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ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

公益通報者保護法は労働者を守るか

 

 内部告発守秘義務違反か

     加計学園 「守秘義務違反」
     副大臣発言に批判続出
     毎日新聞 2017年6月15日

  加計学園獣医学部新設計画を巡り、内部文書が存在
 すると職員が内部告発して明らかにした場合、国家公務
 員法(守秘義務)違反に問われる可能性があると述べた
 義家弘介文部科学相の発言が波紋を広げている。

  専門家は「文書は秘密ではない。仮に秘密であっても
 告発には公益性がある」と批判している。



 内部告発者は保護されるか

  まず、結論から整理すると

 (1)公益通報者保護法の趣旨は、通報者を保護すること
   により、国民生活の安定、社会経済の健全な発展を
   図ること。

 (2)この法律は、その趣旨に反し内部告発者を保護する
   効果に欠ける。

 (3)不利益な取扱いから保護するというが、行政罰など
   抑止力がない。結局この法律の意義は乏しく、一般
   の裁判で争うことになる。

 (4)解雇など懲戒処分無効や人事権濫用の労働事件に
   なるが、公益通報者保護法がつくられる前から
   裁判では、労働者が保護される事例が多い。

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 公益通報者保護法の要件   公益通報者保護法は、最近つくられた法律ですが  その趣旨に反し内部告発者を保護する効果に乏しい  といわれている。  (通報の対象事実など要件が非常に限定的)   1)不正の目的でなく、所定の手続により通報する   2)対象を法令違反による犯罪行為に限定   3)通報先    イ)まず、企業内部または通報窓口に    ロ)監督機関に    ハ)マスコミなど外部に通報する場合は、      厳しい要件が加わる  ☆通報に正当性があると認められるには  (マスコミなど外部に通報する場合)   真実であることのほか厳しい要件が加わる   次のいずれかの要件を満たすこと。  1)解雇その他の不利益取扱いを受けるおそれ  2)証拠隠滅のおそれがある  3)公益通報をしないことを要求された   など  ☆通報者を保護する効果は  (公益通報者保護法をつくったという効果は特にない)   公益通報者保護法をつくったから、内部告発が促進  されるとか、告発者の保護が強化されることにはなら  ない。   しかし、この法律があってもなくても裁判による争い  になるが、これまでの裁判事例では告発者が保護される  ことが多い。   また、議論になりやすい内部告発の事実が真実と認め  られるかについては、告発内容が真実であると信ずるに  足る相当の理由があればよい。  結果的に内部告発の事実が証明されなかったとしても、  その信ずる根拠を示せば保護される。  ☆裁判による労働者の保護   結局一般の労働裁判で争うことになるが、これは   公益通報者保護法がなくても、これまで労働者が   保護されてきた労働事件の裁判に頼るだけ。   解雇など懲戒処分無効や人事権濫用が争点になる   と、過去の裁判では労働者が保護される事例が多い。  ☆裁判事例  平成15年6月18日 大阪地堺支部 判決   内部告発には正当性があり、氏名を明らかにして  告発を行えば、弾圧や処分を受けることは想像され  たから、匿名による告発もやむを得なかった。  告発者に対する懲戒解雇、出勤停止、、、が、正当  な内部告発への報復を目的としたものであるとして  Yらの不法行為責任が認められた。 (理由)  内部告発の正当性   内部告発においては、その内容が不当である場合  には組織体等の名誉、信用等に大きな打撃を与える。  一方、これが真実を含む場合には、組織体等の運営  方法等の改善の契機ともなりうるものである。   内部告発の内容の根幹的部分が真実ないしは真実  と信じるについて相当な理由があるか、告発の目的  が公益性を有するか、、、告発の手段・方法の相当  性等を総合的に考慮して、その内部告発が正当と認  められた場合には、内部告発者に対し、仮に名誉、  信用等を毀損されたとしても、これを理由として  懲戒解雇をすることは許されない。   本件内部告発の内容は、Aの創設者の1人で、実  質的に最高責任者であった被告Y1による、Aの  資産の私物化、公私混同の事実があり、それを可能  にしているのが被告Y1及び同Y2によるAの支配  であるから支配をはねのけて不正を正し、Aを生協  組合員の手に取り戻すべきであるとするものと認め  られる。   本件内部告発の目的は、専ら、公共性の高いAに  おける不正の打破や運営等の改善にあったものと  推認される。  そうすると、本件内部告発の目的は、極めて正当な  ものであったと言うべきである。