願わくば大新聞も

ときの政権が右という場合でも、なびかないで欲しいと

正社員と非正規労働者の待遇格差

 <能力を高めて貢献度を上げる>

       非正規の賃上げは能力向上で
       日本経済新聞 2016/12/22

  仕事が同じなら賃金も同じにする「同一労働同一賃金」
 をめぐり、正社員と非正規社員の待遇に差があっても
 問題ないとみなせる例などを示したガイドライン案を、
 政府が明らかにした。経験や能力、成果、貢献度などに
 応じて賃金に差をつけることは認められるとしたのは、
 妥当だろう。

  非正規社員の賃金を上げるため政府は同一労働同一
 賃金の制度化をめざしているが、重要なのは非正規で
 働く人たちが仕事に必要な技能を高め、貢献度を上げら
 れるようにすることである。

 職業訓練の充実など環境の整備に政府は力を注いでもら
 いたい。

 基本給については、職業経験や能力などに違いがあれば
 差が許容されるとした。賞与も会社の業績への貢献度に
 応じた支給を認めている。

 生産性に応じて対価を払う、という賃金決定の原則に
 沿った内容になったといえよう。

 待遇差の理由について従業員への説明を企業に義務づけ
 ることは見送られた。だが説明責任は当然ある。求めら
 れれば企業はきちんと対応すべきだ。

  企業が賃金を上げやすくなるよう、働く人の能力を高
 める職業訓練の意義は一段と増している。国や自治体が、
 例えばバウチャー(利用券)方式で受講者が自由に講座
 を選べるようにすれば、訓練施設の間で競争が起き、
 サービスやIT(情報技術)などの分野の充実を期待で
 きよう。



 <改革は誰のためか>

    働き方改革/「何のため」「誰のため」か
       河北新報 2016年10月08日

  経営者は繁閑時に非正規の増減と共に、正社員の残業
 の多寡を調整弁とし、働く側も残業の強要を自らの雇用
 の安定のため受け入れてきた。残業代込みで生活費を
 賄っている現実もある。

  こうした雇用慣行とどう向き合うか。 このことは
 「何のため」「誰のため」の改革かというスタンスとも
 関わる。

  安倍政権で当初、働き方改革が語られたのは「企業の
 競争力強化のため」だ。検討されたのは解雇規制の緩和
 であり、一部労働者を労働時間規制の対象から外す
 「残業代ゼロ法案」だ。

 政権は、長時間労働是正に逆行しかねないその法案成立
 に今もこだわる。

  今回、語られるのは「労働生産性改善のため」。要は
 経済成長の下支えが狙いだ。

  非正規労働者の賃金が底上げされれば、消費が拡大し、
 長時間労働の是正で女性や高齢者が働きやすい環境が整
 えば、労働力を確保できる。

  だが、それは改革の結果である。働く人、特に非正規
 の若者らが、どうすれば将来に明るい展望を持って仕事
 をし暮らしていけるのか、そのことを改革論議の原点に
 据えなければならない。

