願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

契約約款の規定など民法を改正

 <契約関係の民法改正>

      改正民法、消費者保護に力点
      明治以来の大改正
      時事ドットコム 2017/05/26

  改正の目玉は、インターネット通販サービスの利用
 規約など、事業者が不特定多数の利用者と契約を結ぶ際
 に用いられる「約款」の項目の創設だ。

  膨大で難解な約款を利用者が読み飛ばすことも多く、
 解約時に意図せぬ違約金を請求されたり、一方的な約款
 変更で料金が値上げされたりといった消費者トラブルが
 相次いでいる。

  このため、「消費者の利益を一方的に害する」条項は
 無効であることを明記。内容変更は限定的に容認する。

  保険や銀行預金など契約が長期にわたる業態に配慮し、
 消費者利益への適合性と、必要性や妥当性などの事情に
 照らして合理的な場合は可能とした。

  約款に関するルールを確立することで、「利用者が
 約款を読まないことを前提にした悪質な事業者を抑止
 する」(法務省)のが狙い。ただ、経済界は利便性の
 高い約款への規制強化に抵抗したため、「利益を一方的
 に害する」以上の具体的な規制は見送られた。



 <改正の特徴>

  「大改正」と報道されているが、契約ルールを明文化
 して、一般に分かりやすくするのが目的だという。

  特に大きな変化が起こるというものではなく、裁判など
 で長い間に練られ、既に定着したものが法律になる。

  この改正の中で、日ごろの生活に関係するのが約款に
 ついて新たに規定されることです。

   約款は保険、運送、銀行取引などにおいて、多数の
 顧客と同じ内容の契約を締結する際に用いられる、統一
 した様式の契約条項。


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 <約款についてトラブル>

  約款の内容については、契約の一方である企業などが
 意図するところを作成して顧客に示すだけであって交渉
 の余地がない。

 細かく、難しい条項を読むということも少ないので、後
 でトラブルになり易い。免責条項や解約条項、違約金
 など顧客が不利益を受けることが問題になっている。

  今回改正の法律に、消費者が一方的に不利になる内容
 の条項は無効とする、と規定される。

 ただし、契約であることを消費者に示されて、合意すれ
 ば内容を理解していなくても契約が成立すると明記される。


  約款の免責条項が有効かが争われたケースで、最近
 話題になった裁判で判断が出されています。

  札幌ドームでプロ野球の試合中にファウルボールが
 観客に当たり、女性が失明した事故で球団に損害賠償を
 求めた裁判の控訴審判決です。



 <約款について争われた事例>

  平成28年5月20日 札幌高裁 判決

  争点(免責条項適用の有無)について

  (1) 控訴人ファイターズは、被控訴人との
   間においては、契約約款中の本件免責
   条項により主催者及び球場管理者は、

   観客が被ったファウルボールに起因する
   損害について責任を負わない旨の合意が
   成立していた。

   従って、控訴人ファイターズは本件事故
   について責任を負わない旨主張する。


  (2) しかしながら、以下のとおり本件に
   おいて上記合意が成立したとは認められ
   ない。

   本件のような具体的な法的紛争において
   て免責条項による法的効果を主張する
   ためには、

   観客である被控訴人において、その条項
   を現実に了解しているか、仮に具体的な

   了解はないとしても了解があったものと
   推定すべき具体的な状況があったことが
   必要である。

   本件においてはかかる状況は認められ
   ない。


刑事裁判で無罪、民事では損害賠償

 

 <教え子殺害で賠償請求>

   「嘱託殺人納得できぬ」遺族が提訴
    教え子殺害、元准教授に賠償求める
      福井新聞 2017年3月22日

  福井県勝山市で2015年3月、赤トンボの研究
 をしていた東邦大の大学院生菅原みわさん=当時
 (25)=が絞殺された事件で、菅原さんの遺族が

 22日までに、殺害した元福井大大学院特命准教授
 の前園泰徳受刑者に計1億2223万円の損害賠償
 を求めて千葉地裁に提訴した。

  前園受刑者は15年4月、教え子の菅原さんを
 殺害したとして殺人罪で起訴されたが、福井地裁の
 裁判員裁判の判決では嘱託殺人罪が適用され同9月、
 懲役3年6月(求刑懲役13年)が言い渡された。
 福井地検、被告とも控訴せず判決が確定した。

