願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

刑事裁判で無罪、民事では損害賠償

 

 <教え子殺害で賠償請求>

   「嘱託殺人納得できぬ」遺族が提訴
    教え子殺害、元准教授に賠償求める
      福井新聞 2017年3月22日

  福井県勝山市で2015年3月、赤トンボの研究
 をしていた東邦大の大学院生菅原みわさん=当時
 (25)=が絞殺された事件で、菅原さんの遺族が

 22日までに、殺害した元福井大大学院特命准教授
 の前園泰徳受刑者に計1億2223万円の損害賠償
 を求めて千葉地裁に提訴した。

  前園受刑者は15年4月、教え子の菅原さんを
 殺害したとして殺人罪で起訴されたが、福井地裁の
 裁判員裁判の判決では嘱託殺人罪が適用され同9月、
 懲役3年6月(求刑懲役13年)が言い渡された。
 福井地検、被告とも控訴せず判決が確定した。

  今回の訴状では、「嘱託を裏付ける証拠が無い。
 被告は秘密裏にしていた不倫関係が公になれば、
 地位や名誉、家族を失うのでないかと恐れた。被告

 に被害者を殺害する動機があった」などと主張して
 おり、民事裁判でも再び嘱託の有無が争点になる
 とみられる。

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 <刑事で無罪、民事は敗訴の事例>   「疑わしきは罰せず」といわれて、刑事裁判では  厳しい証明が求められる。被告人を有罪とするには  疑問が残るという場合は無罪判決にならざるを得な  という。   一方、民事裁判の証明は、「通常人が疑いを差し  挟まない程度に真実」と確信できることが基準に  なっている。  一般人の常識的な考えに近い判断がされている。  そのために、同じ事件でも民事と刑事の裁判で異な  る結論が出ることがあるとされ、次のような事例が  ある。  *低血糖による意識障害でひき逃げ事故   横浜地裁 平成24年3月21日 判決   無罪   (低血糖による意識障害に陥り、事故の    認識があったか疑問が残る)   東京地裁 平成25年3月7日 判決   死亡した高校生の遺族に損害賠償を命令   (血糖値の管理を怠る過失があった)  *浦安市立小学校の児童虐待事件   千葉地裁 平成17年4月28日 判決   無罪   (犯罪の時間と場所が特定できない)   千葉地裁 平成20年12月24日 判決   浦安市と県に賠償命令   (証言は内容も具体的で迫真性がある)
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 <教え子殺害事件の特殊性>   元准教授側は争う姿勢であると報道され、嘱託殺人罪  は刑事裁判でも認められているから責任を問われないと  のコメントが紹介されている。   一方、遺族側は嘱託殺人罪の認定に納得していない。  被害者の殺害嘱託はなく、単純殺人罪が成立することを  主張立証していくという。   先の刑事裁判の判決は嘱託殺人罪を適用し、懲役3年  6月を言い渡した。判決理由は、「自殺の意思を有して  いた可能性は否定できない」「嘱託がなかったと認定す  るには合理的な疑いが残る」となっている。   裁判所も、単純殺人罪が成立する可能性が高いが、嘱  託殺人罪を否定することができないという刑事裁判の  原則に基づく結論になった。  従って、嘱託殺人罪でも実刑であり量刑はかなり重いの  であろう、検察側も控訴せず判決が確定している。   今回の民事裁判は、損害賠償を請求するものであり、  「嘱託殺人か、単純殺人罪が成立するか」の争い以前に、  殺人を実行して被害者は帰らないという事実は動かない。  しかも、老人介護や病苦による嘱託殺人とは全く異な  るから、損害賠償の請求は相当程度認められるのでは  ないか。  刑事裁判の裁判長は、「後先を深く考えない軽はずみな  行為で、強い非難は免れない」と述べたと報道されて  いる。  <刑事事件で不起訴、民事で賠償命令>     男性に1500万円の支払い命令      テレビ和歌山 2017-03-28 一昨年、紀の川市に住む老夫婦がキャッシュカー  ドを使い、現金1500万円を不正に引き出された  として日本郵便の男性に対し損害賠償を求めていた  民事裁判の判決が27日あり、和歌山地方裁判所は  男性に全額返還を命じる判決を言い渡しました。  事件発覚当時、男性は窃盗の疑いで警察に逮捕され  ましたが、刑事事件としては嫌疑不十分で、不起訴  処分となっていました。   判決を受けたのは、紀の川市に住む43歳の男性  です。判決によりますと、平成26年10月ごろ、  当時、郵便局の渉外担当として紀の川市の夫婦と親  密な関係にあった男性は、夫婦から言葉巧みに暗証  番号を聞き出し、キャッシュカードを持ち出して、  現金1500万円を無断で引き出したものです。   27日の裁判で、和歌山地方裁判所の山下隼人  裁判官は、キャッシュカードの暗証番号を入手した  時期と、夫婦の口座から初めて出金があった時期が  極めて近かったことや、男性が当時、外国為替証拠  金取引口座へ、被害額と一致する送金があったこと、  さらに、男性の携帯電話に暗証番号が記録された痕  跡があったことなどから、夫婦の口座から1500  万円を引き出したのは男性と認定し、全額を支払う  よう命じました。   事件発覚当時、男性は、窃盗の疑いで警察に逮捕  されましたが、和歌山区検察庁は、嫌疑不十分で  不起訴処分としていました。