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 <最優先の課題は>   二つの主張を並べると、立場の違いが鮮明に表れて  いる。   前者が求めるのは、仕事に必要な技能を高め、貢献度  を上げられるようにすること。  そのため、職業訓練の充実など環境の整備に政府は力を  注いでもらいたい、という。   生産性に応じて対価を払うという原則を貫いて、経済  成長を促進し社会全体を豊かにする、という考えなのか。   後者は、経済成長を支えるために労働生産性改善を求  めるような「改革」に疑問を示す。  政府は、企業の競争力強化のために解雇規制、労働時間  規制の緩和を目指すが、問われているのは働く若者に  将来展望を示せるかである。  どうすれば明るい展望を持って仕事をし、暮らしていけ  るのか、そのことを改革論議の原点に据えなければなら  ない、という。   そして、急ぐべきは格差是正だとする立場からは、  格差是正の実効性には、企業の人件費抑制を改めること  が必要であると主張される。  賃金を抑え、経営の安全弁として非正規労働者を増やし  てきた。そのために不本意な働き方を続ける若者に明る  い将来展望をもたらす取り組みを求める。   そして具体的な問題点として、指針案が基本給を能力  や成果に違いがあれば待遇差を認められる、としたこと  に批判が多い。  「正社員と非正規は、期待や役割が違う」と格差を放置  してきたところから進展するか難しいという。  南日本新聞(2016/12/22)は、次のような指摘を紹介し  ている。   和光大の竹信三恵子教授は一番重要な基本給を能力や  業績、成果という主観的要素で判断するのは問題だと  いう。  「国際基準では仕事のスキルや責任、負担といった職務  の内容を分析して客観的に比較するが、政府の指針案で  は企業に判断を委ねることになる。職務で客観的に評価  する仕組みを導入しない限り、非正規の状況はあまり  変わらないだろう」と危ぶむ。  <人件費抑制を続けるか>     同一賃金指針案/格差是正へ希望持てるか        デーリー東北 2016/12/29   正社員と非正規労働者の待遇格差の是正を目指す政府  の「同一労働同一賃金」指針案がまとまった。  賞与や各種手当、福利厚生などでは待遇改善へ一歩進ん  だが、賃金の骨格となる基本給では踏み込み不足が目立  った。非正規労働者の待遇差是正にどこまで効果がある  か、まだ見通せない。   基本給については経験・能力、業績・成果、勤続年数  の3要件に違いがなければ、「同一としなければなら  ない」と明記。  しかし、「同一労働」の定義はせず、能力や成果を判断  する客観的な基準には触れなかった。取り上げた事例も  少ない。   また、待遇差が合理的かどうかの説明責任を企業に課  すという、労働側の主張も盛り込まれなかった。  これでは立場の弱い非正規労働者が、企業に納得いく説  明を求めるのは難しく、実効性を確保できるか疑問だ。   企業は今後、賃金体系や就業規則の一定の見直しを迫  られそうだ。その際、総人件費の上昇も受け入れる姿勢  が重要だし、希望があれば正社員などへの転換にも積極  的に取り組むべきだ。  家計の担い手で、不本意にも非正規の働き方に甘んじて  いる人の存在も忘れてはならない。   日本の労働分配率バブル崩壊後、大きく下がった。  賃金を抑え、経営の安全弁として非正規労働者の採用を  増やしてきたのが要因だ。非正規労働者は4割に達し、  時間単価は正社員の6割にとどまる。  こうした労働市場のゆがみを生んだ責任は国にも企業に  もある。そして、ゆがみを是正できるかどうかは、持続  的な経済成長のための鍵でもある。個人消費年金問題  などの行方とも複雑に絡むからだ。

 

製造物責任、使用上の警告は適切か

 <運動器具に欠陥か>

     ワンダーコア使用中に窒息死
     親族提訴「器具の欠陥が原因」
      東京新聞 2016年10月20日

  腹筋を鍛える運動器具「ワンダーコア」を使用中に
 死亡したのは器具の欠陥が原因として、名古屋市の男性

 =当時(46)の親族女性が、ワンダーコアの輸入販売
 会社「オークローンマーケティング」に七千万円の損害
 賠償を求め、名古屋地裁に提訴した。

  訴状によると、男性は昨年五月九日未明、自宅でワン
 ダーコアを使用中、首につけていたネックレス二本が、
 器具のヘッドレストか背もたれ部分のピンに引っかかり
 首を締め付けられて窒息死した。

  ワンダーコアは背もたれが倒れることで、腹筋を鍛え
 る効果があるとされる運動器具。

  親族女性は「器具には突起物が複数あり、ネックレス
 をした状態であれば、部品などに引っかかり首を締め付

 ける。運動器具として安全性を欠いている」と主張。
 製造物責任法などに基づいて損害賠償する義務があると
 した。

 「ネックレスをつけて使用しない」との表示がないとし
 て、注意や警告をする法的義務があったと訴えている。
 

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 <製造物責任法の欠陥>

   製品の欠陥によって損害を被ったことを証明した場合
 に、被害者は製造会社などに対して損害賠償を求める
 ことができる。

  製造物責任法は、「欠陥」について通常予見される
 使用形態などの事情を考慮して、通常有すべき安全性を
 欠いていること、と定義している(2条2項)。

  そして、具体的には設計上、製造上の欠陥があるが、
 ほかに指示・警告上の欠陥がある。

 *指示・警告上の欠陥

  例えば、製品によっては表示や取扱説明書中に、
  設計や製造によって完全に除去できないような

  危険について、それによる事故を回避するため
  の指示や警告が適切に示されているかどうかも
  考慮されます。(製造物責任法 消費者の窓)