  今回の訴状では、「嘱託を裏付ける証拠が無い。
 被告は秘密裏にしていた不倫関係が公になれば、
 地位や名誉、家族を失うのでないかと恐れた。被告

 に被害者を殺害する動機があった」などと主張して
 おり、民事裁判でも再び嘱託の有無が争点になる
 とみられる。

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 <刑事で無罪、民事は敗訴の事例>   「疑わしきは罰せず」といわれて、刑事裁判では  厳しい証明が求められる。被告人を有罪とするには  疑問が残るという場合は無罪判決にならざるを得な  という。   一方、民事裁判の証明は、「通常人が疑いを差し  挟まない程度に真実」と確信できることが基準に  なっている。  一般人の常識的な考えに近い判断がされている。  そのために、同じ事件でも民事と刑事の裁判で異な  る結論が出ることがあるとされ、次のような事例が  ある。  *低血糖による意識障害でひき逃げ事故   横浜地裁 平成24年3月21日 判決   無罪   (低血糖による意識障害に陥り、事故の    認識があったか疑問が残る)   東京地裁 平成25年3月7日 判決   死亡した高校生の遺族に損害賠償を命令   (血糖値の管理を怠る過失があった)  *浦安市立小学校の児童虐待事件   千葉地裁 平成17年4月28日 判決   無罪   (犯罪の時間と場所が特定できない)   千葉地裁 平成20年12月24日 判決   浦安市と県に賠償命令   (証言は内容も具体的で迫真性がある)
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 <教え子殺害事件の特殊性>   元准教授側は争う姿勢であると報道され、嘱託殺人罪  は刑事裁判でも認められているから責任を問われないと  のコメントが紹介されている。   一方、遺族側は嘱託殺人罪の認定に納得していない。  被害者の殺害嘱託はなく、単純殺人罪が成立することを  主張立証していくという。   先の刑事裁判の判決は嘱託殺人罪を適用し、懲役3年  6月を言い渡した。判決理由は、「自殺の意思を有して  いた可能性は否定できない」「嘱託がなかったと認定す  るには合理的な疑いが残る」となっている。   裁判所も、単純殺人罪が成立する可能性が高いが、嘱  託殺人罪を否定することができないという刑事裁判の  原則に基づく結論になった。  従って、嘱託殺人罪でも実刑であり量刑はかなり重いの  であろう、検察側も控訴せず判決が確定している。   今回の民事裁判は、損害賠償を請求するものであり、  「嘱託殺人か、単純殺人罪が成立するか」の争い以前に、  殺人を実行して被害者は帰らないという事実は動かない。  しかも、老人介護や病苦による嘱託殺人とは全く異な  るから、損害賠償の請求は相当程度認められるのでは  ないか。  刑事裁判の裁判長は、「後先を深く考えない軽はずみな  行為で、強い非難は免れない」と述べたと報道されて  いる。  <刑事事件で不起訴、民事で賠償命令>     男性に1500万円の支払い命令      テレビ和歌山 2017-03-28 一昨年、紀の川市に住む老夫婦がキャッシュカー  ドを使い、現金1500万円を不正に引き出された  として日本郵便の男性に対し損害賠償を求めていた  民事裁判の判決が27日あり、和歌山地方裁判所は  男性に全額返還を命じる判決を言い渡しました。  事件発覚当時、男性は窃盗の疑いで警察に逮捕され  ましたが、刑事事件としては嫌疑不十分で、不起訴  処分となっていました。   判決を受けたのは、紀の川市に住む43歳の男性  です。判決によりますと、平成26年10月ごろ、  当時、郵便局の渉外担当として紀の川市の夫婦と親  密な関係にあった男性は、夫婦から言葉巧みに暗証  番号を聞き出し、キャッシュカードを持ち出して、  現金1500万円を無断で引き出したものです。   27日の裁判で、和歌山地方裁判所の山下隼人  裁判官は、キャッシュカードの暗証番号を入手した  時期と、夫婦の口座から初めて出金があった時期が  極めて近かったことや、男性が当時、外国為替証拠  金取引口座へ、被害額と一致する送金があったこと、  さらに、男性の携帯電話に暗証番号が記録された痕  跡があったことなどから、夫婦の口座から1500  万円を引き出したのは男性と認定し、全額を支払う  よう命じました。   事件発覚当時、男性は、窃盗の疑いで警察に逮捕  されましたが、和歌山区検察庁は、嫌疑不十分で  不起訴処分としていました。

