願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

正社員と非正規労働者の待遇格差

 <能力を高めて貢献度を上げる>

       非正規の賃上げは能力向上で
       日本経済新聞 2016/12/22

  仕事が同じなら賃金も同じにする「同一労働同一賃金」
 をめぐり、正社員と非正規社員の待遇に差があっても
 問題ないとみなせる例などを示したガイドライン案を、
 政府が明らかにした。経験や能力、成果、貢献度などに
 応じて賃金に差をつけることは認められるとしたのは、
 妥当だろう。

  非正規社員の賃金を上げるため政府は同一労働同一
 賃金の制度化をめざしているが、重要なのは非正規で
 働く人たちが仕事に必要な技能を高め、貢献度を上げら
 れるようにすることである。

 職業訓練の充実など環境の整備に政府は力を注いでもら
 いたい。

 基本給については、職業経験や能力などに違いがあれば
 差が許容されるとした。賞与も会社の業績への貢献度に
 応じた支給を認めている。

 生産性に応じて対価を払う、という賃金決定の原則に
 沿った内容になったといえよう。

 待遇差の理由について従業員への説明を企業に義務づけ
 ることは見送られた。だが説明責任は当然ある。求めら
 れれば企業はきちんと対応すべきだ。

  企業が賃金を上げやすくなるよう、働く人の能力を高
 める職業訓練の意義は一段と増している。国や自治体が、
 例えばバウチャー(利用券)方式で受講者が自由に講座
 を選べるようにすれば、訓練施設の間で競争が起き、
 サービスやIT(情報技術)などの分野の充実を期待で
 きよう。



 <改革は誰のためか>

    働き方改革/「何のため」「誰のため」か
       河北新報 2016年10月08日

  経営者は繁閑時に非正規の増減と共に、正社員の残業
 の多寡を調整弁とし、働く側も残業の強要を自らの雇用
 の安定のため受け入れてきた。残業代込みで生活費を
 賄っている現実もある。

  こうした雇用慣行とどう向き合うか。 このことは
 「何のため」「誰のため」の改革かというスタンスとも
 関わる。

  安倍政権で当初、働き方改革が語られたのは「企業の
 競争力強化のため」だ。検討されたのは解雇規制の緩和
 であり、一部労働者を労働時間規制の対象から外す
 「残業代ゼロ法案」だ。

 政権は、長時間労働是正に逆行しかねないその法案成立
 に今もこだわる。

  今回、語られるのは「労働生産性改善のため」。要は
 経済成長の下支えが狙いだ。

  非正規労働者の賃金が底上げされれば、消費が拡大し、
 長時間労働の是正で女性や高齢者が働きやすい環境が整
 えば、労働力を確保できる。

  だが、それは改革の結果である。働く人、特に非正規
 の若者らが、どうすれば将来に明るい展望を持って仕事
 をし暮らしていけるのか、そのことを改革論議の原点に
 据えなければならない。

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 <最優先の課題は>   二つの主張を並べると、立場の違いが鮮明に表れて  いる。   前者が求めるのは、仕事に必要な技能を高め、貢献度  を上げられるようにすること。  そのため、職業訓練の充実など環境の整備に政府は力を  注いでもらいたい、という。   生産性に応じて対価を払うという原則を貫いて、経済  成長を促進し社会全体を豊かにする、という考えなのか。   後者は、経済成長を支えるために労働生産性改善を求  めるような「改革」に疑問を示す。  政府は、企業の競争力強化のために解雇規制、労働時間  規制の緩和を目指すが、問われているのは働く若者に  将来展望を示せるかである。  どうすれば明るい展望を持って仕事をし、暮らしていけ  るのか、そのことを改革論議の原点に据えなければなら  ない、という。   そして、急ぐべきは格差是正だとする立場からは、  格差是正の実効性には、企業の人件費抑制を改めること  が必要であると主張される。  賃金を抑え、経営の安全弁として非正規労働者を増やし  てきた。そのために不本意な働き方を続ける若者に明る  い将来展望をもたらす取り組みを求める。   そして具体的な問題点として、指針案が基本給を能力  や成果に違いがあれば待遇差を認められる、としたこと  に批判が多い。  「正社員と非正規は、期待や役割が違う」と格差を放置  してきたところから進展するか難しいという。  南日本新聞(2016/12/22)は、次のような指摘を紹介し  ている。   和光大の竹信三恵子教授は一番重要な基本給を能力や  業績、成果という主観的要素で判断するのは問題だと  いう。  「国際基準では仕事のスキルや責任、負担といった職務  の内容を分析して客観的に比較するが、政府の指針案で  は企業に判断を委ねることになる。職務で客観的に評価  する仕組みを導入しない限り、非正規の状況はあまり  変わらないだろう」と危ぶむ。  <人件費抑制を続けるか>     同一賃金指針案/格差是正へ希望持てるか        デーリー東北 2016/12/29   正社員と非正規労働者の待遇格差の是正を目指す政府  の「同一労働同一賃金」指針案がまとまった。  賞与や各種手当、福利厚生などでは待遇改善へ一歩進ん  だが、賃金の骨格となる基本給では踏み込み不足が目立  った。非正規労働者の待遇差是正にどこまで効果がある  か、まだ見通せない。   基本給については経験・能力、業績・成果、勤続年数  の3要件に違いがなければ、「同一としなければなら  ない」と明記。  しかし、「同一労働」の定義はせず、能力や成果を判断  する客観的な基準には触れなかった。取り上げた事例も  少ない。   また、待遇差が合理的かどうかの説明責任を企業に課  すという、労働側の主張も盛り込まれなかった。  これでは立場の弱い非正規労働者が、企業に納得いく説  明を求めるのは難しく、実効性を確保できるか疑問だ。   企業は今後、賃金体系や就業規則の一定の見直しを迫  られそうだ。その際、総人件費の上昇も受け入れる姿勢  が重要だし、希望があれば正社員などへの転換にも積極  的に取り組むべきだ。  家計の担い手で、不本意にも非正規の働き方に甘んじて  いる人の存在も忘れてはならない。   日本の労働分配率バブル崩壊後、大きく下がった。  賃金を抑え、経営の安全弁として非正規労働者の採用を  増やしてきたのが要因だ。非正規労働者は4割に達し、  時間単価は正社員の6割にとどまる。  こうした労働市場のゆがみを生んだ責任は国にも企業に  もある。そして、ゆがみを是正できるかどうかは、持続  的な経済成長のための鍵でもある。個人消費年金問題  などの行方とも複雑に絡むからだ。