 となっている。


 <被害発生を防止する警告義務>

  製造物に設計、製造上の欠陥があるとはいえない場合
 であっても、使用方法によっては通常そなえるべき安全
 を欠き、人の生命等を侵害する危険がある。

 この場合には、製造者等は被害発生を防止するための
 注意事項を指示・警告することを求められる。

  例えば、 給食用食器である強化耐熱ガラス製の食器
 を床に落下させて生徒が受傷したという裁判事例がある。

  食器を落とした生徒の不注意が原因かどうか争われた
  が、奈良地裁は、床に落下させ飛び散った場合の危険
  性を取扱説明書等に十分な表示をしなかったことは、
  製造物責任法三条にいう欠陥に当たる、

 と判断している。(平成15.10.8)

 

相続人がいない場合の特別縁故者

 <特別縁故者の認定>

    入所者の全遺産、施設側が相続へ
    特別縁故者に認定、高裁金沢支部
      共同通信 2016/12/3

  福井県の障害者支援施設に35年間入所し、68歳で亡く
 なった身寄りのない男性の遺産を巡り、施設を運営する
 社会福祉法人特別縁故者への認定を求めた即時抗告審

 で、名古屋高裁金沢支部は訴えを却下した福井家裁の
 決定を取り消し、施設に全ての相続を認める決定を出し
 たことが3日、分かった。

  相続財産管理人の弁護士によると、施設側が特別縁故
 者に認定されるのは珍しい。「きめ細かなサービスが認
 定につながった。親身な介護を高裁が認めたことは、重
 労働の介護職の人の希望になる」と話した。

 男性には相続人がいないため、遺産の約2200万円は通常
 は、国庫に収納される。


    決定は、男性の財産形成は施設利用料の安さが大きく
 影響したと指摘。さらに、専用リフト購入や、葬儀や
 永代供養などのサービスが「人間としての尊厳を保ち、

 快適に暮らせるよう配慮されており、通常期待される
 レベルを超えていた。近親者に匹敵、あるいはそれ以上」
 だとした。

  男性は施設に1980年に入所。知的障害があり、歩行困
 難な状態だった。数年前からは寝たきりで、2015年2月
 に施設で死亡した。

  福井家裁への申し立てでは「施設と利用者の関係を超
 える特別なものではなかった」と却下されていた。

 

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  <特別縁故者の規定>   特別縁故者とは(コトバンク)   被相続人と生計を同一にしていた者や被相続人  の療養看護に努めた者など被相続人と特別の関係  があった者で、相続人が存在しない場合に、請求  により相続財産の分与を受けることができる者   民法は,1962年の改正の際,相続人がいない  場合に家庭裁判所はこれらの特別縁故者に清算  後残存する相続財産の全部または一部を分与する  ことができると規定した (民法958条の3) 。 (特別縁故者に対する相続財産の分与)  第958条の3   家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、   被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と   特別の縁故があった者の請求によって、これらの者   に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を   与えることができる。  <特別の縁故があった者>   特別縁故者として、(1)生計を同じくしていた者、  (2)療養看護に努めた者と(3)その他被相続人と特  別の縁故があった者があげられている。  (3)その他被相続人と特別の縁故があった者について  は、申立があっても容易に認定されることはない。  生活の相談を受けたり、世話をしたことがあるなどの事  実があっても、単に親族として通常の交際をしていたに  過ぎないとして請求を認めない場合が多い。   否定した裁判で、次のような判断が示されている。    被相続人の従姉の養子であり、親戚づきあいが   あったが生前に特別の縁故があったといえる程度   に身分関係や交流があったとは認められない。    被相続人は婚姻もせず、子もなく、兄弟姉妹も   先に亡くなっており、請求者が被相続人の死後に   法要をし、庭木の伐採、掃除等をして労力と費用   をかけているが、被相続人との生前の交流の程度   から、「特別の縁故があった者」と認めることは   できない。  <老人ホームを特別縁故者と認めた>  那覇家裁石垣支部 審判 平成2年5月30日   申立人は県立の養護老人ホームであり、  被相続人は、申立人であるC園に入所措置が  とられ、その後死亡するに至るまでC園で生活を  していた。  衰弱が激しくなると、歩行、排便等の介助が必要  となり、職員がその世話をした。死亡後は葬儀を  同園の職員が行い、同園の納骨堂に遺骨を安置し  てその後の供養も行っている。   身寄りのない被相続人としては、その機会があれ  ば、世話を受けた申立人に対し、贈与もしくは遺贈  をしたであろうと推認され、申立人に所属する職員  も施設としてその療養看護に当たってきたものと  認められ、申立人には、民法958条の3第1項に  規定する特別の縁故があると認めるのが相当である。

