内部告発者に報復人事
<公益通報者保護制度> 消費者庁が見直し 刑事罰導入も検討 毎日新聞 2016年6月5日 官庁や企業に関する不正の内部告発者が不利益な処遇 や報復を受けないよう守る「公益通報者保護制度」を 見直す作業が進んでいる。 告発や通報を理由にした解雇や降格、減給などに対して、 刑事罰や行政措置の導入を検討。 「司令塔」役である 消費者庁に通報の総合窓口を設け他省庁が所管する事案 も調査の対象に加えようと動いている。 <トナミ運輸損害賠償事件> 公益通報者保護法制定のきっかけを作ったといわれ る有名な事件です。 運輸業界のヤミカルテルを公正取引委員会に内部告発 したのに対して、報復人事を行い仕事らしい仕事を与 えず、30年もの間空き地の草むしりなどを業務とし たという。 *富山地裁 平成17.2.23 判決 内部告発には公益性があり、発言力が乏しかった 原告が外部の報道機関に告発したことは無理からぬ ことだった。 原告に雑務しか行わせず、昇格を停止して賃金格差 を発生させたことは人事権の裁量の範囲を逸脱する 違法なものであり、雇用契約に付随する義務につき 債務不履行の損害賠償責任がある。 <オリンパス配転命令事件> 精密機器メーカーの社内に不正があると、社内の 通報窓口に伝えた社員が不当に異動させられ、人事 評価も大きく下げられた。 不当な配置転換だと訴えた裁判で勝訴した社員が、 配転を無効とした判決が最高裁で確定した後も処遇 改善がないとして、更に損害賠償などを求めた裁判 で解決金支払いなどによる和解が成立したという。 公益通報者保護法が制定され、この制度を利用した 内部告発にも関わらず不利益な扱いを受けている。
<通報者を守る仕組み> 公益通報者保護 宮崎日日新聞 2016年11月25日 (勇気ある告発生かす制度を) 企業などの不正を内部告発した人を、解雇や降格 といった不利益な扱いから守る公益通報者保護制度 の見直しに向け、消費者庁の有識者検討会が年内に も最終報告書をまとめる。 その中で、通報を理由に不利益な扱いをした企業 に対し行政機関が是正を勧告し、改善措置が取られ ないときは、企業名を公表するという新しい制度の 導入を促す。 「勇気ある通報」を守り、生かすための仕組みを つくりたい。 *嫌がらせや不当扱い 通報は組織への「裏切り」とみなされることが 多い。上司から嫌がらせをされたり、閑職に追い やられたりする人もいる。 こうした不当な扱いは法律で禁じられているが、 違反しても罰則がないため「通報者を守れない」 との指摘が相次いでいた。 新たな制度をつくるのは簡単ではない。関係省庁 は保護に値する通報か、本当に不当な扱いかを判断 するのに詳細な調査をしなければならず、そのため の人員も予算も必要になる。 企業から「報復人事など不当な扱いはないのに、 処分によってダメージを受けた」と裁判を起こされ ることも考えられ、十分な態勢で臨まなければなら ない。 勧告・公表が実現すれば、通報者保護は一歩前進 する。ただ課題はそれだけにとどまらない。 最終 報告書の見直し案は多岐にわたり、今回は先送りさ れた項目もある。 公益通報を機能させ、定着させていくには不断の 見直しが求められよう。