退職したいのに辞められない
<退職者に不当な賠償請求> 退職が理由の損賠請求は不当 横浜地裁、男性の訴え一部認める 神奈川新聞 2017/03/31 精神疾患でやむなく退職したにもかかわらず、勤務先 だった会社から退職を理由に約1270万円の損害賠償 請求訴訟を起こされたのは不当として、北海道在住の男 性が330万円の損害賠償を求めて反訴した訴訟の判決 で、横浜地裁は30日、男性の請求を一部認めて会社に 110万円の支払いを命じた。 判決によると、男性は2014年4月鎌倉市のソフト ウエア会社に入社。精神疾患を理由に同年12月に自主 退職した。会社側は15年5月、詐病で一方的に退職さ れたため損害を被ったとして提訴。 男性は、どう喝のような提訴で精神疾患の病状がさらに 悪化したと訴え反訴した。 石橋裁判長は判決理由で、男性に詐病はなく、退職と 会社側の主張する損害に因果関係は認められないと指摘。 その上で、「月収の5年分以上もの大金を賠償請求する ことは、裁判制度の趣旨に照らして著しく相当性を欠く」 と述べ、提訴を違法行為と認めた。 <辞めたら損害賠償を請求する> 精神疾患で退職されたとなれば、会社のイメージが 悪化すると考えたのか、退職者に巨額の損害賠償を請求 したというニュースです。 結果は全く逆に、裁判制度を悪用した不当請求と認めて 退職した元社員への支払いを命じられた。 最近では、「退職者への報復で損害賠償請求を提起す る例が増えている。労働者を萎縮させ、辞めたいのに辞 められないという被害を生む要因となる」と弁護士が解 説している。 「アルバイトでも辞められない」という相談があると いう。塾講師のバイトで「年度途中に辞めたら損害賠償 を請求する。生徒の責任を最後まで見てください」と いう悪質な例も紹介されている。
<いつでも解約できる> 2週間の予告期間が必要であるが、期間の定めのない 雇用契約では、いつでも解約できる。(民法627条) ただし、アルバイトなどの有期雇用契約では、契約期 間中の中途解約には制限があり、「やむを得ない事由」 が必要となる。期間の満了により契約終了とするのが 原則になっている。 <使用者側の解雇権> 一方、企業に対して労働者はきわめて弱い立場にある ために労働者保護の規制がある。 使用者側からの解約は制限され、解雇権の濫用は無効と なっている。 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上 相当であると認められない場合は、その権利を濫用 したものとして、無効とする。(労働契約法16条) <内部告発の元職員に賠償請求> 虐待通報の職員に施設が賠償請求 埼玉、鹿児島の障害者施設 47NEWS 2015年11月22日 障害者の通所施設で虐待の疑いに気付き自治体に内部 告発した職員が、施設側から名誉毀損などを理由に損害 賠償を求められるケースが埼玉県と鹿児島県で起きてい ることが22日、分かった。 障害者虐待防止法では、虐待の疑いを発見した職員は 市町村に通報する義務がある。通報したことで解雇など 不利益な扱いを受けないことも定めており、施設側の 対応に法曹関係者らから「法の理念を無視する行為であ り、職員が萎縮して虐待が闇に葬られてしまう」と批判 が出ている。 ⇒ このうち、鹿児島市の施設を内部告発した元職員が 反訴して、損害賠償を請求する訴訟を起こした、と報道 されている。(時事通信 2016/12/09) 「障害者への虐待を内部告発したところ、施設運営会社 から損害賠償を求める訴訟を起こされ精神的苦痛を受 けたとして、元職員が9日、運営会社などを相手取り 約250万円の損害賠償を求める訴訟を鹿児島地裁に 起こした。」