 

反グローバル化批判にも怪しさ

 <世界経済が停滞する>

       「トランプ大統領」の衝撃
       保護主義に利はない
        朝日新聞/2016/11/11

    世界経済は低成長に陥り、国際的な経済摩
   擦が相次ぐ。英国の 欧州連合(EU)離脱

   決定に続き、トランプ氏の言動と政策が反
   グローバル化をあおることになれば、世界経
   済は本格的な停滞に陥りかねない。

    今世紀に入って世界貿易機関WTO)で
   の多国間交渉が行き詰まるなか、自由化の原
   動力は二国間や地域内の自由貿易協定(FT

   A)に移った。 とくに規模が大きい「メガ
   FTA」が注目され、その先陣を切ると見ら
   れてきたのがTPPだった。

    貿易や投資の自由化には、競争に敗れた産
   業の衰退や海外移転による失業など、負の側
   面がともなう。恩恵を受ける人と取り残され
   る人との格差拡大への不満と怒りが世界中に
   広がる。

    だからといって、自由化に背を向けても解
   決にはならない。

   新たな産業の振興と就労支援など社会保障の
   てこ入れ、教育の強化と課題は山積する。大
   企業や富裕層による国際的な税逃れへの対応
   も待ったなしだ。

    自由化で成長を促し、経済の規模を大きく
   する。同時にその果実の公平な分配を強める。
   トランプ氏を含む各国の指導者はその基本に
   立ち返るべきだ。

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    <批判する側の成長論>

  反グローバル化の対応策として、自由化で成長を促し、
 経済の規模を大きくする。同時にその果実の公平な分配
 を強めると説明している。

 「自由化に背を向けても解決にはならない」とするが、
 その表現はかつて「企業負担を重くして労働者の利益が
 増えるわけではない」という説明を呼び起こす。

 これまで成長促進のため法人税減税など企業負担を軽減
 し、競争力を高めるという政策を採ってきた。企業利益
 を増やして従業員の待遇改善に回すことになると主張し
 て既に長期間を経過している。

  「自由貿易を推進し経済成長を図ろうとするのは、
 国民一人一人の暮らしを豊かにするためではないのか。
 成長は手段であり、目的ではない」(河北新報 11/25)
 
  いわゆるトリクルダウン効果があれば「富める者が富
 んで、貧しい者にも自然に富が浸透する」ことになり、
 国民全体の利益になるはずではなかったか。

 結果が伴っていれば、不満と怒りが世界中に広がること
 はない。


  グローバル化は世界の貧しい人々に恩恵をもたらした
 が、「政府の怠慢で職を失った人が多い、欧州では法人
 税率が高止まりしている」(ロイターのコラムニスト)
 と、今どき強調しても説得力はない。

 社会保障のてこ入れや教育の強化のほか大企業や富裕層
 による国際的な税逃れを急げと対策を説くのも空しい。

  セーフティネット充実の重要性、中間層の強化そして
 個人消費で貢献の大きい所得層こそ優遇するという主張
 が以前からあった。

 しかし、労働者保護や社会福祉を削減してでも企業負担
 を軽減するという姿勢を続けている。



 <富の集中と貧困層の拡大>

       そろそろ真面目に考えたほうが
      山陰中央新報 明窓 '16/11/29

    何か世界が浮足立っているように思えてな
   らない。トランプ次期米大統領の出現以降、
   各国首脳たちもアメリカの変化を予測できず
   疑心暗鬼が満ちている。