 

金沢市役所前広場の使用不許可

 <憲法記念日の集会>

     憲法集会で市役所前広場
     の使用認めず 金沢市
      NHK 4月21日

  金沢市市民グループが、来月3日の憲法記念日
 に市役所前の広場で憲法に関する集会を計画し、
 広場の使用を申請したところ、金沢市は特定の政策
 や主義に対し威力や気勢を示す行為に当たるとして
 認めなかったことがわかりました。

  金沢市市民グループ、石川県憲法を守る会は、
 憲法記念日に合わせて市役所前の広場で、憲法施行
 70周年集会を計画し、先月末、広場を管理する
 金沢市に使用を申請しました。

  これに対し市は、特定の政策や主義に対し威力や
 気勢を示す行為に当たり、施設の管理規則で禁じら
 れていると判断し、今月14日、広場の使用を認め
 ませんでした。


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 <広場使用を許可しない理由>

  市の中立性という立場から、庁舎管理に支障があると
 説明しているが、何を意味するのかよく分からない。

 憲法集会だから、憲法を守ろうと主張し改憲を阻止する
 と大きな声を上げることがあろう。そういう行動を公共
 的な広場で認めることができないとは、おかしな話。

  政治的な批判が好ましくないというのは理解できない。
 むしろ、金沢市が積極的に憲法を守る集会を主催しても
 よかろう。

 逆に改憲を主張する団体が集まっても、それだけで不許
 可とする理由にならないだろう。



 <施設利用の許可、不許可>

  行政施設の使用を許可するか否か、管理者の判断
 が裁量権の逸脱又は濫用として違法となるのは、
 判断過程に合理性を欠くか、その判断が社会通念に
 照らし著しく妥当性を欠く場合である。

  (最高裁 平成18年2月7日 判決)


  この裁判では、妨害行動などにより施設の周辺や地域
 に混乱を招き管理に支障を来すことが予想されるとする
 理由で行われた不許可処分は、考慮した事項に対する
 評価が合理性を欠いており、他方当然考慮すべき事項を
 十分考慮しておらず、結果社会通念に照らし著しく妥当
 性を欠いたものと断定している。



 <市役所前広場の利用>

  憲法集会で使用を申請した市役所前広場は、金沢市
 庁舎の敷地ではあるが面積は4000㎡と広大で、イベント
 等に使用できる広場として整備されているという。

 従って、公民館等と同様に公衆の共同使用を目的とした
 公共的な広場という性質を併せ持つ公の施設といえる。

 この使用許可については、市庁舎管理規則だけでなく、
 地方自治法の規定に基づかなければならない。

 正当な理由がないのに施設を利用することを拒否する
 こと、不当な差別的取扱いをすることは許されない。



 <施設管理の支障>

  公の施設について、管理に支障があるという場合
 は許可権者の主観により予測されるだけでなく、
 客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測され
 る場合に初めて、使用を許可しないことができると
 いう裁判事例がある。

 (最高裁 平成8年3月15日 判決)


