願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

年金運用、一喜一憂の必要ない?


      年金積立金運用損 老後の財布
      私物化は困る
       福井新聞 2016年7月22日

 

    年金世代ともなると給付額の変動にはこと
   のほか敏感になる。そんな思いを逆なでする

    ように公的年金積立金の運用損が何と莫大な
   ことか。

 

   世界株安の影響で2015年度は決算で5兆

   数千億円の損失という。年金維持に積立金の

   運用は欠かせないが、これだけ巨額のリスク

   となると首をかしげる国民も多いはずだ。

 

    短期的には問題視する損失ではないのだろ
   うが、わずか3カ月で8兆円近い額が消えて
   も「たいしたことはない(政府)」という。

 

   投資リスクが極端に増しているのに、数字上
   の感覚がまひしているかのようだ。

 

   安倍晋三首相も運用損批判に対し先の国会で
   「短期の変動について答弁しても意味がない。 

   積立金運用はある程度長期的な視点で行うべ
   きで、安倍政権下の3年に約38兆円の運用
   益がある」と反論している。

 

    過去の実績を見ると確かに長期的にはプラ
   スが大きい。しかし安倍首相が胸を張るこの

   38兆円は、積立金の多くを株式のリスク投
   資へ移す以前の、安全運用によって累積した

   収益である。

 

   着実に利益を上げていた運用法をなぜ変更し

   たのか、十分な説明はなされていない。

 

    13年度末まで国内債券が過半数を占め安
   全確実な運用のおかげで、積立金残高は15
   年末現在で約140兆円。

 

   国民の共有財産である積立金はこのように堅

   実に維持すべき対象であり、安定給付への

   不安をなくすことが国が負う責務である。

 

    不用意な運用損の尻拭いは結局国民が被る。
   給付は下がり、保険料は上がる。その責任を
   政府もGPIFも常に無自覚であってはなる
   まい。

 


  * * * * * * * * * * *

 
 <年金の安定的運用とリスク>

 

  年金運用に多額の損失が出たと発表したが、一喜一憂
 する必要はない、長期的には相当な運用益がある、と政府
 は反論する。

 

 ところが、年金運用の独立行政法人(GPIF)が批判さ
 れるのは、その運用方針である。

 

 具体的には年金が安定的に給付されるのか、投資対象に
 株式のウェイトを高めたことを問題視する。

 

 ハイリスク・ハイリターンは好調のときに歓迎されるが、
 いつまでも続く保証はない。悲惨な結果も覚悟しなけれ
 ばならない。

 

 アメリカでは、公的年金の運用にリスク資産への投資は
 していないといわれている。

 

  また、説明で単年度の結果はともかく、年金資産は40兆
 円余り増えているというはおかしい。

 

 投資する資産の割合を変更して、株式比率を12%から
 50%に引き上げたのは、14年(平成26年)10月だと
 いうことが抜けている。

 

 株式比率を引き上げる前に累積した資産を正当化しても
 意味がない。

 

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  ※ GPIFは14年(平成26年)10月、投資する資産
   の割合を変更し、従来は12%ずつだった国内外の株式
   比率を計50%に引き上げた。(京都新聞

 

 

 <長期的な視野で体制を>


       長期で安定した年金運用に 
       日本経済新聞 2016/8/1

 

    公的年金積立金の運用で、2015年度は5兆
   3千億円の損失が出たことが公表された。
   国内外での株価の低迷が影響した。

 

    大きな損失には違いないが、年金運用は
   長期的な視野で評価されるべきものだ。01年
   度に積立金の自主運用が始まって以降では

 

   収益をあげた年も多く、累積では40兆円余り
   年金資産は増えている。単年度の結果だけで
   一喜一憂する必要はないだろう。

 

   とはいえ、できる限り安定した運用を目指す
   べきであることは間違いない。運用を担う
   年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)
   の体制強化を進めてほしい。

 

    厚生年金と国民年金の積立金は約130兆円
   ある。GPIFはこれを国内外の株式や債券
   に投資し、運用している。

 

    14年秋までのポートフォリオは国内債券の
   比率が高かった。その後、効率運用を目指し、

   債券比率を下げ株式に振り向ける新ポート
   フォリオを策定したところに株安が重なり、
   損失が出た格好だ。

 

    リスク資産への投資を増やしながら安定運
   用を目指すには、相応の体制が必要だ。

   まずは、専門家らの合議による意思決定を
   より重視する組織に変えるための関連法案を
   早急に成立させてほしい。