願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

消費者の利益を不当に害するか

 ☆がん治療中止でも費用を返還せず

   がん治療中止しても事前支払い費用は一切
   返還せず  消費者団体「不当な内容」と
   契約条項差し止め求め提訴へ
       産経新聞 2017.7.21

  がんの治療を中止しても、事前に患者が支払った
 費用を一切返還しない契約条項は消費者契約法に反
 する不当な内容だとして、岡山市の適格消費者団体

 「消費者ネットおかやま」が21日、広島県福山市
 の「花園クリニック」に対し、契約条項の差し止め
 を求めて広島地裁福山支部に提訴した。

  訴状によると、問題となったのは「樹状細胞療
 法」と呼ばれる先端治療。患者が途中で中止したり、
 死亡したりした場合でも事前に支払った百数十万円
 の費用を一切返還しないという契約を結び、必要
 以上の報酬を得ていると主張している。



 ☆消費者側の主張

  治療費不返還条項には、「樹状細胞は成分
  採血後一度にまとまった量を作製するため、
  その時点で全額負担になる」としている。

  しかし、樹状細胞療法の治療には、成分
  採血後に、樹状細胞の培養、管理及び培養
  検査、ワクチン投与等が予定される。

  また、成分採血に要する時間はわずか2時
  間程度との説明がなされている。

  少なくとも成分採血の終了時に解除がなさ
  れても、明らかに「平均的な損害」の発生
  が治療費全額に相当することはない。


   成分採血後は治療費が全く返還されない
  とする治療費不返還条項は少なくともその
  一部が消費者契約法9条1号の規定に反し
  無効である。

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 ☆消費者契約法の目的

  消費者と事業者との間には情報の質、量そして交渉
 力の格差が大きいので、消費者の利益を不当に害する
 契約が締結されるおそれがある。

 このため消費者契約法は、消費者の利益を擁護し消費
 者の被害を防止する必要上制定された。

  具体的には、消費者が誤認した場合等に契約の申込
 みを取り消すことができる、消費者の利益を不当に害す
 ることとなる条項を無効とするなどの規定をしている。



 ☆契約解除で高額な損害賠償金

  消費者に不利な契約の例として、特約などによって
 事業者の義務が緩和されたり、消費者の権利が制限さ
 れることがある。

 こうした消費者に一方的に不利な条項は無効とする
 規定がある。

  裁判で争いが多いのは、消費者契約法9条の関連
 です。

 契約解除によって事業者に損害が発生しない、また
 は少ないのに高額の違約金、損害賠償金を消費者に
 求める場合です。

  法律は、契約解除に伴う損害賠償額の予定につき
 事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は
 無効としている。


 *「平均的な損害」とは(消費者庁)

  契約の類型ごとに合理的な算出根拠に基づき算定
 された平均値であり、消費者契約においてあらかじ
 め算定することが可能なものである。

  解除の事由、時期等が同一の区分に属する複数の
 同種契約において、解除されることにより生じる損害
 額の平均値である。



 ☆契約解除の損害事例

 1)登録済未使用車(新古車)の売買契約の
  キャンセルについて、販売会社が消費者に
  違約金を請求した

  平成14年7月19日 大阪地裁 判決

 (1)売買契約の撤回(解除)は契約締結の翌々日
  であった。

 (2)担当者は売買契約締結の際、代金半額の支払
  を受けてから車両を探すと被告に言っていた。

  対象車両を既に確保していたとしても、他の
  顧客に販売できない特注品ではない。

 (3)従って、被告による契約解除のため販売業者
  に通常損害が発生しうるものとは認められない。

  本件違約金請求は消費者契約法9条1号により
  許されない。  2)大学入学辞退者の学納金返還訴訟   平成18年11月27日 最高裁 判決   大学に合格し入学手続きをした後、入学を   辞退した者が、入学金および授業料の返還   を大学側に求めた  (1)入学金は入学できる地位の対価であり、辞退   者でもその地位を得ているから入学金の返還義務   がない。  (2)授業料を返還しない特約は、消費者契約法   9条に規定する損害賠償額の予定などに該当する。  (3)授業料は返還すべきである。   理由   大学が合格者を決定する際に織り込み済みのもの   であれば、在学契約の解除によって大学に生ず   べき平均的な損害は生じない。   従って、客観的に学生が入学すると予測される   時点(入学時期である4月1日)よりも前の時期に   おける在学契約の解除については、授業料の全額   を返還すべきである。   上記時点以後のものであれば、学生が年度に納付   すべき授業料等に相当する損害を大学が被ると   いうべきで、大学に生ずべき平均的な損害を超え   る部分はない。(その場合は返還の必要がない)