。調査によれば、  上司はプラスの評価にしない、という結果がある。   労働者が有給休暇を使う割合は、日本で50~60%  と、世界的には最下位にあることはよく報道されている。

 

地に着いた農業論

 <成長促進策>

    自由な競争で農業の成長力を高めよう
     日本経済新聞 2016年10月10日

  安倍晋三首相は今国会の所信表明演説で、生産から
 流通、加工まで農業分野の構造改革を進める決意を表明

 した。農業の競争力を高めるために肝心なのは、成長を
 阻む旧弊や横並びの保護策を見直し、企業の新規参入を
 活発にして創意工夫を引き出すことだ。改革を加速して
 もらいたい。

  競争力の弱い農産物は手厚い保護で守る。そんな競争
 を排除する横並びの保護政策が成長を阻害してきた結果
 だ。

 これでは将来の展望が描けない。企業による農地の実質
 所有解禁は国家戦略特区だけの例外にしてはならない。
 成長を後押しする競争には企業の新規参入が不可欠だ。



 <魅力的な農業>

  農業についても、競争力を求める動きがあります。
 「儲かる農業」、「稼ぐ力」を強める、保護を続ければ
 衰退する、改革をして収益性の高い産業にしなければな
 らないという。

  しかし、農業を魅力的な産業にするというのは分かる
 が、成長産業にするとは無理があるスローガンではない
 か。大きな農業国に対抗するには条件が揃わない。

 貿易自由化に備えるために、覚悟を求めるという意図が
 あるのだろうか。

    (農林水産省の資料から)

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  ただ、農業に従事する人が減少していくのを放ってい
 ていいはずがない。喜んで参加する人が増えることが望
 まれる。

 競争、成長一辺倒から離れて、農業、農村や自然環境の
 もつ多様な価値を認めた冷静な農業論を期待したいもの。

  改革に前のめりになって、空回りしないよう気を付け
 たい時期です。



 <落ち着いて農業を考える>

   「田園回帰」の流れ/もう一つの道を探ろう
       河北新報 2017年01月03日

  地方のこれからを考える上で、興味深い統計がある。
 5年ごとの自給的農家の推移だ。経営面積が30アール
 未満、かつ農産物の年間販売額が50万円未満の農家の
 こと。自給中心の「小農」である。

  2005年が88.5万戸、10年は89.7万戸、
 15年も82.5万戸と、80万戸台をキープしている。
 この10年で総農家数は25%も減っているのだから
 「健闘ぶり」が分かる。

  昭和一桁世代がリタイアする中、実家の農業を継ぐ
 定年帰農者や退職後の新規参入者として「第二の人生」
 を始める昭和20年代生まれが、その穴を補っていると
 みられる。

  年金を受けながらの、いわば生活スタイルとしての
 農業は、生活費が安くあがるし、健康も維持できる。
 同時に、小農は農地荒廃による農村の崩壊を押しとど
 める存在としても注目される。

  確かに農業を産業として捉えれば、経営の大規模化
 や輸出の振興は必要だろうし、若者の就農はより重要
 だ。しかし、農地の保全につながるだけではない。
 「小さな農」の潜在力は侮れない。

 政府が早期達成を目標に掲げる農林水産物・食品の輸出
 額と同じ1兆円の産業を、小農たちは育てている。農産
 物直売所である。

 高齢者や定年帰農者らが余分な野菜を袋に詰め、女性た
 ちは自慢の農産加工品を売る。作る人同士を結び付ける
 とともに補完し合い、消費者ともつながり成長してきた。

  大農がいて小農もおり、思い思いのスタイルで生業を
 営む。癒やしの空間ともなる里山や景観、食文化があり、
 エネルギーをつくれる水・バイオマス資源も豊富。そう
 した多様な価値を有するのが農村であり、地方である。


  老若男女を問わず都市居住者に、田舎の価値をいま
 一度見つめ直してもらいたい。


  アベノミクスが目指す経済成長は今や幻想としか映ら
 ない。成長戦略の核心である「競争」の対義語は何だ
 ろう。「協同」か「協調」か。

  今、震災を経たわれわれ市民は、苦難を乗り越えるの
 は競争ではなく、多様なつながりであり、支え合いで
 あることを知っている。それこそが農村に根付く価値で
 ある。

 「この道」ではない、もう一つの道を探る時だ。

 

