正規、非正規労働者の格差訴訟
☆不合理な格差かどうか 正社員との待遇格差で最高裁が初の判断へ NHK 2018年3月7日 正社員と契約社員などとの待遇の違いが労働契約 法で禁止されている不合理な格差にあたるかどうか が争われた裁判で、最高裁判所は、来月双方の主張 を聞く弁論を開くことを決めました。 最高裁は、どのような待遇の違いが不合理な格差に あたるのか、初めての判断を示すものと見られます。 労働契約法の20条では、有期雇用の契約社員など と正社員との間で待遇に不合理な格差を設けること が禁じられています。 この規定をめぐって、横浜市の運送会社と浜松市の 物流会社の嘱託社員や契約社員が同一の待遇を求め てそれぞれ起こした2件の裁判で、最高裁判所は、 来月20日と23日に双方の主張を聞く弁論を開くこと を決めました。
☆同じ仕事で待遇が違う 同じ仕事をしているのに正社員と非正規で賃金など に格差がある。この格差は不当だと各地で訴えが出て いる。 過去の裁判では、職種が違う、雇用形態が異なる場 合に客観的に格差を判断することは難しいとされた例 がある。 「賃金が労働の対価であるといっても、年齢、学歴、 勤続年数、企業貢献度、勤労意欲を期待する企業側 の思惑などが考慮され、純粋に労働の価値のみに よって決定されるものではない。 雇用形態が異なるから賃金制度も異なるが、これを 必ずしも不合理ということはできない。」 (大阪地裁 平成14年5月22日 判決) 一方、様々な要因に基づく待遇の差に使用者側の 裁量も認めるが、その格差が許容範囲を越えれば、 公序良俗違反となる。 「業務内容、勤務時間及び日数等が正社員と同様と 認められる臨時社員の賃金が、勤務年数の同じ正社 員の8割以下という顕著な賃金格差を維持拡大しつ つ長期間の雇用を継続した。 均等待遇の理念に違反する格差であり、会社が賃金 格差を正当化する事情を何ら主張立証していない。」 (違法の判決:長野地裁上田支部 平成8年3月15日) ☆労働契約法の規定 過去の裁判で格差を容認する判決、違法とする判決 に分かれていたが、平成25年に法改正があり労働契約 法に次のような規定が盛り込まれた。 *労働契約法20条 有期契約者の労働条件が、期間の定めがあることに より、期間の定めのない契約者の労働条件と相違する 場合には、職務の内容などの事情を考慮して、不合理 と認められるものであってはならない。 最近の格差訴訟で通勤手当、年末年始勤務手当、住 居手当に差があるのは不合理で違法だとする判決が相 次いでいる。 労働条件の格差が、相当な事情に基づいているので あれば、使用者側は合理的に説明しなければならない。 説明にならないと分かる場合と容易に判断できない ことがある。仕事内容の違いが賃金差をどの程度まで 許すのか、その線引きは難しい。 <最高裁の判断は> 裁判で格差を容認した判決の理由には、正社員に対 する将来の役割期待を上げるものがある。 *将来的に枢要な職務及び責任を担うことが期待さ れる正社員 *優秀な人材の獲得や定着を図る *長期的な勤務に対する動機付けを行う しかし、経験や能力、成果などに違いがないのに 将来の期待を込めて格差を正当化することはできなく なっている。 過去に正社員の8割以下となれば許容範囲を超える とした判決もあるが、これからの裁判で不合理と決め る判断基準を最高裁が有効に示せるか問われている。