 

金沢市役所前広場の使用不許可

 <憲法記念日の集会>

     憲法集会で市役所前広場
     の使用認めず 金沢市
      NHK 4月21日

  金沢市市民グループが、来月3日の憲法記念日
 に市役所前の広場で憲法に関する集会を計画し、
 広場の使用を申請したところ、金沢市は特定の政策
 や主義に対し威力や気勢を示す行為に当たるとして
 認めなかったことがわかりました。

  金沢市市民グループ、石川県憲法を守る会は、
 憲法記念日に合わせて市役所前の広場で、憲法施行
 70周年集会を計画し、先月末、広場を管理する
 金沢市に使用を申請しました。

  これに対し市は、特定の政策や主義に対し威力や
 気勢を示す行為に当たり、施設の管理規則で禁じら
 れていると判断し、今月14日、広場の使用を認め
 ませんでした。


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 <広場使用を許可しない理由>

  市の中立性という立場から、庁舎管理に支障があると
 説明しているが、何を意味するのかよく分からない。

 憲法集会だから、憲法を守ろうと主張し改憲を阻止する
 と大きな声を上げることがあろう。そういう行動を公共
 的な広場で認めることができないとは、おかしな話。

  政治的な批判が好ましくないというのは理解できない。
 むしろ、金沢市が積極的に憲法を守る集会を主催しても
 よかろう。

 逆に改憲を主張する団体が集まっても、それだけで不許
 可とする理由にならないだろう。



 <施設利用の許可、不許可>

  行政施設の使用を許可するか否か、管理者の判断
 が裁量権の逸脱又は濫用として違法となるのは、
 判断過程に合理性を欠くか、その判断が社会通念に
 照らし著しく妥当性を欠く場合である。

  (最高裁 平成18年2月7日 判決)


  この裁判では、妨害行動などにより施設の周辺や地域
 に混乱を招き管理に支障を来すことが予想されるとする
 理由で行われた不許可処分は、考慮した事項に対する
 評価が合理性を欠いており、他方当然考慮すべき事項を
 十分考慮しておらず、結果社会通念に照らし著しく妥当
 性を欠いたものと断定している。



 <市役所前広場の利用>

  憲法集会で使用を申請した市役所前広場は、金沢市
 庁舎の敷地ではあるが面積は4000㎡と広大で、イベント
 等に使用できる広場として整備されているという。

 従って、公民館等と同様に公衆の共同使用を目的とした
 公共的な広場という性質を併せ持つ公の施設といえる。

 この使用許可については、市庁舎管理規則だけでなく、
 地方自治法の規定に基づかなければならない。

 正当な理由がないのに施設を利用することを拒否する
 こと、不当な差別的取扱いをすることは許されない。



 <施設管理の支障>

  公の施設について、管理に支障があるという場合
 は許可権者の主観により予測されるだけでなく、
 客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測され
 る場合に初めて、使用を許可しないことができると
 いう裁判事例がある。

