相続人がいない場合の特別縁故者
<特別縁故者の認定> 入所者の全遺産、施設側が相続へ 特別縁故者に認定、高裁金沢支部 共同通信 2016/12/3 福井県の障害者支援施設に35年間入所し、68歳で亡く なった身寄りのない男性の遺産を巡り、施設を運営する 社会福祉法人が特別縁故者への認定を求めた即時抗告審 で、名古屋高裁金沢支部は訴えを却下した福井家裁の 決定を取り消し、施設に全ての相続を認める決定を出し たことが3日、分かった。 相続財産管理人の弁護士によると、施設側が特別縁故 者に認定されるのは珍しい。「きめ細かなサービスが認 定につながった。親身な介護を高裁が認めたことは、重 労働の介護職の人の希望になる」と話した。 男性には相続人がいないため、遺産の約2200万円は通常 は、国庫に収納される。 決定は、男性の財産形成は施設利用料の安さが大きく 影響したと指摘。さらに、専用リフト購入や、葬儀や 永代供養などのサービスが「人間としての尊厳を保ち、 快適に暮らせるよう配慮されており、通常期待される レベルを超えていた。近親者に匹敵、あるいはそれ以上」 だとした。 男性は施設に1980年に入所。知的障害があり、歩行困 難な状態だった。数年前からは寝たきりで、2015年2月 に施設で死亡した。 福井家裁への申し立てでは「施設と利用者の関係を超 える特別なものではなかった」と却下されていた。
<特別縁故者の規定> 特別縁故者とは(コトバンク) 被相続人と生計を同一にしていた者や被相続人 の療養看護に努めた者など被相続人と特別の関係 があった者で、相続人が存在しない場合に、請求 により相続財産の分与を受けることができる者 民法は,1962年の改正の際,相続人がいない 場合に家庭裁判所はこれらの特別縁故者に清算 後残存する相続財産の全部または一部を分与する ことができると規定した (民法958条の3) 。 (特別縁故者に対する相続財産の分与) 第958条の3 家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、 被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と 特別の縁故があった者の請求によって、これらの者 に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を 与えることができる。 <特別の縁故があった者> 特別縁故者として、(1)生計を同じくしていた者、 (2)療養看護に努めた者と(3)その他被相続人と特 別の縁故があった者があげられている。 (3)その他被相続人と特別の縁故があった者について は、申立があっても容易に認定されることはない。 生活の相談を受けたり、世話をしたことがあるなどの事 実があっても、単に親族として通常の交際をしていたに 過ぎないとして請求を認めない場合が多い。 否定した裁判で、次のような判断が示されている。 被相続人の従姉の養子であり、親戚づきあいが あったが生前に特別の縁故があったといえる程度 に身分関係や交流があったとは認められない。 被相続人は婚姻もせず、子もなく、兄弟姉妹も 先に亡くなっており、請求者が被相続人の死後に 法要をし、庭木の伐採、掃除等をして労力と費用 をかけているが、被相続人との生前の交流の程度 から、「特別の縁故があった者」と認めることは できない。 <老人ホームを特別縁故者と認めた> 那覇家裁石垣支部 審判 平成2年5月30日 申立人は県立の養護老人ホームであり、 被相続人は、申立人であるC園に入所措置が とられ、その後死亡するに至るまでC園で生活を していた。 衰弱が激しくなると、歩行、排便等の介助が必要 となり、職員がその世話をした。死亡後は葬儀を 同園の職員が行い、同園の納骨堂に遺骨を安置し てその後の供養も行っている。 身寄りのない被相続人としては、その機会があれ ば、世話を受けた申立人に対し、贈与もしくは遺贈 をしたであろうと推認され、申立人に所属する職員 も施設としてその療養看護に当たってきたものと 認められ、申立人には、民法958条の3第1項に 規定する特別の縁故があると認めるのが相当である。