    過激な言説で米国内の人種や宗教を分断し
   ないか。一国主義、孤立主義的「トランプ主
   義」が、他国にも伝播しないか。

   いわば、融和の求心力を失い、解体の遠心力
   が働く心配。中でもグローバル経済が危機に
   陥ると叫ぶ人が多い。

    確かにそうだが何にでも裏表はあり、日の
   当たる所に日陰はできる。グローバル経済は
   良いことずくめではなかった。

   国籍不明の金融資本主義はリーマン・ショック
   を教訓とせず、資産バブルとバブル崩壊の爆弾
   を抱えたままだ。

    アメリカ経済はここ40年、莫大な貿易赤字
   を出し続けながら行き詰まらなかった。それを
   上回る資金を新興国に投入し、金融によって
   利益を上げていたからだ。

   その結果、鉄鋼、自動車、真面目にものを作る
   人々は居場所を失った。

    金融の世界で成功した一握りの人に、途方も
   ない富が集中し、貧困層が拡大。今や「富は積
   もれど民は窮す」の様相だ。

   タックスヘイブン租税回避地)に富を隠した
   不届き者も暴かれて、若者が抱く格差社会への
   不満は発火寸前。

    日本が後ろ姿を追い続けたアメリカという国
   は、偉大な反面教師でもあり続ける。「忘れ去
   られた人々をなくす」と訴えたトランプ氏で
   変わるのか。グローバル化に取り残された人の
   敗者復活はどうか。そろそろトランプ出現の
   意味を、真面目に考えた方が良さそうだ。

 

内部告発者に報復人事


 <公益通報者保護制度>     消費者庁が見直し 刑事罰導入も検討       毎日新聞 2016年6月5日   官庁や企業に関する不正の内部告発者が不利益な処遇  や報復を受けないよう守る「公益通報者保護制度」を  見直す作業が進んでいる。  告発や通報を理由にした解雇や降格、減給などに対して、  刑事罰や行政措置の導入を検討。 「司令塔」役である  消費者庁に通報の総合窓口を設け他省庁が所管する事案  も調査の対象に加えようと動いている。  <トナミ運輸損害賠償事件>   公益通報者保護法制定のきっかけを作ったといわれ  る有名な事件です。  運輸業界のヤミカルテル公正取引委員会内部告発  したのに対して、報復人事を行い仕事らしい仕事を与  えず、30年もの間空き地の草むしりなどを業務とし  たという。  *富山地裁 平成17.2.23 判決   内部告発には公益性があり、発言力が乏しかった   原告が外部の報道機関に告発したことは無理からぬ   ことだった。   原告に雑務しか行わせず、昇格を停止して賃金格差   を発生させたことは人事権の裁量の範囲を逸脱する   違法なものであり、雇用契約に付随する義務につき   債務不履行の損害賠償責任がある。  <オリンパス配転命令事件>   精密機器メーカーの社内に不正があると、社内の  通報窓口に伝えた社員が不当に異動させられ、人事  評価も大きく下げられた。  不当な配置転換だと訴えた裁判で勝訴した社員が、  配転を無効とした判決が最高裁で確定した後も処遇  改善がないとして、更に損害賠償などを求めた裁判  で解決金支払いなどによる和解が成立したという。  公益通報者保護法が制定され、この制度を利用した  内部告発にも関わらず不利益な扱いを受けている。  

