TPP法案の先送り
TPP法案の先送りは許されるのか
日本経済新聞 2016/04/14
環太平洋経済連携協定(TPP)承認案の
国会審議が遅々として進まない。貿易自由化
の国内調整はどこの国でも難題だが、旗振り
役を務めるべき日本がもたもたしていては他
の参加国にしめしがつかない。
今国会での処理を諦め、秋以降に先送りす
るようなことがあってはならない。
党利党略と国益のいったいどちらが重いの
か。そんな当たり前のことをわざわざ指摘し
なくてはならないとは情けない。
TPP参加国の世界経済に占めるシェアは
約4割である。その規模で貿易自由化を進め
ることは、日本のみならず世界の発展の礎と
なる。 TPPには「中国にルールをつくらせ
ない」(オバマ米大統領)という戦略上の意味
もある。こうした原点を再確認したい。
交渉経過を4年間は明らかにしないとの取
り決めがあることは承知しているが、与野党
が折り合う余地は全くないのか。民主党政権
はTPP反対一辺倒ではなかったのだから、
後身の民進党も交渉資料の公開にこだわって
突っ張るのはいかにも選挙目当てにみえる。
TPP承認案と関連法案の分離処理などの
折衷案も取り沙汰されている。与野党がよく
話し合えば知恵は出るはずだ。
<TPPの主目的>
国会審議を進めよといいながら、交渉資料を要求するの
がおかしいという。何を、どのくらい審議して、何を承認する
というのだろうか。
米国にとって、対中国の経済戦略が主目的だという発言
があり、日米連帯の証しとしてTPPを重視するのであろう。
そうした排外的なものであれば、自由貿易とか世界の発展
という理想を振りまく姿勢はどうか。
そして、合意内容が過去の説明と違うという話が出ている。
ところで、TPPの合意後、各紙が一斉に同様の見出しに
した 「参加国のGDPで世界の約4割を占める巨大経済圏
誕生」というのは何だったのか。
参加国のGDP内訳は次の通りで、実際はもともと
アメリカと日本がほとんどを占めている。
GDP
(百億ドル) (%)
アメリカ 1426 58.8
日 本 546 22.5
カナダ 151 6.2
メキシコ 109 4.5
オーストラリア 101 4.2
マレーシア 22 0.9
シンガポール 18 0.8
チ リ 17 0.7
ペルー 13 0.5
ニュージーランド 13 0.5
ベトナム 9 0.4
ブルネイ 2 0.1
合 計 2427
TPP先送り 論議深める契機にしたい
新潟日報 2016/04/21
政府、与党には交渉過程について情報公
開を求めたい。全体像を把握しているとされ
る甘利明・前経済再生担当相の参考人招致
にも応じるべきだ。
地方説明会や公聴会を全国各地で繰り返し
行い、国民の疑問に丁寧に答えてほしい。
衆院特別委は、大半が黒塗りで開示された
交渉過程の記録や、西川公也委員長の内幕
本を巡り質疑が中断した。
いずれの問題も国民の関心は高い。あい
まいな結果で終わらせてはならない。
また、衆参両院の農林水産委員会が関税
撤廃の例外とするよう決議したコメ、麦、牛・
豚肉、乳製品、サトウキビなどの甘味資源
作物の5項目を巡って、注目すべき発言が
あった。
森山裕農相が、重要5項目と位置付けられ
る全農産物の関税について、何らかの変更
があると答弁したのだ。
政府はこれまで、重要5項目の全594品
目のうち、155品目は変更がないと説明して
きた。過去の説明との整合性が問われる答
弁と言わざるを得ない。
国会決議が守られたかどうかを判断する上
で、極めて重要なポイントだ。徹底的に議論
しなければならない。