  市の説明では、政治への批判や拡声機、プラカード
 などを使うことを指摘している。

 過去の事例で、施設使用の不許可を妥当とした裁判が
 あるが、このケースでは、主催者グループが違法な
 実力行使を繰り返し、暴力抗争を続けていた。

 暴力行使を伴う衝突が起こるなどの事態が客観的
 事実によって具体的に明らかに予見された、とし
 ており不許可の決定を限定的に是認している。


 公共の安全が損なわれる危険をいうには、明らか
 な差し迫った危険の発生が具体的に予見されること
 が必要との判断を示している。

 (最高裁 平成7年3月7日 判決)

 

地方創生とは稼ぐこと

    山本地方創生相「学芸員はがん。一掃を」
        毎日新聞 2017/04/16

  山本幸三地方創生担当相は16日、大津市での講演後、
 観光やインバウンドによる地方創生に関する質疑で、
 「一番のがんは文化学芸員だ。観光マインドが全く無く、
 一掃しないとだめだ」と述べた。

 法に基づく専門職員の存在意義を否定する発言で、波紋
 を広げそうだ。

  講演は滋賀県が主催し、山本氏は「地方創生とは稼ぐ
 こと」と定義して各地の優良事例を紹介した。

 発言は会場からの質問への回答。山本氏は京都市の世界
 遺産・二条城で英語の案内表示が以前は無かったこと
 などを指摘した上で、「文化財のルールで火も水も使え
 ない。花が生けられない、お茶もできない。そういうこ
 とが当然のように行われている」と述べ、学芸員を批判
 した。



 <学芸員の役割>

  今回の出来事によって、博物館等で学芸員がいかに
 重要な仕事をしているか広く知れ渡ることになった。

 学芸員の役割や文化遺産の保存、資料の収集、保管など
 の意義が理解できたことは、かえって効果的な発言とも
 言える。

  しかし、一大臣の個人的な問題ではなく、歴史や伝統
 を重んずるという政府の施策、実際の姿勢こそ問われて
 いる。



 <観光と文化財保存>

   文化と観光  経済効果ばかり見ないで
      京都新聞 2017年04月23日

  観光客が増え、文化資産や地域の文化環境が損なわれ
 る恐れは、繰り返し指摘されている。

  観光による、いわば「文化の商品化」で、文化の本質
 的な価値が失われかねない。文化保護と観光開発は往々
 にして相反する。そうした衝突を乗り越える理念が、
 「持続可能な文化観光」だ。世界遺産の諮問機関である
 国際記念物遺跡会議(イコモス)が打ち出している。

  文化観光は、体験する価値を保証する一方で、次世代
 のために持続可能な方法で文化資産を管理しなければ
 いけない、という考えだ。

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 <稼げるまちづくり>

  山本大臣が「地方創生とは稼ぐこと」と発言している
 が、これはこの政府が全体で取り組んでいる総合戦略
 です。


     稼げるまちづくり取組事例集
     平成29年3月31日
     内閣府地方創生推進事務局

  平成28年12月12日に閣議決定された「まち・ひと・
 しごと創生総合戦略2016改訂版」に基づき、地域の
 「稼ぐ力」や「地域価値」の向上を図る「稼げるまち
 づくり」を推進するため、地方都市における「稼げる
 まちづくり」の有望事例を紹介する事例集「地域の
 チャレンジ100」を取りまとめた。 


     倉吉市のレトロ&クール
     「稼げるまち」国のお墨付き
     日本海新聞 2017年4月3日

  内閣府の「稼げるまちづくり取組事例集『地域のチャ
 レンジ100』」の有望事例として、鳥取県倉吉市の
 「白壁土蔵の街並み(レトロ)とポップカルチャー
 (クール)を組み合わせた集客拡大」が選ばれた。

