契約約款の規定など民法を改正
<契約関係の民法改正> 改正民法、消費者保護に力点 明治以来の大改正 時事ドットコム 2017/05/26 改正の目玉は、インターネット通販サービスの利用 規約など、事業者が不特定多数の利用者と契約を結ぶ際 に用いられる「約款」の項目の創設だ。 膨大で難解な約款を利用者が読み飛ばすことも多く、 解約時に意図せぬ違約金を請求されたり、一方的な約款 変更で料金が値上げされたりといった消費者トラブルが 相次いでいる。 このため、「消費者の利益を一方的に害する」条項は 無効であることを明記。内容変更は限定的に容認する。 保険や銀行預金など契約が長期にわたる業態に配慮し、 消費者利益への適合性と、必要性や妥当性などの事情に 照らして合理的な場合は可能とした。 約款に関するルールを確立することで、「利用者が 約款を読まないことを前提にした悪質な事業者を抑止 する」(法務省)のが狙い。ただ、経済界は利便性の 高い約款への規制強化に抵抗したため、「利益を一方的 に害する」以上の具体的な規制は見送られた。 <改正の特徴> 「大改正」と報道されているが、契約ルールを明文化 して、一般に分かりやすくするのが目的だという。 特に大きな変化が起こるというものではなく、裁判など で長い間に練られ、既に定着したものが法律になる。 この改正の中で、日ごろの生活に関係するのが約款に ついて新たに規定されることです。 約款は保険、運送、銀行取引などにおいて、多数の 顧客と同じ内容の契約を締結する際に用いられる、統一 した様式の契約条項。
<約款についてトラブル> 約款の内容については、契約の一方である企業などが 意図するところを作成して顧客に示すだけであって交渉 の余地がない。 細かく、難しい条項を読むということも少ないので、後 でトラブルになり易い。免責条項や解約条項、違約金 など顧客が不利益を受けることが問題になっている。 今回改正の法律に、消費者が一方的に不利になる内容 の条項は無効とする、と規定される。 ただし、契約であることを消費者に示されて、合意すれ ば内容を理解していなくても契約が成立すると明記される。 約款の免責条項が有効かが争われたケースで、最近 話題になった裁判で判断が出されています。 札幌ドームでプロ野球の試合中にファウルボールが 観客に当たり、女性が失明した事故で球団に損害賠償を 求めた裁判の控訴審判決です。 <約款について争われた事例> 平成28年5月20日 札幌高裁 判決 争点(免責条項適用の有無)について (1) 控訴人ファイターズは、被控訴人との 間においては、契約約款中の本件免責 条項により主催者及び球場管理者は、 観客が被ったファウルボールに起因する 損害について責任を負わない旨の合意が 成立していた。 従って、控訴人ファイターズは本件事故 について責任を負わない旨主張する。 (2) しかしながら、以下のとおり本件に おいて上記合意が成立したとは認められ ない。 本件のような具体的な法的紛争において て免責条項による法的効果を主張する ためには、 観客である被控訴人において、その条項 を現実に了解しているか、仮に具体的な 了解はないとしても了解があったものと 推定すべき具体的な状況があったことが 必要である。 本件においてはかかる状況は認められ ない。
刑事裁判で無罪、民事では損害賠償
<教え子殺害で賠償請求> 「嘱託殺人納得できぬ」遺族が提訴 教え子殺害、元准教授に賠償求める 福井新聞 2017年3月22日 福井県勝山市で2015年3月、赤トンボの研究 をしていた東邦大の大学院生菅原みわさん=当時 (25)=が絞殺された事件で、菅原さんの遺族が 22日までに、殺害した元福井大大学院特命准教授 の前園泰徳受刑者に計1億2223万円の損害賠償 を求めて千葉地裁に提訴した。 前園受刑者は15年4月、教え子の菅原さんを 殺害したとして殺人罪で起訴されたが、福井地裁の 裁判員裁判の判決では嘱託殺人罪が適用され同9月、 懲役3年6月(求刑懲役13年)が言い渡された。 福井地検、被告とも控訴せず判決が確定した。 今回の訴状では、「嘱託を裏付ける証拠が無い。 被告は秘密裏にしていた不倫関係が公になれば、 地位や名誉、家族を失うのでないかと恐れた。被告 に被害者を殺害する動機があった」などと主張して おり、民事裁判でも再び嘱託の有無が争点になる とみられる。
