高齢者の貧困と年金
<年金額の抑制>
将来世代を考えた年金額の
抑制が必要だ
日本経済新聞 2016/2/7
今の年金制度では、早めに支給水準を下げ
ておかないと、将来世代の年金額が想定以上
に減ることになってしまう。
どのような状況の下でも、少しずつ着実に年
金額を抑えていけるように早急に制度を見直
すべきだ。
すでに年金を受け取っている人たちには、
支給額が減らないのは喜ばしいことに違いな
い。しかし、その代わりに子どもや孫の世代
の支給額がさらに減るとしたらどうだろう。
世代間の格差を広げないためには、今のうち
から少しずつ我慢することも必要ではないだ
ろうか。
高齢化が急速に進む日本において、なんら
手を加えずに年金制度を維持することはでき
ない。給付抑制等の「痛み」を伴う改革を
実施し、将来世代に引き継いでいくしかない。
政府・与党にはそこをごまかさず、正々堂々
と国民に訴えていく姿勢が求められる。
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<世代間格差よりも所得格差の是正>
少子・高齢化がますます深刻になり、働く若者が高齢
者を支える制度が続かない、こうして世代間の対立は
激化していく。
特に世代間格差を強調する人は、年金の負担に限らず、
雇用の問題を訴える。
高齢者が年功賃金で守られているがために、若者の就業は
不安定で低位におさえられる。非正規が増える原因にも
なっていると。
この点を強調するのは、労働などの規制を何とかしない
とダメになる、と主張するグループと多くは重なっている。
しかし、現在日本で問題になっているのは老人の貧困で
あり、特に単身の高齢者、一人暮らしの生活が厳しいと
いうことです。
この高齢層の所得格差は深刻だということが話題になって
いる。
高齢の世代が若者世代を苦しめるというよりも、高齢者
の間にも若者同士にも、それぞれに厳しい格差が現れて
いる。
社会保障制度維持のためには、「痛み」を伴う改革から
逃げられない、といわれても既に痛んでいる人に負担を求
められない。
高所得者の年金減額など格差是正の方にかじを切ること
が必要な段階で、所得税の累進性、資産課税の見直しを
検討することではないか。
<深刻な高齢者の貧困>
高齢者の貧困 拡大防ぐ手立てが急務
京都新聞 2016/6/4
生活保護の受給世帯のうち、65歳以上
の高齢者を中心とする世帯が3月時点で過去
最多の82万6656世帯となり、初めて半
数を超えたことが厚生労働省調査で分かった。
この10年で1・7倍に増えた計算だ。
現在の国民年金の支給額は満額でも月に約
6万5千円。2世代同居や3世代同居が当た
り前だった時代ならともかく、核家族化が進
んだ今、家賃等の支払いや日々の生活費全て
をこの金額で賄うのは難しい。特に単身世帯
は支え合いができないため困窮しがちだ。低
年金や無年金の増加も貧困化に拍車をかけて
いる。
しかも、不安定な非正規雇用が拡大し高齢
の親に経済的支援をしたくてもできない人が
増えるなど家族間の「扶助」の形が崩れてき
ている現実もある。
心配なのは、年金財政の安定に向け、給付
抑制を一段と強める方向にあることだ。政府
は参院選への影響を避けて関連法案の成立を
次期国会以降に先送りしたが、施行されれば、
高齢者の暮らし向きはさらに厳しくならざる
をえない。
老後の貧困を拡大させないためには、年金、
医療、介護、雇用等の各制度を見直し、税制
を含めて所得保障の在り方を総合的に点検す
る必要がある。政治の責任は重い。