  市が進める「レトロ&クールツーリズム」が、国から
 お墨付きをもらったかたちだ。



 <地方創生の政策>

  東京一極集中のために地方の人口が減少し、地方都市
 の衰退が日本全体を沈滞させると、認識されたために
 集中是正が課題とされてきた。

  このため、国は政府関係機関の地方移転、民間企業の
 本社機能を地方にということを掲げていたが、無力にも
 失速した。

  しかも、政府機関の移転は、国が積極的に決めるべき
 であるのに、対象機関を地方に選ばせて自治体がメリット
 を説明しなければならないという手法を採った。



 <地方の衰退>

  地方創生の「稼げるまちづくり」も、政府機関の移転
 と同様に国よりも地方に努力を求めるという逆転した考
 えであろう。

  集積の経済といわれ、人口が多い都市には多様なサー
 ビス産業が集まる。特に高度情報産業、金融サービス業
 は関連産業に波及し地域を活性化させる特徴があると
 説明されている。

  人口が少ない地方で産業を振興するといっても難しい。
 それは地方の問題ではないし、稼ぐ努力を求められる
 性質のものではない。

 

退職したいのに辞められない

 <退職者に不当な賠償請求>

     退職が理由の損賠請求は不当
     横浜地裁、男性の訴え一部認める
       神奈川新聞 2017/03/31

  精神疾患でやむなく退職したにもかかわらず、勤務先
  だった会社から退職を理由に約1270万円の損害賠償
 請求訴訟を起こされたのは不当として、北海道在住の男
 性が330万円の損害賠償を求めて反訴した訴訟の判決
 で、横浜地裁は30日、男性の請求を一部認めて会社に
 110万円の支払いを命じた。

  判決によると、男性は2014年4月鎌倉市のソフト
 ウエア会社に入社。精神疾患を理由に同年12月に自主
 退職した。会社側は15年5月、詐病で一方的に退職さ
 れたため損害を被ったとして提訴。

 男性は、どう喝のような提訴で精神疾患の病状がさらに
 悪化したと訴え反訴した。

  石橋裁判長は判決理由で、男性に詐病はなく、退職と
 会社側の主張する損害に因果関係は認められないと指摘。

 その上で、「月収の5年分以上もの大金を賠償請求する
 ことは、裁判制度の趣旨に照らして著しく相当性を欠く」
 と述べ、提訴を違法行為と認めた。



 <辞めたら損害賠償を請求する>

  精神疾患で退職されたとなれば、会社のイメージが
 悪化すると考えたのか、退職者に巨額の損害賠償を請求
 したというニュースです。

 結果は全く逆に、裁判制度を悪用した不当請求と認めて
 退職した元社員への支払いを命じられた。

    最近では、「退職者への報復で損害賠償請求を提起す
 る例が増えている。労働者を萎縮させ、辞めたいのに辞
 められないという被害を生む要因となる」と弁護士が解
 説している。

  「アルバイトでも辞められない」という相談があると
 いう。塾講師のバイトで「年度途中に辞めたら損害賠償
 を請求する。生徒の責任を最後まで見てください」と
 いう悪質な例も紹介されている。

 

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 <いつでも解約できる>   2週間の予告期間が必要であるが、期間の定めのない  雇用契約では、いつでも解約できる。(民法627条)   ただし、アルバイトなどの有期雇用契約では、契約期  間中の中途解約には制限があり、「やむを得ない事由」  が必要となる。期間の満了により契約終了とするのが  原則になっている。  <使用者側の解雇権>   一方、企業に対して労働者はきわめて弱い立場にある  ために労働者保護の規制がある。  使用者側からの解約は制限され、解雇権の濫用は無効と  なっている。   解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上   相当であると認められない場合は、その権利を濫用   したものとして、無効とする。(労働契約法16条)  <内部告発の元職員に賠償請求>     虐待通報の職員に施設が賠償請求     埼玉、鹿児島の障害者施設       47NEWS 2015年11月22日   障害者の通所施設で虐待の疑いに気付き自治体に内部  告発した職員が、施設側から名誉毀損などを理由に損害  賠償を求められるケースが埼玉県と鹿児島県で起きてい  ることが22日、分かった。   障害者虐待防止法では、虐待の疑いを発見した職員は  市町村に通報する義務がある。通報したことで解雇など  不利益な扱いを受けないことも定めており、施設側の  対応に法曹関係者らから「法の理念を無視する行為であ  り、職員が萎縮して虐待が闇に葬られてしまう」と批判  が出ている。   ⇒   このうち、鹿児島市の施設を内部告発した元職員が  反訴して、損害賠償を請求する訴訟を起こした、と報道  されている。(時事通信 2016/12/09)  「障害者への虐待を内部告発したところ、施設運営会社   から損害賠償を求める訴訟を起こされ精神的苦痛を受   けたとして、元職員が9日、運営会社などを相手取り   約250万円の損害賠償を求める訴訟を鹿児島地裁に   起こした。」