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 <通報者を守る仕組み>     公益通報者保護    宮崎日日新聞 2016年11月25日  (勇気ある告発生かす制度を)   企業などの不正を内部告発した人を、解雇や降格  といった不利益な扱いから守る公益通報者保護制度  の見直しに向け、消費者庁有識者検討会が年内に  も最終報告書をまとめる。   その中で、通報を理由に不利益な扱いをした企業  に対し行政機関が是正を勧告し、改善措置が取られ  ないときは、企業名を公表するという新しい制度の  導入を促す。  「勇気ある通報」を守り、生かすための仕組みを  つくりたい。  *嫌がらせや不当扱い   通報は組織への「裏切り」とみなされることが  多い。上司から嫌がらせをされたり、閑職に追い  やられたりする人もいる。   こうした不当な扱いは法律で禁じられているが、  違反しても罰則がないため「通報者を守れない」  との指摘が相次いでいた。   新たな制度をつくるのは簡単ではない。関係省庁  は保護に値する通報か、本当に不当な扱いかを判断  するのに詳細な調査をしなければならず、そのため  の人員も予算も必要になる。   企業から「報復人事など不当な扱いはないのに、  処分によってダメージを受けた」と裁判を起こされ  ることも考えられ、十分な態勢で臨まなければなら  ない。   勧告・公表が実現すれば、通報者保護は一歩前進  する。ただ課題はそれだけにとどまらない。 最終  報告書の見直し案は多岐にわたり、今回は先送りさ  れた項目もある。  公益通報を機能させ、定着させていくには不断の  見直しが求められよう。

 

混合介護と経済の活性化


 <混合介護の規制緩和>       「混合介護」「転職支援」など議論へ       規制改革推進会議         産経新聞 2016.10.6   政府の規制改革推進会議は6日開いた第2回会合で、  今後、重点的に検討を進める課題として「介護サービス  改革」「転職支援」など計5分野を決めた。  介護保険と保険外サービスを組み合わせる「混合介護」  の規制緩和なども議論、安倍晋三政権が最優先に掲げる  構造改革推進に役立てる。来年6月をめどに答申を取り  まとめる。   介護保険に関しては、介護報酬の対象とならない保険  外サービスを同時に提供する「混合介護」は原則禁止さ  れている。ただ、規制が緩和されれば多様なサービスが  可能となり、競争市場の活性化が期待できる。          規制改革の再起動で成長の天井を破れ        日本経済新聞 2016/9/8     全国レベルの規制改革を担ってきた規制改 革会議は、農協改革や保険診療保険外診療    を併用する「混合診療」の拡大を主導した。     これに対し、東京圏、関西圏などが指定さ    れた国家戦略特区では、民家を宿泊施設とし    て提供する「民泊」が実現した。     介護保険のサービスと、保険外のサービス    をくみあわせた「混合介護」の弾力化も実現    すべきだ。第4次産業革命の進展をにらんだ    規制・制度改革も促進したい。     働き方改革として、安倍政権は長時間労働    の是正や同一労働同一賃金を重視しているが、    それだけでは足りない。    成長産業に人材を円滑に移動させるには、    人材紹介などの規制改革も必要である。    少子高齢化が進む中、低い潜在成長率という    天井を突き破るため、規制改革による生産性    向上を急がねばならない。    

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 <社会保障制度の縮小>

  規制改革の会議は農業や雇用、医療などの岩盤規制を
 突破するという目的を持ち、農業では株式会社の参入を、
 雇用では解雇規制の緩和などを求めている。

 そして、医療では混合診療の全面解禁を目指しており、
 混合介護を自由に利用できるようにというのも、その
 一環です。

 多様なサービスが提供されて、利用者の利便が向上する
 という解説がされているが、利用者側の要求に応える
 だけに考えられてはいない。

  日本の財政事情は厳しいから、社会保障制度を縮小し
 て経済成長を促進する必要がある。公的保険の適用範囲
 を見直し、公的支出を減らすとともに関連産業の活性化
 を図るというのが主たる目的です。

  混合介護の条件を緩和すれば、介護職の賃金を上げて
 人材の流出を防ぐことができる。介護事業者は多様な
 ニーズに応えた保険外サービスを提供して収益を上げら
 れ、介護業界が成長していく。


 <利用者と提供者側の立場>

  積極推進の立場からは、こうした見方がされているが
 一方、反対側からは、社会保障制度の介護保険を競争
 市場に向けるのは問題だ、所得の差によりサービスに差
 が出ることが懸念されるとしている。