 (最高裁 平成8年3月15日 判決)


  市の説明では、政治への批判や拡声機、プラカード
 などを使うことを指摘している。

 過去の事例で、施設使用の不許可を妥当とした裁判が
 あるが、このケースでは、主催者グループが違法な
 実力行使を繰り返し、暴力抗争を続けていた。

 暴力行使を伴う衝突が起こるなどの事態が客観的
 事実によって具体的に明らかに予見された、とし
 ており不許可の決定を限定的に是認している。


 公共の安全が損なわれる危険をいうには、明らか
 な差し迫った危険の発生が具体的に予見されること
 が必要との判断を示している。

 (最高裁 平成7年3月7日 判決)

 

地方創生とは稼ぐこと

    山本地方創生相「学芸員はがん。一掃を」
        毎日新聞 2017/04/16

  山本幸三地方創生担当相は16日、大津市での講演後、
 観光やインバウンドによる地方創生に関する質疑で、
 「一番のがんは文化学芸員だ。観光マインドが全く無く、
 一掃しないとだめだ」と述べた。

 法に基づく専門職員の存在意義を否定する発言で、波紋
 を広げそうだ。

  講演は滋賀県が主催し、山本氏は「地方創生とは稼ぐ
 こと」と定義して各地の優良事例を紹介した。

 発言は会場からの質問への回答。山本氏は京都市の世界
 遺産・二条城で英語の案内表示が以前は無かったこと
 などを指摘した上で、「文化財のルールで火も水も使え
 ない。花が生けられない、お茶もできない。そういうこ
 とが当然のように行われている」と述べ、学芸員を批判
 した。



 <学芸員の役割>

  今回の出来事によって、博物館等で学芸員がいかに
 重要な仕事をしているか広く知れ渡ることになった。

 学芸員の役割や文化遺産の保存、資料の収集、保管など
 の意義が理解できたことは、かえって効果的な発言とも
 言える。

  しかし、一大臣の個人的な問題ではなく、歴史や伝統
 を重んずるという政府の施策、実際の姿勢こそ問われて
 いる。



 <観光と文化財保存>

   文化と観光  経済効果ばかり見ないで
      京都新聞 2017年04月23日

  観光客が増え、文化資産や地域の文化環境が損なわれ
 る恐れは、繰り返し指摘されている。

  観光による、いわば「文化の商品化」で、文化の本質
 的な価値が失われかねない。文化保護と観光開発は往々
 にして相反する。そうした衝突を乗り越える理念が、
 「持続可能な文化観光」だ。世界遺産の諮問機関である
 国際記念物遺跡会議(イコモス)が打ち出している。

  文化観光は、体験する価値を保証する一方で、次世代
 のために持続可能な方法で文化資産を管理しなければ
 いけない、という考えだ。

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 <稼げるまちづくり>

  山本大臣が「地方創生とは稼ぐこと」と発言している
 が、これはこの政府が全体で取り組んでいる総合戦略
 です。


     稼げるまちづくり取組事例集
     平成29年3月31日
     内閣府地方創生推進事務局

  平成28年12月12日に閣議決定された「まち・ひと・
 しごと創生総合戦略2016改訂版」に基づき、地域の
 「稼ぐ力」や「地域価値」の向上を図る「稼げるまち
 づくり」を推進するため、地方都市における「稼げる
 まちづくり」の有望事例を紹介する事例集「地域の
 チャレンジ100」を取りまとめた。 


