政府発表の地方再生策<オピニオン比較>
<総合戦略の基本目標> 政府が発表した地方創生の総合戦略について、新聞各社の 意見が出ています。
地方で30万人の若者雇用…政府「総合戦略」 読売新聞 2014年12月26日 地方で30万人の若者の雇用を生み出すなどの目標を掲 げ、人口減少と東京一極集中に歯止めをかけて、60年に 人口1億人の大台を維持することを目指す。政府は27日、 ビジョンと戦略を閣議決定する。 戦略では、基本目標として、〈1〉地方での安定した雇用 〈2〉地方への人の流れ〈3〉若い世代の結婚・出産・子育 ての希望実現〈4〉時代に対応した地域づくり――の4点を 掲げた。 首都圏の人口集中度が国内人口の3割に上る現状を見直 すため、東京圏への転入者を20年時点で年に6万人減少さ せる一方、地方への転出者を4万人増やすとの方針を掲げた。
人口の目標
<歓迎のコメント> 全国知事会などは、さっそく歓迎のコメントを発表しています。
全国知事会など地方6団体、政府の 創生戦略を評価 日本経済新聞 2014/12/27 全国知事会、全国市長会など地方6団体は27日、政府が 閣議決定した地方創生の「総合戦略」を評価する共同コメ ントを発表した。 地方の自由度の高い交付金の創設や企業の地方拠点強化と いった具体策を「真に評価」と指摘。財政措置を今回限り にしないことも要請した。 全自治体が策定を求められている「地方版総合戦略」には 「地方も正面から取り組む」と強調した。
<実効性に疑問> 知事会などは、地方への人材還流、移住の促進、地方での人材 育成などの施策が掲げられたことを評価している。 新聞各社からも、政府が地方再生に取り組むことを明示し、具体 的な目標を掲げたと評価する意見が出ている。 しかし、その実効性に疑問がある、どう実現するかの道筋がない といった批判もある。
地方創生総合戦略 どう実現するかが課題 秋田魁新報 2014/12/27 政府は、将来の人口展望をまとめた「長期ビジョン」と、 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の最終案を公表した。 きょう閣議決定する。 「地方創生」の2015年度から5年間の工程表となる 総合戦略には、取り組む施策が多数並べられている。従来 施策の焼き直しが多いものの、地方再生はもはや待ったなし の段階にある。どう実現するかが課題となる。 総合戦略では多くの施策に数値目標を掲げた。東京一極 集中是正に関しては、地方から東京圏への転入者を20年 時点で13年に比べ、6万人減らす一方で東京圏から地方 への転出者を4万人増やすとしている。 ただ、その方策をみれば、政府機関の地方移転や、企業 の地方移転に対する税制優遇措置、移住希望者の相談窓口 設置などが並ぶにとどまる。 政府機関の移転は15年度に道府県から誘致提案を募ると しているが、国が本腰を入れなければ進展しないだろう。 企業の地方移転も、税制上の優遇措置だけで企業が本社 移転を決めるかどうか、もっと検討が必要だ。 地方は従来以上に自分の地域は自分でつくり上げていく のだという意識を持つ必要がある。 自らの足元を見詰め直す。そして地域の社会・経済の在 り方を模索しながら、魅力を高める道を追い求める。 地方は総合戦略の策定をきっかけに、主体的に地域再生 に取り組まなければならない。
<人口分散に骨太の政策> さらに厳しい注文があり、東京一極集中是正のために政府機関や 人口の分散に踏み込むべきだと主張している。
地方創生法案/骨太の政策を求めたい 山陰中央新報 2014/10/22 安倍晋三首相は最重要課題に「地方創生」を掲げ「地方 の声に徹底的に耳を傾け、政府一丸となって取り組む」と 決意を示した。 安倍首相は、縦割り行政の弊害や予算のばらまきの排除 を表明している。野党からの「ばらまき批判」への対応も あるだろうが、政府内で指示すれば足りる。ばらまきで地方 経済が疲弊したわけでも人口流出したわけでもない。 原因は別なところにある。この国の産業は農林水産業から 製造業、そしてサービス業へと重点を移してきた。 サービス業のためには人口の一定程度の集中が必要になる。 そのため東京一極集中が進んだともいえる。 しかし、米国やドイツ、フランスのように大きな都市圏 が複数あり、日本ほど一極集中が進んでいない先進国がある ことも忘れてはいけない。 日本ができることは、まず政令指定都市や各県の中心都市 の強化だ。ここに若者を定着させ人口流出を止める防波堤 にすべきだ。 雇用をつくるためにも東京にある政府機関などを、これら の都市に移すことを考えるべきだ。 国がなすべきは、国にしかできない政策だ。地方の雇用 を増やす流れをつくり着実に人口を増やすこと、農業や林業 など地方で基幹となっている産業を維持し、活性化させる ことだろう。 地方創生は来春の統一地方選対策だと批判されないため にも、「人口分散が始まった」と後世から評価される骨太 の政策が待たれる。
<一極集中の弊害解決> そして、地域経済の活性化だけでは解決しない、東京一極集中 の弊害に対して大胆な国家ビジョンが必要だという意見がある。
衆院選と地方政策 「東京集中」こそが論点だ 産経新聞 2014.12.8 東京一極集中がもたらす弊害をどう解決するかは、日本 の喫緊の課題である。 各党は地方政策を政権公約の主要政策に掲げている。 だが、一極集中の解決策は見えてこない。地方政策の大き な論点に、東京への集中を位置付ける必要がある。 地方「消滅」の危機がささやかれていることもあり、 各党は地方対策を選挙戦の柱の一つにすえている。実際に 論戦が展開されているのは大きな前進だ。 だが決定的に欠けているのが、地方の人口減少と表裏の 関係にある東京一極集中の弊害を解決する視点である。 人口減少に歯止めをかけるのも急務だが、すでに東京に 住んでいる人を取り巻く課題への対応を急がねばならない。 東京圏では今後、高齢者が激増する。かつて地方から出 てきた人が年齢を重ねたことに加え、現在の若い世代が 高齢の親を呼び寄せているためだ。 地域経済を元気づける当面の対策や地方分権も重要で はあるが、それだけでは地方の人口減少は止まらない。 いま求められているのは、東京圏などからの移住促進や コンパクトな街づくりだ。各党には国家ビジョンともいう べき大胆な構想を競ってもらいたい。