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ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

患者申出療養制度の影響

 

          混合診療、身近な病院でも
          来年4月から新制度 厚労省
             時事 2015/09/30

  厚生労働省は30日、保険診療と保険外診療を併用する
 混合診療の拡充に向け、来年4月に創設する「患者申し出

 療養制度」の骨格案を中央社会保険医療協議会総会に示し、
 了承された。

 国内未承認の抗がん剤の使用などを希望する患者の申請
 を受け、国の評価会議が制度への適用を認めるかどうかを

 原則6週間以内に判断。審査で認められれば、患者の身近
 な病院でも実施できる。

  国は今も一部の医薬品などについて混合診療を例外的に
 認めているが、実施できる医療機関は大学病院などに限ら
 れている。

 新制度では、地域の身近な病院や診療所での受診も申請
 できるほか、審査期間も現行の6カ月から大幅に短縮し、
 難病患者らのニーズに迅速に対応する。

  通常は、保険外診療と保険診療を組み合わせると医療
 費は全額患者の自己負担となる。混合診療が認められれ

 ば、入院基本料など保険適用部分の患者負担は原則3割と
 なる。

  厚労省は新制度について「混合診療を無制限に解禁する
 ものではない」として、あくまで将来的な保険適用を目指す
 医療を対象とする方針だ。

 <患者申出療養制度とは>   国内で承認されていない抗がん剤などを保険診療と併せて  使えるようにする制度で、保険診療と保険外の自由診療を併用  する混合診療の拡大版。   混合診療解禁を主張するのは、新薬、医療技術の開発を促進  して、医療が成長産業になるという成長促進策である。  患者の選択肢を拡大するという効果があっても、主たる目的  ではないといわれている。   厚労省  *保険外併用療養費制度の中に、新たな仕組みとして、「患者   申出療養」を創設。  *困難な病気と闘う患者からの申出を起点として、国内未承認   医薬品等の使用や国内承認済みの医薬品等の適応外使用など   を迅速に保険外併用療養として使用できる仕組みとし、患者の   治療の選択肢を拡大する。  <新制度の効果に期待>

 

      混合診療 拡充は患者の選択肢を広げる
         読売新聞 2014年04月23日

  政府は「混合診療」の対象を拡大することを決めた。患者
 が効果的な先端治療を受けられるよう、早期に実施する
 必要がある。

  海外では広く使われていながら、国内で承認されていない
 薬を試したい。そう願う難病などの患者は少なくないだろう。

  だが、現行の仕組みでは、未承認薬を使う場合本来なら
 保険が適用される検査や入院費用まで全額自費となって
 しまう。

 混合診療の制限は、患者に過度の経済的負担を強いている
 との批判が多いのは、もっともだ。

  現在混合診療が例外的に認められているのは、高度がん
 放射線療法の重粒子線治療や、家族性アルツハイマー病の
 遺伝子診断など、約100種類にとどまる。

  厚労省は適用範囲を広げ、重い病状の患者に限って、
 抗がん剤などの未承認薬を新たに混合診療の対象にする
 方針だ。

 細胞・組織を培養する再生医療や、未承認の医療機器を
 使った治療を対象に加えることも検討している。

  患者にとって、治療の選択肢が増える。医師も新しい治療
 法に積極的に取り組むようになる。混合診療の適用拡大に
 は、こうした効果が期待できるだろう。

  ただ、規制改革会議の案で懸念されるのは、医師が丁寧な
 説明をしないまま、混合診療の実施について患者の同意を
 得ることだ。

 患者が入手できる医療情報には限りがある。科学的な根拠
 のない治療が患者に押しつけられる事態は避けねばなら
 ない。

  どこまでを混合診療の対象とするのか。政府にとって、その
 線引きは大きな課題である。具体策として、海外の臨床試験

 で効果と安全性が確認された医薬品や、国内外の学会が
 推奨している治療法を認めることが考えられよう。

  政府は患者の利益を最優先し、安全性の確保にも配慮し
 た仕組みを構築してもらいたい。

 <混合診療解禁は>   経済関係者からは、保険財政がもたないから医療制度を見直す  必要があると主張している。   医療関係者の方は、国民皆保険を守るため混合診療を解禁す  べきでない。有効・安全な治療法であれば患者申出療養制度より  も、速やかな保険適用をと主張する。 混合診療は原則禁止になっているが、理由は  *保険診療で足りる場合でも、患者に保険外診療を求められ、   自己負担が増大するおそれがある。  *安全性や有効性が不明確な医療が保険診療と併せて提供され   るおそれがある。  *医療においては、情報の質、量において患者と医師の間に大き   な格差がある。   患者は品質に関する情報が不足して、選択が難しい。競争原理   が必ずしも働かない。  <患者申出療養制度の疑問>   がんや難病の患者団体は、有効・安全と確認した治療法は速や  かに保険を適用するよう求めている。   患者申出療養の導入によって新薬の保険適用が遅れることに  なれば、自己負担が軽減されない。経済力で受けられる治療に  格差が生まれてしまうと警戒する。   また、審査期間が短縮されて安全性が確保できるか懸念されて  いる。

 

       患者申出療養 将来の保険適用が筋だ
          神奈川新聞 2014/06/17

  保険診療と保険外の自由診療を併用する「混合診療」の
 拡大を検討していた政府の規制改革会議は、混合診療の

 新たなカテゴリーとして「患者申出療養」の新設を盛り込ん
 だ答申をまとめた。

  同会議が掲げる大義名分は、「困難な病気と闘う患者の
 選択肢拡大」である。ただし、軸足を置いているのは創薬、

 新たな医療機器の開発を促進し経済成長につなげる成長
 戦略ではないか。

  画期的な治療法が開発され、難病患者らの元にもたらされ
 ることは歓迎すべきである。ただし、人の健康や生命に関わ
 る医療は、成長戦略とはそぐわないのではないか。

  本来、安全性、有効性が確認された医療は保険適用する
 のが筋である。保険診療と保険外の自由診療の併用は、

 将来の保険適用の可否を評価するための例外措置である
 ことを再確認したい。

  同会議はこの制度の特徴として患者の意思尊重を強調し
 ている。しかし、それは自己責任と一体であり、安全性、
 有効性に対する公的保障の観点が抜け落ちてはいまいか。

  保険診療と自由診療の併用のさらなる拡大が蟻の一穴と
 なり、保険外の医療が恒久化するような事態になれば、医療
 格差の拡大にもつながる。

 経済的理由で新たな医療技術の恩恵を受けることのでき
 ない患者を生んではならない。