 

忖度する人とされる人

 <忖度を上司は知らない>

  忖度(そんたく)という言葉が話題になっている。

 他人の気持ちを推し量ることに過ぎないが、今議論され
 ているのは官僚が上司の意向を伺って先回りの行動を
 すること。首尾よく運べば評価が良くなる。

  しかし、問題は失敗や不正などが疑われた場合にどう
 扱うかということになる。

  専門家の説明によると、(1)忖度をされる上司は知ら
 ない。

 (2)忖度で不正、不当な行為は行われない。

 (3)不正、不当な行為となった場合は、勝手にした者
 が悪いだけになる。

  この説明で納得できないのは、(1)上司に認められる
 ためには、結果も途中経過も気付いてもらわなければ
 意味がない。

 (2)責任は下位者が負うことになるからといって、誰も
 がする常識的な行動で、高い評価がもらえるか。

  一番の問題は、忖度して行った結果が失敗して不正な
 どの追及を受ける場合。(3)勝手にした者が悪いだけと
 いうことになるのか。
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 <使用者と労働者>   労働事件では、上司の黙認ということがよく争点に  なっている。  残業時間の割増賃金にも、労災認定の際の労働時間に  ついて争いになる場合にも、裁判所は明示と黙示をほぼ  同等に扱っているのではないか。   就業規則等に、残業許可制を定めている場合や上司が  口頭で残業を禁止していることがある。  ところが、従業員が残業をしているのを黙認、放置して  いる場合、使用者の黙示の命令があったとみなされて  いる。  また、業務上の必要がある、残業をせざるを得ない状況  であるのに、残業を許可しないという場合にも同様に  扱われる。  <黙認の重さ>   上司が部下に対してする「黙認」がどう扱われるかと  いう問題がある。  口頭や書面で明示しない場合に、何も関係なしとされる  かというと、そうではない。   労働事件だけではない。「黙認」を軽く扱われない  ことがある。  法律によって違うだろうが、刑事事件においても「黙示  的な意思連絡があった」、「黙示の依頼があった」と  認定して有罪判決をしている事例がある。  <犯罪の黙認>   2度目差し戻し審で懲役6年=組員銃所持、   元幹部の共謀認定 大阪地裁       時事通信 2017/03/24   警護役の組員に拳銃を持たせたとして、銃刀法違反  (共同所持)罪に問われた指定暴力団の元幹部滝沢孝  被告の差し戻し審判決が大阪地裁であった。   芦高裁判長は「滝沢被告が抗争相手から襲撃される  危険を認識し、組員の銃所持を当然として受け入れて  いたと推認できる」と指摘。  同被告と組員との間で黙示的な意思連絡があったとし  て共謀を認めた。    飲酒運転同乗に有罪判決    懲役1年10月執行猶予4年     読売新聞 2012/07/06  *地裁、「暗に依頼」認定   長野市で昨年(2011)11月、女性2人が飲酒運転の  車にはねられて死傷したひき逃げ事件で、当時19歳  の元少年の飲酒運転と知りながら同乗したとして、  道交法違反(酒気帯び運転同乗)に問われた同市三輪、  無職宮沢翔幸被告の判決が5日、長野地裁であった。   高木順子裁判官は、被告が言葉に出さずに暗に運転  を依頼した場合も同法が適用されると認定し、懲役  1年10月、執行猶予4年を言い渡した。   判決は、飲酒運転への同乗を重く罰する立法趣旨  も検討し、「送ってほしいという被告の意図を運転者  が了解しており、明示的な依頼の言葉はなかったが、  『黙示の依頼』があったと認定するべきだ」と判断  した。