不当な勧誘、広告による被害

 <誇大広告、不当表示>

      化粧品広告85%が国基準に抵触
      「感激続々」は問題あり
        共同通信 2016/10/24

    「たくさんの感激のお便り」と題し、体験談
   として「シミが薄く」などと効果・効能を強調。
   化粧品の広告でのこうした表示は国の基準で禁

   じられているが、日本広告審査機構JARO)な
   どがインターネット広告やウェブサイトを調べ
   た結果、85%が基準に抵触していたことが24日
   分かった。



 <消費者保護の強化>

  誇大な広告、詐欺的な広告が横行して消費者が被害を
 受けるという話が多い。

  特に化粧品や薬品、健康食品などの広告は氾濫して
 いるが、現行の誇大広告禁止規定などの効果は限られる。

 消費者保護の強化が求められ、専門家の間で消費者契約
 法の改正が議論されている。法律の「不当な勧誘」の
 規制の中に広告による勧誘も含めるべきかの検討もある
 という。



 <事業者側の反対>

     副作用大きい消費者契約法改正の再考を
       日本経済新聞 2015/8/10

   政府の消費者委員会の専門調査会が、消費者契約法
 改正に向けた中間報告をまとめた。

 消費者保護の強化を狙うあまり、事業者に過大な負担
 を強いる法改正を進めるのではないか、と心配だ。
 経済への副作用が大きすぎる規制強化は再考してほしい。

  今回の消費者契約法改正論議の焦点は、事業者による
 不適切な勧誘の範囲拡大だ。

  契約を取り消せる「勧誘」の対象を「特定の取引を
 誘引する目的をもってした行為」に広げ、不特定多数
 に向けられた広告も場合によっては含める案が示された。

  事業者にとってはビジネスに大きな影響が出る公算が
 大きい。

  たとえば、自動車のイメージ広告に、事業者が「乗り
 心地やハンドルの重さは個人の感覚によって異なります」
 といった注意書きを限りなく載せる必要が生じる、と
 みる専門家がいる。

  また、消費者が「広告に書いていない」という理由だけ
 で返品や別商品への交換を要求する事態が頻発しかねない、
 との懸念が事業者から出ている。

 事業者に法令順守のための膨大な負担が生じ、経済活動が
 萎縮する危険がある。
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 <消費者契約の取り消し>  消費者契約法では、消費者が契約の申込み等を取り消し  できる場合を規定している。  不当な勧誘があったとされれば、消費者の取り消しが認め  られることがある。   この勧誘について、広告の場合にも規制対象に含めるか  どうかが議論になっている。   消費者側は、広告による勧誘が重要な原因となって誤認  するケースが多い、広告も対象に含まれるべきであると  主張している。   これに対して事業者側は、広告に不利益な事実の説明が  ないことだけを理由に取り消しできるとすれば、事業者に  は酷である、という。  事業者に厳しい法的規制は負担を増大させ、経済活動が  萎縮する危険がある、と主張する。   しかし、些細な説明ミスや不足を理由に事業者の責任を  問うことになってはいない。   消費者契約法4条には、事業者が勧誘をするに際し、  「重要事項」について消費者の利益になることを告げる  とともに不利益となる事実を故意に告げなかったがため  に、消費者が誤認した結果契約の申込み等をしたときは、  これを取り消すことができると、定めている。  「重要事項」に限っており、「故意」に告げなかった、  そのことにより消費者が「誤認」したという要件が明確  に規定されている。   消費者契約法は、消費者を保護するため立法化された  ものであり、背景には消費者が事業者と対等に交渉でき  ない、情報力などの大きな格差が認識されている。   社会的な弊害が明らかになれば、それに対応した措置  を考え、ある程度の負担は必要でなかろうか。  <最高裁の新しい判断>     うそ広告なら契約取り消し 法規制対象、     消費者の救済を拡大 最高裁初判断        東京新聞 2017年1月25日   新聞折り込みチラシの配布を差し止められるかどうか  が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷は  二十四日、チラシを含む広告も「契約の勧誘」に当たり、  内容がうそだったり重要事実を隠したりした場合、消費  者契約法に基づき、商品購入契約の取り消しや、広告の  差し止めの対象になり得るとの初判断を示した。   不当な勧誘による被害は後を絶たない。顧客に契約を  直接勧める店頭や個別訪問での販売だけでなく、新聞や  雑誌といった紙媒体からテレビ、インターネットまで  広告全般が消費者契約法の規制対象となり、救済が図り  やすくなりそうだ。   消費者庁は広告を勧誘とみなしていなかったが、内閣  府消費者委員会が定義の範囲を広げるよう求めている  ことも踏まえ、解釈を見直す考えだ。