読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

地に着いた農業論

 <成長促進策>

    自由な競争で農業の成長力を高めよう
     日本経済新聞 2016年10月10日

  安倍晋三首相は今国会の所信表明演説で、生産から
 流通、加工まで農業分野の構造改革を進める決意を表明

 した。農業の競争力を高めるために肝心なのは、成長を
 阻む旧弊や横並びの保護策を見直し、企業の新規参入を
 活発にして創意工夫を引き出すことだ。改革を加速して
 もらいたい。

  競争力の弱い農産物は手厚い保護で守る。そんな競争
 を排除する横並びの保護政策が成長を阻害してきた結果
 だ。

 これでは将来の展望が描けない。企業による農地の実質
 所有解禁は国家戦略特区だけの例外にしてはならない。
 成長を後押しする競争には企業の新規参入が不可欠だ。



 <魅力的な農業>

  農業についても、競争力を求める動きがあります。
 「儲かる農業」、「稼ぐ力」を強める、保護を続ければ
 衰退する、改革をして収益性の高い産業にしなければな
 らないという。

  しかし、農業を魅力的な産業にするというのは分かる
 が、成長産業にするとは無理があるスローガンではない
 か。大きな農業国に対抗するには条件が揃わない。

 貿易自由化に備えるために、覚悟を求めるという意図が
 あるのだろうか。

    (農林水産省の資料から)

 f:id:ansindsib:20170219062152j:plain

  ただ、農業に従事する人が減少していくのを放ってい
 ていいはずがない。喜んで参加する人が増えることが望
 まれる。

 競争、成長一辺倒から離れて、農業、農村や自然環境の
 もつ多様な価値を認めた冷静な農業論を期待したいもの。

  改革に前のめりになって、空回りしないよう気を付け
 たい時期です。



 <落ち着いて農業を考える>

   「田園回帰」の流れ/もう一つの道を探ろう
       河北新報 2017年01月03日

  地方のこれからを考える上で、興味深い統計がある。
 5年ごとの自給的農家の推移だ。経営面積が30アール
 未満、かつ農産物の年間販売額が50万円未満の農家の
 こと。自給中心の「小農」である。

  2005年が88.5万戸、10年は89.7万戸、
 15年も82.5万戸と、80万戸台をキープしている。
 この10年で総農家数は25%も減っているのだから
 「健闘ぶり」が分かる。

  昭和一桁世代がリタイアする中、実家の農業を継ぐ
 定年帰農者や退職後の新規参入者として「第二の人生」
 を始める昭和20年代生まれが、その穴を補っていると
 みられる。

  年金を受けながらの、いわば生活スタイルとしての
 農業は、生活費が安くあがるし、健康も維持できる。
 同時に、小農は農地荒廃による農村の崩壊を押しとど
 める存在としても注目される。

  確かに農業を産業として捉えれば、経営の大規模化
 や輸出の振興は必要だろうし、若者の就農はより重要
 だ。しかし、農地の保全につながるだけではない。
 「小さな農」の潜在力は侮れない。

 政府が早期達成を目標に掲げる農林水産物・食品の輸出
 額と同じ1兆円の産業を、小農たちは育てている。農産
 物直売所である。

 高齢者や定年帰農者らが余分な野菜を袋に詰め、女性た
 ちは自慢の農産加工品を売る。作る人同士を結び付ける
 とともに補完し合い、消費者ともつながり成長してきた。

  大農がいて小農もおり、思い思いのスタイルで生業を
 営む。癒やしの空間ともなる里山や景観、食文化があり、
 エネルギーをつくれる水・バイオマス資源も豊富。そう
 した多様な価値を有するのが農村であり、地方である。


  老若男女を問わず都市居住者に、田舎の価値をいま
 一度見つめ直してもらいたい。


  アベノミクスが目指す経済成長は今や幻想としか映ら
 ない。成長戦略の核心である「競争」の対義語は何だ
 ろう。「協同」か「協調」か。

  今、震災を経たわれわれ市民は、苦難を乗り越えるの
 は競争ではなく、多様なつながりであり、支え合いで
 あることを知っている。それこそが農村に根付く価値で
 ある。

 「この道」ではない、もう一つの道を探る時だ。