世界記憶遺産登録の反応
世界記憶遺産 容認できない
南京事件の登録
読売新聞 2015年10月11日
歴史問題を巡る中国の一方的な主張に、国際
機関が「お墨付き」を与えたと誤解されないか。
憂慮すべき事態である。
国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界記憶
遺産に、中国が申請した「南京大虐殺の文書」が
登録された。
ユネスコの諮問委員会は14人の専門家で構成
されている。図書館学の研究者や公文書館関係者
が中心で、選考過程は公開されていない。余りにも
不透明だ。
日本はユネスコ予算の約1割にあたる年間37億
円の分担金を支払い、その活動を実質的に支えて
いる。
記憶遺産の登録制度の改善を働きかけることが欠
かせない。
<ユネスコ分担金についての報道>
このことで、日本国内の反応は、次のように報道されている。
「日本政府筋は『断固たる措置を取る』と述べ、ユネスコの
分担金拠出などの一時凍結を検討する構えを見せている。」
(10月10日)
「自民党の合同会議は、ユネスコが、南京事件を巡る資料
を記憶遺産に登録したのは、中立・公平ではないとして、
安倍総理大臣に対し、制度の改善とともに、分担金や拠出
金の停止を早急に行うよう申し入れた」
(10月15日)
外国の報道で、主なものは次のようです。
*英ガーディアン紙は、
「南京大虐殺の登録めぐり、日本がユネスコへの支出を
停止すると脅迫」
「日本の新聞各紙は、ユネスコの決定を非難するという
点で一致している」
*タイムズは、
「日本政府はユネスコに対して拠出金を引き上げると
脅した」
*アメリカのCNNは、
「東京は南京大虐殺文書に激怒」
このように、国内と外国の反応は大きな違いがあります。
こじれる世界記憶遺産
歴史をゆがめてはならぬ
福井新聞 2015年10月17日
ユネスコの審査は資料の保全や管理の必要性
だけを検討し内容が歴史的に正しいかは判断材料
にしない。
つまり中国が主張する「30万人以上」の数字が認め
られたわけではない。
日本には犠牲者数ばかりか「南京事件はなかった」
と虐殺自体を否定する政治家もいる。
さらに日本はユネスコへの拠出金などの停止や削減
を含めた対抗措置を検討し始めた。登録制度の見直
しが目的だ。
主張はすべきだが、カネの力を絡ませるのは説得力
を欠き、存在感の低下を招きかねない。
日本の動きは、中韓側にすれば右傾化した「歴史
修正主義」に映るだろう。
歴史カードを振りかざし批判の応酬では関係改善や
国際協調に結びつくはずもない。歴史の検証は専門
家の研究に委ね、困難を乗り越えたい。
「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、
人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」
― これがユネスコ憲章の崇高な精神である。