願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

労働者が使用者の命令に従うべき義務

 ☆ひげを生やして勤務する運転士

      「ひげ生やすのは個人の自由」
      人事の低評価に賠償命令
        NHK 2019年1月16日

  大阪市営地下鉄の運転士らがひげを生やして勤務し
 ていることを理由に、最低の人事評価にされたのは
 不当だと訴えた裁判で、大阪地方裁判所は「ひげを生
 やすかどうかは個人の自由で、人格的な利益を侵害し
 違法だ」として、大阪市に40万円余りの賠償を命じま
 した。

  この裁判は3年前、当時の大阪市営地下鉄の運転士、
 河野英司さんら2人が、ひげを生やして勤務している
 ことを理由に、人事で最低評価にされたのは不当だと
 訴えて大阪市に賠償を求めたものです。


 ☆批判的な意見

  この判決に対しては、批判的な意見も出ています。

 「地下鉄運転手という接客も含まれる仕事である。
  身だしなみを整えるルールは必要であろう。

  実際、市民からも批判的な意見が出ていた。」


  しかし、労働者と使用者との関係については以前
 から慎重な配慮が求められている。

  労働者は、企業秩序維持のため必要な命令に従う
 べきであるが、使用者の一般的な支配に服するもので
 はない、という考えです。

   f:id:ansindsib:20180209052835j:plain


 ☆身だしなみの規則  (上のニュースには次のような説明が続いている。)   大阪市交通局は、平成24年に男性職員にひげをそる  よう求める「身だしなみ基準」を設けていて、裁判で  はこの基準の是非などが争われました。   16日の判決で大阪地方裁判所の内藤裕之裁判長は  「清潔感を欠くとか、威圧的な印象を与えるなどの理  由から地下鉄の乗務員らにひげをそった状態を理想的  な身だしなみとする基準を設けることには必要性や  合理性があるが、この基準はあくまで職員に任意の協  力を求めるものだ」と指摘しました。  そのうえで「ひげを生やすかどうかは個人の自由で、  ひげを理由にした人事評価は人格的な利益を侵害し  違法だ」として、大阪市に慰謝料として40万円余りを  支払うよう命じました。  ☆過去の裁判では   「労働者は、全人格を使用者に売り渡しているので  はないから、使用者に対し無定量の忠実義務ないし  絶対的な服従義務を負うものではない」と表現した  事例もある。   昭和52年12月13日 最高裁 判決  (他の従業員の就業規則違反についての      調査に協力すべき義務を負っているか)   企業が企業秩序違反事件について調査をすることが  できるということから直ちに、労働者が、これに対応し  て、いつ、いかなる場合にも、当然に企業の行う調査に  協力すべき義務を負っているものと解することはでき  ない。   労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されること  によって、企業に対し労務提供義務を負うとともに、  これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負う  が、企業の一般的な支配に服するものということはでき  ないからである。   平成9年12月25日 福岡地裁小倉支部 決定  (髪の毛を染めて勤務したことを取引先          から好ましくないと指摘された)   一般に、企業は、企業内秩序を維持・確保するため、  労働者の動静を把握する必要に迫られる場合のあること  は当然であり、このような場合、企業としては労働者に  必要な規制、指示、命令等を行うことが許されるという  べきである。   しかしながら、このようにいうことは、労働者が企業  の一般的支配に服することを意味するものではなく、  企業に与えられた秩序維持の権限は、自ずとその本質に  伴う限界があるといわなければならない。  特に、労働者の髪の色・型、容姿、服装などといった人  の人格や自由に関する事柄について、企業が企業秩序の  維持を名目に労働者の自由を制限しようとする場合、そ  の制限行為は無制限に許されるものではない。  企業の円滑な運営上必要かつ合理的な範囲内にとどまる  ものというべく、具体的な制限行為の内容は、制限の  必要性、合理性、手段方法としての相当性を欠くことの  ないよう特段の配慮が要請されるものと解するのが相当  である。