社会保障の財源確保
責任ある社会保障の将来像を示せ
日本経済新聞 2016/6/30
*求められる財源の確保
政府はこれまで収入以上の支出によって
社会保障を広げてきた。足りない分は借金で
賄った。その結果が国内総生産(GDP)の
2倍を超える債務残高だ。
先進国の中で最悪の財政状況であり、そのツ
ケは将来世代に回される。
「社会保障と税の一体改革」は、予定通りの
増税ができないことで事実上、頓挫した。
いま一度練り直しが求められる。
25年には団塊の世代がすべて75歳以上とな
り、医療や介護の需要が急速に高まると予想
される。この状態に耐えうる一体改革を早急
に進める必要がある。
消費税率は10%でも足りないとみる向きが多
い。その先をどうするのか。消費税以外の
増税の選択肢も含め、もっと真剣に議論され
るべきだ。
*給付のスリム化も必要
増税や社会保険料のアップを抑えるには、
社会保障給付の抑制も欠かせない。医療にし
ても介護にしても、一定の年齢以上ならば
一律に手厚く給付するのではなく、それぞれ
の収入などを踏まえ給付を絞り込む必要が
ある。
社会保障と税、それに働き方も含めて、
総合的にこの国の制度をどう変えていくかと
いう視点が、求められている。
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<幅広く公平に負担>
社会保障の財源確保のため、消費税増税を急ぐべきで
ある、消費税率は10%でも足りないというのが財務省など
行政や経済界の大勢のようです。
消費税が望ましいのは、高齢化社会における社会保障には、
高齢者を含めて国民全体で広く負担する必要があるからと
いう。
特に働く世代は社会保険料や所得税を負担して高齢者を支
えており、これ以上頼ることはできない。
世代間の公平のためにも、各年代層で広く負担できる消費
税を増やすのは当然である、という考えです。
ただ、徴税する立場からすると、第一に税収の安定性で
あり、景気の動向に左右されにくい、そして取りやすいと
いうことでしょう。
しかし、社会保障だから各年齢、各所得階層に幅広く
負担を求めるべきなのか。富の再分配をして、社会保障も
教育費にも役立てられる。
消費税は各所得階層に定率で負担させる。低所得者に優し
い制度ではない。むしろ所得の大部分を消費に支出する
から、消費税収では特に中低所得者の貢献が大きい。
所得税の累進度を強めても、若年層の負担は比較的少な
いはず。資産課税をすれば、むしろ老人の負担が大きく
なる。
世代間格差を強調する人は、国民年金の平均受給額が約
5万5000円となっているのをどう考えるのか。
絶対額が低い、それでも将来世代はもっと下がるといって、
月額何万も抑えるべきだといえるのか。
世代間格差よりも深刻なのは、どの世代にも貧富の格差
が大きいことであろう。
<貧富の二極化>
3党合意の崩壊/「社会保障と税」
どうするの
河北新報 2016年06月18日
現下と将来の生活に直結する政策課題。
言い換えれば今とこれからの暮らしの安定と
安心に関わる問題である。
そして、このことが景気を大きく左右する個
人消費の背景にあることはいうまでもない。
アベノミクスが経済格差を拡大したことは
否定できまい。大企業、富裕層を優遇し、そ
の富を滴り落とすことを狙いながら、そうは
ならずに富はとどまり、一方で雇用が増えた
といっても、多くは低賃金の非正規労働で
ある。
いわゆる中間層が細り貧富の二極化が加速、
中でも低所得・貧困層が厚みを増した。この
格差を是正することなしに安定も安心もある
まい。
社会保障も税も、その重要な役割は再配分機
能にある。税は「持てる者」から取って
「持たざる者」に分配する。
社会保障は、みんなの負担で高齢者や弱者ら
を支える相互扶助の仕組みである。
社会の底上げを図り、将来にわたる保障を得
る上で、この再配分機能の発揮こそが求めら
れているのではないか。
2度延期され実施の確証もない10%増税
は、ほごも同然だ。いかに格差を正し将来
不安を拭うか、3党は社会保障と税の新たな
改革像を示すべきだ。そうしなければ無責任
との断罪を免れまい。政治への不信を深めて
はならない。