 

県知事の反対に国が賠償請求

 <国が県知事に賠償請求>

      辺野古移設、国と県神経戦
     「賠償請求」で沖縄けん制 政府
        時事通信 2017/03/27

  米軍普天間飛行場移設先の埋め立て承認の撤回を表明
 した同県の翁長雄志知事に対し、菅義偉官房長官は27
 日、損害賠償請求訴訟を起こす可能性に言及した。

 移設阻止を掲げてあらゆる強硬手段を辞さない構えの
 翁長氏に対し、再考を促す思惑も透ける。国と県の争い
 は、再び法廷に持ち込まれる可能性もはらみつつ、神経
 戦の様相を呈している。



 <ネットの反応>

  翁長知事に賠償請求の可能性も
  フジテレビ系(FNN) 3/27


  この記事に対して、支持が圧倒的に多いが、次のよう
 なコメントもある。  


 (コメントの例)

  *私たちの税金が翁長のおかげでどれだけ無駄に
   されたか! 賠償請求するべきです!

  *この件だけでなく、これまでの沖縄県、反体制
   派による妨害で余計にかかった工事経費すべて、
   翁長知事と沖縄県、反体制団体に賠償請求して
   ください。那覇空港滑走路増設工事も含めて。

  *というより逮捕、懲役にしてほしい。(賛成86:9)



 <勝訴後の抵抗に備え>

  ちなみに、沖縄県知事の埋め立て承認取り消しに対し
 て国が起こした訴訟中にも、次のような報道がされた。

   政府、辺野古沖縄県に損害賠償請求を検討
   国勝訴後の抵抗に備え
        産経新聞 2016/12/11

  政府が、米軍普天間飛行場名護市辺野古移設に関す
 る沖縄県との対立をめぐり、県に対する損害賠償請求を
 行う検討に入ったことが10日、明らかになった。

  翁長雄志知事の埋め立て承認取り消しについて、最高
 裁で政府側勝訴が確定した後も翁長氏が移設に抵抗を続
 ける場合を念頭に置く。抵抗は政府と県が交わした和解
 条項に反し、翁長氏が想定する対抗手段は知事権限の
 乱用と位置づける。

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 <表現の自由を抑制>   この対応について、新聞もテレビも発表の内容を伝え  るだけで、その意味合いや影響などに触れていない。  尋常でないと思えるが、民主主義国では「スラップ訴訟」  として、問題にされるという。   ウィキペディアによると、  スラップ訴訟とは   威圧訴訟、恫喝訴訟は訴訟の形態の一つで、大企業や  政府などの優越者が公の場での発言や政府・自治体など  の対応を求めて行動を起こした権力を持たない比較弱者  や個人・市民・被害者に対して、恫喝・発言封じなどの  威圧的、恫喝的あるいは報復的な目的で起こす訴訟。   被告となった反対勢力は、法廷準備費用・時間的拘束  などの負担を強いられるため、訴えられた本人だけで  なく、訴えられることの怖さから、他の市民・被害者や  メディアの言論や行動までもが委縮し、さらには被害者  の泣き寝入りも誘発され、証人の確保さえ難しくなる。  仮に原告が敗訴しても、主目的となる嫌がらせは達成さ  れることになる。そのため、原告よりも経済的に力の劣  る個人が標的になる。あえて批判するメディアを訴えず  に、取材対象者である市民を訴える例もある。   そのため、表現の自由を揺るがす行為として欧米を  中心に問題化しており、スラップを禁じる法律を制定し  た自治体もある(カリフォルニア州。「反SLAPP法」に  基づき、被告側が提訴をスラップであると反論して認め  られれば公訴は棄却され、訴訟費用の負担義務は原告側  に課される)。