<刑事で無罪、民事は敗訴の事例> 「疑わしきは罰せず」といわれて、刑事裁判では 厳しい証明が求められる。被告人を有罪とするには 疑問が残るという場合は無罪判決にならざるを得な という。 一方、民事裁判の証明は、「通常人が疑いを差し 挟まない程度に真実」と確信できることが基準に なっている。 一般人の常識的な考えに近い判断がされている。 そのために、同じ事件でも民事と刑事の裁判で異な る結論が出ることがあるとされ、次のような事例が ある。 *低血糖による意識障害でひき逃げ事故 横浜地裁 平成24年3月21日 判決 無罪 (低血糖による意識障害に陥り、事故の 認識があったか疑問が残る) 東京地裁 平成25年3月7日 判決 死亡した高校生の遺族に損害賠償を命令 (血糖値の管理を怠る過失があった) *浦安市立小学校の児童虐待事件 千葉地裁 平成17年4月28日 判決 無罪 (犯罪の時間と場所が特定できない) 千葉地裁 平成20年12月24日 判決 浦安市と県に賠償命令 (証言は内容も具体的で迫真性がある)
<教え子殺害事件の特殊性> 元准教授側は争う姿勢であると報道され、嘱託殺人罪 は刑事裁判でも認められているから責任を問われないと のコメントが紹介されている。 一方、遺族側は嘱託殺人罪の認定に納得していない。 被害者の殺害嘱託はなく、単純殺人罪が成立することを 主張立証していくという。 先の刑事裁判の判決は嘱託殺人罪を適用し、懲役3年 6月を言い渡した。判決理由は、「自殺の意思を有して いた可能性は否定できない」「嘱託がなかったと認定す るには合理的な疑いが残る」となっている。 裁判所も、単純殺人罪が成立する可能性が高いが、嘱 託殺人罪を否定することができないという刑事裁判の 原則に基づく結論になった。 従って、嘱託殺人罪でも実刑であり量刑はかなり重いの であろう、検察側も控訴せず判決が確定している。 今回の民事裁判は、損害賠償を請求するものであり、 「嘱託殺人か、単純殺人罪が成立するか」の争い以前に、 殺人を実行して被害者は帰らないという事実は動かない。 しかも、老人介護や病苦による嘱託殺人とは全く異な るから、損害賠償の請求は相当程度認められるのでは ないか。 刑事裁判の裁判長は、「後先を深く考えない軽はずみな 行為で、強い非難は免れない」と述べたと報道されて いる。 <刑事事件で不起訴、民事で賠償命令> 男性に1500万円の支払い命令 テレビ和歌山 2017-03-28 一昨年、紀の川市に住む老夫婦がキャッシュカー ドを使い、現金1500万円を不正に引き出された として日本郵便の男性に対し損害賠償を求めていた 民事裁判の判決が27日あり、和歌山地方裁判所は 男性に全額返還を命じる判決を言い渡しました。 事件発覚当時、男性は窃盗の疑いで警察に逮捕され ましたが、刑事事件としては嫌疑不十分で、不起訴 処分となっていました。 判決を受けたのは、紀の川市に住む43歳の男性 です。判決によりますと、平成26年10月ごろ、 当時、郵便局の渉外担当として紀の川市の夫婦と親 密な関係にあった男性は、夫婦から言葉巧みに暗証 番号を聞き出し、キャッシュカードを持ち出して、 現金1500万円を無断で引き出したものです。 27日の裁判で、和歌山地方裁判所の山下隼人 裁判官は、キャッシュカードの暗証番号を入手した 時期と、夫婦の口座から初めて出金があった時期が 極めて近かったことや、男性が当時、外国為替証拠 金取引口座へ、被害額と一致する送金があったこと、 さらに、男性の携帯電話に暗証番号が記録された痕 跡があったことなどから、夫婦の口座から1500 万円を引き出したのは男性と認定し、全額を支払う よう命じました。 事件発覚当時、男性は、窃盗の疑いで警察に逮捕 されましたが、和歌山区検察庁は、嫌疑不十分で 不起訴処分としていました。
金沢市役所前広場の使用不許可
<憲法記念日の集会> 憲法集会で市役所前広場 の使用認めず 金沢市 NHK 4月21日 金沢市の市民グループが、来月3日の憲法記念日 に市役所前の広場で憲法に関する集会を計画し、 広場の使用を申請したところ、金沢市は特定の政策 や主義に対し威力や気勢を示す行為に当たるとして 認めなかったことがわかりました。 金沢市の市民グループ、石川県憲法を守る会は、 憲法記念日に合わせて市役所前の広場で、憲法施行 70周年集会を計画し、先月末、広場を管理する 金沢市に使用を申請しました。 これに対し市は、特定の政策や主義に対し威力や 気勢を示す行為に当たり、施設の管理規則で禁じら れていると判断し、今月14日、広場の使用を認め ませんでした。