     倉吉市のレトロ&クール
     「稼げるまち」国のお墨付き
     日本海新聞 2017年4月3日

  内閣府の「稼げるまちづくり取組事例集『地域のチャ
 レンジ100』」の有望事例として、鳥取県倉吉市の
 「白壁土蔵の街並み(レトロ)とポップカルチャー
 (クール)を組み合わせた集客拡大」が選ばれた。

  市が進める「レトロ&クールツーリズム」が、国から
 お墨付きをもらったかたちだ。



 <地方創生の政策>

  東京一極集中のために地方の人口が減少し、地方都市
 の衰退が日本全体を沈滞させると、認識されたために
 集中是正が課題とされてきた。

  このため、国は政府関係機関の地方移転、民間企業の
 本社機能を地方にということを掲げていたが、無力にも
 失速した。

  しかも、政府機関の移転は、国が積極的に決めるべき
 であるのに、対象機関を地方に選ばせて自治体がメリット
 を説明しなければならないという手法を採った。



 <地方の衰退>

  地方創生の「稼げるまちづくり」も、政府機関の移転
 と同様に国よりも地方に努力を求めるという逆転した考
 えであろう。

  集積の経済といわれ、人口が多い都市には多様なサー
 ビス産業が集まる。特に高度情報産業、金融サービス業
 は関連産業に波及し地域を活性化させる特徴があると
 説明されている。

  人口が少ない地方で産業を振興するといっても難しい。
 それは地方の問題ではないし、稼ぐ努力を求められる
 性質のものではない。

 

退職したいのに辞められない

 <退職者に不当な賠償請求>

     退職が理由の損賠請求は不当
     横浜地裁、男性の訴え一部認める
       神奈川新聞 2017/03/31

  精神疾患でやむなく退職したにもかかわらず、勤務先
  だった会社から退職を理由に約1270万円の損害賠償
 請求訴訟を起こされたのは不当として、北海道在住の男
 性が330万円の損害賠償を求めて反訴した訴訟の判決
 で、横浜地裁は30日、男性の請求を一部認めて会社に
 110万円の支払いを命じた。

  判決によると、男性は2014年4月鎌倉市のソフト
 ウエア会社に入社。精神疾患を理由に同年12月に自主
 退職した。会社側は15年5月、詐病で一方的に退職さ
 れたため損害を被ったとして提訴。

 男性は、どう喝のような提訴で精神疾患の病状がさらに
 悪化したと訴え反訴した。

  石橋裁判長は判決理由で、男性に詐病はなく、退職と
 会社側の主張する損害に因果関係は認められないと指摘。

 その上で、「月収の5年分以上もの大金を賠償請求する
 ことは、裁判制度の趣旨に照らして著しく相当性を欠く」
 と述べ、提訴を違法行為と認めた。



 <辞めたら損害賠償を請求する>

  精神疾患で退職されたとなれば、会社のイメージが
 悪化すると考えたのか、退職者に巨額の損害賠償を請求
 したというニュースです。

 結果は全く逆に、裁判制度を悪用した不当請求と認めて
 退職した元社員への支払いを命じられた。

    最近では、「退職者への報復で損害賠償請求を提起す
 る例が増えている。労働者を萎縮させ、辞めたいのに辞
 められないという被害を生む要因となる」と弁護士が解
 説している。

  「アルバイトでも辞められない」という相談があると
 いう。塾講師のバイトで「年度途中に辞めたら損害賠償
 を請求する。生徒の責任を最後まで見てください」と
 いう悪質な例も紹介されている。

 

