有給休暇の規制改革?
<有給休暇で意見書> 有給休暇、勤務初日から 規制改革会議が意見書 時事通信 2017/01/26 政府の規制改革推進会議は26日、年次有給休暇 が入社後半年間は取得できない現行の労働基準法を 見直し、勤務初日から一定日数が与えられるべきだ との意見書をまとめた。 意見書は、継続して6カ月勤務した後に10日間 の年休が付与される現行制度は「休暇利用のニーズ を満たしておらず、転職にも不利」と指摘している。 <理解し難い改革論議> 疑問の多い提言だと思います。まず、「入社後 半年間は取得できない現行の労働基準法を見直し」 というのは、不適切な表現でしょう。 労働基準法は、入社後すぐに有給休暇を与えること を促してもいないが、禁じているわけではない。 現に企業によっては、半年間を置かずに有給休暇を 取得できるところはあるはず。 労働基準法には、次のように明記されている。 第一条 この法律で定める労働条件の基準は最低のもので あるから、労働関係の当事者は、この基準を理由と して労働条件を低下させてはならないことはもとより、 その向上を図るように努めなければならない。 <提言の狙い> 次に、この提言の目的、趣旨は「転職に不利」な 規定を改めることにある。 有給休暇「勤務初日から」 規制改革会議が提言 日経新聞 2017/1/26 政府の規制改革推進会議は26日、有給休暇制度の改善 に関する提言をまとめた。入社後半年たたないと有休が 与えられない現行制度を改め、勤務初日から付与する 仕組みへ見直すよう求めた。転職しても不利にならない 環境をつくり、成長産業への労働移動を促す狙いだ。 現在の労働基準法は企業に対し、入社後7カ月目で 10日間の有給休暇の付与を義務付けている。入社直後 は有休が取れない企業が多く、転職の意欲をそぐ要因 になっているとの指摘がある。
<雇用の流動化> この規制改革会議は、医療では自由診療の解禁などを 主張しているが、労働については解雇規制の緩和、雇用 の流動化を意図している。 現在の法制、裁判では労働者保護が強すぎる。生産性の 低い産業から成長分野に、人材が柔軟に動けるようにし なければ、社会全体が豊かにならないという。 今回の提言も、こうした観点から長年勤続者に有利と なっているという理由で取り上げたのだろうか。しかし、 その効果がいかほど見込めるだろう。 会議のメンバーが言うように、生産性の高い成長産業は 人材不足で、成熟産業が余分な人を抱えているとすれば、 好条件を示せば容易に誘い込むことができる。 有給休暇を入社後すぐに与えることは、現行でも可能で あり、介護や育児休暇を採りにくい人がいれば、積極的 に採用活動に動いたらどうか。 改革論は解雇や人員整理の方に重点が傾き、「成長 産業」の人材吸収に消極過ぎるのではなかろうか。 <有給休暇の消化率> 有給休暇について、今の問題は取得する権利を持ち ながら、現実に利用する人が少ないことである。 有給休暇を取れば、上司がよく思わない。調査によれば、 上司はプラスの評価にしない、という結果がある。 労働者が有給休暇を使う割合は、日本で50~60% と、世界的には最下位にあることはよく報道されている。