東京一極集中が変わるのか
<文化庁を突破口に> 京都に文化庁 東京集中正す突破口に 毎日新聞 2016年3月23日 政府は国機関の地方移転に関する基本方針を 決めた。中央省庁に関しては、文化庁を京都府 に数年以内に移転する。消費者庁、総務省統計 局を移転するかについては結論を先送りした。 文化庁移転を突破口として、国の行政組織の あり方についてさらに踏み込んだ見直しを求め たい。 文部科学省の外局である文化庁は文化財を用 いた観光戦略の強化などの観点から、一部機能 を東京に残しての京都移転が有効と判断された。 関西地域の発信力アップにも寄与する結論と いえよう。 政府は協議会を設け、移転に伴う組織改革案 を年内にまとめる。文化庁は文化財保護にとど まらず、著作権や宗教法人など幅広い領域の行政 を所管する。東京に残す機能の確定などに万全を 期す必要がある。 これまで不十分との指摘もあった文化行政全般 の拡充に京都移転をつなげていく発想が欠かせ ない。政府は移転を機に、地方文化の多様性を 従来以上に尊重していくと説明している。こう した視点を実際に反映できるかで、移転の意義が 試される。 * * * * * * * * * * * <地方の人口減少は> 地方では、鉄道廃線が相次いでいる。地方の人口減少が 進んでいるから、経営採算に合わないという。そして生活 の足がなくなり、そこから人は離れざるを得ない。悪循環 になる。 企業も人も仕事を求め、便利さを享受するために首都圏 に集まっていく。地方が衰退するのは誰もが分かっている。 鉄道が民営化され、営利性を追求すれば赤字路線は廃止、 有料部分を強化することになる。地方の赤字路線を廃止す ることが経営努力だと言われると何ともやりきれない。 中央省庁移転ができない理由を、最もよく知るところが 解決策を考えられないか。 地方鉄道の廃線を防ぎ、人が集まる街を取り戻すために そこに職場を移すこと。 <集中是正を掲げるのであれば> 掛け声倒れの看板政策 中央省庁移転 東奥日報 2016/09/09 文化庁を京都に「全面的に移転」するほか、 消費者庁は徳島県に消費者政策の研究・立案拠 点を設け、総務省は統計データを研究者らに提 供する統計局業務を和歌山県で実施する。 このように中央省庁の全面移転は文化庁のみ で、しかも具体的な時期は明記されていない。 消費者庁の移転は、可否判断を見送ったも同然 と言える。 国が範を示すことで、民間企業が本社機能を 地方に移すきっかけにしたいという思惑もあった はずだ。 今からでも遅くない。安倍政権が地方創生、 東京一極集中の是正を掲げ続けるのであれば、 誘致の提案を地方から募り各省庁に移転の可否 を検討させる手法ではなく、すべての中央省庁 を対象に国主導で移転を議論すべきだ。その際 には、首都直下型地震といった国難に備える面 からも、政府のバックアップ機能や中央省庁の 一部を東京圏外に置くなど、国全体のリスクを 減らすことも喫緊の課題だ。 移転できない大きな理由は、他省庁との協議 あるいは官邸や国会、政治家との調整のために は、顔と顔を合わせての関係が必要だというの が大方の理屈だろう。 なぜ、国の仕事だけ頻繁に顔を合わせての調 整が不可欠なのか。働き方改革を掲げている政 府や政治家が「移転はできない」と言い続ける のは、今の仕事の仕方を変えたくないという 惰性ではないか。