<広場使用を許可しない理由> 市の中立性という立場から、庁舎管理に支障があると 説明しているが、何を意味するのかよく分からない。 憲法集会だから、憲法を守ろうと主張し改憲を阻止する と大きな声を上げることがあろう。そういう行動を公共 的な広場で認めることができないとは、おかしな話。 政治的な批判が好ましくないというのは理解できない。 むしろ、金沢市が積極的に憲法を守る集会を主催しても よかろう。 逆に改憲を主張する団体が集まっても、それだけで不許 可とする理由にならないだろう。 <施設利用の許可、不許可> 行政施設の使用を許可するか否か、管理者の判断 が裁量権の逸脱又は濫用として違法となるのは、 判断過程に合理性を欠くか、その判断が社会通念に 照らし著しく妥当性を欠く場合である。 (最高裁 平成18年2月7日 判決) この裁判では、妨害行動などにより施設の周辺や地域 に混乱を招き管理に支障を来すことが予想されるとする 理由で行われた不許可処分は、考慮した事項に対する 評価が合理性を欠いており、他方当然考慮すべき事項を 十分考慮しておらず、結果社会通念に照らし著しく妥当 性を欠いたものと断定している。 <市役所前広場の利用> 憲法集会で使用を申請した市役所前広場は、金沢市 庁舎の敷地ではあるが面積は4000㎡と広大で、イベント 等に使用できる広場として整備されているという。 従って、公民館等と同様に公衆の共同使用を目的とした 公共的な広場という性質を併せ持つ公の施設といえる。 この使用許可については、市庁舎管理規則だけでなく、 地方自治法の規定に基づかなければならない。 正当な理由がないのに施設を利用することを拒否する こと、不当な差別的取扱いをすることは許されない。 <施設管理の支障> 公の施設について、管理に支障があるという場合 は許可権者の主観により予測されるだけでなく、 客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測され る場合に初めて、使用を許可しないことができると いう裁判事例がある。 (最高裁 平成8年3月15日 判決) 市の説明では、政治への批判や拡声機、プラカード などを使うことを指摘している。 過去の事例で、施設使用の不許可を妥当とした裁判が あるが、このケースでは、主催者グループが違法な 実力行使を繰り返し、暴力抗争を続けていた。 暴力行使を伴う衝突が起こるなどの事態が客観的 事実によって具体的に明らかに予見された、とし ており不許可の決定を限定的に是認している。 公共の安全が損なわれる危険をいうには、明らか な差し迫った危険の発生が具体的に予見されること が必要との判断を示している。 (最高裁 平成7年3月7日 判決)
地方創生とは稼ぐこと
山本地方創生相「学芸員はがん。一掃を」 毎日新聞 2017/04/16 山本幸三地方創生担当相は16日、大津市での講演後、 観光やインバウンドによる地方創生に関する質疑で、 「一番のがんは文化学芸員だ。観光マインドが全く無く、 一掃しないとだめだ」と述べた。 法に基づく専門職員の存在意義を否定する発言で、波紋 を広げそうだ。 講演は滋賀県が主催し、山本氏は「地方創生とは稼ぐ こと」と定義して各地の優良事例を紹介した。 発言は会場からの質問への回答。山本氏は京都市の世界 遺産・二条城で英語の案内表示が以前は無かったこと などを指摘した上で、「文化財のルールで火も水も使え ない。花が生けられない、お茶もできない。そういうこ とが当然のように行われている」と述べ、学芸員を批判 した。 <学芸員の役割> 今回の出来事によって、博物館等で学芸員がいかに 重要な仕事をしているか広く知れ渡ることになった。 学芸員の役割や文化遺産の保存、資料の収集、保管など の意義が理解できたことは、かえって効果的な発言とも 言える。 しかし、一大臣の個人的な問題ではなく、歴史や伝統 を重んずるという政府の施策、実際の姿勢こそ問われて いる。 <観光と文化財保存> 文化と観光 経済効果ばかり見ないで 京都新聞 2017年04月23日 観光客が増え、文化資産や地域の文化環境が損なわれ る恐れは、繰り返し指摘されている。 観光による、いわば「文化の商品化」で、文化の本質 的な価値が失われかねない。文化保護と観光開発は往々 にして相反する。そうした衝突を乗り越える理念が、 「持続可能な文化観光」だ。世界遺産の諮問機関である 国際記念物遺跡会議(イコモス)が打ち出している。 文化観光は、体験する価値を保証する一方で、次世代 のために持続可能な方法で文化資産を管理しなければ いけない、という考えだ。
