就職が決まっても、取り消しがあるか
平成24年度は、76名が内定取り消し 学生の職業選択のため、企業名公表も マイナビニュース [2013/09/13] 厚生労働省は、3月に大学や高校などを卒業して4月に 就職予定だった人のうち、内定を取り消された人の状況 をまとめた。 内定を取り消した企業のうち、2社については企業名も 公表。 内定の取り消しや入職時期の繰り下げを行う場合、事業 主はハローワークに通知する必要があり、今回はその 状況をまとめたという。 企業名の公表については、内定取り消しが「事業活動 縮小を余儀なくされているとは明らかに認められない」 などの場合に、求職活動をする学生の適切な職業選択に 役立つよう、厚生労働大臣が実施できることとなっている。
「採用内定」については、普通はっきりとした認識がないまま待機 しているのではないかと思います。 突如取消通知など来ると困るが、法的にはどう解釈されているのか。 企業が採用内定を取り消すことは、解約の申入れとみられている。 その解約の事由が社会通念上相当として是認することができるか どうか問われることになる。採用内定になった労働者は、他の企業 への就職の機会と可能性を放棄することになるから。 <採用内定の取消事由> 具体的にどのような場合に採用内定の取り消しが認められるのか。 (1)卒業できない時 (2)病気その他の事情で契約通りの労働ができない時 (1)、(2)については、明らかに就労が不可能であって、問題に なることはない。 (3)応募書類に虚偽記載があった時 虚偽記載は不誠実であるが、それが即採用取り消しを認める理由 とはならないとされている。 提出書類の虚偽記入を理由に、採用内定を取り消された裁判で、 無効とする判決を下した事例がある。 在日朝鮮人であることを隠して応募書類の氏名・本籍欄に虚偽を 記入し採用された者が、採用内定を取り消された。 裁判所は、「提出書類の虚偽記入」という取消事由に関し、その 内容・程度が重大なもので、信義を欠くようなものでなければ 採用内定を取り消せないとして、国籍を理由とする差別的取扱いで あるから内定取消は無効であると判決している。 下は具体的な事例二件の要約です。 <解約権の濫用と判断された裁判事例> 概要: 採用内定の通知を受けた原告が、前職勤務時代に悪い噂があり、 そのため会社の営業部門で原告を受け入れるところがないという 理由で採用を取り消された。 採用内定取消しは客観的に合理的と認められる事由がなく、無効 であると主張して未払給与の支払などを請求した。 判決理由: 被告が本件採用内定取消しに用いた情報は伝聞にすぎず、噂の 域を出ないものばかりであり、噂が真実であると認めるに足りる 証拠は存在しない。 本件採用内定取消しには、客観的に合理的と認められ社会通念上 相当として是認できる事由が認められない。 なお、被告は原告に対し、本件採用内定通知を出しながら、悪い 噂があることから一旦は採用内定を留保し、調査、再面接までして 採用内定を決定したのであるから、従前と異なる事実が出たなら 格別、このような事実が存在しない。 従前と同様の噂に基づき採用内定通知を取り消すことは、解約権を 濫用するものというべきである。 <内定取消しが已むを得ないと認められた裁判事例> 概要: 新設予定の大学の教授として、始期付き教員採用予定契約が 締結されており、原告主張の第二次就任承諾書を提出した時点 で労働契約が成立した。 採用予定契約の撤回がなされたのは 不当な解除に当たるとして、損害賠償を請求した。 大学の教員としての不適格性が明らかであり、人事権の濫用に 当たるものではなく、不法行為があったとは認められないとして、 原告の請求が棄却された。 判決理由: 始期に至るまでの期間において、原告の言動、特に被告大学の 運営ないし教育カリキュラムの編成等に対する正当な理由に基か ない非協力な態度、被告大学当局に対する給与関係事項等に ついての非常識な要求の固執等があった。そのため、当初知る ことができなかった専任教員としての不適格性が明らかになった という理由で、教員採用予定契約を撤回したものと認めることが できる。 被告大学の措置は、已むを得ないものであったと判断される。 従って、これが被告大学の人事権の濫用に当たるものであるとは 判断しえないし、その経過において被告大学の原告に対する名誉 毀損を含む何らかの不法行為があったことも認められない。