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 <いつでも解約できる>   2週間の予告期間が必要であるが、期間の定めのない  雇用契約では、いつでも解約できる。(民法627条)   ただし、アルバイトなどの有期雇用契約では、契約期  間中の中途解約には制限があり、「やむを得ない事由」  が必要となる。期間の満了により契約終了とするのが  原則になっている。  <使用者側の解雇権>   一方、企業に対して労働者はきわめて弱い立場にある  ために労働者保護の規制がある。  使用者側からの解約は制限され、解雇権の濫用は無効と  なっている。   解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上   相当であると認められない場合は、その権利を濫用   したものとして、無効とする。(労働契約法16条)  <内部告発の元職員に賠償請求>     虐待通報の職員に施設が賠償請求     埼玉、鹿児島の障害者施設       47NEWS 2015年11月22日   障害者の通所施設で虐待の疑いに気付き自治体に内部  告発した職員が、施設側から名誉毀損などを理由に損害  賠償を求められるケースが埼玉県と鹿児島県で起きてい  ることが22日、分かった。   障害者虐待防止法では、虐待の疑いを発見した職員は  市町村に通報する義務がある。通報したことで解雇など  不利益な扱いを受けないことも定めており、施設側の  対応に法曹関係者らから「法の理念を無視する行為であ  り、職員が萎縮して虐待が闇に葬られてしまう」と批判  が出ている。   ⇒   このうち、鹿児島市の施設を内部告発した元職員が  反訴して、損害賠償を請求する訴訟を起こした、と報道  されている。(時事通信 2016/12/09)  「障害者への虐待を内部告発したところ、施設運営会社   から損害賠償を求める訴訟を起こされ精神的苦痛を受   けたとして、元職員が9日、運営会社などを相手取り   約250万円の損害賠償を求める訴訟を鹿児島地裁に   起こした。」

 

忖度する人とされる人

 <忖度を上司は知らない>

  忖度(そんたく)という言葉が話題になっている。

 他人の気持ちを推し量ることに過ぎないが、今議論され
 ているのは官僚が上司の意向を伺って先回りの行動を
 すること。首尾よく運べば評価が良くなる。

  しかし、問題は失敗や不正などが疑われた場合にどう
 扱うかということになる。

  専門家の説明によると、(1)忖度をされる上司は知ら
 ない。

 (2)忖度で不正、不当な行為は行われない。

 (3)不正、不当な行為となった場合は、勝手にした者
 が悪いだけになる。

  この説明で納得できないのは、(1)上司に認められる
 ためには、結果も途中経過も気付いてもらわなければ
 意味がない。

 (2)責任は下位者が負うことになるからといって、誰も
 がする常識的な行動で、高い評価がもらえるか。

  一番の問題は、忖度して行った結果が失敗して不正な
 どの追及を受ける場合。(3)勝手にした者が悪いだけと
 いうことになるのか。
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 <使用者と労働者>   労働事件では、上司の黙認ということがよく争点に  なっている。  残業時間の割増賃金にも、労災認定の際の労働時間に  ついて争いになる場合にも、裁判所は明示と黙示をほぼ  同等に扱っているのではないか。   就業規則等に、残業許可制を定めている場合や上司が  口頭で残業を禁止していることがある。  ところが、従業員が残業をしているのを黙認、放置して  いる場合、使用者の黙示の命令があったとみなされて  いる。  また、業務上の必要がある、残業をせざるを得ない状況  であるのに、残業を許可しないという場合にも同様に  扱われる。  <黙認の重さ>   上司が部下に対してする「黙認」がどう扱われるかと  いう問題がある。  口頭や書面で明示しない場合に、何も関係なしとされる  かというと、そうではない。   労働事件だけではない。「黙認」を軽く扱われない  ことがある。  法律によって違うだろうが、刑事事件においても「黙示  的な意思連絡があった」、「黙示の依頼があった」と  認定して有罪判決をしている事例がある。  <犯罪の黙認>   2度目差し戻し審で懲役6年=組員銃所持、   元幹部の共謀認定 大阪地裁       時事通信 2017/03/24   警護役の組員に拳銃を持たせたとして、銃刀法違反  (共同所持)罪に問われた指定暴力団の元幹部滝沢孝  被告の差し戻し審判決が大阪地裁であった。   芦高裁判長は「滝沢被告が抗争相手から襲撃される  危険を認識し、組員の銃所持を当然として受け入れて  いたと推認できる」と指摘。  同被告と組員との間で黙示的な意思連絡があったとし  て共謀を認めた。    飲酒運転同乗に有罪判決    懲役1年10月執行猶予4年     読売新聞 2012/07/06  *地裁、「暗に依頼」認定   長野市で昨年(2011)11月、女性2人が飲酒運転の  車にはねられて死傷したひき逃げ事件で、当時19歳  の元少年の飲酒運転と知りながら同乗したとして、  道交法違反(酒気帯び運転同乗)に問われた同市三輪、  無職宮沢翔幸被告の判決が5日、長野地裁であった。   高木順子裁判官は、被告が言葉に出さずに暗に運転  を依頼した場合も同法が適用されると認定し、懲役  1年10月、執行猶予4年を言い渡した。   判決は、飲酒運転への同乗を重く罰する立法趣旨  も検討し、「送ってほしいという被告の意図を運転者  が了解しており、明示的な依頼の言葉はなかったが、  『黙示の依頼』があったと認定するべきだ」と判断  した。