<稼げるまちづくり> 山本大臣が「地方創生とは稼ぐこと」と発言している が、これはこの政府が全体で取り組んでいる総合戦略 です。 稼げるまちづくり取組事例集 平成29年3月31日 内閣府地方創生推進事務局 平成28年12月12日に閣議決定された「まち・ひと・ しごと創生総合戦略2016改訂版」に基づき、地域の 「稼ぐ力」や「地域価値」の向上を図る「稼げるまち づくり」を推進するため、地方都市における「稼げる まちづくり」の有望事例を紹介する事例集「地域の チャレンジ100」を取りまとめた。 倉吉市のレトロ&クール 「稼げるまち」国のお墨付き 日本海新聞 2017年4月3日 内閣府の「稼げるまちづくり取組事例集『地域のチャ レンジ100』」の有望事例として、鳥取県倉吉市の 「白壁土蔵の街並み(レトロ)とポップカルチャー (クール)を組み合わせた集客拡大」が選ばれた。 市が進める「レトロ&クールツーリズム」が、国から お墨付きをもらったかたちだ。 <地方創生の政策> 東京一極集中のために地方の人口が減少し、地方都市 の衰退が日本全体を沈滞させると、認識されたために 集中是正が課題とされてきた。 このため、国は政府関係機関の地方移転、民間企業の 本社機能を地方にということを掲げていたが、無力にも 失速した。 しかも、政府機関の移転は、国が積極的に決めるべき であるのに、対象機関を地方に選ばせて自治体がメリット を説明しなければならないという手法を採った。 <地方の衰退> 地方創生の「稼げるまちづくり」も、政府機関の移転 と同様に国よりも地方に努力を求めるという逆転した考 えであろう。 集積の経済といわれ、人口が多い都市には多様なサー ビス産業が集まる。特に高度情報産業、金融サービス業 は関連産業に波及し地域を活性化させる特徴があると 説明されている。 人口が少ない地方で産業を振興するといっても難しい。 それは地方の問題ではないし、稼ぐ努力を求められる 性質のものではない。
退職したいのに辞められない
<退職者に不当な賠償請求> 退職が理由の損賠請求は不当 横浜地裁、男性の訴え一部認める 神奈川新聞 2017/03/31 精神疾患でやむなく退職したにもかかわらず、勤務先 だった会社から退職を理由に約1270万円の損害賠償 請求訴訟を起こされたのは不当として、北海道在住の男 性が330万円の損害賠償を求めて反訴した訴訟の判決 で、横浜地裁は30日、男性の請求を一部認めて会社に 110万円の支払いを命じた。 判決によると、男性は2014年4月鎌倉市のソフト ウエア会社に入社。精神疾患を理由に同年12月に自主 退職した。会社側は15年5月、詐病で一方的に退職さ れたため損害を被ったとして提訴。 男性は、どう喝のような提訴で精神疾患の病状がさらに 悪化したと訴え反訴した。 石橋裁判長は判決理由で、男性に詐病はなく、退職と 会社側の主張する損害に因果関係は認められないと指摘。 その上で、「月収の5年分以上もの大金を賠償請求する ことは、裁判制度の趣旨に照らして著しく相当性を欠く」 と述べ、提訴を違法行為と認めた。 <辞めたら損害賠償を請求する> 精神疾患で退職されたとなれば、会社のイメージが 悪化すると考えたのか、退職者に巨額の損害賠償を請求 したというニュースです。 結果は全く逆に、裁判制度を悪用した不当請求と認めて 退職した元社員への支払いを命じられた。 最近では、「退職者への報復で損害賠償請求を提起す る例が増えている。労働者を萎縮させ、辞めたいのに辞 められないという被害を生む要因となる」と弁護士が解 説している。 「アルバイトでも辞められない」という相談があると いう。塾講師のバイトで「年度途中に辞めたら損害賠償 を請求する。生徒の責任を最後まで見てください」と いう悪質な例も紹介されている。