  要介護者の多くは基礎疾患を抱え、負担が過重であり、
 自費サービスを使う余裕はない。

  また、介護される人には認知症などで物事を判断でき
 ない人もあり、利用者側の立場は弱い。提供者側が有利
 になれば、余計なサービスを使う可能性があると説明する。

  現在の厚労省は、混合介護を進めて思わぬサービス料
 を請求されることもあり、利用者保護が損なわれるおそれ
 があるとして慎重といわれている。



      「混合介護」を大きく育てよ        日本経済新聞 2016/9/6     要介護者が増えるのにあわせ、介護給付費は    2015年度の約10兆円から25年度に約20兆円に増    える見通しだ。    一方で日本の財政事情は厳しく、介護人材の処    遇改善のために公定価格である介護報酬を大き    く引き上げるのは難しい。     そんな状況下で混合介護が利用しやすくなれ    ば、事業者は多様な保険外サービスを提供し、    収益を増やしやすくなる。     結果として民間の力で介護職員の賃金を上げ、    人材の定着により介護人材の不足を緩和しやすく    なる。事業者の活発な競争を通じてサービスの    質は向上し、利用者の利便性も増すだろう。     厚労省は混合介護を利用できる条件を緩め、    必要なら法改正も検討してほしい。経済活性化    の効果が期待できる混合介護の弾力化措置に今    こそ踏み切ってほしい。

 

教育再生のため家庭のあり方を


  <家庭や地域の役割>      自民党「学校・家庭・地域の役割分担」      議論へ部会設置        産経ニュース 2016/10/14   自民党教育再生実行本部(本部長・桜田義孝元文部  科学副大臣)は14日の会合で、「学校・家庭・地域の  教育部会」などの部会を設ける構成案を了承した。  政府の教育再生実行会議は教師の長時間労働が問題だと  して家庭や地域との役割分担に関する議論に近く着手す  る予定で、党も政府と連動して検討を進める。

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  <社会化に逆行>   貧困、医療、高齢者介護などを、家庭内に閉じ込めず  社会全体で支えていく「社会化」が進行しているはずが、  最近は個人の責任を強調する姿勢が目立っている。  教育についても奨学金の充実を目指すのは、親の貧困に  左右されぬよう子供を社会で育てるということではな  かったか。   学校や教員の負担が増しているから、家庭や親が責任  を果たすべきだという。全く逆転した発想ではないか。  様々な家庭の事情に配慮せずに教育を担わせる、子供の  権利を削減し、生活に干渉するとは理解できない。  仕事のために教育に時間を割けない家庭の子は一層不利  になる。格差を広げる原因を作り、教育の機会均等精神  にも反している。  <家庭のあり方>     わが家は共働きで2人とも時間は不規則     沖縄タイムス 大弦小弦 2016年11月22日   わが家は共働きで2人とも時間は不規則。口が裂けて  も「子どもへの家庭教育はしっかりやっている」なんて  言えない。自民党はそんな家族を「公的に助ける」とし  て、来年の通常国会に法案を出す。その名は「家庭教育  支援法案」。   一見聞こえがいいネーミングだが、家庭教育を「国家  と社会の形成者として必要な資質を備えさせる」と規定。  自治体はそれに沿った方針を立て、地域住民は協力する  「責務」を負うという内容だ。   「自主性の尊重」は明示されるが、国が「家庭のあり  方」を一律に決め、できなければ自治体や地域が介入す  る。今、盛んに言われている「困っている家には周囲が  手を差し伸べよう」とは似て非なるものだ。   そもそも法案は、子育てに困難を抱える親が求めてい  るものなのか。保育園の充実、現状の支援活動への助成  や人員増など、国がやるべきことは山積している。   識者から「法案は家庭での個の尊厳をうたう憲法24  条改定への布石では」と危ぶむ声が出ている。麻生太郎  副総理が理想とする改憲の手口を「ある日気付いたら変  わっていた」と言ったとおり、法案がすんなり成立し  そうなのが怖い。   国が単一の価値観を法で規定すれば、そこから外れる  人にとっては生きにくい社会になる。周囲に頼りっぱな  しで子育て中の身だが、大きなお世話だ。