 

県知事の反対に国が賠償請求

 <国が県知事に賠償請求>

      辺野古移設、国と県神経戦
     「賠償請求」で沖縄けん制 政府
        時事通信 2017/03/27

  米軍普天間飛行場移設先の埋め立て承認の撤回を表明
 した同県の翁長雄志知事に対し、菅義偉官房長官は27
 日、損害賠償請求訴訟を起こす可能性に言及した。

 移設阻止を掲げてあらゆる強硬手段を辞さない構えの
 翁長氏に対し、再考を促す思惑も透ける。国と県の争い
 は、再び法廷に持ち込まれる可能性もはらみつつ、神経
 戦の様相を呈している。



 <ネットの反応>

  翁長知事に賠償請求の可能性も
  フジテレビ系(FNN) 3/27


  この記事に対して、支持が圧倒的に多いが、次のよう
 なコメントもある。  


 (コメントの例)

  *私たちの税金が翁長のおかげでどれだけ無駄に
   されたか! 賠償請求するべきです!

  *この件だけでなく、これまでの沖縄県、反体制
   派による妨害で余計にかかった工事経費すべて、
   翁長知事と沖縄県、反体制団体に賠償請求して
   ください。那覇空港滑走路増設工事も含めて。

  *というより逮捕、懲役にしてほしい。(賛成86:9)



 <勝訴後の抵抗に備え>

  ちなみに、沖縄県知事の埋め立て承認取り消しに対し
 て国が起こした訴訟中にも、次のような報道がされた。

   政府、辺野古沖縄県に損害賠償請求を検討
   国勝訴後の抵抗に備え
        産経新聞 2016/12/11

  政府が、米軍普天間飛行場名護市辺野古移設に関す
 る沖縄県との対立をめぐり、県に対する損害賠償請求を
 行う検討に入ったことが10日、明らかになった。

  翁長雄志知事の埋め立て承認取り消しについて、最高
 裁で政府側勝訴が確定した後も翁長氏が移設に抵抗を続
 ける場合を念頭に置く。抵抗は政府と県が交わした和解
 条項に反し、翁長氏が想定する対抗手段は知事権限の
 乱用と位置づける。

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 <表現の自由を抑制>   この対応について、新聞もテレビも発表の内容を伝え  るだけで、その意味合いや影響などに触れていない。  尋常でないと思えるが、民主主義国では「スラップ訴訟」  として、問題にされるという。   ウィキペディアによると、  スラップ訴訟とは   威圧訴訟、恫喝訴訟は訴訟の形態の一つで、大企業や  政府などの優越者が公の場での発言や政府・自治体など  の対応を求めて行動を起こした権力を持たない比較弱者  や個人・市民・被害者に対して、恫喝・発言封じなどの  威圧的、恫喝的あるいは報復的な目的で起こす訴訟。   被告となった反対勢力は、法廷準備費用・時間的拘束  などの負担を強いられるため、訴えられた本人だけで  なく、訴えられることの怖さから、他の市民・被害者や  メディアの言論や行動までもが委縮し、さらには被害者  の泣き寝入りも誘発され、証人の確保さえ難しくなる。  仮に原告が敗訴しても、主目的となる嫌がらせは達成さ  れることになる。そのため、原告よりも経済的に力の劣  る個人が標的になる。あえて批判するメディアを訴えず  に、取材対象者である市民を訴える例もある。   そのため、表現の自由を揺るがす行為として欧米を  中心に問題化しており、スラップを禁じる法律を制定し  た自治体もある(カリフォルニア州。「反SLAPP法」に  基づき、被告側が提訴をスラップであると反論して認め  られれば公訴は棄却され、訴訟費用の負担義務は原告側  に課される)。