<いつでも解約できる> 2週間の予告期間が必要であるが、期間の定めのない 雇用契約では、いつでも解約できる。(民法627条) ただし、アルバイトなどの有期雇用契約では、契約期 間中の中途解約には制限があり、「やむを得ない事由」 が必要となる。期間の満了により契約終了とするのが 原則になっている。 <使用者側の解雇権> 一方、企業に対して労働者はきわめて弱い立場にある ために労働者保護の規制がある。 使用者側からの解約は制限され、解雇権の濫用は無効と なっている。 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上 相当であると認められない場合は、その権利を濫用 したものとして、無効とする。(労働契約法16条) <内部告発の元職員に賠償請求> 虐待通報の職員に施設が賠償請求 埼玉、鹿児島の障害者施設 47NEWS 2015年11月22日 障害者の通所施設で虐待の疑いに気付き自治体に内部 告発した職員が、施設側から名誉毀損などを理由に損害 賠償を求められるケースが埼玉県と鹿児島県で起きてい ることが22日、分かった。 障害者虐待防止法では、虐待の疑いを発見した職員は 市町村に通報する義務がある。通報したことで解雇など 不利益な扱いを受けないことも定めており、施設側の 対応に法曹関係者らから「法の理念を無視する行為であ り、職員が萎縮して虐待が闇に葬られてしまう」と批判 が出ている。 ⇒ このうち、鹿児島市の施設を内部告発した元職員が 反訴して、損害賠償を請求する訴訟を起こした、と報道 されている。(時事通信 2016/12/09) 「障害者への虐待を内部告発したところ、施設運営会社 から損害賠償を求める訴訟を起こされ精神的苦痛を受 けたとして、元職員が9日、運営会社などを相手取り 約250万円の損害賠償を求める訴訟を鹿児島地裁に 起こした。」
忖度する人とされる人
<忖度を上司は知らない> 忖度(そんたく)という言葉が話題になっている。 他人の気持ちを推し量ることに過ぎないが、今議論され ているのは官僚が上司の意向を伺って先回りの行動を すること。首尾よく運べば評価が良くなる。 しかし、問題は失敗や不正などが疑われた場合にどう 扱うかということになる。 専門家の説明によると、(1)忖度をされる上司は知ら ない。 (2)忖度で不正、不当な行為は行われない。 (3)不正、不当な行為となった場合は、勝手にした者 が悪いだけになる。 この説明で納得できないのは、(1)上司に認められる ためには、結果も途中経過も気付いてもらわなければ 意味がない。 (2)責任は下位者が負うことになるからといって、誰も がする常識的な行動で、高い評価がもらえるか。 一番の問題は、忖度して行った結果が失敗して不正な どの追及を受ける場合。(3)勝手にした者が悪いだけと いうことになるのか。
<使用者と労働者> 労働事件では、上司の黙認ということがよく争点に なっている。 残業時間の割増賃金にも、労災認定の際の労働時間に ついて争いになる場合にも、裁判所は明示と黙示をほぼ 同等に扱っているのではないか。 就業規則等に、残業許可制を定めている場合や上司が 口頭で残業を禁止していることがある。 ところが、従業員が残業をしているのを黙認、放置して いる場合、使用者の黙示の命令があったとみなされて いる。 また、業務上の必要がある、残業をせざるを得ない状況 であるのに、残業を許可しないという場合にも同様に 扱われる。 <黙認の重さ> 上司が部下に対してする「黙認」がどう扱われるかと いう問題がある。 口頭や書面で明示しない場合に、何も関係なしとされる かというと、そうではない。 労働事件だけではない。「黙認」を軽く扱われない ことがある。 法律によって違うだろうが、刑事事件においても「黙示 的な意思連絡があった」、「黙示の依頼があった」と 認定して有罪判決をしている事例がある。 <犯罪の黙認> 2度目差し戻し審で懲役6年=組員銃所持、 元幹部の共謀認定 大阪地裁 時事通信 2017/03/24 警護役の組員に拳銃を持たせたとして、銃刀法違反 (共同所持)罪に問われた指定暴力団の元幹部滝沢孝 被告の差し戻し審判決が大阪地裁であった。 