交通事故加害者の責任と被害者保護
☆米軍トラック運転の死亡事故 飲酒運転・死亡事故の米兵に 懲役4年判決 那覇地裁 沖縄タイムス 2018/04/11 昨年11月那覇市内で酒気を帯びて米軍のトラック を運転し、死亡事故を起こしたとして、自動車運転 処罰法違反等の罪に問われた米海兵隊所属の上等兵 の判決公判で、柴田寿宏裁判長は懲役4年を言い渡 した。 判決などによると、被告は酒気を帯びた状態で 米軍トラックを運転し、那覇市の交差点の赤信号を 見過ごしたまま、同市の男性会社員が運転する軽 トラックと衝突。男性は胸部圧迫などで死亡した。 ☆沖縄米海兵隊は「個人の責任」と説明 この事故について、県議会の代表者が抗議した のに対して、米海兵隊側は、個人が起こしたこと で組織として責任を負うものではないと説明した。 公用車の鍵をしっかり管理しているが、彼は勝手 に持ち出したという。 (沖縄タイムス 2017年12月5日)
☆交通事故による被害者を保護 損害補償についての日米の協定等は別にして、一般 の事故の場合、被害者、加害者とその使用者の関係は どう扱われるのか。 会社の従業員が交通事故などを起こして他人に損害 を与えた場合、まず加害者本人が賠償しなければなら ない。 しかし、損害の補償を考えると被害者に十分なことが できるか疑わしい。そこで、被害者保護のための法整 備がされている。 一つは、自動車損害賠償保障法の「運行供用者責任」 という規定で、もう一つが民法の使用者責任である。 従業員は資力が十分でないことを考慮して、責任の 負担者を広げ、被害者に有利な規定になっている。 ☆運行供用者責任 会社が所有する自動車を従業員が私用で運転し、 交通事故を起こしたという場合、加害の従業員だけ でなく運行供用者もその責任を負う。 無断で社用車を利用していた場合でも、運行供用者が 賠償責任を問われる。 この場合に被害者の立証責任は軽減され、損害賠償 請求が容易になっている。 運行供用者とは、自動車の運行を支配し利益を得て いる者と定義される。 この運行供用者責任は、自動車事故による人身損害に 限られる。 ☆使用者責任 使用者は、従業員が第三者に加えた損害について、 その賠償責任を負う。 加害者である従業員は資力が十分でないことが多い。 そのため使用者にも責任を負わせ、被害者の保護を 図っている。 使用者は従業員を使用して利益を得ている。損失が あっても、負担をすべきであるという考えに基づいて いる。 「ある事業のために他人を使用する者は、被用者が その事業の執行について第三者に加えた損害を賠償す る責任を負う」と、使用者責任を規定している。 問題となるのは、「事業の執行について」どう判断す るかであり争いが多い。 営業マンが詐欺を働いて会社の責任を問われた場合 に、本来業務と関係がない、個人の犯行であると主張 することがある。 しかし、この「事業の執行について」は、その社員が 行った行為が外形的に職務の範囲内に属すると認めら れるかどうかであり、真の担当業務の如何を問わない。 ☆交通事故の損害について 使用者責任が認められた事例 会社の従業員が私用のために会社の自動車を運転し た場合であっても、民法第七一五条の「事業ノ執行」 につきなされたものと認めるのが相当である。 昭和37年11月8日 最高裁 判決 理由 Dが会社の業務用自動車を運転して進行中、注意 義務を怠って本件事故を起すに至った。 Dは商品の外交販売に従事し、仕事上の必要に応じ 随時その自動車の使用を許されていた。 事故を起した自動車はDの専用ではなく、使用し たのは勤務時間後のことであり、使用目的も恣意的 なものであった。 であっても、外形的にみればDのこの行為は、会社の 運転手としての職務行為の範囲に属するものとして、 会社の事業の執行と認めることの妨げとなるものでは ない。