 

財産の差し押さえと生活の保障

 <賠償金など不払い解消>

      養育費不払い解消へ新制度
      裁判所が口座照会
       共同通信 2016/9/12

  民事裁判で支払い義務が確定した子どもの養育費や
 犯罪被害者への賠償金が支払われないケースを減らす
 ため、法務省は12日までに、支払い義務がある人の財産
 の差し押さえを容易にする制度を導入する方針を固めた。

 裁判所が金融機関に預貯金口座の有無を照会し、支店名
 や残高を回答させる仕組みを柱とする。

 経済的に困窮している離婚女性や犯罪被害者などの救済
 につながる可能性があり、法改正を求める声が上がって
 いた。



 <強制執行による取り立て>

  貸した金銭を戻す場合や事故による損害の賠償を求め
 るときなどに、裁判で請求を認められたとしても、任意
 に支払われなければ解決にならない。

 この裁判で認められた権利をどう実現するか、という大
 きな問題がある。自力で相手から奪うということは認め
 られない。

 国の機関に強制執行を請求し、財産の差し押さえにより
 回収することになる。 その手続きは「民事執行法」に
 よることになっている。

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 <生活困窮者の差し押さえ>   逆の立場では、生活に困って救済が必要な問題がある。  ローンの支払いが滞ったり、税金を滞納して財産を強制  的に差し押さえされて生存が脅かされる場合がある。       熊本地震 義援金差し押さえ       禁止法案が衆院通過         産経新聞 2016.5.19   衆院は19日の本会議で熊本地震の発生後に全国から  寄せられる義援金の差し押さえを禁止する法案を全会  一致で可決した。  住宅ローンなど借金がある被災者に配られる義援金など  について、金融機関などによる差し押さえを禁止する。  施行前に集められた義援金も保護の対象。  <差押禁止の財産>   差し押さえ禁止財産とは    給与や期末手当、老齢年金など生活に欠くことが   できない財産は、全額を差し押さえすることが禁止   されている。   税の滞納について、差し押さえを実施する場合は、   家族構成や収入などの状況をみながら各自治体が   判断している、という。(コトバンクから)   憲法が保障する生存権がある。「すべて国民は、健康  で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とされ  ており、最低限の生活ができないような強制執行は許さ  れない。  1)年金の給付を受ける権利は、差し押えができない。    (国民年金法24条)   ただし、これを預金として管理されている財産は禁止   財産にならない。  2)税金の徴収については、給料等のうち最低生活費に   相当する額は、差し押えができない。  3)一般の民事手続きによる差し押えは、給料等の4分   の3は、生活の維持に必要なため禁止されている。         災害弔慰金や義援金       熊本日日新聞 2016年10月4日   問)熊本地震に関連して義援金などの支払いを受ける    権利や、実際に支給されたお金を、債権者は差し押    さえることができるのでしょうか。   答)これらの支給を受ける権利の譲り渡し、担保提供、    差し押さえは法律で禁止されています。また、実際    に受領した金銭の差し押さえも禁じられています。    ですから、債権者がこれらの権利や金銭を差し押さ    えることはできないのはもちろん、もし差し押さえ    られた場合には、その効力を争うことができます。     ただ、実際に支給を受けた後の預貯金口座の預金    や現金が、他の預貯金や現金と混じってしまうと、    差し押さえ禁止財産かどうかが分からなくなる場合    もあります。区別して管理したほうがよいでしょう。