芦高裁判長は「滝沢被告が抗争相手から襲撃される 危険を認識し、組員の銃所持を当然として受け入れて いたと推認できる」と指摘。 同被告と組員との間で黙示的な意思連絡があったとし て共謀を認めた。 飲酒運転同乗に有罪判決 懲役1年10月執行猶予4年 読売新聞 2012/07/06 *地裁、「暗に依頼」認定 長野市で昨年(2011)11月、女性2人が飲酒運転の 車にはねられて死傷したひき逃げ事件で、当時19歳 の元少年の飲酒運転と知りながら同乗したとして、 道交法違反(酒気帯び運転同乗)に問われた同市三輪、 無職宮沢翔幸被告の判決が5日、長野地裁であった。 高木順子裁判官は、被告が言葉に出さずに暗に運転 を依頼した場合も同法が適用されると認定し、懲役 1年10月、執行猶予4年を言い渡した。 判決は、飲酒運転への同乗を重く罰する立法趣旨 も検討し、「送ってほしいという被告の意図を運転者 が了解しており、明示的な依頼の言葉はなかったが、 『黙示の依頼』があったと認定するべきだ」と判断 した。
県知事の反対に国が賠償請求
<国が県知事に賠償請求> 辺野古移設、国と県神経戦 「賠償請求」で沖縄けん制 政府 時事通信 2017/03/27 米軍普天間飛行場移設先の埋め立て承認の撤回を表明 した同県の翁長雄志知事に対し、菅義偉官房長官は27 日、損害賠償請求訴訟を起こす可能性に言及した。 移設阻止を掲げてあらゆる強硬手段を辞さない構えの 翁長氏に対し、再考を促す思惑も透ける。国と県の争い は、再び法廷に持ち込まれる可能性もはらみつつ、神経 戦の様相を呈している。 <ネットの反応> 翁長知事に賠償請求の可能性も フジテレビ系(FNN) 3/27 この記事に対して、支持が圧倒的に多いが、次のよう なコメントもある。 (コメントの例) *私たちの税金が翁長のおかげでどれだけ無駄に されたか! 賠償請求するべきです! *この件だけでなく、これまでの沖縄県、反体制 派による妨害で余計にかかった工事経費すべて、 翁長知事と沖縄県、反体制団体に賠償請求して ください。那覇空港滑走路増設工事も含めて。 *というより逮捕、懲役にしてほしい。(賛成86:9) <勝訴後の抵抗に備え> ちなみに、沖縄県知事の埋め立て承認取り消しに対し て国が起こした訴訟中にも、次のような報道がされた。 政府、辺野古で沖縄県に損害賠償請求を検討 国勝訴後の抵抗に備え 産経新聞 2016/12/11 政府が、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に関す る沖縄県との対立をめぐり、県に対する損害賠償請求を 行う検討に入ったことが10日、明らかになった。 翁長雄志知事の埋め立て承認取り消しについて、最高 裁で政府側勝訴が確定した後も翁長氏が移設に抵抗を続 ける場合を念頭に置く。抵抗は政府と県が交わした和解 条項に反し、翁長氏が想定する対抗手段は知事権限の 乱用と位置づける。
<表現の自由を抑制> この対応について、新聞もテレビも発表の内容を伝え るだけで、その意味合いや影響などに触れていない。 尋常でないと思えるが、民主主義国では「スラップ訴訟」 として、問題にされるという。 ウィキペディアによると、 スラップ訴訟とは 威圧訴訟、恫喝訴訟は訴訟の形態の一つで、大企業や 政府などの優越者が公の場での発言や政府・自治体など の対応を求めて行動を起こした権力を持たない比較弱者 や個人・市民・被害者に対して、恫喝・発言封じなどの 威圧的、恫喝的あるいは報復的な目的で起こす訴訟。 被告となった反対勢力は、法廷準備費用・時間的拘束 などの負担を強いられるため、訴えられた本人だけで なく、訴えられることの怖さから、他の市民・被害者や メディアの言論や行動までもが委縮し、さらには被害者 の泣き寝入りも誘発され、証人の確保さえ難しくなる。 仮に原告が敗訴しても、主目的となる嫌がらせは達成さ れることになる。そのため、原告よりも経済的に力の劣 る個人が標的になる。あえて批判するメディアを訴えず に、取材対象者である市民を訴える例もある。 そのため、表現の自由を揺るがす行為として欧米を 中心に問題化しており、スラップを禁じる法律を制定し た自治体もある(カリフォルニア州。「反SLAPP法」に 基づき、被告側が提訴をスラップであると反論して認め られれば公訴は棄却され、訴訟費用の負担義務は原告側 に課される)。